六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

24 / 62
アンケートのご協力、ありがとうございました。

結果の通り、主人公を他のバンドと絡ませることにします。




第二十二話 母からの依頼

 氷川紗夜が復活したライブから数日。あれから友希那は約束通り俺を誘わなくなってきた。誘わなくなってきたんだが……

 

「奏。明日も地下(スタジオ)借りていいかしら?」

 

 そう。CiRCLEが使えない日は俺ん家の地下を使うようになった。別に断る理由もないので貸している。

 

「別に良いけど、明日は俺いないから。一応お袋に言っとく」

「あら、何処か出かけるの?」

「ちょっと野暮用でな。機材の設置とか好きに使って良いから。壊さなければ」

「しないわよそんな事」

 

 そう言ってわざわざ俺ん家まで来た友希那を見送り、玄関を閉める。まぁ家が目の前だから良いんだけどな。

 

「お袋、明日Roseliaが地下使うらしいから案内よろしく」

「分かったわ。あなたも明日出かけるんでしょ? 早く準備しなさい」

「とっくに終わってる。後は向こうで必要な物を買うだけだよ」

 

 そう言い残し、俺は自室に戻った。

 翌日。俺は制服に身を包み、玄関を出る。

 

「じゃあ行ってくる」

「気を付けてね」

 

 お袋に見送られ、俺は近くの駅まで歩いていく。

 今日は日曜日。それに早朝もあってか駅にはまだ人が少ない。

 電車が来ると俺はそれに乗り込み、目的地を目指すのだった。

 

 

 ―――――――――

 ―――――

 ――

 

 

 朝。私達Roseliaは奏のスタジオを借りるべく、奏の家の前まで来ていた。

 

「揃ったわね。じゃあ行くわよ」

 

 全員が揃ったことを確認すると、私は奏の家のインターホンを鳴らす。

 暫くすると奏のお母さんが出てきて、私達を向かい入れてくれた。

 

「おばさん、奏は?」

 

 リサが聞く。

 

「あの子ならもう出掛けたわ。一時間くらい前にね」

 

 どうやら奏はもう家を出たらしい。一体どこに行ったのかしら。

 

「それより、奏から話は聞いているから。スタジオ、自由に使って」

「ありがとうございます」

 

 紗夜がお礼を言うと、私は地下に繋がるハッチを開ける。

 中に入り電気を付けると、既に機材がセットされていた。恐らく、昨日のうちに奏が準備してくれたのだろう。

 あの日の約束通り、紗夜の調子を戻してもらってから奏をバンドに誘っていない。でも、こうして奏は間接的に私達を助けてくれる。

 だから疑問に思う。どうしてここまで手伝ってくれるのに、バンドに関わりたくないというのか。

 

「湊さん? 私達は準備できましたけど……」

「あら、待たせてしまってごめんなさい。私もすぐに準備するわ」

 

 紗夜に声を掛けられ、ふと我に気づく。いけない。今はバンドの事に集中しないと。

 

「凄い! 奏さん、スネアの位置とかぴったりに設置してくれてる!」

「奏は一度覚えたらそれを覚えられるからね~。本当に羨ましいよ」

「内田さんは、記憶力がいいんですね……」

 

 気づけばみんな奏の話をしていた。

 

「はい、おしゃべりは終わり。練習を始めるわよ」

「オッケ~♪曲は?」

「最初はBLACK SHOUTで行くわよ」

 

 そういうと燐子のキーボードが旋律を奏でた。

 

「はぁはぁ……一旦休憩にしましょう」

 

 あれから数曲歌い、一旦休憩することにした。

 

「友希那ちゃん、リサちゃん、みんな。上にいらっしゃい。お飲み物用意したわよ」

 

 タイミングを見計らったように奏のお母さんが顔を出してきた。

 私達は厚意を受けるべく、上に上がろうとする。するとその時、一枚の写真とギターが目に入った。

 

「ん? どうしたの友希那」

「あ、リサ。これ……」

 

 私はリサに先程の写真を見せる。そこには恐らく中学の時の奏と、一人の男性がギターを持って写っていた。

 近くにあったギターは写真に写っている男性のギターだった。

 

「奏、笑ってるね」

「えぇ。今も笑っているけど、この笑顔は心の奥から笑っているような気がするわ」

 

 やはり、何かあったに違いない。

 私は写真立てを手に取り、上に上がった。

 リビングに入ると既に紗夜達が座っており、ジュースやケーキをいただいていた。

 

「友希那さん、どうしたんですか? そんな慌てたような顔をして」

 

 ジュースを飲みながら足をパタパタさせているあこに言われる。

 

「……おばさん」

「どうしたの? 友希那ちゃん」

 

 私に背を向けているおばさんに写真を見せる。

 こちらに振り向き、私の持っている写真が目に入ると少し驚いたような表情をするが、すぐに微笑む。

 

「その写真、見ちゃったのね」

 

 でもその表情はどこか悲しそうな感じだった。

 

「おばさん。奏に一体何があったの?」

「どうして?」

「奏は言ったわ。もうバンドと関わる気はないと。でも、今もこうして部屋を貸してくれる。その時点で、私達Roseliaに関わっているわ。奏も心のどこかでは、バンドと関わりたいって思ってるんじゃないかしら」

 

 私が言うと、おばさんは目を閉じて小さく「この子たちなら……」と呟いた。

 

「友希那ちゃん、リサちゃん、座って」

 

 おばさんに言われ、私とリサは座る。そしておばさんも座ると、話を始めた。

 

「友希那ちゃん、リサちゃん、紗夜ちゃん、あこちゃん、燐子ちゃん。お願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――奏を助けてあげて。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。