五等分の花嫁 〜Story With The Death Strawberry〜   作:鵺鵠とも

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̤今回は三玖回です。
サブタイは、この話を読み終わったあとに調べて頂けるとなるほどと思っていただけるかもしれません。




第4話 ❁ ネムノキ ❁︎

「ふぅ…あっぶねー!ギリギリ間に合った…!」

 

やっぱり家庭教師ってキッついな。自分の勉強も両立しなきゃなんねぇの忘れてたぜ。親父にも遊子と夏梨にも心配掛けちまった。

 

全力で走ったせいで拭っても拭っても汗が止まらない。朝もギリギリまで五姉妹のための勉強をしていたのである。そのせいで朝ごはんを抜くハメになってしまうとは予想外だった。

 

乱れた息を整えていると黒塗りのリムジンみたいな車が近くに停まった。運転席から執事みたいな服を着たじいさんが降りて会釈してきた。

 

「あ!イチゴ君」

 

「おはようございます!黒崎さん!」

 

「く、黒崎君…。お、おはようございます…」

 

高そうな車から見知った五姉妹が降りてきた。一花、四葉、五月はちゃんと挨拶をしてきた。五月はかなりオドオドと気まずそうにしているが。

 

「あ、あの…昨日はすみませんでした…」

 

「ったく…ホントだよ。まさか全員サボるとは思わなかったぜ」

 

そう。昨日、一護がマンションに来たときには五姉妹は外出し、サボっていたのだ。一護が軽く圧をかけたにも関わらず。あの意欲だけはある四葉もクソ真面目な五月もサボったのだ。二乃か一花が唆しただろうことはなんとなく予想がついたが、流石の一護も驚いていた。

 

「本当にすみませんでした…」

 

「どうせ一花か二乃が主犯だろ?初犯だから今回は許すけど休みたい時は連絡入れろよな」

 

「はい…ありがとうございます…」

 

それだけ言って先に行っている姉たちの元へ小走りで戻って行った。連絡入れろよなとは言ったものの、まだ連絡先を教えていないことに気付くのはもう少し経ってからなのはご愛嬌ということで。

 

「そうだ。おい!お前ら昨日授業サボったんだからテストの復習ぐらいやったよな!」

 

その声に五姉妹の動きがピタリと止まった。一人として動く気配がない。

 

「問一 厳島の戦いで毛利元就が破った武将は誰だ」

 

誰一人として答えない。そして、逃げ出した。五姉妹は口ではなく行動で答えを出したのだ。やっていない、分からないと。本当にコイツら卒業する気あんのかと本気で思った。

 

❁︎ ❁︎ ❁︎ ❁︎ ❁︎

 

昼だ。五人のテストの解答を○×で表にしたり、プリント作ったりしてたらいつの間にか昼になっていた。腹も減ったことだしメシだメシ。ということで学食へと向かい、生姜焼き定食を頼んだ。そして席を探していると三玖を見つけた。

 

「よぅ、三玖」

 

一護の呼びかけに反応し振り向いた。そのついでにトレーの上にあるものが見えた。

 

「サンドイッチと…なんだその飲み物」

 

「…抹茶ソーダ」

 

「そんな飲みもんがこの世にあんのか…」

 

不味そう。という言葉が出かけたが無理やり飲み込む。白哉とか貴族達が見れば斬り捨てそうな飲み物の存在を気にしつつ、テスト表を作りながら気付いたことを聞こうとした。

 

「なぁ、今朝の問題なんだけどよ…」

 

と言いかけたところで邪魔が入った。

 

「黒崎さん!お昼一緒に食べませんか?」

 

「お前か…。そんなんだからバカリボンから昇格しねぇんだぞ」

 

「まさかの昇格制だった!?」

 

四葉を無視して三玖に話の続きを聞こうとしたがまたもや四葉が邪魔をする。

 

「これ見てください英語の宿題!全部間違えてました!あはははは!」

 

コイツ…ほんっとにどうしてやろうか…。

 

「ごめんねー邪魔しちゃって」

 

四葉と一緒に来ていた一花が四葉を引き剥がした。

 

「一花も見てもらおうよ〜」

 

「うーんパスかな。私たちほらバカだし、ね?」

 

そう言った時の一花の笑顔はどことなく嘘くさく見えた。大した理由はないのだが。

 

「だからってなぁ…」

 

「それにさ高校生活勉強だけってどうなの?もっと青春をエンジョイしようよ。例えば…恋とか!」

 

「恋なぁ…」

 

「イチゴ君かなりカッコイイし、結構モテてたんじゃない?どうなの?」

 

…ルキアも乱菊さんもそういうんじゃないし、ネルはうん…まぁアレだし、たつきも同じ道場のよしみだし、井上は…分かんねぇ。

 

「んなこたねぇよ。逆におめぇらはどうなんだよ」

 

「あはは…まぁ、恋愛したくても相手がいなかったんですよね〜三玖はどう?好きな男子とかできた?」

 

「えっ…い、いないよ!」

 

三玖は少し驚いた表情から頬を赤らめ、逃げるようにどこかへ行ってしまった。

 

「なんだ急に…やっぱよく分かんねぇなアイツ」

 

「あの表情姉妹の私には分かります。三玖は恋をしています」

 

「誰だと思う?お姉さん気になる!」

 

アホくさ。飯食お。

 

❁︎ ❁︎ ❁︎ ❁︎ ❁︎

 

あの後一花と四葉を放置して昼飯を食べて教室に戻った。次の授業の準備をする為に机の中を漁っていると手紙を見つけた。

 

 

《イチゴへ 三玖》

 

《昼休みに屋上に来て。イチゴに伝えたい事がある。どうしてもこの気持ちが抑えられないの。》

 

 

あー…。見てしまった。見なかったことにしたらいけねぇかな。それは流石に失礼か。

 

「どうしたんですか?なんだかお顔が死んでますけど…」

 

「ん、いや大丈夫だ」

 

そうですか…無理しないでくださいね?と五月は自分の席へと戻って行った。

 

 

昼休み時間も残りわずか。しかし、呼ばれてしまった以上、屋上に行かなければと思い目的地へと赴いた。ドアを開けた先に三玖が既に待っていた。

 

「遅れた。わりぃ」

 

「ううん、大丈夫。手紙を見て来てくれて良かった」

 

「んで?どうしたんだ?」

 

「食堂で言えたら良かったんだけど、誰にも聞かれたくなかったから」

 

あれ?なんだ、マジでそういう事なのか?まだ知り合って一週間も経ってねぇんだけど。

 

「あのね、ずっと言いたかったの。

 

「……す…、…す

 

 

「陶 晴賢」

 

 

は?陶晴賢?あ、今朝の問題の答えか。なるほどな。

 

「よし。言えた、スッキリ」

 

ヘッドホンを耳にセットし、屋上から出ようとする三玖。初めて本来の使い方をしているところを見た気がする。

 

「いや、そうじゃねぇ!なんで今なんだ!?」

 

肩を掴んで三玖の動きを抑えると、三玖のスマホが落ちていく。

 

「わーっ」

 

「やばっ!」

 

片足踏み込んで手を伸ばし、スマホをキャッチする。危なかった…と一息ついて確認してみると、ロック画面に武田信玄の武田菱が写っていた。

 

「見た?」

 

驚く程に素早い動きで一護の手からスマホを奪い取り、鋭い眼光を向けながらこちらを見てきた。

 

「まぁ、おう」

 

「だ…誰にも言わないで。戦国武将…好きなの」

 

恥ずかしそうに顔を手で覆い隠す。歴女ってやつなんだろうな。

 

「へぇ…」

 

「きっかけは四葉から借りたゲーム。野心溢れる武将たちに惹かれてたくさん本も読んだ。

 

「でもクラスのみんなが好きな人はイケメン俳優や美人なモデル。それに比べて私は髭のおじさん…

 

「変だよ」

 

 

 

「別に変じゃねぇだろ。テメーが好きなもんをテメー自身が信じてやんねぇでどうすんだよ」

 

 

「……!」

 

三玖は驚いて、目を見開く。

 

「そうだ、あんま戦国武将覚えてねぇから教えてくれよ。なんか逸話とか一緒に聞いたら覚えれるから。いいか?」

 

「うん!」

 

出会ってから初めて見た満面の笑みだった。多分、人に戦国武将が好きだってことを話してこなかったから、誰かに話せることが嬉しいんだろう。やっと三玖がどういうやつなのかというのがほんの少しだけ分かった気がする。

 

「そういや、姉妹にも武将好きって事言ってねぇのか?」

 

「うん」

 

「なんでだよ、姉妹だろ?」

 

「姉妹だからだよ」

 

俯きながらそう言う。さらに、五人の中で自分が一番落ちこぼれだから言えないんだと付け加える。

 

「でも、確かこないだやったテストで一番だったろ?」

 

「うん、でも何となく分かるんだ。私程度にできること他の四人もできるに決まってる。

 

「だって五つ子だもん」

 

そうか。なるほどな。これで確信を得ることが出来た。モチベーションを見つけた。

 

「三玖。俺はこれからお前らに向き合って本格的に勉強を教える」

 

「…え?」

 

「お前さっき言ったろ?五つ子だから自分が出来る事は他の四人も出来るって。だったら、他の四人に出来る事はお前も出来るってことだ」

 

開いた口が塞がらない程驚く三玖。

 

「そんな考え方したこともなかった…」

 

「それはお前が自分に自信がねぇからだ」

 

ここで息を吐く。次の言葉を紡ぐために。

 

 

「一人が出来る事は全員出来る。一花も二乃も四葉も五月も、そして三玖も全員が百点取れる可能性がある。

 

 

「だから、お前らを信じる俺を信じろ」

 

 

三玖は何かを隠すように顔を背け屋上のドアを通り抜けた。その背中を追いかけるように一護も歩く。

 

 

「五つ子を過信しすぎだよ」

 

 

微笑みながらそう呟いたのが聞こえた。

 

 

◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 

 

────別に変じゃねぇだろ。テメーが好きなもんをテメー自身が信じてやんねぇでどうすんだよ

 

 

嬉しかった。そんなこと誰も言ってくれなかったから。誰かに自分の好きなものを話せることに心が躍る。ワクワクする。

 

 

────お前らを信じる俺を信じろ

 

 

心が跳ねた。何故だろう。何故だか心地良い。見た目は最初怖かったけど、今はそうでもない。本人に言ったら怒られるかもしれないんだけど、タンポポみたいな優しさを感じられる。

 

 

なんでだろう。屋上で話したあの日からイチゴを見ると胸がトクントクンってなるんだ。

 

私はまだコレを表す言葉が分からない。だから、これから勉強するんだ。

 

私たちを信じてくれるイチゴのために…。

 

 

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