GOD EATER2 ~Nam Oratorium~ 作:〆渡
大体の案内も終えて支部へ帰ってきた。これで、ちょっとした買い物位なら困ることは無いはずだ。
防衛にも役立つけれど、そんなことにならないのが一番だし。
エントランスに到着すると、丁度ギルさんがラウンジから出てくる所だった。
「お前ら……遅かったな」
「よっ、ギル」
「ただいま戻りました」
ギルさんは、やっぱりちょっとぎこちないというか、素っ気ないような態度だ。あの日以来、ほんの少しだけれどやりづらい。別に、避けるとかそこまではいかないのだけれど。
「お前も来れば良かったのになぁ。あ…でも、お前子供苦手そうだな」
「子供?」
先輩の言葉に怪訝そうにするギルさん。最初は、居住区に行くとしか言ってなかったから、一体なにをしてきたのかと思ったんだろう。
「はい。僕が以前お世話になっていた人の子と会いまして。送っていったら他の子にも…」
「なるほどな」と頷くギルさん。
「ギルの方はどうだった?知ってる人だったんでしょ?」
「ああ。昔、世話になってた人なんだ」
その言葉に頷く僕たち。ギルさんはブラッドになる以前からゴッドイーターとして生活していたのだから、そういう人がいてもなんら不思議は無かったんだな。
けれど、その相手がハルオミさんだっていうのは、世間は狭いというか、なんというか。といったところだろうか。
「ハルオミさんは、まだ中なんですか?」
「いや、ミッションが入ったらしくて、少し前に出撃していった」
「また、任務ですか…」
「まだこっち来て2日目だけど…ほんとこっちはアラガミが多いんだな」
半ば感心した様子で言う先輩。フライアではもう少し任務が少なかったのは確かだ。
「フライアは移動していますからね、ある程度アラガミを回避したり、小型の場合は振り切る事も可能でしょうから」
「ああ、成る程なー」
納得した様子で首を縦に振る先輩。何かを思いついた様な顔をして、「じゃあ、みんなフライアみたいにすればいいんじゃないか?」と言い出した。
いい事を思いついたと言わんばかりだけれど、周りの皆の反応は薄い。
「残念ですが、それはあまり現実的ではありませんね」
「? どうしてだよ」
否定されての反発、というよりは、純粋な疑問のようだ。
ギルさんは、やれやれと言わんばかりに緩く首をふった。
「フライアの様に、走行可能な支部を作る費用を考えると、定点基地を幾つも作れるからだと思いますよ?動く部分が多いと、それだけメンテナンスも多くなりますし」
「ああ……、そっかぁ……。いい案だと思ったんだけどなぁ……」
「いい案……っていえばさあ。昔ここで、えー……えいじんぐ計画?とか、やってたんだよねえ?」
ナナさんの発言に、皆が怪訝そうな顔をした。
なんだろうか、その年齢がどうにかなりそうな計画は。
あれ?という顔をするナナさんに助け船を出したのは、シエルさんだ。
「……ひょっとして、エイジス計画の事ですか?ナナさん」
「そう!それそれ」と嬉しそうに肯定するナナさん。皆も納得した様子だ。
「……エイジス計画って、なんですか?」
聞いてみると、何故か驚いたような顔で見られた。常識的な知識だったのだろうか。
驚きつつも概要を簡単に説明してくれる。
詰まるところ、どんなアラガミにも破れない装甲壁を作って、その中で暮らそうという計画だったようだ。
そんな計画が失敗しまったというのは、本当に残念な事だ。
「でも、失敗してしまったというなら、もう仕方ないですね。その分……と言うべきなのかは解りませんが、僕も頑張らないと」
「そうだな。終わってしまった事を言っても始まらない。俺たちは、俺たちに出来る事で、人々を守っていこう」
隊長の言葉にうなずく。
その中で、やっぱりギルさんはどこか上の空の様だった。
夕ご飯も済んだ時間。あの後一回任務が入ったけれど、支部付近でも無かったので問題なく討伐が終了した。
激戦区と言われた極東という場所柄なのか、同種のアラガミでも、今までより堅くなってきているようだ。
シャワーを浴びて、極東での部屋に戻ると、どうしても先生の事を考えてしまう。
もう、どうにもならない事だと解ってはいるけれど。
「…………」
部屋の隅のソファーに座って考えてしまう。聞かなかった詳細を。
「……駄目だ、精神衛生に良くない」
一人でじっとしていると余計な事ばかり考えてしまう。もうシャワーは浴びたけれど、訓練場で体を動かしてこよう。
まだ明るい廊下を歩いていると、妙な気分になった。何というか、似ている別の場所を歩いているような気分だ。
誰も居ないからそう感じるだけなのだろうけれど、妙だという感覚は払拭できなかった。
そのままエントランスへ向かった所で、何人かの白衣の人たちや看護師さんと入れ違った。こんな時間までお仕事とは、本当に大変だ。
「ヒバリさん。今訓練場は、どこか空いてますか?」
「はい。殆ど空いていますけど……今から訓練ですか?」
頷く僕に、ヒバリさんが若干心配そうな顔をした。
「あまり、無理をしないようにしてくださいね?」
「はい。ありがとうございます」
途中で神機を受け取り、訓練場に向かう。リッカさんに「また前みたいな使い方しないでよ?」と言われたけれど、「今日は訓練なので大丈夫です」と言っておいた。
手に持った神機は、きちんと整備された結果だろうか、今までで一番手に馴染んだ。
働いている人たちの質は、本部直轄のフライアにも負けてない。
訓練場に入り、神機を構える。
一通り型を終え。次にブラッドアーツの訓練に入る。
特別意識したり集中しなくても、活性までは出来るようになった。赤いオラクルが刃の延長となって、空気を切る。
最初は刀身そのものに付加するだけだったけれど。最近は衝撃波のような、飛び道具の様な使い方もできるようになってきた。
疲れてきたら無理をしないで、如何に素早く形態変形できるかの練習。
整備のおかげか、以前よりスムーズになったような気がした。
けれど、単純な動作では、やっぱり思考が余所にいってしまう。
助けられなかった人と、助けられた人が、ぐるぐると頭の中で回り出して、飽和状態になっていく。
そんな状態で扱っていたからだろうか、不意に手から伝わった感覚に、神機を取り落としそうになった。
慌てて掴み直し、神機を落とす事だけは防いだけれど。
「……?」
掴んでいた左手を見ても、見ただけでは異変は解らない。
振るまでも無く消えた違和感に首を傾げながらも、その日の訓練を終えて部屋へ戻る。
適度に疲れた体は、考える間も与えずに眠りについてくれた。