「ライブハウスのオーディション?」
翌日。地下スタジオに集まった五人に、昨日の事を話す俺。
「そこのライブハウスでライブするには、オーディションに合格しなければならない。昨日コンテスト終えたばかりだが、実践は多い方が良い。大丈夫か?」
「えぇ。私は構わないわ。みんなは?」
友希那が代表してみんなに聞く。
「アタシは大丈夫だよ~」
「私もです」
「あこも平気です!」
「わ、わたしも……」
どうやら全員OKの様だ。
「それで奏。そのオーディションは何時なの?」
「明日だ。オーディションでやる曲は一曲だ。だからって気を抜くな。あそこのオーナーは元バンドマンだからな。ちょっとのミスでも気付く」
「なるほど。まるで奏さんみたいですね」
「けどあの人は、ミスなんかよりもっと大切なものを学ばせてくれる。だから無理言ってオーディションを入れたんだ」
「ミスよりも大事な事……ですか……?」
「それは明日になれば分かる。それで、明日は何の曲をやるんだ?」
俺は友希那に問いかける。
「BLACK SHOUTで行くわ」
「了解。じゃあ今日は調整しようか」
そう言って今日は一日ブラシャを練習した。
翌日。
「来たかい」
「わざわざありがとうございます、オーナー」
「今日はよろしくお願いします」
「準備しな」
俺達はライブハウスSPACEに行き、オーディションを受けに行った。
友希那達はステージに上がり、俺とオーナーは観客席に座る。
「いつでも始めな」
オーナーが言うと、それを合図にイントロが流れ始める。
出だしは好調。そのままの流れで演奏は続いていく。オーナーはそれを黙って見ていた。
そして演奏は終わる。全員、俺を含めてオーナーを見る。
「それが、アンタたちの全力かい?」
ゆっくり立ち上がるオーナー。
「あたしには、まだまだ出来ると思うけどね」
でも──と言葉を続ける。
「アンタ達は本番で強くなるタイプだ。それを見せて貰うよ」
「って事は……」
「合格だ。来週のジョイントライブに出てもらうよ」
その言葉であことリサが喜び、燐子はホッと安心したような表情をした。
「因みに、ジョイントライブって誰が出るんですか?」
「Glitter*Greenだよ」
──Glitter*Green……聞いたことないな。何処かの新生バンドか?
「Glitter*Greenはここの常連さ。かなり人気があるよ」
「確か、花咲川の生徒会長である鰐部七菜先輩がいた気がします」
紗夜が顎に手を添えて言う。
「って事は、下手すりゃ俺達よりバンド歴先輩だな。胸を借りるつもりでやらねぇとな」
「そうね。奏の言う通りだわ」
「って事でよろしくね、Roseliaさん」
すると俺達の後ろから声が聞こえた。振り返ると、四人の女子高生がいた。一人はなんか人形を抱えている。
「初めまして。私達がGlitter*Greenです。私は牛込ゆり。宜しくね」
「私は鵜沢リィ。宜しくなのだ」
鵜沢先輩は自分の名前を行った後、人形を口元に持っていき、低い声で言った。
「私は鰐部七菜です。宜しくお願いします」
先程紗夜から聞いた鰐部先輩だ。丁寧にお辞儀までする。
そして最後の一人はゆっくりとこちらに近付いて来た。そして優しい笑顔を向ける。
……なんか嫌な予感がする。すると突然、右腕を上げた。
「集え少女よ大志を抱け! フゥ!!」
俺達は口を開いて固まってしまった。
「聞こえないぞぉ! 大志をいだ──」
「ハウス!!」
すると鵜沢先輩が止めに入った。すると先輩はUターンして帰って行った。
──てか、ハウスって犬を躾ける言葉じゃ……
「あの子は二十騎ひなこ。普段あんな感じだけど、悪い子じゃないから……」
「は、はぁ……」
代わりに鰐部先輩が紹介してくれた。二十騎先輩を見ると、鵜沢先輩に頭を撫でられていた。何だコレ……
──それにしても牛込って、Poppin'Partyにもいたよな……もしかして姉妹か?
「ちなみに妹もバンドを組んでいるの。名前は牛込りみ。もしかしたら関わりそうだから教えておくね。姉妹共々よろしく」
「それにしても~どうしてガールズバンドの聖地に男の子がいるんだい? もしかして~女の子かい?」
頭を撫でられていた二十騎先輩が俺の所に詰め寄って来た。正直、この人は苦手だ。
「お、俺は正真正銘男です。そう言えば、俺達も自己紹介してないな。友希那」
俺が言うと、Roseliaは一列に並ぶ。
「Roseliaのボーカル、湊友希那です」
「ギターの氷川紗夜です」
「ベースの今井リサで~す」
「我は漆黒の闇から生まれしドラマー、宇田川あこ!」
「き、キーボードの、白金……燐子、です……」
「そしてRoseliaのマネージャー、内田奏です。宜しくお願いします」
そう言って全員頭を下げる。
「成程~マネージャー君だったか~因みに、好きな子とかいるの?」
二十騎先輩が言うと、友希那とリサが期待のある目でこちらを見る。
「い、いませんよ! 俺は今、Roseliaを頂点に導くことに専念したいので」
俺がそう言うと、あからさまにがっかりする二人。分かりやすいな……
「まぁ、お互い頑張りましょう。当日宜しくお願いします」
「こちらこそ」
そう言って、俺達はSPACEを後にした。
「何かGlitter*Greenって凄い人ばかりだね……」
「何か、どっと疲れたわ……」
帰り道、リサと友希那と三人で帰っていた。
「それにしても、奏に好きな人がいないのは納得しないな~」
「奏は私達が好きじゃないの?」
「言ったろ。今はRoseliaを頂点に導くことが最優先だ。恋愛は、その次。てか、今は干渉しないんじゃなかったのかよ」
「確かに干渉はしないわ。でも、好きな人にそんな事言われると傷付くわよ」
友希那は淋しそうな表情をする。
「ごめんな。勿論お前達、紗夜、あこ、燐子含めみんな好きだぜ」
「それは友達としてでしょ?」
「まぁな」
俺はフッと笑う。
──俺も好きだよ。お前達の事。友達としてではなく、女として。でも、それを言うのは今じゃない。だから、待っててくれ……
そう心に決め、俺達は帰路を歩く。