GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

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タイトルでお察し頂けるかと思いますが、今回はギャグ回です。
内容に、本編キャラの崩壊を含みますので、苦手な方は御注意ください。
尚、ラケル先生は名前のみの登場となっております。


番外編 3年B組、ラケル先生!

 

中学まで極東の学区で暮らしていた僕は、高校から全寮制の私立学校へ通うことになりました。

聞けば、なかなかのお金持ち学校らしいです。

僕がこの学校に入れたのは、奨学生枠に合格した事と、大人の事情です。主に、書いている人の。

入学式を済ませ、新しい教室で、新しいクラスメイト達と過ごす事になる新しい生活を想像し、心を躍らせて歩いていた僕は、何故か今、自分の教室ではない部屋に居ます。

一応断っておくと、いきなり問題を起こして職員室に呼ばれた訳ではありません。

一般的で、可もなく不可もなくな僕は、良い意味でも悪い意味でも、程良く人に埋もれる存在……のはずです。

だから、いきなりそんな破天荒な事なんて、そうそう起らない人生でした。

はい。でした。

僕をここに連れてきた人が、僕の半歩前に立って、先にこの教室に居た人達を紹介しています。

金の髪を高い位置で縛ったその人は(校則違反ではないそうです)入学式で生徒代表として喋っていた、この学校の生徒会長でした。

理路整然とした話し方で、適度に難しい言葉を挟みながら僕たち新入生の入学を祝ってくれていました。

そんな生徒会長さんにいきなり連行され、僕は生徒会室に来ることになりました。

今までこういう場所には縁の無かった僕です。

けれど、この学園の生徒会室が豪華なのだろうという事だけは判りました。

銀髪の女生徒さんが何やら書き物をしている机は、どこかのアンティークなお店に置いてありそうな重厚感を放っています。

その手前、黒髪の男子生徒さんが座っているソファーも、そのお向かいで携帯ゲームをしている金髪の男子生徒さんが足を乗せている低めの机も、窓際でおでんとパンが融合したものを食べている女性が腰を下ろしているサイドボードの様なものも、部屋にある物が全て、家具ではなく、調度品と言った方が適切な物のように見えました。

 

「ええと……皆さんの紹介ありがとうございます……それで、僕になんの用でしょうか?飛んでもなにもでませんよ?」

「意味がよく分からないが、飛んでもらう必要はない」

「そうですか。それでは一体一年生の僕に、何の用が?」

 

心からそう思って訪ねると、会長さんは鷹揚に見える動作で頷いた。

そして、穏やかに笑ったまま、僕が想像もしていなかった事を言う。

 

「そうだな、肝心の事を話していなかった。お前にはこれから、俺たち生徒会の一員として活動してもらいたい」

「……warum?」

「なかなか良い発音だな、どうやら事前の情報通り優秀なようだ。安心したぞ」

 

そう言って、満足そうに頷く会長さん。

何やら、僕にとって不穏な方向へ行っている気がひしひしとします。

 

「いえいえちょっと待ってください。どうしていきなり僕なんですか?というか、名前も素性も分からない一年生に、なんでいきなり?」

「心配するな。素性や能力その他は、もちろん把握しての決定だ」

「…………」

 

それは、なんというか。

犯罪ではないのだろうか?

いえ。奨学金入学ですから、素行やら何やらを調査して最終的な判断をしたと言われたら、まあ納得できなくはないです。

でも、それを仮にも一生徒に教えるというのはどうなんでしょうか!?

 

「いや、その点については問題ない」

「どういう事でしょうか?」

 

問題ないのだろうか?

僕がまだ学生だから理解できないだけというオチだったら、どうしましょう。

と、いうか。根本的なところで、今心を読まれませんでしたか?僕。

 

「問題ないとは、どういう意味でしょうか?」

「ああ。学園側に落ち度はない。何しろ、今回の情報は、俺たちが個人的に揃えた物だからな」

 

爽やかに言い切る会長さん。

言っている内容はともかく、見ているだけで初夏の風でも吹いてきそうな感じです。

今は春ですが。

 

「念のために言っておきますと、犯罪にあたる行為は行っておりません。あくまで、法に触れない範囲での情報収集となっています」

 

と、言ったのは銀髪の書記さんだ。

確か、名前はシエルさん。

学年を示すタイは、2年生のグリーン。

年齢よりも落ち着いた雰囲気で、ひっそりと咲く花の様な上級生だ。

と、いうか。今の言葉は、まるで彼女も僕の情報を集めるために行動していたような……。

 

「はい。これまでに培った経験を活かし、諜報活動に従事させていただきました。スケジュールの把握は当然として、食事などの嗜好も調査済みです」

「どれだけ僕の事調べてたんですか!?と、いいますか。諜報活動ってどういう事ですか!?」

 

普通の学生は、そんな活動しない。

これは、絶対と言い切ってしまって良いことだと思います。

けれど、シエルさんの方は、僕のそんな反応に首を傾げるばかりです。

 

「早速仲が良さそうでなによりだな」

「何言ってるんですか!?貴方の目はタピオカか何かですか!?」

 

春風、という単語の印象よりも暢気でお天気な発言に、思わず全力でつっこんでしまった。

何故でしょう、とても、経験できない事をした気がします。

 

「まあまあ、落ち着けって」

 

今度は、室内でもニット帽を被った男子生徒さんです。

確か名前はロミオさん。役職は庶務だそうです。

今は流石に、携帯ゲームからは目を離していました。

一見して、僕よりも身長が低そうですか、タイの色は一学年上。シエルさんと同じグリーンです。

 

「生徒会っても、変に厳しいって訳じゃないし」

 

ええ。それはもう貴方を見ていると何となく分かります。

仮にも校舎で、ゲーム機ですからね。

 

「……なんだか、今すっごく失礼な事思われた気がするな」

「気のせいでは?―――それより、一年のこの時期ですよ?まだ学校に慣れてない、新入生ですよ?生徒会の一員になるにしても、時期尚早ではありませんか?」

 

それは、一年生のうちから生徒会に入って、学校生活の向上やら何やら、そう言ったことに関心を持つ事は、決して悪い事じゃないでしょう。

でもそれにしたって。何も知らないのではどうしようもない事の方が多すぎるのでは無いでしょうか?

 

「それならば問題はないだろう。そこに居るナナも、お前と同じ新入生だ」

「え?」

 

会長さんが言ったのは、窓際でパン(?)を食べていた女生徒さんだ。

柔らかそうな黒髪を、まるで猫の耳ようにセットしています。

規定より少し短いスカートからはホットパンツが見えてしまっていて、それだけで彼女が活発な人なのだろうと察せられました。

執行部をまとめる、というお話でしたから、このくらい行動的でも良いのかもしれません。

シエルさんとは正反対のような雰囲気ですが、お二人とも相性はいいような気がしますね。

自分が話題の中心になった事に気づいたんでしょう。

パンを加えたまま手を振ってきました。

それに軽く降り返すと、嬉しそうに笑ってくれました。

 

「彼女も、先ほどスカウトしたところだ。お前とは同期という事だな」

「いえ、同期も何も、元から同級生なんですよね?といいますか、よく彼女は承諾してくれましたね?」

「ああ。報酬を用意しておいたからな」

 

つまり、買収ですね。

やはり鷹揚に頷く会長さんの隣で、シエルさんが先ほどから手にしているノートをめくっていました。

 

「調査の結果、彼女は"おでんパン"という食物を好んで主食としているらしいことが分かりました。ですので、その"おでんパン"を用意し、円滑に交渉できるように備えた次第です」

 

やっぱり買収だったようです。

 

「それだけではなんでしたので、こちらも用意しておきました」

 

そう言ってシエルさんが見せてくれたのは、指輪でした。

太めの造りになっているので、女性がつけるには少しばかり無骨な気もします。

上になる部分には、宝石が置かれる代わりに、この学校の校章が彫り込んであります。

おそらく、腕章と一緒に生徒会の人たちが身につけるものなんでしょう。

事実、よく見れば皆さんの指にはめられていました。

 

「どうぞ」

「どうぞと言われても、僕は生徒会には……」

 

現状、入る気はないのだけれど。

それでも、手のひらに乗せられてしまった指輪を眺めてみます。

流石私立、生徒会の備品にもお金がかかっていますね。

それにしても……。

 

「これ、なんだか僕のサイズにピッタリそうですね」

「当然だ」

「当然です」

 

当然らしいです。

事前調査怖い。

ためつすがめつ見ていると、ふとひらめきました。

これだけ自信満々にサイズぴったりだと言っている指輪が合わなければ、そこからこの状況を突破できるのではないかと。

勿論、言うとおりにピッタリだという可能性もありますが。

ものは試しです。すぐに抜けばいいだけですし。ちょっと試してみましょう。

その結果。

 

「やはり、ピッタリですね」

 

ええ。シエルさんの言うとおりピッタリでした。

事前調査怖い。

とりあえず外しましょう、そうしましょう。

けれど。

 

「……あれ?」

 

外れません。

何度やっても、無理に引っ張っても外れません。

軽い感覚ではめてしまいましたけど。ひょっとしてはまりこんでしまったんでしょうか。

どうしましょう、そんな、なし崩しに生徒会入りなんて事!

 

「す、すみません。なんだかちょっと外れなくなってしまいまして……。石鹸水で外してきますから、今日のところは帰って良いでしょうか?」

 

きっと、今僕の顔色はよろしくないでしょう。

冷や汗とか出てる気がします。

けれど、これを機に一気に攻め落とせ、というような表情を予想していた僕の想像はあっさりと覆されました。

皆さん、きょとんとした、不思議そうな顔をしています。

その中で、黒髪のギルバートさんだけが、やれやれと言いたいような、僕に同情しているような表情を浮かべていました。

 

「言っていなかったか?」

「何がでしょうか?」

「その指輪は、顧問でもあるラケル先生が造ったものでな。一度填めると外れないぞ?」

 

何でもない事の様に、それこそ、今日の学食のメニューでも言うように、実にあっさりと爆弾発言が投下されました。

僕の頭は、いわゆる真っ白状態です。

 

「ちょ、どういう事ですか!?なんで学校の備品がそんな呪いの装備品状態なんですか!?それにっ、なんで顧問の先生にそんな物が造れるんですかぁっ!」

 

僕の必死の問いに返ってきた答えは。

 

「ラケル先生だからな」

「ラケル先生ですから」

「まあ、先生だからなー」

「……あの教師だからな」

「ラケル先生だしねえ」

 

見事に答えになってません。

トートロジーとはこういう事ですか?鰯の頭ですか?

 

「まあ、確かに急で悪いけどさ、生徒会だって楽しいし、こうやってみんなでわいわいやれる感じだし、頼むよ、な?」

 

みんな……?

 

「そうだ。それですよ!」

 

僕があげた声に、皆さんが首を傾げました。

けれど、今はそれを気にする余裕はありません。

 

「僕が入らなくても、この生徒会はすでに人員が充実してるじゃないですか!」

 

そうだ。もっと早く気がつくべきでした。

そうしたら、こんな風に呪いの指輪を身につけたりせずにすんだのに。

焦りや驚き、それに緊張は視野を狭めてしまうようですね。今後は気をつけましょう。

まあ、今それはおいておいて。

過剰な人材も、生徒会には不要なはずです。今度こそ、僕の主張も通るはず。

 

「確かに、殆どの人材は揃っているが……気づかなかったか?一つ、重要な役職が欠けていただろう?」

 

きりりとした表情でそう言われ、自然と僕の背筋も伸びるようです。

適度な緊張を感じて続く言葉を待っていると、まるで計算されたような間をとってから会長さんが口を開きました。

自然と喉がなります。

 

「それは……副会長だっ!」

「いや、それこそ古参メンバーから決めてくださいよっ、いきなり新参者がなるものじゃないでしょう!?」

 

本日二度目の押さえきれないつっこみです。迸ります。

それに動じない会長さんは、確かに大物なんでしょう。

器が大きすぎて着いていけなさそうでもありますが。

 

「いや。入念な事前調査があって出した結果だ。謙遜する事はない」

「今の僕のどのあたりが謙遜なのか、教えていただけませんか!?」

「おめでとうございます、副会長」

「どさくさ紛れに既成事実を作ろうとしないでくださいっ!」

 

ぱちぱちと手を叩くシエルさん。

ソファーに座ったロミオ先輩も、同じように手を叩いている。

唯一、この場で僕の常識に近いような気がするギルバート先輩が、ため息を吐きながら諭すように、「諦めろ」と言ったのが聞こえた。

 

「……うぅ……。僕の、ハートフルでラブでコメディなハーレム学園生活の予定が……その中で鈍感な僕を取り巻く美少女&美女との生活がぁ……」

 

(こいつはこいつでろくでもねえな……)そんな声が聞こえて来そうですが、健全な男子ならこの程度を夢に見る位は許してほしいところです。

現実を見据えた上での"夢"ですから、そっとしておいてください。

 

「僕はただ、普通の学校生活が送りたかっただけなのにぃ~っ!」

「……いや、さっきの発言は、普通ってくくりじゃなかったぞ、確実に」

 

がっくりと膝を着く僕の頭上から、ぼそりとそんな声が聞こえた気がしました。

 

 

 

*****

 

 

 

「―――っ!?」

 

文字通り飛び起きるデイト。

その背後、ベッドサイドでは、目覚ましのアラームがけたたましく鳴り響いていた。

早鐘を打つ心臓を押さえ、息を整えるデイト。その額から、汗が流れ落ちた。

 

「なんだか……もの凄く失礼な夢を見たような気がします……」

 

なかなか治まらない動悸を無視して、何かを振り払うように立ち上がると、朝の身支度を開始するのだった。




最後まで読んで頂き、有り難うございます。
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