GOD EATER2 ~Nam Oratorium~   作:〆渡

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第68話

 

 

朝。

セットした目覚ましがなる前にアラームを切る。

考えすぎなのか、別の理由なのか、昨日は良く眠れなかった。

袋から、中の物を取り出す。

黄ばんで所々擦り切れたノート。ひょっとしたら、先生が何度か読み返したりしていたのかもしれない。

表紙には何も書いていなかったから、個人的な内容のものなんだろう。

ノートの表紙を見たまま、半分意識が飛んでいた。

眠りが浅く、短かったせいか疲れが取れきっていないようだ。

ノートをサイドテーブルに置いて、再びベッドに倒れ込む。

目を閉じて横になっているだけでも、随分楽になると教えられた事を思い出して。

眠らない様に時々寝返りを打ちながらそうしていたのだけれど、睡魔はじりじりと近づいたと思うと、一瞬で襲いかかってきた。

 

 

 

*****

 

 

 

 

*****

 

 

 

結局、あの後僕が目を覚ましたのは平均的な朝食の時間になろうかと言う頃だった。

起こしに来てくれた先輩は二度寝した事に共感してくれたけれど、今後は気をつけないと。

 

「でもさー、なんだかんだ言って、二度寝って気持ちいいんだよなぁ」

「解る解る。なんだか、普通に寝るときよりもふわふわしてる感じなんだよねー」

 

そんな先輩とナナさんの言葉を、シエルさんの咳払いが遮った。

 

「デイト。一神機使いとしても、我々の副隊長としても、体調の管理はしっかり行ってください。睡眠不足は判断力の低下を招き、現場で事態の悪化を引き起こす可能性もあります。勿論、私たちが一緒に行動している場合はそんな事態にさせないように動きますが、何があるか解らないからこそ―――」

「その辺りにしてやれ、シエル。本人も十分解っているだろう。それより、デイトに聞こうと思っていた事があるんじゃないのか?」

 

取りなすような隊長の言葉に、「そうでした」と言いつつ、まだ言い足りなそうなシエルさん。

携行品を入れるポーチから、画面が大きいノートタイプの端末を取り出した。

表示された画面を、みんながのぞき込んだ。

 

「これは?バレットの分析結果みたいだが」

「はい。隊長にはお話してありましたが、以前デイトにつき合って貰ってバレットの実戦データを取りに行った事があったのです。その際、通常とは異なる挙動を示すバレットが発生しました。それを、サカキ支部長を含めたこちらの技術班に調べていただいた結果が届いたのです」

 

シエルさんが見せてくれている画面には、バレットの断面図と解説。他にはグラフ等も書かれていた。

 

「……ダメだ、ぜんっぜん解んねぇ」

「わたしもー」

 

早々に根を上げる先輩とナナさん。

ギルさんは感心した様子を見せ、隊長は納得した表情だった。二人は、この図を見ただけで理解できたらしい。

説明を求める目に促されて、シエルさんが口を開いた。

 

「ここに書かれた変化というのがですね―――」

 

と、講義の時間と同じように生き生きとした調子で説明するシエルさん。

内容の平易さで言うと、若干ではあるものの分かりやすくなっていた。それでも解らない所は、逐一質問が入る。

 

「つまり、元のバレットみたいに色々くっつけたりはできなくなったけど、その代わり元からある程度強いものになってる……って事?」

「はい。直接的な攻撃だけでなく、特殊な効果が現れる事も理論的にはあり得るようです」

 

補足された説明に、みんなが頷く。

それが偶発的なものでなく、ある程度意識的に発生させられるものならよりミッションの助けにもなるだろう。

 

「それで、この特殊なバレットに変異した理由は解明されたんですか?」

「え?」

 

僕の質問に、シエルさんが一瞬動きを止める。

珍しい事もあるものだ、と思った。

いつもキビキビと動いていて、そうそう不意をつかれて動揺する事なんて無いと思っていたのに。

それとも、極東支部の人たちが集まってもそこまでの解明は出来なかったのだろうか?

 

「えっと……その……」

「……?シエルが言い淀むとは、珍しいな」

「い、いえ。何でもありません。……バレットの発生には、副隊長の関与が考えられると、サカキ支部長とリッカさんが仰っていました」

 

首を傾げるみんな。シエルさんは一つ咳払いをすると、そう続けた。

 

「デイトの……って事は、《喚起》……だっけ。あれが?」

 

僕が関係しているとなると、そういう事になるのだろうか。確かに、隊長も僕もシエルさんも、そして最近《血の力》に目覚めたギルさんも、ある程度の距離ならお互いにその力の影響を受ける。

すぐそばに居なくては影響を受けない、という訳ではないから。あの時、シエルさんと一緒に行ったミッション中位の距離ならあり得ない事ではなかった。

 

「そう言えば、リッカさんもデバイスに影響が……って言ってました」

「そうなのか?」

「はい。この前呼び出された時に、そう聞きました」

 

データベースには『心を通わせた相手と』云々、と表記されていたけれど、流石に僕でも無機物と意志の疎通はできない。

物資は大切に、とは思っていても。そこまでの感情は僕でも流石にもった事は無いと思う。

 

「成る程……この結果は、当然ラケル先生の方にも伝わっているだろうから、今日の検査はひょっとするとこの事に関係しているのかもしれないな」

「あれ?デイト、今日もまた検査なのか?」

 

首を傾げてそう聞いてくる先輩に頷く。けれど、そんな「また」と言われるほどの頻度だろうか。

確かに、他の皆さんよりは多いと、自分でも思うけれど。

 

「ロミオの言うとおりだ。お前に何があったか知らないが、幾ら何でも多すぎる」

 

ギルさんの同意を、隊長やシエルさん達も、声こそ出さないものの肯定しているようだった。

その事に、不安より先に焦りを感じた。

自分が異常な異物なのではないかという、根拠の無い居心地の悪さ。初陣での事があるから、より強くそれを感じていると自分でも解る。

 

「まあまあ。デイトの先生って、今フライアに居ないんでしょ?だからこそって事なんじゃないかなあ?」

「だからこそってなんだよ、ナナ」

 

僕を含めたみんなの疑問を代弁した先輩の問いに、ナナさんはいつもより落ち着いた様子で答えた。

 

「つまり、今ってデイトの事を……うーん……ちょおっと違うけど、他のお医者さんから預かってるような状態って事だよね?だからこそ、慎重になってるんじゃないかなって」

 

確かに、ラケル博士も一番最初に、自分の専門ではないから、という様な事を言っていた。

《ブラッド》の事を一番知っているのはラケル博士だ。それは動かしようの無い事実。

けれど、同時に精神や心の専門家で無いのも事実だ。

ナナさんの言うように、だからこそ、なんだろうか。

 

「……ここで、俺たちだけで話し合って解る事でもないだろう。推測出来るだけの材料も無い」

 

隊長のその言葉で、この話題は一端終了となった。

有り難い。

思い出して泣く程では無いけれど、息苦しくなってしまう位には、まだ引きずっている気がする。

おかしな態度をとってしまって、みんなに心配をかけたくはないから。

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