遂にこの日がやって来た。今日はGlitter*Greenとジョイントライブを行う日だ。
始まるのは十九時から。それまで俺ん家で軽く練習し、SPACEに向かう。
中に入ると、既にGlitter*Greenと、何故かPoppin'Partyがいた。
「Roseliaです」
「よろしく願いします」
友希那と紗夜が言う。
「Roseliaちゃ~ん!」
すると二十騎先輩が迫って来た。
「ハウス!」
鵜沢先輩が言うと大人しく帰って行った。そして頭を撫でられる。
すると猫耳、戸山香澄が来た。
「こんにちは! ポピパです。宜しくお願いします!」
「「「「よ、宜しくお願いします」」」」
「宜しく」
「宜しく~♪」
友希那とリサは返事を返す。
「始めるよ」
するとオーナーから声が掛かった。リハを始めるらしい。
「あの!」
「ん?」
俺も準備しようとすると、戸山が声を掛けてきた。
「私、戸山香澄って言います! どうして皆さんと一緒に行かないんですか?」
戸山は恐らく、他の五人がステージに向かったのに一緒に行かなかった俺が気になったのだろう。
「俺は表舞台には立たないんだ。影であいつらを支える。つまりマネージャーだ」
「マネージャー……」
「それにしても、文化祭見たぜ。Poppin'Party」
「わ、私達を知っているんですか?!」
「ギターボーカルの戸山香澄、リードギターの花園たえ、ベースの牛込りみ、キーボードの市ヶ谷有咲、ドラムの山吹沙綾」
「凄い、私達の名前まで……」
「もしかして、ストーカーさん?」
花園がとんでもないことを言い出した。
「ちげーよ。俺は一度見たものはすぐに覚えられんだ。俺は内田奏。羽丘の二年だ」
「内田。アンタも手伝いな」
「了解っす。じゃあ行くわ」
オーナーから呼び出しを受けたため、俺はステージに向かう。
「そう言えば、彼女達ってここで働いてるんですか?」
俺は気になった事をオーナーに聞いた。
「ここで働いているのは花園だけだよ。残りの四人は今日だけのヘルプさ」
「他のスタッフが見当たらないと思ったけど、まさか……」
「あぁ。インフルエンザだって。全員アウトだよ」
「だからか」
「それより、PA頼むよ」
PA。Public Adressといって、音響機器の事をさす。
「俺がやって良いんですか?」
「アンタが適任だろう。やっていいよ」
そう言ってオーナーと場所を変わる。
「Roseliaです。宜しくお願いします」
友希那がマイクに向かって言う。そこから、俺達は音を合わせていくのだった。
「内田先輩、PAも出来るんですね」
「音楽全般に関しては、何でも出来る。それより、今日はよろしくな」
「「「「「はいっ!」」」」」
こうして、俺達のジョイントライブが幕を開けた。
そしてRoseliaの番。最初はBLACK SHOUTだった。出だしは順調。このまま行けば大丈夫だと思った。
だが──
──やっちまったな……
リサがここ一番でミスをしてしまった。周りの反応は少しざわつく。それでも友希那達は気にせずに歌い続けた。
そして、ライブが終わった。
「グスッ……ヒグッ……」
リサはライブが終わり、控室に戻ると泣いてしまった。
友希那はリサの背中をさすり、慰める。
俺はそれを外で見ていた。すると、戸山と市ヶ谷が来た。
「内田先輩……」
「ここ一番でミスをするっていうのは、バンドマンにとってかなりの痛手だ。それに俺達は先週、大事なコンテストに落ちている。そう簡単にミスは許されなかった」
「コンテストに落ちた……」
「それがプレッシャーになったんだろうな。いつもミスをしない所でミスをしてしまった。それが悔しいんだろう。あそこまで泣くっていうのは」
すると、中から声が聞終えた。
「いつまでも泣いてんじゃないよ」
オーナーが声を掛ける。
「ライブってのは、完璧な演奏が百点な訳じゃない」
その言葉に、リサは顔を上げる。
「客は、どうしてわざわざライブハウスに歌を聞きに来てると思う?」
「それは……」
「今この瞬間、目の前のアンタ達がどんなステージをやり切ってくれるか、それを楽しみにしてるんだ」
全員、オーナーを見る。
「やり切ったんだろ」
「……はい」
「胸を張って帰りな」
そう言われると、リサは涙を拭く。
「はい……!」
そして全員立ち上がり、オーナーにお礼を言った。
するとオーナーは控室から出て来る。
「ありがとうございました。オーナー」
「アンタがコンテストを終えてすぐここに来たのは、完璧な演奏だけが大事じゃない。そう伝えたかったんだろ?」
「えぇ。まさにオーナーの言った通りです」
「苦労を掛けさせるね全く」
「面目ない」
俺は頭を下げる。
「また、宜しくお願いします」
オーナーは何も言わず、その場を去っていった。
いつものファミレス──。
「完璧な演奏が百点じゃない、か……」
「あこ、何か分かった気がします」
「私達がいかにそのライブをやり切るか」
「そして……お客さんは、わたし達のやり切る姿を……楽しみに、してる……」
「奏。あなたが言ってた『大切なことを教えてくれる』って言うのは、この事だったのね」
「俺達は完璧を求めすぎた。そのせいで、ライブで何が大切なのか見失ってた。だから、あの人に会わせたんだ」
「そうだったのね。これからライブに対する姿勢を変えないと」
「俺達はまだ始まったばっかりだ。焦らずゆっくり、来年のコンテストに向けて頑張ろう」
全員頷く。
だが、俺はまだ知らなかった。これから面倒事に絡まれる事になるとは……
数日後。
「内田先輩! 私達の演奏を見てください!」
「……はぁ?」