「……友希那がああなってしまったのは、やっぱりおじさんの事か?」
「――っ!」
リサの反応を見る限り、当たりという事だろう。
「どうして……?」
「さっき会った友希那を見ていると、幼少期とは違う、何かが抜けた表情だった。それに受け答えもぶっきらぼうで。まるで興味ありませんといっているように」
「表情……?」
「近くにいたお前が一番よく分かってんだろ? まぁ俺の記憶は幼少期までしかないから、そこから先の事は分からないが、友希那がああなったのは、大方予想がつく」
リサは口を開かず、俺の話を聞いている。
「三年前、おじさんのバンドが突然解散してしまった。それだけじゃない。恐らく解散を決めたのはFUTURE WORLD FES.。その時披露した曲を批判されてしまった。おじさん達を殺したアレンジをされたのにも関わらず」
「殺した……?」
「あのフェス、テレビ中継で俺も見ていたんだ。おじさんが出るのを知っていたから。そしていざ聞いてみたら、まるで違う。俺も餓鬼の頃、お前達の近くでおじさんの曲を聞いていたから分かる。あれはおじさん達の曲じゃない」
俺は一口コーヒーを飲み、続けて喋る。
「けど、周りはそんなの知ったこっちゃない。客はそのバンドの曲が聞ければそれでいい。そして自分達が納得いかないと好き勝手言う。だから友希那は復讐しようとしてるんだろ? 自分のお父さんの音楽を、自分の音楽を認めさせるために」
「どうしてそう思うの?」
「友希那が向かった先はライブハウスだ。今俺が語った考察と、友希那の行き先から考えれば、そう思うさ」
「そっか……」
リサは少し微笑み、コーヒーを口に含む。
「奏の言っていることは大体あってる。友希那はバンドメンバーを集めて、FWFに向けたコンテストに出場しようとしている。そこで自分の音楽を認めさせるって」
リサは立ち上がり、数歩歩いてこちらを見る。
「友希那、あの日から変わっちゃった。あの日から音楽以外の事に興味無くしちゃって……そして、笑顔も無くなった。今友希那の家ではね、音楽の話は一切していないんだ。お父さんを苦しめるからって」
俺はリサの話を黙って聞いていた。
「友希那はライブハウスで歌いつつ、バンドメンバーを探してるんだって。知ってる? 今じゃ孤高の歌姫なんて呼ばれて有名なんだよ?」
リサは自分の事の様に話してくる。相当嬉しいのだろう。
――孤高の歌姫、ねぇ……
俺はスマホを出し、検索エンジンで孤高の歌姫と調べる。するとすぐに湊友希那がヒットした。
「スカウトも黙っていられない程の歌唱力、か。そう言えばアイツ、よくおじさんの歌口ずさんでたもんな」
「覚えてて、くれたんだね……」
「まぁな。てか、俺がサヴァン症候群だって事忘れたのか?」
「あ、そっか……」
リサは思いだしたかの様に納得する。
「けどね」
「ん?」
「アタシは、音楽で友希那に辛い思い、してほしくないんだ……」
リサの表情は、見ていて苦痛だった。
――幼馴染思いの、素直な奴だ……
「そっか……」
俺は立ち上がり、リサの頭を撫でる。
「大丈夫。お前の思いは、友希那に届いているよ」
「……ホントに?」
「あぁ。幼馴染が言ってるんだ。少しは信じろよ」
「フフッ、そうだね」
「さて、暗くなってきたし、今日はもう帰ろう。送ってくよ」
辺りを見ると、だいぶ日が暮れていた。街灯がつき始め、星が輝く。
「ありがと。でも大丈夫だよ。アタシ家近いし」
「知ってるよ。どうせ帰る方向一緒なんだから良いだろ」
「一緒って、まさか……」
俺の言葉を察したのか、目を見開くリサ。
「そう、またお二人さんの目の前だよ。またよろしくな」
「――うん!」
そう言ってリサは今日一であろう笑顔を見せてきた。ガキの頃からそうだが、やっぱりリサは笑顔が似合う。勿論、友希那もだが。
すると、リサのケータイが鳴った。恐らくおばさんからだろう。
「はいはーい、どうしたのー?」
『ちょっとリサ! 懐かしい人が帰って来たわよ! 貴女も早く帰ってらっしゃい!』
近くにいる俺でさえも十分すぎる声量で話してきた。親父かお袋が挨拶に行ったのだろう。興奮しているのが分かる。
「落ち着いてお母さん。アタシもう会ってるから。近くにいるから」
『本当!? そこに奏ちゃんいるの!? なら尚更早く帰っていらっしゃい!』
そう言って通話は切られた。
「アハハ……だって」
「俺、お前の母ちゃん苦手なんだよなぁ」
「なんか、ゴメンね?」
リサは苦笑いで謝ってくる。
「取り敢えず行こうぜ、お袋たちが待ってる。どうせ飯一緒に食おうとか言いそうだしな」
「そうだね。行こ!」
こうして俺達は帰路についた。
――孤高の歌姫、湊友希那。今度見に行ってみるか。
俺は地図アプリでライブハウス"CiRCLE"を見ながら、そう思った。
内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?
-
絡ませる
-
数名だけ絡ませる
-
Roseliaだけで良い