六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第二話 去りゆく客

「みんな、ちょっと来てくれ」

 

 練習前、俺はみんなを呼び出した。

 

「SMS用にセットリストを友希那と考えて来た」

「演奏できるのは三曲だけ。緩急はつけずに、一気に駆け抜ける構成にしたわ。どうかしら」

 

 友希那はセットリストをみんなに見せる。

 

「はいっ! あこ、すっごく良いと思います! 超カッコいいRoselia、見せちゃいたいです!」

「はい、私も良いと思います」

 

 あこ、紗夜、それにリサと燐子も賛同する。

 

「じゃあこの三曲をひたすら練習だな。早速用意してくれ」

 

 そう言ってそれぞれ用意する。今回演奏する三曲を、一曲一曲丁寧に見ていく。

 

「紗夜、もう少しそこは力強く!」

「はい!」

「あこ、最初から飛ばしすぎだ! ペース配分を考えろ!」

「はい!」

「リサ、少し遅れてる」

「りょーかいっ!」

「燐子、少し早い。もう少し落ち着け」

「わかり、ました……」

「友希那、今声が裏返ったな。そこは丁寧に歌ってみろ」

「分かったわ」

 

 俺が指示を出し、みんなはそれを実行しようとする。これが何時ものRoseliaの練習風景だ。

 練習が終わり、帰宅途中の俺ら。それぞれが談笑し、歩みを進める。

 

 ──おかしい……何か違和感がある……何ていうか、音の聴き分けがし辛くなった様な……

 

 俺は今まで感じたことのない異変を感じた。いつもは全体の音から一つ一つ聴き分けられていたが、今日はそれが出来ない。

 

 ──それほどこいつらが成長したって事なのか……? 

 

「奏? どうしたの?」

 

 すると、隣にいたリサが声をかけて来た。

 

「あ、いや、何でもない」

「嘘。何か考えてる様な表情してたよ? また何か抱え込んでるの?」

「奏、あなたもRoseliaの一員なのよ。何かあったら言って欲しいわ」

 

 友希那も声をかけてくる。流石腐っても幼馴染。何でも分かってしまうみたいだ。

 

「確かに考え事をしていたが、そこまで気にする事じゃない。安心してくれ」

「分かった。何かあったら言ってね」

「あぁ。ありがとう」

 

 俺は帰宅すると、スマホにイヤホンを装着する。それを耳につけると、俺は音楽を流した。

 

 ──他のアーティストは聴き取れる……やっぱり気のせいか? 

 

 俺は考えることをやめ、SMSに集中した。

 そして、SMS当日。

 

「さて、いよいよ今日が来たな。みんな、緊張してるか?」

「まさか。私達は私達の演奏をするだけよ。いつもと変わらないわ」

 

 友希那が落ち着いた表情で言う。

 だが──。

 

「うぅ……緊張して来た……」

 

 リサだけが緊張していた。やっぱり、こういう大イベントは苦手の様だ。

 

「会場のざわめきがここまで聞こえてきますね」

 

 俺達は出番を控えているため、ステージ袖にいた。確かに、熱気がここまで伝わってくる。

 

「それでは、こちらにスタンバイお願いします」

 

 スタッフの方が声をかける。そして、全員俺を見る。これは一種のルーティーンの様なものだ。出番が近づくと、俺から一言貰ってステージに上がる。

 

「友希那の言った通りだ。変わったのはステージだけ。あとはいつもと変わらない。俺達は俺達の演奏をするだけだ」

 

 全員が頷く。

 

「よし。行ってこい!」

 

 こうしてRoseliaがステージに立った。その瞬間、観客の歓声が上がる。

 演奏は上々。これなら問題ない。そう思った。なのになぜか客が減っていく。

 

 ──おかしい。いつもと、いや、それ以上の演奏の筈だぞ。なぜ客が減っていく……

 

 ライブ後──。

 楽屋は完全にお通夜モードだった。

 

「……悪くない、演奏だったと思います」

 

 紗夜が口を開く。

 

「確かに、今までミスしてきた所も、今回はクリアできた。俺も今回の演奏は良いと思う」

「なのに、何でお客さんが減ってしまったんですか?」

 

 あこの質問に、俺は答えることが出来なかった。

 すると、スタッフが入ってくる。

 

「Roseliaさん。お疲れ様でした。もしかして緊張してました? なんかいつもと印象が違ったので」

「あはは、そうかもしれません……」

 

 リサが答える。

 スタッフが出て行き、再び楽屋に静寂が訪れる。

 

「……この後、どうする?」

「……今日は解散しましょう」

「反省会はどうしますか?」

「別の日にしましょう。今は冷静に振り替えられるとは思えないわ。それじゃ、私はこれで」

 

 そう言って楽屋を去って行く友希那。俺はその背中を見ることしか出来なかった。




次回予告

SMSも終わり、いつもの日常が戻ったRoselia。あの時何故客が去ったのか分からないまま始めた練習。その時、奏の身体に異変が起きた。

――色が……見えない……?

次回、六人目の青薔薇 Neo-Aspect編

第三話「失われた音」
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