翌日。白金燐子と会う為、俺は羽沢珈琲店であこ達を待っていた。
数分後、いかにも中二病を拗らせた服を着ているあこと、おどおどしている白金が入店してきた。
「かなでさーん!」
「おう」
あこが俺を見つけると、手を振ってくる。
「あ、あこちゃん……あこちゃんの、言ってた人って……」
緊張しているのか、しどろもどろな言い方をしていた。
「一度ライブハウスであってるよな。改めて、俺は内田奏。宜しく」
「は、初め……まして。白金……燐子です」
そう言って白金はお辞儀をする。
「今日は急に呼び出してすまなかったな。お前と話がしたかったんだ」
「えっと……NFOの事、ですよね……?」
「……は?」
――NFOの事? 一体何言ってんだ? ……まさか!
俺は恐らく、事の発端者であるあこを見る。するとあこは申し訳なさそうに後頭部に手をやり、苦笑いする。
「……すまん。あこから何聞いたか知らんが、俺はお前に聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと……ですか……?」
「あぁ」
俺は一間置き、口を開いた。
「あこから貰った練習動画を見て、どう思った」
「――っ!」
いきなりの事で、目を見開く白金。
「な、何の事ですか……?」
「しらばっくれても無駄だ。あこからお前に動画を渡しているのは聞いているし、あこは知らなかったらしいが、俺はお前の正体を知っている」
喉を鳴らす音が聞こえる。恐らく白金だろう。まさか、こんな所で自分の正体を明かされるとは思わなかったのだから。
「今から六年前、突如現れた天才ピアニスト、白金燐子。中学に上がってからお前の名前を聞かなくなったが、十歳の時から成しえた偉業は、未だ誰も破られていない」
白金は言葉を発することなく、下を向いている。
「だけど、意外な場所でお前を目撃した。それは先日、あこと一緒に行ったライブハウスだった。恐らくお前はあこに連れられてきたんだろうが、そこで思いもよらぬ出会いがあった」
「想いもよらぬ、出会い……ですか……?」
恐る恐る口を開く白金。
「……湊友希那との出会いだ」
俺が言うと、白金は顔を上げてこちらを見る。
「お前は友希那の歌声を聞いて、魅了されてしまった。そしてその友希那のバンドに入ったあこを羨ましく思った。そして練習動画を見て、何かに釣られたかのように、気付いたら練習動画を見ながらピアノを弾いていた。そして自分もこのバンドに入りたいと思ってしまった。違うか?」
「ど、どうしてそう思う……の、ですか……?」
まぁ、当然な質問だろう。今の話じゃ、まるで白金の事を何でもわかると言っている様なものだ。
「あの時、ピアノを弾いていたお前の姿は、もの凄く楽しそうだった。心の底から音楽が好きなのだと伝わって来た。そんなお前が、友希那の歌を、あのバンドの風景を見て何も思わないわけがない。そうだろ?」
「……」
暫く黙った後、白金は注文していたカフェオレを口に含み、話した。
「内田さんの、言う通りです……。あこちゃんから貰った、動画をみていると、もし、私が入ったらと思ってしまって……。そして弾いているうちに、楽しく……なって……」
白金自身がそう思っているなら、もう時間の問題だろう。
「白金。お前、バンドに入らねーか」
「……え?」
「お前の知っている通り、今友希那のバンドにはキーボードがいない。でも、お前程の実力ある奴が入ってくれれば、バンド自体の音が更に良くなるし、お前も一人で弾いていた時より、もっと楽しくなる」
「りんりん! あこ、りんりんとバンドやりたい! 一緒にやろうよ!」
「で、でも……」
白金は躊躇っている。それは恐らく、自分の性格だろう。引っ込み思案で、人見知りの白金は迷ってるんだ。入りたいけど、この性格のせいで言いたいことが言えない。
「――白金」
「な、何……?」
「やりたいことが出来ないのと、自分の気持ちに正直になるの、どっちが楽だと思う?」
「自分の、気持ち……」
「お前、さっき自分で言っただろ。弾いていて楽しかったって。けど、その性格のせいでバンドに入るのが怖い。それはつまり、自分の本当の気持ちに素直になれないだけだ。楽しいなら、そんなもの押しのけて、楽しむだけじゃねぇか」
白金は何も言わない。葛藤しているんだ。今の自分に。
「まぁ、無理強いはしない。ただ、自分の気持ちが付いたら、あこに連絡してくれ。なるべく早い方が良いが……」
そう言って俺は伝票を持って立つ。
「お前達はまだゆっくりしていろ。まだ話したいこととかあるだろうしな。俺はここで失礼する」
俺はそのまま会計まで行って、支払いを済まし、店を出る。
――答えは出ている筈だ。後は素直になるだけだぞ、白金……
そして俺は帰路につくのだった。
内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?
-
絡ませる
-
数名だけ絡ませる
-
Roseliaだけで良い