六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第十八話 歌えなくなっちゃった

「内田先輩! 私達の演奏を見てください!」

 

 学校終わり。羽丘の校門前に戸山が立っていて、いきなりこんな事を言い出した。

 

「……はぁ?」

「実はSPACEがなくなっちゃうらしくて、私達そこで演奏したくて、それでそれで──」

「待て待て。落ち着いて話せ」

 

 早口で支離滅裂な事を言っていてよく分からなかったため、一旦落ち着かせた。

 

「で、何があった」

「私達、昨日SPACEのオーディションに行ったんです。でも、全然ダメで……」

「やり切ったのか?」

「私はやり切ったんですけど、みんなが……」

「成程な……それで、SPACEがなくなるって言うのは?」

 

 戸山が言うには、SPACEが今月一杯で閉店になるらしい。オーナーはもうやり切ったと。

 

「SPACEが閉まるのは分かった。何で俺がお前達の演奏を見なきゃならん」

「内田先輩なら、私達が何でダメだったか分かるかと思ったからです!」

「いや、分かる訳ないだろ……。そもそも、オーディションと練習は緊張感が違う。そんな状態で俺に聞けって言われても……」

「お願いします」

 

 すると戸山は頭を下げてきた。いつもはしゃいでそうな戸山が真剣なのが伝わって来た。

 

「……分かったよ」

「ホントですか!?」

「ただし、今回だけだ。良いな」

「ありがとうございます! じゃあ行きましょう!」

「ま、待て! 行くってどこに……」

「蔵です!」

 

 そう言われると俺は戸山に手を引かれ、歩くことになった。それを見てた人物が二人。

 

「あれ、確かポピパってグループの人よね」

「奏、アタシ達に内緒で何やってんのかなぁ~」

 

 他の人の話によると、その時の二人の目には、光が無かったと言う。

 

 ☆☆★☆☆

 

「ここは……?」

「蔵です!」

「いや、完全に市ヶ谷って書いてあんだけど……」

「有咲の家の蔵です!」

「あ、そうすか」

 

 無理矢理連れてこられた先は、市ヶ谷の家だった。と言うか、家に蔵があるって凄いな……

 

「取り敢えず行きましょう!」

 

 そう言って戸山は蔵の扉を開ける。中に入ると、そこはただの蔵だった。だが、右側に下へと続く階段があった。

 

「こっちです!」

 

 戸山はその階段を下っていく。そこにはポピパ全員揃っていた。

 

「みんな~連れてきたよ~」

「お疲れ様、香澄ちゃん」

「すみません内田先輩。いきなり呼んじゃって。パン、いります?」

 

 そう言ってパンを差し出してきたのは山吹沙綾だった。

 

「いや、気持ちだけ受け取ってくよ。それで? 聞かせてくれるんだろ?」

「あ、はい! みんな、やろう!」

 

 そう言って、ポピパは定位置につく。

 戸山が全員の目を見て確認する。全員が頷くと、口を開いた。

 

「それでは聞いてください。Happy Happy Party!」

 

 すると戸山と花園のギターと、山吹のドラムが鳴り響く。

 

 ──聞く限りでは普通に歌えているし、楽器も弾けてる。けど、オーディションには落ちた。考えられるのは、緊張でミスが連発したか。

 

『私はやり切ったんですけど、みんなが……』

 

 ──もしかして……

 

 俺は一つの答えを見出した。

 考えていると、演奏が終わった。

 

「内田先輩、どうでしたか?」

 

 呼吸を荒くした戸山が聞いてくる。

 

「そうだな。聴いている限りじゃ、その調子でオーディションを受けても問題は無いと思う」

 

 その言葉を聞いた五人は、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「だが、合格はしないだろうな」

 

 次の言葉で、全員驚く。

 

「なんで! さっき問題ないって……」

「確かに言った。けどそれは、オーディションを受ける状態の話だ。別に合格するとは言ってない」

 

 戸山以外の四人はさっきとは裏腹に、かなり落ち込む。

 

「何がいけなかったんですか?」

 

 戸山は聞いてくる。

 

「……言って良いのか?」

「はい!」

 

 ──本当に言って良いのか? これを言えば、間違いなく雰囲気は悪くなる。

 

 俺は戸山の顔を見る。

 

 ──けど、こいつはそれを求めてる。なら、言うしかないよな……

 

「……不合格の理由はお前だ、戸山」

「えっ……」

「お前は何も見えていない。周りも、自分も」

「何も見えていない……私が……」

「戸山が一番出来てないんだよ」

「ちょっと待てよ! どうしてそんな事言うんだよ!」

 

 すると、市ヶ谷が突っかかって来た。

 

「あの時不合格だったのは私達がきちんと演奏出来てなかったからです。香澄のせいではありません」

 

 花園も言ってきた。

 

「今の言葉、取り消して貰っても良いですか?」

 

 山吹も。

 

「香澄ちゃんが可哀想です」

 

 牛込も。

 全員、戸山を庇うように言ってきた。

 

「悪いが、俺は本当の事を言ったまでだ。お前達が何を言おうと、俺は取り消さん」

 

 俺は立ち上がり、蔵を出ようとする。

 

「厳しい事を言ってるかもしれんが、それが真実であり、今のお前達の実力だ。どうすればいいか、盛大に悩め」

 

 そう言って、今度こそ蔵を出た。

 

 ☆☆★☆☆

 

 数日後。

 

「……ん?」

 

 羽丘の校門に、五つの影が見えた。Poppin’Partyだ。

 

「どうした。五人でここまで来て」

 

 五人を見る。戸山は暗い表情をしており、四人は俺を睨みつけるように見る。

 

「どうしてくれるんですか内田先輩」

「な、何がだよ……」

「香澄ちゃん、歌えなくなっちゃったんです……」

 

 俺が蔵を出て次の日、SPACEのオーディションに行ったらしい。すると戸山は声が出せなくなり、歌えなくなったのだ。

 

「恐らくそれはストレスによるものだろう。数日もすれば治る」

「もちろん私達もそう思いました。数日したら香澄も声が出せるようになったんですが……」

「いざ歌おうとなると、歌えないんです……」

 

 戸山は弱い声を出して言う。

 

 ──イップス、か……恐らく俺の言葉がトラウマになり、歌えなくなった可能性が高い。

 

「確かに、俺があの時言いすぎたかもしれない。でも戸山、それは乗り越えないといけない壁なんだ。これに関しては、俺がどうこうできる問題じゃない」

 

 そう言って俺はその場を離れようとする。

 

「そうだ」

 

 俺は立ち止まり、言い忘れたことを伝える。

 

「歌っていうのは、一人で歌うもんじゃないんだぜ。覚えときな」

 

 俺がそういうと、五人は何を思ったのか、驚いた表情をして頭を下げて走って帰っていった。

 

「良いの? あそこまでヒントを与えて」

 

 後ろからリサと友希那が来た。

 

「こうなったのは俺が原因でもある。少しぐらい手を貸しても良いだろう」

「ホント、奏は優しいわね」

「そんなんじゃないさ」

 

 ──ポピパは良いバンドになる。その為にも、この壁を超えて欲しい。

 

「行こうぜ」

「あ、待ってよ奏!」

「俺達もSPACEの最後のライブに出ないとな。今日は厳しい練習になるぞ」

 

 そう言って羽丘を後にする。

 その後俺達はオーディションを受け、無事、合格となった。

 そして、SPACE最後のライブの日がやって来た。




何時も「六人目の青薔薇」を閲覧いただき、誠にありがとう御座います。
この度、この作品ですが、書き直そうか考えております。理由としては、ガルパのRoseliaのイベントの話を書いておらず、少しモヤッとする所があるからです。
そこで皆さんにアンケートを取りたいと思います。アンケート内容は、Roseliaのガルパイベを読みたいか、今まで通りアニメ&オリジナルで読みたいか。
御協力をお願いします。
期間は金曜日までとします。
よろしくお願いします
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