Pastel*Palettesが無事復活し、数日が経った。
「見てみて! この雑誌にRoseliaが乗ってるよ!」
二人の女子が、リサに話しかけた。リサはそれを手に取ると、俺の所に持ってくる。
「みて奏! アタシ達だって!」
「この間のライブだろ? それなら俺も見たわ。題名は『孤高の歌姫・友希那がついにバンドを結成』だろ?」
「すっごい、一字一句あってる……」
他のクラスメイトも俺の所にやってきて、話を始める。
「そんな事よりこれ見てよ。アタシ写真写り悪くない?」
そう言われて俺は記事の写真を見る。そこには友希那を真ん中に右からあこ、紗夜、友希那、リサ、燐子が映っていた。私服で。
「いやコレ、写真写りが悪いってより、お前が──」
「待った内田君! この先は言わない方が良いよ!」
「えっ? あ、あぁ……」
クラスメイトに止められ、俺はその先を言うのを止めた。
「気になるなぁ……あ、奏。あこから連絡来た?」
「あぁ。なんか打上げやるんだろ? 俺は行かないけど行って来いよ」
「え? 何で?」
「何でって、今日は友希那の個人練習の日だ。それにそのライブは俺いなかったしな」
「確かにそうだけど……」
「楽しんで来いよ。俺の予想だと、燐子とあこしか来なさそうだが」
「紗夜も来なさそうだもんね……」
リサと話していると、チャイムが鳴り、次の授業が始まる。
放課後になり、俺は友希那と待ち合わせしてCiRCLEに向かう。
「それで友希那? 今後の目標は考えているのか?」
「今後の目標?」
「俺含め、Roseliaのメンバーは揃った。ライブも何回か出ている。そろそろ明確な目標を決めても良いんじゃないのか?」
「そんなの決まってるわ。FUTURE WORLD FES.に出場するために、コンテストに出て、上位三位以内に入る事。それが目標よ」
「はいよ。じゃあそれに向けてメニューを組めばいいんだな?」
「えぇ。宜しくね」
「任せろ」
こうして今後の目標が決まり、俺と友希那は個人練習に入った。
練習が終わり、次の受付をしようとした時だった。
「あの……!」
一人の女性が話しかけてきた。
「友希那さん……少しお時間よろしいでしょうか?」
「失礼ですが、どなたでしょうか?」
女性に聞き返す友希那。すると女性はカバンから名刺を取り出してきた。その名刺を見ると、有名な音楽事務所の名前が入っていた。
「率直に言います。友希那さん。うちの事務所に所属しませんか?」
その女性は友希那を勧誘してきた。当然、友希那の答えは──
「事務所に興味はありません。私は自分の音楽で認められたいだけなので」
そう言って俺達は帰ろうとする。だが、その人も諦めていなかった。
「あなたは本物だ! 私……いえ、私達ならあなたの夢を叶えられる!」
「夢……?」
「一緒にFUTURE WORLD FES.に出ましょう!」
この時、友希那の足が止まった。
「友希那?」
すると友希那は振り向き、言った。
「ごめんなさい。私はRoseliaでFUTURE WORLD FES.に出場するって決めていますので」
そう言って今度こそ帰ろうとする。
「では正直に言わせてもらいます。今のRoseliaでは次のFUTURE WORLD FES.に出場するのは厳しいでしょう」
「何ですって……?」
「でも友希那さん。あなただけなら話は別です! コンテストに出場する必要もない、本番のフェスに参加することが出来るんです! あなたの為にメンバーも用意しました。後はあなたの気持ちだけです」
「ちょっと待ちなさい。あなた、Roseliaが出場できないですって……?」
「今の実力では、厳しいでしょう」
つまり、俺は喧嘩を売られたという事か?
「確かに、私達だけなら厳しいでしょう」
「なら──」
「でも、私達には彼がいるわ」
そう言って俺を見る友希那。すると女性は俺に話しかける。
「失礼ですが、あなたは?」
「初めまして。Roseliaのマネージャー兼技術指導をしております、内田奏と言います」
俺は軽くお辞儀する。
「彼がマネージャーで技術指導もしているんですか? ただの高校生にしか見えませんが……」
「彼はただの高校生ではないわ。彼は全ての楽器を弾けるわ。それだけじゃない。絶対音感の持ち主でもあるわ」
何故か友希那が自慢げに答える。
「それに先日ライブしたPastel*Palettesを一ヶ月指導したわ。彼女達は一ヶ月で楽器が弾けるようになる程、彼の指導は的確なの」
「成程……。それは素晴らしいですね」
「分かってくれたかしら。だから諦めて頂戴」
友希那がそう言うと、女性は黙り込む。
「……分かりました。今日は諦めます。ですが友希那さん。私達は必ずあなたを手に入れます。では」
そう言うと女性は俺達の下を去っていった。
「私達も帰りましょう。奏」
暫くすると、俺達もCiRCLEを出た。
──あの目は一体、何だったんだ……
女性とのすれ違いざま、俺を睨みつけるような、そして何か企みのあるような目を俺に向けた事を、友希那は知らない。
──嫌な予感しかしねぇなぁ……
「奏? 早く行きましょう」
「あ、あぁ」
止めていた足を再び動かす。あの女性に不安を抱きながら……