六人目の青薔薇   作:黒い野良猫

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第七話 初めての喧嘩

 友希那のライブから数日後。

 

「リサ、帰ろうぜ」

「うん。あ、友希那も誘っていい?」

「別に良いぞ」

 

 授業が終わった俺達は、一緒に帰る。

 

「え!? 友希那、今の話マジ!?」

「本当よ。紗夜って子とバンドを組むようになったの。まだボーカルとギターしかいないけど、コンテストに向けて新曲も出来上がってるわ」

 

 リサと友希那の会話を、俺は口を挟まず聞く。

 まぁ、予想していた通りだ。紗夜という子の音楽の情熱、友希那の、音楽に全てを書ける程の真剣さ。それらが絡み合ったんだろう。

 

 ――ただ言わせてもらうと、紗夜って子の音、何か違和感を感じる。あの時のライブもそうだったが、何かに焦っている様な……

 

 その時、校門前に服装は違うが見覚えのある子がいた。

 

「友希那さん! 今度こそお願いします!」

「ん? あれ? あこじゃん。どしたの?」

「リサ、知り合いなの?」

 

 まさかリサと関りがあるとは。服装から見て、羽丘の中等部か。って事は部活か何かか?

 

「お願い! お願いします! あこ、良いドラム叩きます! だからバンドに入れてください!」

「ちょちょちょ、話が見えないんだけど? あこ、ドラムやってたんだ。友希那のバンドに入りたいの?」

「うん! でも、何度も断られて……それでも、友希那さんのバンドに入りたくて……どうやったらあこの本気が伝わるかなって……」

 

 するとあこは自分のスコアを見せてきた。

 

「友希那さんの曲、全部叩けるようになってきました! いっぱいいっぱい練習して……! その……」

 

 するとあこは頭を下げた。

 

「お願いです! 一回だけで良いから一緒に演奏させて下さい! それでダメだったら諦めるから……」

「――何度も言ってるけど、遊びじゃないの」

 

 そういって、友希那は歩き出す。俺はあこの方を見る。あこの下には、僅かに水滴が落ちていた。

 

 ――こいつ、ここまで本気で……

 

 リサを見ると、あこを心配そうな目で見つつ、友希那の方を見る。

 

 ――しょうがない。ここは一肌脱ぐか。

 

「待てよ友希那」

 

 俺は先に歩く友希那に声をかける。

 

「いくら何でも冷てぇんじゃねぇの。ここまで真剣に志願しているのに、その音も聞かずに追い出すなんて」

「……彼女は世界で()()に上手と言ったのよ。一番を目指さない人を、メンバーに入れる資格はないわ」

「それはこいつの音を聞いて決めてんのか」

「ちょ、奏!」

 

 少し喧嘩口調になってしまい、リサが止めに入る。

 

「こんなにスコアをボロボロにするまで練習してくれたのにも関わらず、その音を聞いてやらないなんて、お前の親父さんを潰した事務所並み……いや、それ以下のクズだぞ」

 

 その言葉に頭が来たのか、こちらに向かってきて友希那は俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「私をあんな事務所と一緒にしないで!」

「一緒だろ。人の言葉も聞かずに自分だけ突っ走って。自分の事しか考えていない今のお前は、ビジネスの事しか考えず、バンドの意見を無視し解散まで追い込んだ事務所と全く一緒だ」

「ちょっと二人共止めなって! ここ学校の前だよ!」

 

 リサが割り込み、俺の胸ぐらを掴んでいる友希那の手を剥がす。

 

「お前の言いたいことも分からんでもない。けど、ここまで真剣に、涙を流してまで志願している奴を無下にするのはどうかと思うぞ」

 

 俺は落ち着いた口調で話す。友希那も少し落ち着いたのか、何も言わず話を聞いてくれた。

 すると友希那はため息をつき、言った。

 

「はぁ、分かったわ。一回だけよ」

「え……?」

「一回だけ、セッションしてあげるわ。それであなたの実力を見る。それでいい?」

 

 その言葉を聞いた時、あこは顔を輝かせた。

 

「あ、ありがとうございます! あこ、頑張ります!」

「なら早く行くわよ。紗夜を待たせているから」

 

 そう言って友希那は先を歩く。こんな時でも、表情は崩さない。

 

「あ、あの!」

 

 俺も後に続こうとした時、あこに声を掛けられた。

 

「あ、あこの為にありがとうございます! 確か、ライブハウスで一度会ってますよね?」

「気にするな。今回の友希那の行動には少し腑に落ちなかったからな。それに覚えててくれたか。俺は内田奏。リサと友希那の幼馴染だ」

「宇田川あこです! 宜しくお願いします! 奏さん!」

「何しているの、早く来ないとセッションさせてあげないわよ」

「あ、待って下さい友希那さん!」

 

 友希那が言うと、宇田川は友希那の下に走って行った。その場には俺とリサが残る。

 

「奏と友希那が喧嘩したところ、初めて見たかも」

「あれは喧嘩とは言わねぇよ。俺が一方的に言っただけだ」

「でも友希那、凄いキレてた」

「事務所以下のクズって言ったからな。それは頭に来るだろ。まさか胸ぐらを掴まれるとは思わなかったが」

「そうだね……」

 

 俺達は友希那と宇田川の背中を見る。

 

「……俺はあいつを押した以上、見届けねばならん。お前はどうする?」

「ならアタシも行こうかな。あこのドラム見てみたいし」

「じゃ、行くか」

 

 その時、俺のスマホがなった。画面を見ると、友希那からメッセが来てた。

 

『さっきはごめんなさい』

 

「律儀な奴」

 

 俺は微笑み、友希那に返信する。

 

『別にいい。俺も悪かった』

 

「かなでー! 置いてくよー!」

「今行く」

 

 俺はスマホをしまい、友希那達の後を追うのだった。

内田奏(主人公)を他のバンドと絡ませる?

  • 絡ませる
  • 数名だけ絡ませる
  • Roseliaだけで良い
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