六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十一話 接触

 翌日。白金燐子と会う為、俺は羽沢珈琲店であこ達を待っていた。

 数分後、いかにも中二病を拗らせた服を着ているあこと、おどおどしている白金が入店してきた。

 

「かなでさーん!」

「おう」

 

 あこが俺を見つけると、手を振ってくる。

 

「あ、あこちゃん……あこちゃんの、言ってた人って……」

 

 緊張しているのか、しどろもどろな言い方をしていた。

 

「一度ライブハウスであってるよな。改めて、俺は内田奏。宜しく」

「は、初め……まして。白金……燐子です」

 

 そう言って白金はお辞儀をする。

 

「今日は急に呼び出してすまなかったな。お前と話がしたかったんだ」

「えっと……NFOの事、ですよね……?」

「……は?」

 

 ――NFOの事? 一体何言ってんだ? ……まさか!

 

 俺は恐らく、事の発端者であるあこを見る。するとあこは申し訳なさそうに後頭部に手をやり、苦笑いする。

 

「……すまん。あこから何聞いたか知らんが、俺はお前に聞きたいことがあったんだ」

「聞きたいこと……ですか……?」

「あぁ」

 

 俺は一間置き、口を開いた。

 

「あこから貰った練習動画を見て、どう思った」

「――っ!」

 

 いきなりの事で、目を見開く白金。

 

「な、何の事ですか……?」

「しらばっくれても無駄だ。あこからお前に動画を渡しているのは聞いているし、あこは知らなかったらしいが、俺はお前の正体を知っている」

 

 喉を鳴らす音が聞こえる。恐らく白金だろう。まさか、こんな所で自分の正体を明かされるとは思わなかったのだから。

 

「今から六年前、突如現れた天才ピアニスト、白金燐子。中学に上がってからお前の名前を聞かなくなったが、十歳の時から成しえた偉業は、未だ誰も破られていない」

 

 白金は言葉を発することなく、下を向いている。

 

「だけど、意外な場所でお前を目撃した。それは先日、あこと一緒に行ったライブハウスだった。恐らくお前はあこに連れられてきたんだろうが、そこで思いもよらぬ出会いがあった」

「想いもよらぬ、出会い……ですか……?」

 

 恐る恐る口を開く白金。

 

「……湊友希那との出会いだ」

 

 俺が言うと、白金は顔を上げてこちらを見る。

 

「お前は友希那の歌声を聞いて、魅了されてしまった。そしてその友希那のバンドに入ったあこを羨ましく思った。そして練習動画を見て、何かに釣られたかのように、気付いたら練習動画を見ながらピアノを弾いていた。そして自分もこのバンドに入りたいと思ってしまった。違うか?」

「ど、どうしてそう思う……の、ですか……?」

 

 まぁ、当然な質問だろう。今の話じゃ、まるで白金の事を何でもわかると言っている様なものだ。

 

「あの時、ピアノを弾いていたお前の姿は、もの凄く楽しそうだった。心の底から音楽が好きなのだと伝わって来た。そんなお前が、友希那の歌を、あのバンドの風景を見て何も思わないわけがない。そうだろ?」

「……」

 

 暫く黙った後、白金は注文していたカフェオレを口に含み、話した。

 

「内田さんの、言う通りです……。あこちゃんから貰った、動画をみていると、もし、私が入ったらと思ってしまって……。そして弾いているうちに、楽しく……なって……」

 

 白金自身がそう思っているなら、もう時間の問題だろう。

 

「白金。お前、バンドに入らねーか」

「……え?」

「お前の知っている通り、今友希那のバンドにはキーボードがいない。でも、お前程の実力ある奴が入ってくれれば、バンド自体の音が更に良くなるし、お前も一人で弾いていた時より、もっと楽しくなる」

「りんりん! あこ、りんりんとバンドやりたい! 一緒にやろうよ!」

「で、でも……」

 

 白金は躊躇っている。それは恐らく、自分の性格だろう。引っ込み思案で、人見知りの白金は迷ってるんだ。入りたいけど、この性格のせいで言いたいことが言えない。

 

「――白金」

「な、何……?」

「やりたいことが出来ないのと、自分の気持ちに正直になるの、どっちが楽だと思う?」

「自分の、気持ち……」

「お前、さっき自分で言っただろ。弾いていて楽しかったって。けど、その性格のせいでバンドに入るのが怖い。それはつまり、自分の本当の気持ちに素直になれないだけだ。楽しいなら、そんなもの押しのけて、楽しむだけじゃねぇか」

 

 白金は何も言わない。葛藤しているんだ。今の自分に。

 

「まぁ、無理強いはしない。ただ、自分の気持ちが付いたら、あこに連絡してくれ。なるべく早い方が良いが……」

 

 そう言って俺は伝票を持って立つ。

 

「お前達はまだゆっくりしていろ。まだ話したいこととかあるだろうしな。俺はここで失礼する」

 

 俺はそのまま会計まで行って、支払いを済まし、店を出る。

 

 ――答えは出ている筈だ。後は素直になるだけだぞ、白金……

 

 そして俺は帰路につくのだった。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い

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