六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第二十話 夏合宿!

「合宿がしたい?」

 

 突然、あこが言ってきた。

 

「はい! 折角の夏休みですよ! どっか行きましょうよ!」

「遊んでいる暇はありません。私達は練習があるんですよ」

 

 紗夜はそれを否定する。

 

「そこでですよ! 実はりんりん別荘を持ってるんです! そこで練習もするんですよ!」

「成程。それで合宿か。確かに、別の場所で練習するのも大事だな。俺は賛成だ」

「奏さんがそう言うなら……」

 

 紗夜は何とか賛成してくれた。と言うか、俺が言うなら何でもいいんか。

 

「で、その別荘ってどこにあるんだ?」

「海の、近く……です」

「海の近くか……水着……いでででで!!」

 

 するとリサが頬を抓って来た。

 

「な~にを考えてるのかなぁ? 奏は」

「水着なら私達ので充分でしょ?」

 

 すると友希那も入って来た。

 

「リサは良いとして、友希那、お前ないじゃん……グホァ!」

 

 ある一ヶ所に視線を向けた時、もの凄い腹パンが決まった。

 

「ウグッ……なんて良いパンチなんだ……」

「失礼なことを考えるからよ。全く……」

「冗談はそこまでにして、いつ行きますか?」

 

 ──紗夜よ。今のパンチは冗談では済まされないぞ……

 

「はいはーい! あこ、土、日の一泊二日でやりたいです!」

「わたしは、いつでも……」

「アタシもいつでも大丈夫かな〜」

「私も大丈夫です」

「じゃあ、今週末に行きましょう」

 

 こうして、Roseliaの夏合宿が決まった。

 

 ☆☆★☆☆

 

 という訳でやって来ました別荘。目の前には海が広がっています。

 

「さて、早速部屋決め何だが……」

 

 メンバーは六人。部屋は五つ。つまり、一人はリビングで寝ないと行けない。ここは俺が率先してリビングで寝るのが当たり前だろう。

 

「まぁ、俺がリビングで──」

「じゃあ奏はアタシと同じ部屋ね☆」

「──え?」

「何言ってるのリサ。奏と寝るのは私よ」

 

 リサと友希那がとんでもない事を口走った。

 

「待て待てお前ら。流石にまずいって……」

「奏さんの言う通りです! 私は許しませんよ!」

 

 風紀委員としてなのか、紗夜も俺の意見に賛成してくれた。

 

「取り敢えず、今回は俺はリビングで寝るから。お前達は部屋使え」

 

 何とか部屋問題は解決した。

 部屋を振り分けた俺達は楽器を取り出し、練習を始めた。

 友希那と俺はパソコンを取り出し、DTMソフトを立ち上げる。作曲だ。友希那はオリジナルの曲、俺はカバー曲をアレンジする。

 

「友希那。今回のコンセプトは何だ?」

「そうね……私達のコンセプトにぴったりな曲が良いわね」

「Roseliaのコンセプト……頂点か」

「奏はどんなカバー曲にするの?」

「そうだな……某アニメの主題歌なんだが……」

 

 そう言って、原曲を聞かせる。

 

「成程ね。私は良いと思うわ」

「そうか。これを今からアレンジしていくから」

 

 そう言って俺はヘッドフォンを装着し、自分の世界へと入っていった。

 数時間後──。

 

「ふっふ……我は超大魔姫あこなるぞ。童のドラム! ……じゃなくて、闇の……え~っとそのぉ……」

「フフッ。あこガンバ~」

「闇の~……りんり~ん!」

「ん? どうしたの?」

「あこのドラムでみんなをバ~ンって……何を言ったらカッコ良い?」

「え~っと……」

「バーンで良いじゃん?」

「もっとカッコ良くしたいの! りんりん助けて~」

 

 あこ達がなにか始めた。何やってんだ? 

 

「宇田川さん、今井さん、白金さん。お喋りするなら……」

「紗夜、ただのMCの練習だよ~?」

 

 あ、MCの練習していたんですね。

 

「それも必要ですが、手も動かしてください。練習の量は、そのまま音に出ます」

 

 流石紗夜。真面目である。

 俺はそれをじっと見ていた。アレンジはどうしたかって? 終わったよ。

 

「皆さんで合わせますか?」

「友希那さんは?」

 

 全員の視線は友希那へと向かう。俺も友希那を見る。

 するとソファーに寄り掛かり、上を見る。

 

「悪いけど、まだかかりそう」

 

 どうやら苦戦しているようだ。

 

「奏の方は?」

「俺? とっくに終わってる。はいこれスコア」

 

 俺は既に印刷した全員分のスコアを配る。

 

「これ、超有名な曲じゃん! アタシ達これやるの?」

「おう。こういう曲もたまには良いだろ?」

「そうですね。ありがとうございます」

「友希那が新曲頑張っている間、アタシ達はこの曲練習しよっか♪」

「新曲、楽しみにしていますね」

「えぇ、ありがとう」

「友希那、手伝うか?」

「いいえ。大丈夫。奏はみんなの方を見てあげて」

「そっか。無理すんなよ」

 

 俺は友希那の頭に手を乗せ、指導を始めた。

 更に数時間後──。

 

「……」

 

 遂には友希那はソファーに寝っ転がってしまった。

 

「友希那さん……」

「何か手伝えないでしょうか……」

 

 あこと燐子も心配している。

 

「友希那。ちょっと聞いて良い?」

「えぇ」

 

 リサがヘッドフォンを取り、友希那の作曲した曲を聞く。

 

「ん~アタシ的には良い感じだと思うけど」

「個人的にではダメよ」

 

 友希那は起き上がる。

 

「Roseliaの……最高の音楽を作らなくては」

 

 だいぶ行き詰ってるようだな……少し息抜きさせるか。

 

「よし。一旦音楽から離れるか」

「え?」

 

 全員不思議そうに俺の方を見る。

 するとリサが何か感づいたようだ。

 

「分かった。海行こう!」

 

 今度はリサに視線が行く。

 

「あこ達も行かない?」

「いいの!?」

「行きません! 私達に遊んでる時間など──」

「そう硬くなるなよ紗夜」

「奏さん……」

「ここに来てずっと楽器弾きっぱなしだったろ。それに、休憩も大事だ」

「ですが……」

「かき氷とか、フライドポテトとか食べようよ~」

 

 リサ。紗夜にフライドポテトは禁句だ。何故なら──

 

「フライドポテト!?」

 

 反応してしまうからだ。

 

「そんなジャンクフードには興味ありませんが、食事でしたら付き合います」

「やった~!」

 

 紗夜が言うと、あこは大喜びだ。

 

「べ、別に海なんか……」

「良い案浮かぶかもしれないし、奏に水着姿見せたいんでしょ~このままじゃ衣装のサイズ合わないかもよ~?」

 

 リサよ。それは遠回しに友希那が太ったと言ってるようなもんだぞ。

 すると何か百合展開が始まった。何やってんだコイツ等……

 結局友希那が折れ、全員で海に行く事になった。

 俺とリサと紗夜は今海の家に来ている。あこと燐子はどっか行った。友希那は海岸で座って待っている。

 

「あれポピパちゃん! うっそ偶然!」

 

 するとリサが市ヶ谷と花園を見つけた。

 

「何だ? 二人だけか?」

「ううん、香澄達は今お取込み中で……」

「っていうか、Roseliaも遊びに来るんだ……」

「遊びじゃありません。合宿よ」

「近くに燐子の別荘があるんだ~」

「燐子先輩別荘持ってたのか……」

「凄い……」

「今井さん、奏さん、行きましょう」

「ここで食べてこうよ。二人は何食べる?」

「えっ?」

「奏が奢ってくれるよ」

 

 ──俺ですかそうですか……

 

 こうして俺はポピパ全員分の焼きそばを奢る事になった。解せぬ。

 買い物を終えた俺とリサは友希那の下に行く。

 

「ゆ~きなっ。かき氷食べる?」

「いいえ」

「たまには良いっしょ。みんなでこういうとこ来るの」

「良くないわ。早く完璧なフレーズを考えないと……」

「お前は難しく考えすぎだ」

「奏……」

 

 俺とリサは友希那を挟むように座る。

 

「作曲なんて、だれしも簡単に出来るもんじゃない。俺だって時間が掛かる。それに焦って根を詰めすぎると、逆に見えなくなるぞ」

「見えなくなる……」

「そ。たまには音楽の事忘れて楽しまないと!」

「リサの言う通りだぜ。息抜きしても誰も怒らねぇんだ。むしろ、逆に息抜きしろって怒られるかもな」

 

 俺達は海を見る。

 

「懐かしいな。三人で海に来るの」

「あの時は凄くはしゃいでたもんね~」

「友希那が知らない人に付いて行ったときはビビったぞ」

 

 子供の時、家族ぐるみで海に来た。その時友希那は、自分の家族を見間違えて知らない人に付いて行こうとしたのだ。俺が全力で止めた。

 

「忘れて頂戴///」

「奏が引っ越しちゃって、もう三人で海に行けないかと思った」

「でも、またこうして三人で海に来れた。俺が帰ってきて、Roseliaのマネージャーになって、本当に良かった。ありがとう、二人共」

 

 その時の俺の表情は、多分笑っていた。

 

「来年も、また来よう!」

「……たまには悪くないかもね」

「そうだな」

 

 俺達三人の絆が、更に深まったと思えた瞬間だった。


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