六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第七話 どんな気持ちで~友希那side~

 スタジオを出た私はいつの間にか駅前にいた。先程のやり取りを思いだし、足が止まる。

 

「うっ……うう……っ」

 

 ──分からない……自分が何をしているのかも、何故こんなやり方しか出来ないのかも……! どんどん、遠のいてる……このままじゃ、何もかも失ってしまうかもしれない……

 

「友希那……先輩?」

 

 すると、誰かが声を掛けてきた。

 

「戸山……さん?」

「どうしたんですか!? 何かあったんじゃ──」

「いいえ。何でもないわ。ごめんなさい、見苦しいとことを見せてしまって」

「い、いえ! 友希那先輩、大丈夫ですか?」

「えぇ。落ち着いたわ」

 

 知り合いに見られてしまった恥ずかしさはまだ残っている。

 すると戸山さんが、何かを思いだしたかのように言った。

 

「あの! ライブ、来てくださいっ!」

「ライブ?」

「友希那先輩の力になりたいけど、私、上手にアドバイスとか、無理だし……私達の演奏、Roseliaの皆さんみたいに上手じゃないですけど、観てくれたら、きっと元気になれると思いますっ!」

 

 その時、私は気になった。彼女達は何を思ってライブをするのか。

 

「分かったわ。そのライブ、行かせてもらうわ」

「ありがとうございますっ! お待ちしてますね!」

 

 そう言って私は戸山さんと別れた。

 そしてやって来た、ライブの日。

 

「皆さんこんにちはー! 私達、Poppin'Partyです! まずは一曲、聴いてください!」

 

 そう言って始まる演奏。以前に比べて、技術は上がっていた。まとまり方も悪くない。

 

 ──ん? あれって……

 

 私は戸山さん達を見ていて気付いた。彼女達は、観客を見て、尚且つメンバーの姿も見ている。

 

 ──これが、彼女達の演奏……? 

 

 そして、不意に私達と比べてしまった。

 

 ──私達の演奏と何かが違う……けど、それが分からない……

 

 考えているうちに、ライブは終わっていた。

 

「友希那せんぱ~~い!」

「戸山さん。お疲れ様」

「今日の演奏、どうでしたか? キラキラドキドキ、してもらえましたか?」

「うん、したよ!」

 

 私ではなく、花園さんが返事をした。

 

「おたえに聞いてねぇっつの!」

「でも、私達がキラキラドキドキ出来てなくちゃ、絶対聴いている人に伝わらないと思う。だから、大事なことだよ」

「自分達が……一ついいかしら」

「何ですか?」

「あなた達、いつもどんな気持ちで演奏しているの?」

「ポピパが大好き! ……って思いで弾いてます」

 

 花園さんがそう答える。

 

「私も同じです! ポピパが大好き!」

「有咲も同じでしょ?」

「ま、まぁ……」

「みんな、ポピパが大好きなんです。その気持ちは、変わらないかな」

 

 ──あっ……

 

 漸くわかった。私達と彼女達、何が違うのか。

 

 ──みんな、ね……

 

「ありがとう戸山さん。今日は良いものを見せて貰ったわ」

「はい! また、Roseliaの皆さんのライブ、見に行きたいです!」

 

 そう言って、私達は別れた。

 その帰り道──。

 

 ──考えた事もなかった。みんながどんな気持ちで演奏しているのかなんて。同じ気持ちで演奏しているかなんて、なおのこと、気にしたことなかったわ。私達の音を取り戻すこと……それは、私達がRoseliaである誇りを取り戻すことなのかもしれない。

 

「でも、どうやって……あと少しなのに……」

 

 あと少しの答えが、未だ見つけられないでいた。




 次回予告

 あの日から練習に顔を出さなくなったあこと燐子。でも、二人のRoseliaに対する気持ちは変わらなかった。そしてあこと燐子は、決意する。

 六人目の青薔薇 Neo-Aspect編

 第八話「Roseliaを取り戻すために」

「また来たよ、先生……」
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