六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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七深~誕生日おめでとう!


第五話 ここにいる理由

 友希那が出て行って、再びスタジオは静寂に包まれる。

 

「……奏さん。教えて下さい。この一週間、何をしていたんですか?」

「そうだよ奏。休むしか言われてないもん。何があったの?」

 

 紗夜とリサに問い詰められる俺。ここまで来たら、言うしかない。

 

「その前に、一回スタジオを出よう。ここで話すのも何だし、ロビーで話す」

 

 そう言って片付けを始める俺達。

 片付けを終え、ロビーの椅子に座る俺ら。そこで、俺は話し始めた。

 

「……実はここ最近、音の聴き分けが出来なくなったんだ」

 

 俺の発言に驚く二人。

 

「さらに言うと、絶対音感も無くなった。今、お前達の音がずれているのかすらも、分からなくなっている」

「つまり、サヴァン症候群じゃなくなってきてる……って事?」

「いや、記憶力の方は健在だ。サヴァン症候群が関係しているとは思えない。ただ、音楽の才能がこれっぽっちも存在していない」

「いつから、ですか?」

 

 紗夜が恐る恐る聞く。

 

「違和感を覚えたのは、SMS出演が決まってから。初めはただ単にお前達の演奏技術が上がったのだと思った。他の曲を聴いている時はちゃんと聴き分けられたからな」

 

 でも──と俺は続ける。

 

「SMSが終了して、最初の練習。俺は耳を疑った。完全に聴き分けられなくなったんだ」

「だからあの時、顔色が悪くなったんだ……」

 

 リサの言葉に俺は頷く。

 

「それから俺は一週間、音楽から距離を置こうと考えた。なるべく耳を使わない様にと、耳栓までした。そうすれば、治ると思っていた」

「でも、結果は変わらなかった」

「あぁ。だから俺は練習の時、口に出せなかった。何処をどう直したら良いのか、分からなかったから」

「そうだったんですか……」

「だから友希那に黙ってろって言われた時、正直頭にきたが、アイツの言う通りだった。練習に顔も出さない奴が、口を挟むことなんて許されない」

 

 俺は立ち上がり、リサ達に背を向けて言った。

 

「今はもう、Roseliaにいる理由さえも分からない……」

 

 そう言ってCiRCLEを出る。

 

 ──また俺は、死神に戻るのか……

 

 夜空に光る星を見ながら、俺はそう思った。

 

 ☆☆★☆☆

 

 奏が帰って行き、CiRCLEにはアタシと紗夜が残った。

 何で気付けなかったのだろう。奏が苦しんでいる事に。どうしてあの時、もっと気にかけなかったのだろう。アタシは後悔しかなかった。

 

「……取り敢えず、帰りましょうか」

「……うん。そうだね」

 

 アタシと紗夜も、重たい腰を上げた。

 帰り道。アタシと紗夜は口を開かなかったが、紗夜から声を掛けてきた。

 

「……あの、今井さん?」

「あ、うん……なんか、アタシっぽくないよね。ごめん。なんか、アタシ……何してたんだろうって思ってさ。みんなよりも演奏は下手だから、少しでも役に立てること考えてさ。みんなが良い感じに演奏できるようにって色々やってたのに、全部、Roseliaの為になってなかったんだよね……友希那の夢が叶うように、ってやってたのに……」

 

 気付くと涙を流していた。悔しい。そんな思いが込み上げる。

 

「……あなたは、Roseliaのベーシストです」

「え……?」

「技術は足りていませんが、私はあなたをベーシストとして認めています。あなたの存在意義は、ちゃんとこのバンドにあります」

 

 いつもは辛口の紗夜だが、今回ばかりは優しいことを言ってくれた。それだけで、心が少し落ち着く。

 

「けどさ、これからどうしていったらいいんだろう?」

「緊張感のある私達の音……確かに、これは取り戻すべきですね。ですが、今より未熟だった頃に戻る必要はない筈」

「奏が入る前に戻る必要はない……確かにそうだよね」

「私達は、奏さんに頼りすぎたのかもしれません。覚えてますか? 奏さんが一ヶ月いなかった時の事」

 

 紗夜が言っているのは恐らく、奏がパスパレの面倒を見ていた時の事だろう。

 

「覚えてる。あの時の私達、何も出来なかったよね……」

「奏さんの前では強がりましたが、実際は違った。いつも奏さんがいたから、私達がいる」

「でも、今その奏が窮地に追いやられている……」

「奏さんの感覚を取り戻すには、私達の音を取り戻さなければなりません。その為にも──」

「今のこの状況を、何とかしないとね」

 

 アタシと紗夜は、そう決意した。




次回予告

 次の練習の日。そこにはアタシと紗夜と友希那しかいなかった。練習を始めようとする時、紗夜と友希那が口論してしまった。この時思ってしまった。

 ――こんな時、奏がいてくれたら……

 そしてアタシ達は、聞きたくない言葉を、聞いてしまった。

次回、六人目の青薔薇 Neo-Aspect編

第六話「これしかわからない」

「俺、Roseliaを辞めるよ」
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