六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第三話 孤高の歌姫

「……友希那がああなってしまったのは、やっぱりおじさんの事か?」

「――っ!」

 

 リサの反応を見る限り、当たりという事だろう。

 

「どうして……?」

「さっき会った友希那を見ていると、幼少期とは違う、何かが抜けた表情だった。それに受け答えもぶっきらぼうで。まるで興味ありませんといっているように」

「表情……?」

「近くにいたお前が一番よく分かってんだろ? まぁ俺の記憶は幼少期までしかないから、そこから先の事は分からないが、友希那がああなったのは、大方予想がつく」

 

 リサは口を開かず、俺の話を聞いている。

 

「三年前、おじさんのバンドが突然解散してしまった。それだけじゃない。恐らく解散を決めたのはFUTURE WORLD FES.。その時披露した曲を批判されてしまった。おじさん達を殺したアレンジをされたのにも関わらず」

「殺した……?」

「あのフェス、テレビ中継で俺も見ていたんだ。おじさんが出るのを知っていたから。そしていざ聞いてみたら、まるで違う。俺も餓鬼の頃、お前達の近くでおじさんの曲を聞いていたから分かる。あれはおじさん達の曲じゃない」

 

 俺は一口コーヒーを飲み、続けて喋る。

 

「けど、周りはそんなの知ったこっちゃない。客はそのバンドの曲が聞ければそれでいい。そして自分達が納得いかないと好き勝手言う。だから友希那は復讐しようとしてるんだろ? 自分のお父さんの音楽を、自分の音楽を認めさせるために」

「どうしてそう思うの?」

「友希那が向かった先はライブハウスだ。今俺が語った考察と、友希那の行き先から考えれば、そう思うさ」

「そっか……」

 

 リサは少し微笑み、コーヒーを口に含む。

 

「奏の言っていることは大体あってる。友希那はバンドメンバーを集めて、FWFに向けたコンテストに出場しようとしている。そこで自分の音楽を認めさせるって」

 

 リサは立ち上がり、数歩歩いてこちらを見る。

 

「友希那、あの日から変わっちゃった。あの日から音楽以外の事に興味無くしちゃって……そして、笑顔も無くなった。今友希那の家ではね、音楽の話は一切していないんだ。お父さんを苦しめるからって」

 

 俺はリサの話を黙って聞いていた。

 

「友希那はライブハウスで歌いつつ、バンドメンバーを探してるんだって。知ってる? 今じゃ孤高の歌姫なんて呼ばれて有名なんだよ?」

 

 リサは自分の事の様に話してくる。相当嬉しいのだろう。

 

 ――孤高の歌姫、ねぇ……

 

 俺はスマホを出し、検索エンジンで孤高の歌姫と調べる。するとすぐに湊友希那がヒットした。

 

「スカウトも黙っていられない程の歌唱力、か。そう言えばアイツ、よくおじさんの歌口ずさんでたもんな」

「覚えてて、くれたんだね……」

「まぁな。てか、俺がサヴァン症候群だって事忘れたのか?」

「あ、そっか……」

 

 リサは思いだしたかの様に納得する。

 

「けどね」

「ん?」

「アタシは、音楽で友希那に辛い思い、してほしくないんだ……」

 

 リサの表情は、見ていて苦痛だった。

 

 ――幼馴染思いの、素直な奴だ……

 

「そっか……」

 

 俺は立ち上がり、リサの頭を撫でる。

 

「大丈夫。お前の思いは、友希那に届いているよ」

「……ホントに?」

「あぁ。幼馴染が言ってるんだ。少しは信じろよ」

「フフッ、そうだね」

「さて、暗くなってきたし、今日はもう帰ろう。送ってくよ」

 

 辺りを見ると、だいぶ日が暮れていた。街灯がつき始め、星が輝く。

 

「ありがと。でも大丈夫だよ。アタシ家近いし」

「知ってるよ。どうせ帰る方向一緒なんだから良いだろ」

「一緒って、まさか……」

 

 俺の言葉を察したのか、目を見開くリサ。

 

「そう、またお二人さんの目の前だよ。またよろしくな」

「――うん!」

 

 そう言ってリサは今日一であろう笑顔を見せてきた。ガキの頃からそうだが、やっぱりリサは笑顔が似合う。勿論、友希那もだが。

 すると、リサのケータイが鳴った。恐らくおばさんからだろう。

 

「はいはーい、どうしたのー?」

『ちょっとリサ! 懐かしい人が帰って来たわよ! 貴女も早く帰ってらっしゃい!』

 

 近くにいる俺でさえも十分すぎる声量で話してきた。親父かお袋が挨拶に行ったのだろう。興奮しているのが分かる。

 

「落ち着いてお母さん。アタシもう会ってるから。近くにいるから」

『本当!? そこに奏ちゃんいるの!? なら尚更早く帰っていらっしゃい!』

 

 そう言って通話は切られた。

 

「アハハ……だって」

「俺、お前の母ちゃん苦手なんだよなぁ」

「なんか、ゴメンね?」

 

 リサは苦笑いで謝ってくる。

 

「取り敢えず行こうぜ、お袋たちが待ってる。どうせ飯一緒に食おうとか言いそうだしな」

「そうだね。行こ!」

 

 こうして俺達は帰路についた。

 

 ――孤高の歌姫、湊友希那。今度見に行ってみるか。

 

 俺は地図アプリでライブハウス"CiRCLE"を見ながら、そう思った。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い

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