六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十五話 幼馴染の想い

 奏が帰ったあと、静寂が訪れるスタジオ。

 アタシはさっき奏が言っていた事を思いだす。

 

『……悪い。俺はもうバンドに関わる気はない。ごめんな……』

 

 ――奏……一体何があったの? アタシ達と別れた後、何が奏を変えちゃったの……?

 

 昔は楽しそうにギターを弾いていた奏。でも、奏のおばさんに聞く話によると、今はそんな楽しそうに弾いていないと言う。

 この十年、何が奏を変えたのか知りたい。それは恐らく、友希那も一緒の筈。

 アタシは友希那を見ると、奏が出て行った出口をずっと見ていた。

 

「……湊さん、取り敢えず今日は終わりにしましょう」

「……そうね」

 

 紗夜がそう言うと、友希那達は片づけを始める。アタシもそれに続いて自前のギターをギターケースにしまう。

 

「あ、あの! 結局バンド名ってどうするんですか?」

 

 するとあこが話を変えてくれた。

 

「そうね。みんな、良いのある?」

「う~ん、いきなり言われても難しいかなぁ~」

「そうですね。考えてもいませんでした」

 

 全員が唸る。

 

「では、一人一つ考えてきて。そして明日聞かせて頂戴」

 

 そう言ってアタシ達は解散となり、アタシは友希那と帰る。

 

「……ねぇ、友希那」

「どうしたのリサ?」

 

 アタシは前々から思ったことを聞いてみる。

 

「どうして、そこまで奏に拘るの?」

 

 奏が帰ってきてから、友希那は所構わず奏をバンドに誘う。学校でも、登下校時も。

 確かに、奏がいればもっと良くなると思うし、それこそ技術指導だったら、もっと上手くなるかもしれない。でも、どうしてそこまでして奏を誘い続けているのか分からなかった。

 

「奏自身、バンドには関わりたくないって言ってたし、これ以上――」

「リサ」

 

 アタシの言葉を、友希那は遮る。

 

「このバンドを組むとなった時、おかしいと思わなかったの? 奏はあなたのベースの音を聞いた事ないのにも関わらず、あなたを推薦した。今回の燐子の件もそう。小学生の頃の音は聞いた事あっても、今の音は嘗ての音と同じだとは限らない。でも奏は燐子を推薦した。そしてこうなる事を確信してた」

 

 言われてみれば、奏はアタシがベースをやったことがあるって知らなかったのに、アタシの手を握っただけでそれを見抜いた。

 燐子の件も、奏は「更なる力を与えてくれる」といって、その結果、本当になった。

 

「私の勘だけれど、恐らく奏はこの十年で、何かあった筈なのよ。それはリサも感じているでしょ?」

「う、うん……」

「私はまだ、奏がバンドを完全に嫌っているとは思えない。じゃなかったら、ここまでメンバー集めに手を貸してくれる筈ないわ。それに、奏のその()()()()も知りたい。だから私は奏を誘い続けてるの。そしていつかは、あの頃の奏に戻って欲しい。私達の好きな奏に」

 

 アタシ達は奏が好きだ。幼馴染としてもそうだが、異性としても。だから、先程の奏を見ていると、すごく胸が締め付けられるほど痛くなる。

 大好きな幼馴染で、恋敵の友希那がこう思っているんだ。なら、アタシの答えも一つしかない。

 

「分かった♪あたしも手伝うよ、友希那♪」

「あらリサ、無理しなくて良いのよ? そしてそのまま奏を諦めても良いわよ?」

「おっ! 友希那が珍しく煽るね~。アタシだって負けないからねっ?」

 

 ――奏。アタシ達が絶対、奏を助けるから。だから、待ってて。

 

 アタシ達は夕日に染まる帰路を歩いて行くのだった。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い

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