六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第四話 狂った歯車

 練習を休ませてもらった次の日。俺は以前同様、イヤホンをさして音楽を流す。

 

 ──やっぱり、聴き分けられない……

 

 以前は聴き分けられていた曲も、今となってはただの音にしか聞こえなかった。

 

 ──どうしちまったんだ俺は……

 

 異変を感じたのはSMS前。友希那達の音が聞き辛かったのは、ただの偶然かと思ってた。だがSMSが終わり、音は完全に聴き分けられなくなった。原因も分からない。

 今の俺は練習に参加しても役に立たないと思い、俺は暫く休むとだけ友希那達に伝えた。そして俺が休んでいる間は、スタジオは使わないで欲しいとも言った。暫く音楽から離れたかった。

 

 ──一週間もすれば、治るだろ。

 

 そんな気持ちで一週間、Roseliaから距離を置いた。

 そして、一週間後……。

 

「久しぶりだな。練習に出るのは」

「どうしたの奏? 今まで練習を休んだりして」

 

 リサが準備しながら俺に聞いてくる。

 

「ちょっと思う事があってな。けど、もう大丈夫だろ」

 

 ──あれから音楽は聴いてないけど、もしかしたら疲労とかで聴き取れなかったのかもしれないし。

 

「それじゃ行くわよ」

 

 友希那の一言で始まった演奏。俺はそれを黙って聞く。が……

 

 ──やっぱりダメか……全く聴き取れない……

 

 結果は虚しく、空振りに終わった。

 すると友希那が演奏を止める。

 

「あこ! またテンポが乱れているわよ!」

「……ごめんなさい……」

 

 あからさまに落ち込むあこ。

 

 ──それにしても良く気が付いたな。耳が相当良くなったのか? 

 

「前回もそれぞれ躓いたヶ所を克服しておくようにと言った筈なのに、何度も同じことを言わせないで」

 

 ──何だ……この雰囲気。俺でも分かる。これは良くないぞ……

 

「ま、まぁまぁ! ちょっと今回の練習には間に合わなかったかもだけどさ、ダメなら練習すれば良いじゃん?」

「友希那。前にも言ったが焦った所で──」

「練習に顔を出さなかった人は黙ってて」

 

 ──……は? 今なんつった……? 

 

「……では、もう一度同じところから」

 

 友希那は表情を一切変えず、再び練習を始める。だが、演奏が始まる事は無かった。

 

「……何度やったって、出来ないと思います」

「宇田川さん?」

「何度やったって、どうせあこ、失敗します……っ! だって、どうやったら上手になるか、もう分かんないし……!」

 

 不穏な空気が、スタジオに漂う。

 

「甘えた事を言わないで。ダメなら出来る様になるまで繰り返すしかないでしょう」

「何のために上手になればいいんですか!?」

「それは……!」

 

 あこの質問に答えられない友希那。

 

「SMSで失敗したのに、反省会もやらないで! みんな訳も分からないまま、ずっと練習してて……」

 

 あこの爆発は止まらなかった。

 

「FUTURE WORLD FES.に近付いているのか遠くなっているのかも分からないし……っ!」

「遠のいているわよ。今のあなたは」

「何でですか!? あこが上手じゃないからですか!?」

「あこ、落ち着け──」

「奏さんも奏さんですよ! SMSが終わって最初の練習以来顔を出さなくなって……! 一体何やってたんですかっ!」

「──っ!」

「こんなの……こんなのRoseliaじゃないっ!!」

 

 そう言ってあこは飛び出して行った。

 

「あ、あこっ!」

「友希那さん……」

 

 だが、友希那はあこが出て行ったことを気にもしなかった。

 

「五人だけでも練習を続けましょう」

 

 すると、滅多に反抗しない燐子が友希那に言った。

 

「どうして……あこちゃんにそんな事……言うんですか……?」

「燐子……?」

「きっと……わたし達……どれだけ練習したって……音なんか……あいません……!」

 

 気付くと、燐子は涙を流していた。

 

「こんな演奏……誰も振り向いてくれません……! だって……誰も……みんなの音、聴いてないから……っ!」

 

 そう言って飛び出す燐子。スタジオは、静寂に包まれる。

 リサが、恐る恐る口を開く。

 

「友希那、どうしちゃったの? この間から」

「私は、Roseliaを取り戻したいだけよ」

「取り戻すって……どういうこと?」

「私達の音を取り戻したい。ただ、それだけよ」

「音を取り戻したい……だから、昔の関係に戻る、と?」

「Roseliaに馴れ合いは要らない。クッキーは、もういらない」

 

 そう言って、友希那もスタジオから出て行く。

 残った俺達は、ただただその背中を見ているしか出来なかった。




次回予告

 あこと燐子、友希那が出て行き、静寂に包まれるスタジオ。そこで紗夜は口を開いた。

「……奏さん。教えて下さい。この一週間、何をしていたんですか?」
「――実は――」

 俺は、全てを話すのだった。

次回、六人目の青薔薇 Neo-Aspect編

第五話「ここにいる理由」
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