六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第三話 失われた音

 SMSが終わって数日。初めてRoseliaが練習する日が来た。

 

「よし。それじゃ始めてくれ」

 

 そしてRoseliaが演奏を始めた。俺はその様子を見ていた。

 

「──っ!」

 

 俺は言葉が出なかった。

 

 ──色が……見えない……? 

 

 五人の音から感じる輝く色が見られなかったのだ。それだけではない。SMS前に比べて、音の聴き分けが出来なくなっていた。

 

 ──どうなってやがる……なぜ聴き分けが出来ない……! 

 

「──で、奏!」

「はっ! わ、悪い」

「あなた、顔色悪いわよ。体調でも優れないのかしら」

 

 俺はスタジオの鏡を見る。確かに、顔が真っ青になっていた。変な汗も出る。

 

 ──何だ……この感覚…………

 

「あなた、今日は休んだら? 幸いここは自分の家なんだし、ゆっくりしてなさい」

「あ、あぁ……」

 

 友希那にそう言われ、俺はスタジオを出て行く。

 友希那の言う通り、きっと体調が優れないのだろう。俺は部屋に戻り、ゆっくりと寝息を立てた。

 

 ☆☆★☆☆

 

 SMSが終了して、私は家で何がダメか考えていた。

 

 ──演奏は以前よりも良くなっている筈。なのに、何がいけなかったと言うの……? 

 

 気になったのは、スタッフの一言。

 

『もしかして緊張してました? なんかいつもと印象が違ったので』

 

 ──印象が、違う……

 

 その答えが分からぬまま、練習の日を迎えた。

 

「よし。それじゃ始めてくれ」

 

 奏の一言で、私達は演奏を始めた。

 歌っている時、奏の顔が見えた。すると、奏は目を見開いて固まってしまった。そして、顔色もだんだんと悪くなる。

 演奏が終わり、リサが声を掛ける。それに驚く奏。やはり、何かあったに違いない。

 そんな奏を見かねた私は、奏に休むよう催促する。するとゆっくりと立ち上がり、スタジオを出て行った。

 

「奏さん、大丈夫でしょうか……」

「奏がいないのは痛いけど、私達は練習を続けるわよ。さっきの二つ前から」

「……」

「あこ? カウントをお願い」

「あ、は、はい……!」

 

 私達は音を取り戻さないといけない。だから、練習してその答えを見出すしかない。

 暫く練習をしていると、終わりの時間が近付いていた。

 

「……そろそろ終わりの時間ですね」

「それぞれ躓いた所を次までに必ず潰しておくこと。それじゃあ、今日はここまで。各自片付けましょう」

 

 私が言うと、労いの言葉を各々にかける。

 

 ──メンバーで合わせてみても分からないわ……何故、SMSの演奏は受け入れられなかったのか。

 

 その時、もう一人のメンバーの顔が浮かぶ。

 

 ──奏なら、何か分かると思ったのだけれど……

 

「ゆーきな! クッキー食べる?」

 

 考え込んでいると、リサが声を掛けてきた。

 

「今井さん、一緒にクッキーを作る約束をしていたのに……一人で作ってしまったの?」

 

 そして紗夜が、リサに話しかける。

 

「あはは~ごめんごめん。なんかほら、これは別って言うか? SMSではちょっと……うまくいかなかったけどさ、アタシ達もまだまだなんだなって改めて分かったし! これからも頑張って行こー! 的な?」

 

 その時のみんなの姿を見て、どこか以前と違う所が見えた。

 

 ──もしかして……

 

 他のメンバーが話している中、私は一つの答えを出した。

 

「リサ」

「ん? どうしたの?」

「……もう、クッキーは作って来なくていい。必要ないわ」

 

 私の言葉に、全員が驚く。

 

「それじゃ、私はこれで」

 

 そう言ってスタジオを出る。奏のおばさんに挨拶をして、家に帰る。

 

 ──私達は、取り戻さなくてはならない……私達の歌を。私達の、張り詰めた思いを──。




次回予告

 調子を取り戻すため、一週間練習を休んだ俺。だが、力が戻ってくることは無かった。さらに気になったのは、メンバーの雰囲気だった。

次回、六人目の青薔薇 Neo-Aspect編

第四話「狂った歯車」



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