六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

20 / 62
第十八話 全てを知るもの

 スタジオを出ると、私達は奏の家に向かって走り出した。

 

「友希那。どうして奏の所に行くの?」

「リサ。今日の奏の会話覚えてる?」

「確か、バンドの方を気にした方が良いって……まさか!」

 

 リサも感づいたのか、驚いた表情をする。

 

「えぇ。そのまさかよ。恐らく奏はこうなる事を予測していた。バンドのメンバーは、紗夜の事だったんだわ」

 

 そう言って話していると、奏の家の前についた。

 燐子は運動が苦手なのか、もの凄く息を切らしている。

 

「行くわよ」

 

 私はインターホンを押す。すると出てきたのは奏のお母さんだった。

 

「いらっしゃい、友希那ちゃん、リサちゃん、それから後ろの二人も」

「こ、こんにちは……」

 

 燐子とあこは挨拶をする。

 

「おばさん。奏は?」

「奏ならいつもの場所よ」

「ありがとう。失礼します」

 

 そう言って私達四人は中に入って行く。目の前には二階に上がる階段があるが、そこを通りすぎる。

 

「あれ、友希那さん。いつもの場所って、奏さんの部屋じゃないんですか?」

「いいえ。奏は別の場所にいるわ」

 

 あの部屋に繋がるハッチを見つけると、私はそこを開ける。

 

「二人とも、驚かないでね~」

「う、うん……」

 

 開いたハッチに、私達は下りていく。扉を開けるとそこには背中を向けてギターを弾いている彼の姿があった。

 

「す、すごい……」

「普通の一軒家に、こんな地下室があったなんて……」

 

 初めて見た二人は驚愕で固まってしまった。

 そんな二人を置いて、私は彼の後ろに立つ。

 

「来るとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとは思ってなかったよ」

 

 そう言うと立ち上がり、ギターをスタンドにおいて、こちらを振り向く。

 

「説明してもらうわよ、奏」

 

 ―――――

 ―――

 ―

 

 いつかは来ると思っていた。それが今日だとは思っていなかったが……

 

「説明してもらうわよ、奏」

 

 友希那は真剣な目でこちらを見る。まぁ、ヒントを与えたのはこちら側だ。話す義理はあるな。

 

「取り敢えず、上に行こう。あこ、白金、後でゆっくり見させてやるから帰って来い」

 

 固まっていた二人を呼び戻し、俺達五人は上に上がる。

 リビングに入ると、お袋は既に五人分の飲み物を用意しており、テーブルの上に置かれていた。

 そして俺は一人用ソファーに、四人はその左右に向かい合うように置いてある二人用ソファーに座る。

 

「奏。あの言葉は、紗夜の事を言っていたのね?」

「あ、あの……話が見えないんですけど、何かあったんですか?」

 

 何も知らないあこが申し訳なさそうに聞いてくる。

 

「あ~あこ達は何も知らなかったね。実は――」

 

 そう言ってリサは今日の出来事を話す。その話を聞いた時、あこを白金は目を見開いてこちらを見ていた。

 

「さぁ、話して頂戴」

「その前に何があった。それが分からなきゃ話そうにも話せん」

 

 すると珍しく、あこが話し始めた。今回の要因はあこだったらしい。

 

「実はあこ、お姉ちゃんに憧れているって言って、お姉ちゃんの様になりたいって言ったんです。そしたら……」

「氷川が爆発した、そう言う事か」

 

 俺が言うと、あこはコクリと頷く。

 

 ――やっぱり、予想通りだ。

 

 俺は深く深呼吸をすると、ゆっくりと口を開いた。

 

「そうだな。まずは、ある双子の姉妹の話をしよう」

 

 これから語られるのは、姉に憧れ、姉の真似をするも、何でもそつなくこなしてしまい、姉はそんな妹に劣等感を抱き拒絶し、終いには距離まで開いてしまった姉妹のお話。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。