六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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アンケートにご回答いただき、ありがとうございました。
結果通り、今まで通りに行きたいと思います。
これからもよろしくお願いします。


第十九話 SPACE、最後のライブ

「それでは皆さん、良い夏休みを」

 

 担任がそういうと、クラスのみんなは終わったーなどと声を上げる。

 

「リサちー、今日ライブなんでしょ?」

「うん。ヒナは見に来るの?」

「おねーちゃんに来ないでって言われてるからなぁ……それに今日は仕事だし」

「そっか。ヒナも頑張ってね」

「うん! バイバーイ!」

 

 そう言って日菜は教室を出ていった。あれからパスパレの人気はうなぎ上りらしい。

 

「リサ、奏、行くわよ」

 

 友希那が俺達の教室にやって来た。

 

「……よし、行くか」

 

 そう言って俺は立ち上がり、教室をでる。

 校門には、中等部のあこが待っており、四人でSPACEへと向かった。

 SPACEに着くと、既に紗夜と燐子が待っていた。

 

「お疲れ様です、皆さん」

「おう、お疲れ」

「りんりーん!」

「お疲れ様、あこちゃん」

 

 あこは燐子に抱きつき、燐子はそれを受け止める。

 

「お前達は中で準備しとけ。俺はオーナーに会ってくる」

「私ならここにいるよ」

 

 後ろからオーナーの声が聞こえた。

 

「お疲れ様です、オーナー」

「あぁ。アンタ達は準備しな」

 

 オーナーに言われ、五人は中に入っていく。

 

「……お疲れ様でした」

 

 俺はそう言って頭を下げる。

 

「フン。まだ始まってもいないよ。最高のライブ、期待しているよ」

 

 そういうとオーナーは中に戻っていった。

 俺は出演者の書かれているボードを見る。そこにはCHiSPAとPoppin'Partyの名前があった。

 

 ──あいつ等、壁を乗り越えたんだな……

 

 俺は微笑み、SPACEの中へと入って行く。

 楽屋には多数のガールズバンドがいるため、入れない。なので俺はスタッフの方達とステージの設営を手伝った。

 

「ありがとう。内田君もみんなの所に行ったら?」

「でも、楽屋には女子しかいませんし……」

「誰も内田君の事を知らない人なんていないよ。なんたって、あのRoseliaのマネージャーだもん」

「だと良いんですがね……」

「取り敢えず、ここは大丈夫だから。行ってあげて」

 

 スタッフの優しい心遣いにより、俺はみんなの所へ行く事になった。

 楽屋に行こうとすると、ドアの前にPoppin'Partyがいた。

 

「よう」

「あ、内田先輩!」

 

 戸山が俺に気付く。

 俺は五人の表情を見る。その表情は、苦難を乗り越えた、そんな顔だった。

 

「……見つかったんだな。お前達の音楽」

「あの時、内田先輩に言われた時気付いたんです。私だけが歌うんじゃない。私達で歌うんだって」

「戸山は一人で突っ走りすぎた。周りが見えてないって言ったのは、もう少しメンバーに気を配れって事。自分が見えてないって言ったのは、メンバーに気を配れてない自分に気付いてないって言うことだ」

「本当に、ありがとうございました」

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 戸山を筆頭に、全員頭を下げてお礼を言ってきた。

 

「俺は何もしてない。お前達で乗り越えた壁だ。今日のライブ、楽しみにしてるぞ」

「「「「「はい!」」」」」

「それより……」

 

 俺は気になった事を聞いた。

 

「何で中に入らないんだ?」

 

 その言葉で、全員が苦虫を嚙み潰したような表情をする。

 

「中、人多くて……」

「あぁ、成程ね」

 

 すると、楽屋のドアが開いた。誰かが顔を覗かせている。

 

「お主等か! 我の深淵を破るのは!」

 

 顔を覗かせているのは、あこだった。

 

「入るときはノックしろ。じゃないと、こう……千年の眠りから──」

「あこちゃん……! びっくりさせてごめんなさい……!」

 

 燐子があこを連れ去り、再びドアは閉められた。

 

「何やってんだあいつ等は……」

 

 俺は頭を押さえる。

 

「Roseliaって、結構賑やかなんですね……」

 

 山吹が引き気味に聞いて来た。

 

「一部だけだ……」

「やべぇ……」

「取り敢えず、俺は中に入る。お前達も入れ」

 

 そう言って俺は楽屋のドアを開ける。すると、一斉に視線がこちらを向いた。

 その瞬間、俺はドアを閉める。

 

「内田先輩……?」

「無理だ……俺にはあの中に入る勇気がない……」

「やっぱり無理なんじゃねぇか……」

 

 すると再び楽屋のドアが開いた。

 

「あ、奏いたいた~。早く入ってよ」

 

 今度はリサだった。

 

「ま、まてリサ。俺にはあの中に入る勇気は──」

「良いから早く。ポピパのみんなも早く支度しなよ~」

「は、放せリサ! 頼む! 止めてくれ~!!」

 

 そう言って俺は楽屋の中に連れてこられるのだった。

 

「なにやってるのよ奏」

「来るの遅すぎます」

 

 来て早々、友希那と紗夜にどやされる。

 

「この中に男一人入る勇気がある奴は見てみたいね」

「気にすることないわ。逆にあなたが早く来ないか、こっちに聞いて来たバンドもいるのだから」

「Roseliaのマネージャーを是非見てみたい、だそうです」

「いや、丁重にお断りしたいんだけど……」

「Roseliaの皆さん、リハーサルの時間です。準備お願いします」

 

 すると、スタッフの人が呼びに来る。

 

「じゃ、行ってこい」

 

 俺は五人を見送り、楽屋でみんなの衣装を用意していた。

 全バンドのリハが終わり、オーナーが楽屋に入ってくる。

 

「最後のライブだ。でも、いつも通り全力でやる。それが、SPACEのライブだ。私から言えるのは一つだけだ」

 

 オーナーは全員を見る。

 

「思いっきりやってきな」

 

 全員返事し、拍手が起きる。

 そしてついに、本番が始まった。

 

「Roseliaです」

 

 友希那達がステージに立つと、観客たちは歓声を上げる。

 

「それでは聞いてください。LOUDER」

 

 この曲は友希那の父がバンドを組んでいた時に歌っていた曲をアレンジした曲だ。

 次に流れたのは陽だまりロードナイト。これは友希那達がリサに向けて作った曲だ。これは俺がパスパレの件でRoseliaにいないときに起きた出来事。リサが一回練習に来れなかったときのRoseliaは酷かったらしい。そこでみんなは、リサはRoseliaに必要なんだと改めて実感したらしい。

 そして最後は俺達の十八番、BLACK SHOUTだ。今回、ブラシャをリマスターした。最初のイントロ部分に、紗夜のギターを導入したのだ。

 Roseliaの出番が終わり、Glitter*Green、CHiSPAときて、遂にPoppin'Partyの出番となった。

 俺はスタジオの端にいるオーナーの下に行き、ポピパのライブを見た。

 

「どうですか。彼女達のライブ」

 

 俺の言葉にオーナーは何も言わない。だが、その表情はとても優しかった。

 

「……良いバンドだよ。彼女達は」

「……ですね」

「アンタ達も良かった。来年、フェス頑張りな」

「……はい!」

 

 こうして、SPACEの最後のライブが幕を閉じた。

 夏は、まだ始まったばかりだ──。

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