あことりんりんは衣装を作っていた。りんりんの家に泊って、寝る間も惜しんで作った。そして──
「衣装……」
「できたーっ!」
遂に衣装が完成したのだ。
「手伝ってくれてありがとね、あこちゃん……」
「ううん! この衣装作ってるとき、Roseliaが好きだーって改めて思えたもん! 早くみんなに来てほしいな!」
「そうだね……わたしも、みんなに来てほしいかな……」
その時、りんりんの家のベルが鳴った。誰か来たみたいだ。
りんりんがドアを開けると、そこにいたのはリサ姉と紗夜さんだった。
「お邪魔します」
「お邪魔しま~す!」
「リサ姉に、紗夜さん!? どうしたんですか?」
「巴さんから、二人が最近、白金さんのお家で衣装を作っていると聞いたもので」
「そ、そうだったんですね……」
「でも、どうしてここに……」
りんりんが声を震わせて聞く。もしかして、怒りに来たのかな……
「二人が練習を飛び出しちゃった理由が分かったの」
「だからこそ、お二人に力を貸してほしい」
「どういうことですか?」
紗夜さんとリサ姉が説明してくれた。あこ達は同じ目標を持っていながら、同じ方向を見ていなかったと。個に囚われていた、と。でも、あことりんりんだけが、集団を意識していたと説明してくれた。
「アタシ達がもう一度Roseliaを取り戻すには、みんな全員、Roseliaである事をもう一回意識しないといけないかなって思って……」
「わたし達も、同じ事、考えてました……」
「ホントッ!?」
「うん。あこ達もどうやったらRoseliaが戻るかなって……そう思って衣装を作ってたんだ。あこ、Roseliaが大好きだから!」
「その気持ち、これからのRoseliaにとって、とても大切なものになると思うわ。その気持ちは、Roseliaに誇りを持っているという事だから」
「勿論です! あこはRoseliaに誇りを持っています! でも……」
ふと思った。確かにRoseliaの中で集団を意識していたのは、あことりんりんかもしれない。けど、それ以上に意識している人がいる筈だ。
「でも、何ですか?」
「一番集団を意識していたのは、奏さんじゃないんですか? いつもあこ達の事を考えてくれているから、てっきりそうなのかと……」
「奏さんは……どうしたんですか……?」
あことりんりんが聞くと、リサ姉と紗夜さんが先程とは違う表情をする。何か隠している様な、そんな感じ。
「紗夜さん、リサ姉?」
「紗夜、どうする?」
「言った方が良いでしょう。彼もRoseliaの一員です」
「なにか、あったんですか……?」
「実は──」
紗夜さんが話してくれた。奏さんが音楽の才能、というより絶対音感を失ったと。そして、Roseliaを辞めると言った事も。
「じゃああの時、奏さんが練習に来なかったのは……」
「自分なりに答えを見つけようとしてたみたい。でも、結果は空振りに終わっちゃったって……」
「そんな、あこ……奏さんに酷いことを……」
あこは奏さんの事を知らずに、練習に来ないで何やってたんだと言ってしまった。奏さんは、苦しんでいたのに……
「あ、あこ!?」
気が付いたら大粒の涙を流していた。
「いつもRoseliaの事を考えてくれていたのに……奏さんが苦しんでいる時に力になれなかった……」
「あこちゃん……」
──あこ、ここはもう少し落ち着いて叩いた方がいいぞ。
──あこ、今の所早かったな。もっと周りの音を聞け。
──よくやった。凄いぞあこ。
「あこやだよ! 奏さんがRoselia辞めちゃうの!」
奏さんがRoseliaを辞める。考えただけで胸が苦しい。
「お兄ちゃんの様に慕ってたもんね、あこ」
お兄ちゃん……確かに奏さんはあこの事を妹の様に接してくれてる。でも、それじゃ嫌なんだ。だってあこ、奏さんが好きなんだもん。いつからかは分からない。音楽に直向きになっている奏さんがカッコよくて、それで……
「気付いたら奏さんが好きになってた」
「そっか……」
「まさか宇田川さんまで……」
「もしかして、リサ姉達も?」
「そうだよ。アタシと友希那は勿論、紗夜も」
「ええ!? 紗夜さんも!?」
「私が異性を好きになってはおかしいですか!?」
「いや、そうは言ってませんが……」
「奏さんの熱心な指導に、気が付いたら心を奪われてしまいました。だからこそ、奏さんを戻したいのです」
「奏がいない今、アタシ達がやらないと。そして、Roseliaを取り戻して、奏も元に戻す!」
「頑張らないとね! りんりん!」
「そう、だね……」
何とかして奏さんを元に戻す。その為にはRoseliaを取り戻さないと。Roseliaに誇りを持って。
「そう言えばりんりんは奏さんの事好きなの?」
「私は、まだわからないかな……そう言った感情は……」
「そっか。もしりんりんが奏さんの事好きになっても、負けないからね!」
「う、うん……」
奏さん。いつかこの気持ち、伝えますからねっ!
次回予告
燐子とあこが練習に戻り、あとは友希那のみとなった。紗夜は友希那に接触し、何を語るのか。そして、友希那の答えは……
次回、六人目の青薔薇 Neo-Aspect編
第十一話「Roseliaの……」