六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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謝罪とお詫び、これからの活動について

先日、読者の方からコメントを頂きました。
内容は、他の作者様の作品と主人公の名前が被っているとの事でした。その事につきまして、ご説明いたします。

当初、この作品を作っていく上で、当主人公の名前はパッと浮かんで来て付けた名前でした。ですが、その名前は他の作者様の作品で既に使われており、読みは違うものの、漢字が全く一緒だという事を教えていただきました。
この作品の主人公と、名前が被ってしまった作品の主人公は全くの別人であり、決して真似したとか、そういうことは一切ありません。
そのせいで、沢山の読者様に混乱とご迷惑をお掛けしたことを、心からお詫び申し上げますと共に、謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした。

この件につきましては、既に話が付いており、お許しを得ました。
いざこざがあったとか、決してそのような事は起きていないので、ご安心ください。

そしてこれからの活動ですが、活動報告にて載せておくので、そちらもご確認ください。


これからも当作品と、黒い野良猫をよろしくお願いいたします。


第二十一話 氷川紗夜の音楽

「私にはもう、ギター(これ)しかないんです……。これを奪われたら、私は……」

「何も無くなると? 笑わせんな」

 

 すると氷川は涙目でこちらを睨む。

 

「あなたに何が分かるんですか! あなたは何でも楽器を弾けるんですよね!? 要はあなたも日菜と同じ天才じゃないですか!」

「お前、中学の時からギター弾いてんだろ? センスはあるのに、まだまだド素人だな」

「天才のあなたからしたら凡人の私なんてまだまだド素人ですよ!!」

「そんな事を言っているから、ド素人なんだよ」

 

 俺は一旦落ち着こうと、グラスに入っているジュースを一口飲む。

 

「ふぅ。良いか氷川。確かに日菜は天才なのかもしれない。実際、アイツの音を聞いた。始めて数日しか経ってないのに、あそこまで弾けるのは大したもんだ。でもな――」

 

 俺は氷川の目を見て、言い放った。

 

「音楽において、氷川日菜が氷川紗夜を超えるなんて、絶対ありえない」

 

 すると氷川は信じられないと言っているかのように目を見開いた。

 

「どうしてそんな事が言えるんですか」

「勉強とかは確かに超えられるかもしれないが、音楽で特定の人物を超える事なんて出来ないんだよ」

「でも実際、日菜は私を――」

「良いから話を聞け。俺達人間には、一人一人個性を持っている。その個性は絶対に被る事はない。被ってしまっては、個性とは言えないからな」

 

 氷川は黙って俺の話を聞く。奥にいるリサ達もそうだ。

 

「それは音楽においても同じ。音楽にも、人それぞれの個性がある。同じ楽器で、同じ曲を弾いたとしても、その人と被る事は絶対にない。更に言ってしまえば、日菜がお前を真似している時点で、超すことは出来ないんだよ」

「真似をしている時点で……ですか?」

「あぁ。良いか。この際はっきり言わせてもらう。真似事は所詮真似事だ。真似をしている時点で、オリジナルを超えるなんて絶対にありえない。それはあこにも言える」

 

 すると氷川の奥で向かい合っているあこと目があった。

 

「あこも確か、姉に憧れてドラムをやり始めたといっていたな。憧れることは別に悪い事じゃない。素晴らしい事だ。でも、姉の様になりたい。それはつまり姉を真似ているのと同じだ。その時点で、あこは姉を超える事なんて出来ない。本人はどう思っているか分からんが」

 

 奥であこは落ち込んでいる様に見えた。ここで名前を出して悪かったと思っているが、氷川を説得するうえで仕様がない事だ。

 

「よく音楽の世界でも、『この人は既に自分を超えました』とか言っているが、あれに深い意味はない。ただ自分がその人と比べて衰えてしまったと思い込んでいるだけだ。後は自信を付けさせる言葉でもあるけどな」

「わ、私は……」

「氷川。俺のさっきの質問の意味が分かったか? 何に怯えているのかって。今まで日菜はお前を越してきたのかもしれない。でも音楽では超すことは出来ない。なのにどうして怯えているんだ? そう簡単に日菜に越されると思い込むほど、自分のしてきた音楽はそんなもんだったのか?」

「そんな筈はありません! 私は、音楽に全てを……」

 

 最初こそは勢いある形で言ってきたが、後半は尻すぼみになっていった。

 そんな氷川に、俺は微笑んだ。

 

「なら、それでいいじゃねぇか」

「え……?」

「氷川紗夜は、氷川紗夜の音楽を貫き通せばいい。お前の音楽に、日菜は関係ないだろ? なら、追い越されるとか、そんな事思ってんじゃねぇよ。思っている暇があるなら、ひたすら自分を磨いて、Roseliaを頂点に導け。Roseliaのギターは、お前しかいないんだから」

 

 瞬間、氷川の頬に一つの涙が零れ落ちる。

 俺は立ち上がり、氷川の頭に手を乗せる。

 

「明日のライブ、楽しみにしてるぜ! ()()

 

 俺は手を放し、その場を後にする。帰り際、友希那達にこう言い残した。

 

「これで俺の仕事は終わった。ここからはどうするかはお前達次第だ。明日、お前達のライブを見に行く。最高の音を聞かせてくれよ、Roselia」

 

 そう言って俺はファミレスを後にした。

 翌日。俺はRoseliaのライブを見に行った。

 今日学校で日菜に「ありがとう」と言われたが、俺に心当たりはない。あるとすればそれは、紗夜が一歩踏み出しただけだ。

 次にステージに立つRoseliaを見る。するとそこには、無色透明だった前とはうって変わって、エメラルドグリーンに輝く氷川紗夜の姿があった。

 

 ――何だよ……こんな音、出せるんじゃねぇか……

 

 その音に迷いは無く、氷川紗夜を表している音が、ライブハウスを駆け巡った。


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