六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十二話 突然の誘い

 Pastel*Palettesが無事復活し、数日が経った。

 

「見てみて! この雑誌にRoseliaが乗ってるよ!」

 

 二人の女子が、リサに話しかけた。リサはそれを手に取ると、俺の所に持ってくる。

 

「みて奏! アタシ達だって!」

「この間のライブだろ? それなら俺も見たわ。題名は『孤高の歌姫・友希那がついにバンドを結成』だろ?」

「すっごい、一字一句あってる……」

 

 他のクラスメイトも俺の所にやってきて、話を始める。

 

「そんな事よりこれ見てよ。アタシ写真写り悪くない?」

 

 そう言われて俺は記事の写真を見る。そこには友希那を真ん中に右からあこ、紗夜、友希那、リサ、燐子が映っていた。私服で。

 

「いやコレ、写真写りが悪いってより、お前が──」

「待った内田君! この先は言わない方が良いよ!」

「えっ? あ、あぁ……」

 

 クラスメイトに止められ、俺はその先を言うのを止めた。

 

「気になるなぁ……あ、奏。あこから連絡来た?」

「あぁ。なんか打上げやるんだろ? 俺は行かないけど行って来いよ」

「え? 何で?」

「何でって、今日は友希那の個人練習の日だ。それにそのライブは俺いなかったしな」

「確かにそうだけど……」

「楽しんで来いよ。俺の予想だと、燐子とあこしか来なさそうだが」

「紗夜も来なさそうだもんね……」

 

 リサと話していると、チャイムが鳴り、次の授業が始まる。

 放課後になり、俺は友希那と待ち合わせしてCiRCLEに向かう。

 

「それで友希那? 今後の目標は考えているのか?」

「今後の目標?」

「俺含め、Roseliaのメンバーは揃った。ライブも何回か出ている。そろそろ明確な目標を決めても良いんじゃないのか?」

「そんなの決まってるわ。FUTURE WORLD FES.に出場するために、コンテストに出て、上位三位以内に入る事。それが目標よ」

「はいよ。じゃあそれに向けてメニューを組めばいいんだな?」

「えぇ。宜しくね」

「任せろ」

 

 こうして今後の目標が決まり、俺と友希那は個人練習に入った。

 練習が終わり、次の受付をしようとした時だった。

 

「あの……!」

 

 一人の女性が話しかけてきた。

 

「友希那さん……少しお時間よろしいでしょうか?」

「失礼ですが、どなたでしょうか?」

 

 女性に聞き返す友希那。すると女性はカバンから名刺を取り出してきた。その名刺を見ると、有名な音楽事務所の名前が入っていた。

 

「率直に言います。友希那さん。うちの事務所に所属しませんか?」

 

 その女性は友希那を勧誘してきた。当然、友希那の答えは──

 

「事務所に興味はありません。私は自分の音楽で認められたいだけなので」

 

 そう言って俺達は帰ろうとする。だが、その人も諦めていなかった。

 

「あなたは本物だ! 私……いえ、私達ならあなたの夢を叶えられる!」

「夢……?」

「一緒にFUTURE WORLD FES.に出ましょう!」

 

 この時、友希那の足が止まった。

 

「友希那?」

 

 すると友希那は振り向き、言った。

 

「ごめんなさい。私はRoseliaでFUTURE WORLD FES.に出場するって決めていますので」

 

 そう言って今度こそ帰ろうとする。

 

「では正直に言わせてもらいます。今のRoseliaでは次のFUTURE WORLD FES.に出場するのは厳しいでしょう」

「何ですって……?」

「でも友希那さん。あなただけなら話は別です! コンテストに出場する必要もない、本番のフェスに参加することが出来るんです! あなたの為にメンバーも用意しました。後はあなたの気持ちだけです」

「ちょっと待ちなさい。あなた、Roseliaが出場できないですって……?」

「今の実力では、厳しいでしょう」

 

 つまり、俺は喧嘩を売られたという事か? 

 

「確かに、私達だけなら厳しいでしょう」

「なら──」

「でも、私達には彼がいるわ」

 

 そう言って俺を見る友希那。すると女性は俺に話しかける。

 

「失礼ですが、あなたは?」

「初めまして。Roseliaのマネージャー兼技術指導をしております、内田奏と言います」

 

 俺は軽くお辞儀する。

 

「彼がマネージャーで技術指導もしているんですか? ただの高校生にしか見えませんが……」

「彼はただの高校生ではないわ。彼は全ての楽器を弾けるわ。それだけじゃない。絶対音感の持ち主でもあるわ」

 

 何故か友希那が自慢げに答える。

 

「それに先日ライブしたPastel*Palettesを一ヶ月指導したわ。彼女達は一ヶ月で楽器が弾けるようになる程、彼の指導は的確なの」

「成程……。それは素晴らしいですね」

「分かってくれたかしら。だから諦めて頂戴」

 

 友希那がそう言うと、女性は黙り込む。

 

「……分かりました。今日は諦めます。ですが友希那さん。私達は必ずあなたを手に入れます。では」

 

 そう言うと女性は俺達の下を去っていった。

 

「私達も帰りましょう。奏」

 

 暫くすると、俺達もCiRCLEを出た。

 

 ──あの目は一体、何だったんだ……

 

 女性とのすれ違いざま、俺を睨みつけるような、そして何か企みのあるような目を俺に向けた事を、友希那は知らない。

 

 ──嫌な予感しかしねぇなぁ……

 

「奏? 早く行きましょう」

「あ、あぁ」

 

 止めていた足を再び動かす。あの女性に不安を抱きながら……


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