GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

51 / 70
第51話

 

大体の案内も終えて支部へ帰ってきた。これで、ちょっとした買い物位なら困ることは無いはずだ。

防衛にも役立つけれど、そんなことにならないのが一番だし。

エントランスに到着すると、丁度ギルさんがラウンジから出てくる所だった。

 

「お前ら……遅かったな」

「よっ、ギル」

「ただいま戻りました」

 

ギルさんは、やっぱりちょっとぎこちないというか、素っ気ないような態度だ。あの日以来、ほんの少しだけれどやりづらい。別に、避けるとかそこまではいかないのだけれど。

 

「お前も来れば良かったのになぁ。あ…でも、お前子供苦手そうだな」

「子供?」

 

先輩の言葉に怪訝そうにするギルさん。最初は、居住区に行くとしか言ってなかったから、一体なにをしてきたのかと思ったんだろう。

 

「はい。僕が以前お世話になっていた人の子と会いまして。送っていったら他の子にも…」

「なるほどな」と頷くギルさん。

「ギルの方はどうだった?知ってる人だったんでしょ?」

「ああ。昔、世話になってた人なんだ」

 

その言葉に頷く僕たち。ギルさんはブラッドになる以前からゴッドイーターとして生活していたのだから、そういう人がいてもなんら不思議は無かったんだな。

けれど、その相手がハルオミさんだっていうのは、世間は狭いというか、なんというか。といったところだろうか。

 

「ハルオミさんは、まだ中なんですか?」

「いや、ミッションが入ったらしくて、少し前に出撃していった」

「また、任務ですか…」

「まだこっち来て2日目だけど…ほんとこっちはアラガミが多いんだな」

 

半ば感心した様子で言う先輩。フライアではもう少し任務が少なかったのは確かだ。

 

「フライアは移動していますからね、ある程度アラガミを回避したり、小型の場合は振り切る事も可能でしょうから」

「ああ、成る程なー」

 

納得した様子で首を縦に振る先輩。何かを思いついた様な顔をして、「じゃあ、みんなフライアみたいにすればいいんじゃないか?」と言い出した。

いい事を思いついたと言わんばかりだけれど、周りの皆の反応は薄い。

 

「残念ですが、それはあまり現実的ではありませんね」

「? どうしてだよ」

 

否定されての反発、というよりは、純粋な疑問のようだ。

ギルさんは、やれやれと言わんばかりに緩く首をふった。

 

「フライアの様に、走行可能な支部を作る費用を考えると、定点基地を幾つも作れるからだと思いますよ?動く部分が多いと、それだけメンテナンスも多くなりますし」

「ああ……、そっかぁ……。いい案だと思ったんだけどなぁ……」

「いい案……っていえばさあ。昔ここで、えー……えいじんぐ計画?とか、やってたんだよねえ?」

 

ナナさんの発言に、皆が怪訝そうな顔をした。

なんだろうか、その年齢がどうにかなりそうな計画は。

あれ?という顔をするナナさんに助け船を出したのは、シエルさんだ。

 

「……ひょっとして、エイジス計画の事ですか?ナナさん」

 

「そう!それそれ」と嬉しそうに肯定するナナさん。皆も納得した様子だ。

 

「……エイジス計画って、なんですか?」

 

聞いてみると、何故か驚いたような顔で見られた。常識的な知識だったのだろうか。

驚きつつも概要を簡単に説明してくれる。

詰まるところ、どんなアラガミにも破れない装甲壁を作って、その中で暮らそうという計画だったようだ。

そんな計画が失敗しまったというのは、本当に残念な事だ。

「でも、失敗してしまったというなら、もう仕方ないですね。その分……と言うべきなのかは解りませんが、僕も頑張らないと」

「そうだな。終わってしまった事を言っても始まらない。俺たちは、俺たちに出来る事で、人々を守っていこう」

隊長の言葉にうなずく。

その中で、やっぱりギルさんはどこか上の空の様だった。

 

 

 

夕ご飯も済んだ時間。あの後一回任務が入ったけれど、支部付近でも無かったので問題なく討伐が終了した。

激戦区と言われた極東という場所柄なのか、同種のアラガミでも、今までより堅くなってきているようだ。

シャワーを浴びて、極東での部屋に戻ると、どうしても先生の事を考えてしまう。

もう、どうにもならない事だと解ってはいるけれど。

 

「…………」

 

部屋の隅のソファーに座って考えてしまう。聞かなかった詳細を。

 

「……駄目だ、精神衛生に良くない」

 

一人でじっとしていると余計な事ばかり考えてしまう。もうシャワーは浴びたけれど、訓練場で体を動かしてこよう。

まだ明るい廊下を歩いていると、妙な気分になった。何というか、似ている別の場所を歩いているような気分だ。

誰も居ないからそう感じるだけなのだろうけれど、妙だという感覚は払拭できなかった。

 

そのままエントランスへ向かった所で、何人かの白衣の人たちや看護師さんと入れ違った。こんな時間までお仕事とは、本当に大変だ。

 

「ヒバリさん。今訓練場は、どこか空いてますか?」

「はい。殆ど空いていますけど……今から訓練ですか?」

 

頷く僕に、ヒバリさんが若干心配そうな顔をした。

 

「あまり、無理をしないようにしてくださいね?」

「はい。ありがとうございます」

 

途中で神機を受け取り、訓練場に向かう。リッカさんに「また前みたいな使い方しないでよ?」と言われたけれど、「今日は訓練なので大丈夫です」と言っておいた。

手に持った神機は、きちんと整備された結果だろうか、今までで一番手に馴染んだ。

働いている人たちの質は、本部直轄のフライアにも負けてない。

 

訓練場に入り、神機を構える。

一通り型を終え。次にブラッドアーツの訓練に入る。

特別意識したり集中しなくても、活性までは出来るようになった。赤いオラクルが刃の延長となって、空気を切る。

最初は刀身そのものに付加するだけだったけれど。最近は衝撃波のような、飛び道具の様な使い方もできるようになってきた。

疲れてきたら無理をしないで、如何に素早く形態変形できるかの練習。

整備のおかげか、以前よりスムーズになったような気がした。

けれど、単純な動作では、やっぱり思考が余所にいってしまう。

助けられなかった人と、助けられた人が、ぐるぐると頭の中で回り出して、飽和状態になっていく。

そんな状態で扱っていたからだろうか、不意に手から伝わった感覚に、神機を取り落としそうになった。

慌てて掴み直し、神機を落とす事だけは防いだけれど。

 

「……?」

 

掴んでいた左手を見ても、見ただけでは異変は解らない。

振るまでも無く消えた違和感に首を傾げながらも、その日の訓練を終えて部屋へ戻る。

適度に疲れた体は、考える間も与えずに眠りについてくれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。