「合宿がしたい?」
突然、あこが言ってきた。
「はい! 折角の夏休みですよ! どっか行きましょうよ!」
「遊んでいる暇はありません。私達は練習があるんですよ」
紗夜はそれを否定する。
「そこでですよ! 実はりんりん別荘を持ってるんです! そこで練習もするんですよ!」
「成程。それで合宿か。確かに、別の場所で練習するのも大事だな。俺は賛成だ」
「奏さんがそう言うなら……」
紗夜は何とか賛成してくれた。と言うか、俺が言うなら何でもいいんか。
「で、その別荘ってどこにあるんだ?」
「海の、近く……です」
「海の近くか……水着……いでででで!!」
するとリサが頬を抓って来た。
「な~にを考えてるのかなぁ? 奏は」
「水着なら私達ので充分でしょ?」
すると友希那も入って来た。
「リサは良いとして、友希那、お前ないじゃん……グホァ!」
ある一ヶ所に視線を向けた時、もの凄い腹パンが決まった。
「ウグッ……なんて良いパンチなんだ……」
「失礼なことを考えるからよ。全く……」
「冗談はそこまでにして、いつ行きますか?」
──紗夜よ。今のパンチは冗談では済まされないぞ……
「はいはーい! あこ、土、日の一泊二日でやりたいです!」
「わたしは、いつでも……」
「アタシもいつでも大丈夫かな〜」
「私も大丈夫です」
「じゃあ、今週末に行きましょう」
こうして、Roseliaの夏合宿が決まった。
☆☆★☆☆
という訳でやって来ました別荘。目の前には海が広がっています。
「さて、早速部屋決め何だが……」
メンバーは六人。部屋は五つ。つまり、一人はリビングで寝ないと行けない。ここは俺が率先してリビングで寝るのが当たり前だろう。
「まぁ、俺がリビングで──」
「じゃあ奏はアタシと同じ部屋ね☆」
「──え?」
「何言ってるのリサ。奏と寝るのは私よ」
リサと友希那がとんでもない事を口走った。
「待て待てお前ら。流石にまずいって……」
「奏さんの言う通りです! 私は許しませんよ!」
風紀委員としてなのか、紗夜も俺の意見に賛成してくれた。
「取り敢えず、今回は俺はリビングで寝るから。お前達は部屋使え」
何とか部屋問題は解決した。
部屋を振り分けた俺達は楽器を取り出し、練習を始めた。
友希那と俺はパソコンを取り出し、DTMソフトを立ち上げる。作曲だ。友希那はオリジナルの曲、俺はカバー曲をアレンジする。
「友希那。今回のコンセプトは何だ?」
「そうね……私達のコンセプトにぴったりな曲が良いわね」
「Roseliaのコンセプト……頂点か」
「奏はどんなカバー曲にするの?」
「そうだな……某アニメの主題歌なんだが……」
そう言って、原曲を聞かせる。
「成程ね。私は良いと思うわ」
「そうか。これを今からアレンジしていくから」
そう言って俺はヘッドフォンを装着し、自分の世界へと入っていった。
数時間後──。
「ふっふ……我は超大魔姫あこなるぞ。童のドラム! ……じゃなくて、闇の……え~っとそのぉ……」
「フフッ。あこガンバ~」
「闇の~……りんり~ん!」
「ん? どうしたの?」
「あこのドラムでみんなをバ~ンって……何を言ったらカッコ良い?」
「え~っと……」
「バーンで良いじゃん?」
「もっとカッコ良くしたいの! りんりん助けて~」
あこ達がなにか始めた。何やってんだ?
「宇田川さん、今井さん、白金さん。お喋りするなら……」
「紗夜、ただのMCの練習だよ~?」
あ、MCの練習していたんですね。
「それも必要ですが、手も動かしてください。練習の量は、そのまま音に出ます」
流石紗夜。真面目である。
俺はそれをじっと見ていた。アレンジはどうしたかって? 終わったよ。
「皆さんで合わせますか?」
「友希那さんは?」
全員の視線は友希那へと向かう。俺も友希那を見る。
するとソファーに寄り掛かり、上を見る。
「悪いけど、まだかかりそう」
どうやら苦戦しているようだ。
「奏の方は?」
「俺? とっくに終わってる。はいこれスコア」
俺は既に印刷した全員分のスコアを配る。
「これ、超有名な曲じゃん! アタシ達これやるの?」
「おう。こういう曲もたまには良いだろ?」
「そうですね。ありがとうございます」
「友希那が新曲頑張っている間、アタシ達はこの曲練習しよっか♪」
「新曲、楽しみにしていますね」
「えぇ、ありがとう」
「友希那、手伝うか?」
「いいえ。大丈夫。奏はみんなの方を見てあげて」
「そっか。無理すんなよ」
俺は友希那の頭に手を乗せ、指導を始めた。
更に数時間後──。
「……」
遂には友希那はソファーに寝っ転がってしまった。
「友希那さん……」
「何か手伝えないでしょうか……」
あこと燐子も心配している。
「友希那。ちょっと聞いて良い?」
「えぇ」
リサがヘッドフォンを取り、友希那の作曲した曲を聞く。
「ん~アタシ的には良い感じだと思うけど」
「個人的にではダメよ」
友希那は起き上がる。
「Roseliaの……最高の音楽を作らなくては」
だいぶ行き詰ってるようだな……少し息抜きさせるか。
「よし。一旦音楽から離れるか」
「え?」
全員不思議そうに俺の方を見る。
するとリサが何か感づいたようだ。
「分かった。海行こう!」
今度はリサに視線が行く。
「あこ達も行かない?」
「いいの!?」
「行きません! 私達に遊んでる時間など──」
「そう硬くなるなよ紗夜」
「奏さん……」
「ここに来てずっと楽器弾きっぱなしだったろ。それに、休憩も大事だ」
「ですが……」
「かき氷とか、フライドポテトとか食べようよ~」
リサ。紗夜にフライドポテトは禁句だ。何故なら──
「フライドポテト!?」
反応してしまうからだ。
「そんなジャンクフードには興味ありませんが、食事でしたら付き合います」
「やった~!」
紗夜が言うと、あこは大喜びだ。
「べ、別に海なんか……」
「良い案浮かぶかもしれないし、奏に水着姿見せたいんでしょ~このままじゃ衣装のサイズ合わないかもよ~?」
リサよ。それは遠回しに友希那が太ったと言ってるようなもんだぞ。
すると何か百合展開が始まった。何やってんだコイツ等……
結局友希那が折れ、全員で海に行く事になった。
俺とリサと紗夜は今海の家に来ている。あこと燐子はどっか行った。友希那は海岸で座って待っている。
「あれポピパちゃん! うっそ偶然!」
するとリサが市ヶ谷と花園を見つけた。
「何だ? 二人だけか?」
「ううん、香澄達は今お取込み中で……」
「っていうか、Roseliaも遊びに来るんだ……」
「遊びじゃありません。合宿よ」
「近くに燐子の別荘があるんだ~」
「燐子先輩別荘持ってたのか……」
「凄い……」
「今井さん、奏さん、行きましょう」
「ここで食べてこうよ。二人は何食べる?」
「えっ?」
「奏が奢ってくれるよ」
──俺ですかそうですか……
こうして俺はポピパ全員分の焼きそばを奢る事になった。解せぬ。
買い物を終えた俺とリサは友希那の下に行く。
「ゆ~きなっ。かき氷食べる?」
「いいえ」
「たまには良いっしょ。みんなでこういうとこ来るの」
「良くないわ。早く完璧なフレーズを考えないと……」
「お前は難しく考えすぎだ」
「奏……」
俺とリサは友希那を挟むように座る。
「作曲なんて、だれしも簡単に出来るもんじゃない。俺だって時間が掛かる。それに焦って根を詰めすぎると、逆に見えなくなるぞ」
「見えなくなる……」
「そ。たまには音楽の事忘れて楽しまないと!」
「リサの言う通りだぜ。息抜きしても誰も怒らねぇんだ。むしろ、逆に息抜きしろって怒られるかもな」
俺達は海を見る。
「懐かしいな。三人で海に来るの」
「あの時は凄くはしゃいでたもんね~」
「友希那が知らない人に付いて行ったときはビビったぞ」
子供の時、家族ぐるみで海に来た。その時友希那は、自分の家族を見間違えて知らない人に付いて行こうとしたのだ。俺が全力で止めた。
「忘れて頂戴///」
「奏が引っ越しちゃって、もう三人で海に行けないかと思った」
「でも、またこうして三人で海に来れた。俺が帰ってきて、Roseliaのマネージャーになって、本当に良かった。ありがとう、二人共」
その時の俺の表情は、多分笑っていた。
「来年も、また来よう!」
「……たまには悪くないかもね」
「そうだな」
俺達三人の絆が、更に深まったと思えた瞬間だった。