スタジオを出た私はいつの間にか駅前にいた。先程のやり取りを思いだし、足が止まる。
「うっ……うう……っ」
──分からない……自分が何をしているのかも、何故こんなやり方しか出来ないのかも……! どんどん、遠のいてる……このままじゃ、何もかも失ってしまうかもしれない……
「友希那……先輩?」
すると、誰かが声を掛けてきた。
「戸山……さん?」
「どうしたんですか!? 何かあったんじゃ──」
「いいえ。何でもないわ。ごめんなさい、見苦しいとことを見せてしまって」
「い、いえ! 友希那先輩、大丈夫ですか?」
「えぇ。落ち着いたわ」
知り合いに見られてしまった恥ずかしさはまだ残っている。
すると戸山さんが、何かを思いだしたかのように言った。
「あの! ライブ、来てくださいっ!」
「ライブ?」
「友希那先輩の力になりたいけど、私、上手にアドバイスとか、無理だし……私達の演奏、Roseliaの皆さんみたいに上手じゃないですけど、観てくれたら、きっと元気になれると思いますっ!」
その時、私は気になった。彼女達は何を思ってライブをするのか。
「分かったわ。そのライブ、行かせてもらうわ」
「ありがとうございますっ! お待ちしてますね!」
そう言って私は戸山さんと別れた。
そしてやって来た、ライブの日。
「皆さんこんにちはー! 私達、Poppin'Partyです! まずは一曲、聴いてください!」
そう言って始まる演奏。以前に比べて、技術は上がっていた。まとまり方も悪くない。
──ん? あれって……
私は戸山さん達を見ていて気付いた。彼女達は、観客を見て、尚且つメンバーの姿も見ている。
──これが、彼女達の演奏……?
そして、不意に私達と比べてしまった。
──私達の演奏と何かが違う……けど、それが分からない……
考えているうちに、ライブは終わっていた。
「友希那せんぱ~~い!」
「戸山さん。お疲れ様」
「今日の演奏、どうでしたか? キラキラドキドキ、してもらえましたか?」
「うん、したよ!」
私ではなく、花園さんが返事をした。
「おたえに聞いてねぇっつの!」
「でも、私達がキラキラドキドキ出来てなくちゃ、絶対聴いている人に伝わらないと思う。だから、大事なことだよ」
「自分達が……一ついいかしら」
「何ですか?」
「あなた達、いつもどんな気持ちで演奏しているの?」
「ポピパが大好き! ……って思いで弾いてます」
花園さんがそう答える。
「私も同じです! ポピパが大好き!」
「有咲も同じでしょ?」
「ま、まぁ……」
「みんな、ポピパが大好きなんです。その気持ちは、変わらないかな」
──あっ……
漸くわかった。私達と彼女達、何が違うのか。
──みんな、ね……
「ありがとう戸山さん。今日は良いものを見せて貰ったわ」
「はい! また、Roseliaの皆さんのライブ、見に行きたいです!」
そう言って、私達は別れた。
その帰り道──。
──考えた事もなかった。みんながどんな気持ちで演奏しているのかなんて。同じ気持ちで演奏しているかなんて、なおのこと、気にしたことなかったわ。私達の音を取り戻すこと……それは、私達がRoseliaである誇りを取り戻すことなのかもしれない。
「でも、どうやって……あと少しなのに……」
あと少しの答えが、未だ見つけられないでいた。
次回予告
あの日から練習に顔を出さなくなったあこと燐子。でも、二人のRoseliaに対する気持ちは変わらなかった。そしてあこと燐子は、決意する。
六人目の青薔薇 Neo-Aspect編
第八話「Roseliaを取り戻すために」
「また来たよ、先生……」