『奏さん! りんりん、やる気になってくれました!』
夜、ギターを弾いている俺のスマホにあこからメッセージが来た。
――案外早かったな……せめて明日くらいまでかかると思ってたんだが、それ程演奏していて楽しかったんだろう。
『分かった。白金には次の練習がある日に来るよう言っといてくれ。何なら一緒に来ても良いぞ。ありがとな、あこ』
――役者は揃った。あとは友希那達がアイツの実力を目の当たりにするだけだ。
俺はギターをスタンドに立て、地下室の電気を消そうとする。その時、一つの写真立てが目に入る。
その写真には中学の時の俺と、一人の男性がギターを持って笑っている姿が映っていた。
――先生。俺のやってる事は、正しいんでしょうか……。
その写真に問いかけても、答えは返ってこない。
――そう言えば、そろそろだな……
俺は電気を消し、地下室を後にした。
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翌々日。
今日は白金がセッションをする日だ。
俺とリサ、友希那は先にCiRCLEに入り、氷川、あこ、白金を待っていた。
「それにしても、本当に白金さんがやる気になってくれるなんてぇ~。奏、何言ったの?」
リサは俺に聞いているが、どこか棘を感じる。何だろう、白金が来るって分かった昨日からずっとこんな態度だ。教室にいても、どこか素っ気ないし、日菜は「なんかるん♪って来ない……」とか言ってたし。
「別に俺は何も言ってねぇよ。てか、どうしてそんな素っ気ないんだよ。俺お前に何かしたか?」
「別に、してないけど……」
俺が言うと、尻すぼみで返してくる。何だろう、可愛いと思ってしまう。
「こんにちはー!」
「お待たせしました」
するとCiRCLEにあこ、氷川、それから白金が来た。白金は相変わらずおどおどしている。
「は、はじめ……まして……。白金、燐子……です」
「私は湊友希那。奏から聞いていると思うけれど、あなたの実力を見たいわ。早速だけど、セッションして大丈夫かしら」
友希那は白金の前に立ち、面と向かって話す。
最初はたじろぐ白金だが、覚悟を決めたようで、強く頷く。
友希那は月島さんに鍵を受け取ると、スタジオに入る。それに釣られて全員入り、それぞれ準備を始める。
――……一言声かけてやるか。
「白金」
「は、はい……」
緊張しているのだろう。手が震えている。
「……大丈夫だ。コンクールの時の様に、お前の力を見せてやれ。いつも通りで良い」
俺の言葉が響いたかどうか知らないが、白金の顔つきが変わった。
そしてキーボードの前に立つ。
「準備は良いわね。曲は――で行くわよ」
あこのフォーカウントから始まり、全員の音が一気に鳴る。
その時、俺の身体全身に電流が走ったような感覚に襲われた。
――な、なんだよ、コレ……
聞いた事がない。ここまで重なり合う波長。滑らかな旋律。キーボードという新たな歯車が入ったことにより、より力強く動き始めた友希那というエンジン。
――これは、化けるな……
俺はそう思いつつ、静かに曲を聞いた。
―――――――
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――な、なんなの……こんな偶然が二回も……
歌い終わると、私、湊友希那は驚愕していた。
始めは私と紗夜しかいなかったバンドだが、そこにリサとあこが加わり、そして今、白金燐子という新たな歯車が加わった。
あことリサが入った時も、身体に電流が流れるような感覚に覆われたが、今回の電流は前回とは比べものにならない……
『彼女なら、お前達の音に、更なる力を与えてくれるだろう』
私はファミレスでの奏の一言を思いだした。
――まさかここまで力強くなるとは……そう言えばあの時も……
『――ベースなら、丁度良いのがそこにいるじゃねぇか』
――あの時も、奏の一言で今の音が完成した……
私は奏を見る。彼は拍手をして私達に賞賛の言葉をかける。
――奏……あなたは一体何者なの……この十年、何があったの……
私は、そんな思いを奏に抱き始めた。
いつも「六人目の青薔薇」を読んで頂き、誠にありがとうございます。
今日まで毎日投稿をしておりましたが、私情により、投稿のペースが遅くなります。
いつも楽しんで読んで頂いている方には大変ご迷惑をお掛けしますととともに、これからも今作品を、宜しくお願いししたい所存でございます。
また何かありましたらご連絡いたします。
内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?
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絡ませる
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数名だけ絡ませる
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Roseliaだけで良い