六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十三話 Roseliaのマネージャーとして

「ふぁ~……」

 

 大きな欠伸をしながら街を歩く俺。今日はオフの日だ。

 友希那とリサに遊びに行こうと誘われたが、今日はゆっくりしたいと言って断って来た。リサならともかく、あの友希那が誘ってきたのはビックリした。まぁ、これも良い方向に変わっていっているのだろう。

 実は最近、妙な噂を聞く。何でも、羽丘の有名人は誰かと聞き込みしている人がいるらしい。

 すると目の前に、見知った人が立っていた。

 

「こんにちは、内田奏さん。数日ぶりですね」

 

 そう。あの時CiRCLEで友希那をスカウトした女性だった。

 

「どうも。何と言うか、予想は出来ました」

「予想、ですか?」

 

 俺の言葉に首を傾げる女性。

 

「あの時の目、あれは俺を邪魔だと思った目か、もしくは俺を事務所に入れさせ、友希那を説得させるか。そのどちらかでしょう」

「流石ですね。やはり、学年一位の頭脳は伊達ではない」

「……調べたのか」

「聞き込みをしただけですよ。この羽丘女子学園で有名な人は誰か、と。勿論Roseliaの友希那さんや今井さん、Pastel*Palettesの氷川さんに大和さんがいましたが、その中にあなたの名前もあったので」

「最近聞く噂はそれか……」

 

 まさか俺の名前まで入っているとは思わなかった。

 

「それで? 俺に会いに来たって事は……」

「えぇ。詳しい話は、お店の中でしましょう。大丈夫です。私が全部持ちますので」

「いや、そういう事を聞いてるんじゃ……」

「さぁ、行きましょう」

 

 そう言って目の前を歩く女性。本当は逃げても良かったんだが、何だか面倒くさくなりそうなので、黙って付いて行く事にした。

 その光景を見ていた人が、二人。

 

「ねぇ、りんりん。あれ、奏さんだよね……?」

「う、うん……奏君だと、思う……」

「あの女の人、誰なんだろう……りんりん! 付いて行こう!」

「えっ!? でも、良いのかな……」

「気になるじゃん! 早く早く!」

「ちょっと待って、あこちゃん……!」

 

 ☆☆★☆☆

 

 俺達はお高そうなホテルに入り、そこのレストランにいる。

 

「内田さん。単刀直入に言います。私達の事務所に入ってください」

 

 入って早々、女性がそう言う。

 

「何で俺なんですか?」

「先日のお話、本当かどうかPastel*Palettesの事務所にお伺いしました。本当に一ヶ月でPastel*Palettesが楽器を弾けるまで指導したのか、と」

「まぁ、普通の人なら疑うよな」

「はい。そして事務所の方も仰っていました。彼の能力は信じられない。放っておけない、と」

「そう言ってくれるのはありがたいな」

「それは我が社でも同じです。あなたは金の卵だ。全ての楽器を弾けるなら、我が事務所に所属してデビューしませんか?」

「デビュー? 俺を入れさせ、友希那を納得させるんではなく?」

「それもありました。ですが、あなたをマネージャーや技術指導に置いておくのは勿体なさすぎます。なので、内田奏さん、是非とも我が事務所に入ってください。共にデビューしましょう!」

 

 成程。全ての楽器が弾けるなら、それを使って売れさせようってか。だが──

 

「……デビューしたところで、俺に何かメリットはありますか?」

 

 この話に俺のメリットは無い。ただ名前が広がって、金がもらえる。それだけだ。俺はそんなのに興味は無い。

 

「申し訳ないんですが、俺には金も名誉もいらない。ただ……」

 

 俺は五人の顔を思い浮かべる。

 

「俺はRoseliaが頂点へ狂い咲けば、それでいい。なんせ俺は、Roseliaのマネージャーなんだから」

「何故そこまでRoseliaに拘るんですか?」

「俺はアイツ等に救ってもらった。だから俺はその恩を返す義務がある。その恩は、俺があいつ等を頂点に連れていくことだ」

 

 そう言って俺は立ち上がり、お辞儀をしてその場を離れる。

 

「……行くぞ。燐子、あこ」

 

 後ろから付いて来た二人を回収して。

 

「うぇっ!? 気付いてたんですか!?」

「当たり前だ。紫色の髪がヒョコヒョコ顔出せば、誰でも分かる」

「う~ん……完璧な尾行だったと思うんだけどなぁ」

 

 あこは顎に手をやり、唸っていた。

 

「奏君。どうして、断ったの……? 事務所デビューの話……」

「聞いてたのか」

「ごめんね……」

「言った通りだ。俺はRoseliaでFWF.に出場したい。お前達は俺を暗闇から、過去から救ってくれた。だから、その恩返しをしたいんだ」

 

 すると、先程まで唸っていたあこが手を繋いできた。

 

「奏さんがそう言ってくれるなんて、あこ嬉しいです!」

「うん……いつも迷惑かけていたんじゃないかと、思ってたから……」

「全然迷惑なんかじゃねえよ。俺は自分の意志でお前達のマネージャーやってんだ。そんな事気にする暇あったら、今度行われるコンテストの練習でもしてろ」

 

 俺はあこと燐子の頭に手を乗せる。

 

「行こうぜ」

「あ、待って下さいよ~!」

「ま、待って……」

 

 俺はこいつ等を頂点へ行かせて見せる。それがRoseliaのマネージャーとしての、俺の役目だ。

 そう胸に刻み込ませ、迫りくるコンテストに向けてメニューを考える俺だった。

 

 ☆☆★☆☆

 

 夜──。

 

「へ~。そんな事があったんだ」

「全く。私が無理だと知ったら今度は奏に手を出してくるなんて……呆れたものだわ」

「まぁそうなんだけどな。それより……」

 

 ここは俺の部屋。なのになぜか──

 

「何でリサと友希那が俺の部屋にいるんだよ!」

 

 帰って来たらこの二人がいたのだ。そして何食わぬ顔で飯を食べ、何故か風呂に一緒に入ってこようとした為、それを阻止して落ち着いたと思ったら、パジャマ姿の二人が部屋で待ってた。

 

「何でって、一緒に寝る為じゃない」

「いや、君達の家目の前じゃん。わざわざここで寝る必要ないじゃん」

「そんな事言って~本当は嬉しいんでしょ?」

「なっ!? 何言って///」

「それに、アタシ達の気持ち、分かってるんでしょ?」

 

 リサが言うと、俺は固まってしまった。

 前々から気付いていた。二人が最近スキンシップが激しい事を。もしかしたらとは思っていたが、自分の勘違いでいてほしかった。

 

「沈黙は肯定と捉えるわよ?」

「……俺の勘違いでいて欲しかったんだがな」

「この写真を飾っておいて、何言ってんの」

 

 リサは俺の机に飾ってある写真──俺を真ん中に左右に友希那とリサの幼少期──を手に取る。

 あの頃は口癖のように言っていた。

 

『ぼく、いつかゆきなとリサにふさわしいおとこになるよ!』

 

 でも、そんな昔の事二人が覚えている訳──

 

「あなたは既に、私達にふさわしい男性よ」

「覚えてたのかよ……」

「当たり前じゃない。とても嬉しかったんだから」

「もう告白同然だもんね~あの言葉」

「はっず……」

 

 俺は多分、顔を赤くしている。

 

「でも、今は何も言わないわ」

「え?」

「今はRoseliaの大事な時期。余計な感情何ていらない。だから全部終わったら、その時は待ってなさい」

「アタシもだぞ~? 奏をメロメロにするんだからっ☆」

「ははっ……お手柔らかに……」

「じゃあもう寝ましょうか」

「そうだね~」

 

 そう言って俺のベッドに入ってくる二人。

 

「って、何ナチュラルに入って来とんねん」

「ダメ……?」

 

 涙目の上目遣いはダメだろ……

 

「……分かったよ」

 

 そう言って俺は二人をベッドに入れた。右に友希那、左にリサだ。

 今日は色々あったからすぐに寝れそうだ……

 

 ☆☆★☆☆

 

 奏が寝て数分後。

 

「寝たかしら……」

「今日は色々あったみたいだから、疲れてもうぐっすりみたいだね~」

 

 奏。あなたは私達にとってかけがえのない存在よ。だから、絶対に離さないから。

 

「おやすみなさい、奏」

「おやすみ、奏」

 

 私とリサは彼の頬にそっと口付けした。

 次は大事なコンテスト。絶対に負けない……。

 そう思いつつ、私は眠りについた。

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