六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十話 準備

「ピアノの天才――白金燐子だ」

 

 俺が言うと、あこは目を見開いた。

 

「り、りんりんが!?」

「あぁ」

 

 俺はスマホを出し、当時の記事を見せる。

 

「当時名もなき十歳のピアニストが、コンテストで数々の賞を総なめしてきた。無名だった彼女はいつしか天才とまで呼ばれるようになった。その時の天才が――」

「白金燐子、という訳ね」

 

 友希那の言葉に俺は頷く。

 

「中学に上がってからは名前も聞かなくなったが、まさかあこといるとは思わなかった。何で知り合ったんだ?」

「NFOっていうゲームで知り合ったんだ! りんりん、強いんだよ!」

「NFOとは何ですか?」

「いわゆるネットゲームだ。世界中の人達と繋がれるゲームなんだが、そこで知り合うとはな。奇跡というかなんというか……」

「じゃあ、アタシ達はその燐子って子とコンタクト取れば良いの?」

 

 リサが尋ねてくる。

 

「いや、ここはあこが適任だろう。あこ、バンドに入ってからも白金とは連絡とってるか?」

「うん。ゲームやるときとか通話しながら」

「その時、バンドの話もしているか?」

「してるよ! 憧れの友希那さんとバンド出来る様になったーとか、今日の練習がーとか、キーボードが見つからないーとか」

「練習風景、動画に取ってたよな。それは送ったか?」

「うん! 送ったよ?」

 

 ここまで順調だと、逆に怖い。まぁ、攻めるならここだろう。

 

「恐らくだが、白金はバンドにハマりつつある。この間の友希那のライブを見に行った時、少なからず心を打たれた筈だ。あこから送られた練習動画も含めてな。そしてそれを見ながら、自分でピアノを弾いてると思う」

「話がうますぎるような気がしますが……」

「あくまで可能性の話だがな。その為にはあこの協力が必要だ。良いか? あこ」

「あこは全然大丈夫ですよ! りんりんが入ってくれるなら、あこも嬉しいし!」

「と、いう訳だ。次の練習までに、白金を連れてくる。それまで気楽に待ってろ」

 

 これでバンドに関する話は終了し、あこと連絡先を交換して解散となった。

 今、友希那とリサと帰っているが、リサの表情がどこか不機嫌だ。

 

「どうしたリサ、そんなフグみたいな顔して」

「な、誰がフグよ! 別に、ただ奏が燐子って子の事をよく知ってるな~って思って……」

「よくは知らねぇよ。言ったろ、可能性の話だ」

「そうだけど……」

 

 何処か不安げのある表情に変わった。こいつ……

 

「嫉妬してんのか?」

「な――っ!」

 

 俺がいうと、リサは顔を赤くした。

 

「な、何言ってんのさ! もう知らない!」

 

 そう言ってリサはそそくさと先を歩く。

 

「はぁ。奏」

 

 隣を歩く友希那が声を掛けてくる。

 

「私は貴方を諦めた訳ではないわ。必ず、理由を話してくれるまで誘い続けるから」

「その前に白金の事を気にしろっての」

 

 あこには今日も白金に連絡するよう伝えてある。そして何気なくキーボードの話をするようにと伝えた。

 

 ――さて、吉と出るか凶と出るか……

 

 俺は神に頼むしかなかった。

 

 ―――――――――

 ―――――

 ―――

 

 夜――。

 

『りんりーん! 準備出来たー?』

 

 あこちゃんからチャットが入った。わたしはヘッドセットを取り出し、パソコンと接続すると、通話ボタンを押す。

 

「お待たせ、あこちゃん」

『あ、やっと来たー! 今回のイベントりんりんがいないとクリア出来そうにないんだよね~』

 

 わたしとあこちゃんはオンラインルームに入り、今回から始まるイベントの準備をする。

 

『いやぁ、今日も疲れたよ~』

 

 あこちゃんはあの日以来、バンドの話もするようになった。憧れだった友希那さんのバンドに入れたことが嬉しかったのだろう。

 

 ――正直、あこちゃんが羨ましい。

 

「お疲れ様、あこちゃん」

『ありがと~りんりん。でもさ、相変わらずキーボードが見つからなくて困ってんだよね~。りんりん、誰か知らない?』

 

 あこちゃんの話によると、キーボードが見つからないらしく、困っているらしい。

 わたしはあこちゃんから送られてきた練習風景の動画をみて、感動した。初めて見に行った友希那さんのライブもそうだけど、あそこまで音を奏でられるものは見た事もなかった。

 そして気付いたら、その動画を見ながらピアノを弾いていた。

 

 ――本当は、あこちゃんに言いたい。わたしが弾けるって……でも……

 

 人見知りで引っ込み思案の私に、それが出来るのだろうか。正直怖い。

 子供の頃、ピアノのコンテストで優勝したことあるけど、あれは一人だから出来たのだ。でも、バンドは違う。バンドは力を合わせて一つの音を作り出す。わたしにそれが出来るのだろうか……

 

『りんりん?』

「あ、ごめんねあこちゃん。それで?」

『うん。実はね? りんりんに会ってほしい人がいるんだ』

「わたしに?」

 

 いきなりどうしたのだろう。

 

『なんかあこの知り合いでNFOやってる人がいてね、毎回りんりんがハイスコア出しているから、一体誰なんだって話になって、あこの友達だよ! って言ったら、是非会ってみたいって』

 

 あこちゃんの友達、か。別に良いかな……

 

「うん。いいよ。いつにする?」

『ホント!? ありがとーりんりん! 日にちと場所が決まったら、また連絡するね!』

 

 そう言って、わたしとあこちゃんはクエストに入って行った。

 あこちゃんの友達、一体どんな人なんだろう……

 

 

 

 ―――――――

 ――――

 ――

 

 俺は地下室でいつも通りギターを弾いていた。その時、俺のスマホにメッセが入る。

 

『りんりんと約束できました! いつにしますか?』

「仕事早ぇなアイツ」

 

 あまりの仕事の速さに驚きを隠せなかったが、せっかく掴んだチャンスを無駄にはしたくない。

 

『次の練習が明々後日だから、明日の昼くらいかな。よろしく頼む』

『りょーかいです!!』

 

「さて、と。俺も明日の為に寝るか」

 

 俺はスタジオの電気を消し、自室に戻ってベットに飛び込むのだった。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い

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