THE UNSUNG RECORDーGIRLY AIRFORTHー 作:天羽々矢
OP:KODO/nonoc
海鳥島上空でザイと遭遇しなかったために武装と燃料に余裕が生まれたグリペンとファントムは第7艦隊へ急行している。
既に艦隊上空ではボギーことF-15SE-ANMが自衛隊機、米軍機への攻撃を開始、最初に被害を受けたF-2A-ANMバイパーゼロは空域からの離脱を始めていた。
「バイパーゼロがやられた!?」
《うん・・・相手が機体をひっくり返したと思ったらバイパーゼロのエンジンがボンッて・・・》
グリペンのコクピットで慧がイーグルから話を聞いていた。
最前線の拠点である那覇基地防衛の切り札であるバイパーゼロが被弾する程の相手だ、慧達では相手にならないかもしれない。
《
ディスプレイにバイパーゼロからのメッセージが浮かぶ。
エンジンから黒煙を吐き、フラフラと不安定な状態でバイパーゼロが離脱し、自分をやった相手の事を伝える。
《
「え・・・!?」
バイパーゼロからの報告に慧が反応した。
オレンジの翼端と3本の爪痕、それではまるで慧が夢で見たあの機体と同じではないか。
[アロー3、ロスト!更にもう1機!]
そこにAWACSから味方機撃墜の報が入る。
やられたのは自衛隊機のようだ。
[何者なんだこいつは。機体は・・・F-15!]
F-15・・・機体まで夢と同じと来た。
慧の動悸が更に激しくなる。
「慧、大丈夫?」
そんな慧を後席のグリペンは心配しているようだ。
「あ、ああ、大丈夫だ・・・」
慧は自分の状態を誤魔化しグリペンには大丈夫だというが、内心は酷く動揺していた。
夢の中とはいえ自分が何度も殺された相手がすぐ目の前にいるかもしれないのだ。しかも夢ではなく現実でだ。
しかし、そんな慧達を更なる不運が襲う。
[警告!新たなボギー出現、機数3!その上ザイの大編隊も到達した!]
最悪だ。
バイパーゼロに損傷を与えた相手だけでなく、新たなボギーとザイまで相手にしなければならない。
《恐らく後から来たボギーが最初のボギーの取り巻きなのでしょう。慧さん、リーダー機の方をお任せしてよろしいでしょうか?私が取り巻きを、イーグルでザイをお出迎えします》
ファントムの提案に慧に更なる重圧が伸し掛かる。
夢に出て来た奴が現実にいるという事だけでも衝撃なのにそれの相手をしろと言ってきたのだ、慧にとっては冗談ではなかった。
《DRAGOON02、03、04、相手は3機だ。紅い奴を俺がやる》
《了解、DRAGOONリーダー。03、04、我々で緑と黄色を相手しましょう》
《DRAGOON03、了解しました》
《ちょっと!何勝手に命令してるの!?ミオに命令していいのはレンだけよ!》
対してボギー・・・レン達DRAGOONはリーダーであるレンは紅い機体、グリペンに狙いを定めイチゴ達はそれ以外、イーグルとファントムを狙うがミオはレンからの指示でなければ動かないようだ。
そこでレンが新たに指示を出す。
《02は黄色、03は緑、04はザイ達と一緒に艦隊を攻撃だ》
《了解です、レン》
《了解しました、レン君》
《レン!了解、派手にやってやるわ!》
《お前ら揃いも揃って名前を出すなよ・・・》
自分の指揮下の少女達が全員名前を出した事に呆れながらも編隊を解き各々の役割に向かう。
まずはミオ、レンの指示で護衛としてついたザイ4機と共に海面を低空で駆け抜け空対艦ミサイルの射程に捉える。
「目標ロック!発射ぁ!」
Su-30SM-ANMの主翼ハードポイントからKh-35空対艦ミサイルが切り離され、直後にミサイルのエンジンが点火、イージス艦に向け飛翔する。
イージス艦はミサイルを迎撃しようとCIWSを連射するが、ミサイルを捉え切る事が出来ず、ミサイルが艦橋を直撃。恐らくもう機能は果たさないだろう。
そしてミオは機首を引き起こして急上昇、そして今度は別のイージス艦に狙いを定めて大空に機体の腹を向け背中から急降下、そして再び空対艦ミサイルを発射し機首を引き起こす。
そしてミサイルがイージス艦を穿ち、ミオは機体を水平に戻しそこにザイが他の艦船も沈めミオの後方に戻る。
続いてイチゴとシャロン。
各々が指示された標的と会敵し交戦状態に入る。
イチゴはイーグルと、シャロンはファントムとだ。
《標的を捕捉》
「このぉ!」
ザイを迎撃しようとしたイーグルはマニューバを駆使して背後についたイチゴのJ-15-ANMを何とかかわそうとするが、どうもイーグルの動きは無駄があるのかイチゴを捉え切れていない。
それどころか追われているイチゴの方がまだ余裕そうだ。
《折角です、少し遊ばせてもらいましょう》
イーグルがムキになっている事を利用し、イチゴはそのままイーグルを引っ張り回し艦隊から徐々に離していく。
「イーグル、貴方自分の役目を・・・!」
ファントムはムキになっているイーグルに呆れフォローに向かおうとした瞬間にロックオン警報が鳴り響く。
そのファントムの後方には主翼を後ろに下げた状態のシャロンのトーネードGR.4A-ANMが張り付いた。
《お相手、よろしくお願いしますね》
「あら、オープン回線でご挨拶とは随分と余裕ですね」
オープン回線でファントムに通信を入れるシャロン。
そこでファントムは自身の技術、ドーターへのクラッキングを始めようと意識を集中させる。そしてそれにファントムの手が触れている左右のパネル、ドーターの操縦機構である“
・・・が、
バチッ!!
「くっ!」
少しした時に突如NFIのパネルがまるで主であるファントムを拒絶するようにスパークを起こし出し、レーダーが捉えているはずのトーネードの機影が3つに分裂し出した。
「これは、カウンタークラック・・・?」
ファントムの頬を僅かに汗が伝う。
恐らく先程のオープン回線での通信に返答した事でファントムの位置を特定し、レーダー等の通信機器を解析で自分達のデータ・リンクの暗号を特定したのだろう。そして先程のNFIのスパークはシャロンのクラッキングで機器の一部がショートしたからだ。それによりファントムからクラッキングを解く事ができない。
あの一瞬の内にそれをやってのけたシャロンにファントムは思わず戦慄し、本物のシャロンにロックされないよう回避機動を取るしかない。
最後に残ったのは慧とグリペン、そしてF-15SE-ANMを駆るレン。
レンも自分の獲物を見つけ捕捉すべく接近。慧もロックされまいと機体を捻らせ両者はそのまますれ違うが、慧にはその一瞬で見えた。
・・・翼端がオレンジに塗られた主翼と水平尾翼、そして垂直尾翼に描かれた3本の爪痕。
「3本の爪痕・・・本当に・・・いたのかよ・・・!!」
慧の動悸が更に激しくなるが今の状況だ、一刻も早く追い払わなくては。
先手を取ったのは慧。レンのF-15SEの背後を取りミサイルロックをしようと追従する。
「慧、撃って。当たる」
「え、でもまだ捉え切れてないぞ!?」
「撃って」
グリペンに言われるがままに慧は発射ボタンを押した。
主翼ハードポイントからミサイルが切り離され飛翔、F-15SEに向け飛ぶ。
まだシーカーが捕捉できていなかった状況にも関わらずだ。
「大丈夫、射程距離内にいれば墜とせそう」
瞳に光の筋を浮かべながら言葉を発するグリペンに慧は驚愕した。
しかし次に行動に出たのはレン。
機体を急降下させるに伴いミサイルもレンを追い急降下。そしてレンは海面擦れ擦れで再び機首を上げミサイルもそれに追従、しかしレンが飛ぶ先には・・・米海軍の駆逐艦がいた。
《・・・そのままついて来い》
冷静な発言の後にレンは駆逐艦からの迎撃を回避する為に海面と垂直になるよう機体を傾け、そして駆逐艦の艦橋と激突しそうな程に擦れ擦れで飛行。・・・だがそうすれば今度はレンを追っているミサイルが飛んでくる。しかも艦橋への直撃コースだ。
「!」
それに気づいたグリペンは急ぎミサイルの軌道を変更。艦橋に直撃しないようミサイルを上昇させた。
が、その一瞬でレンのF-15SEがミサイルの背後につき20mmバルカン砲を斉射しミサイルを撃墜する。
「ミサイルが迎撃された・・・?」
「あんな無茶苦茶な飛び方するなんて・・・!」
慧とグリペンはレンのセオリー無視の飛行に戦慄するしかない。
そしてそれが致命的な隙となった。
今度はレンがグリペンを捉えミサイルをロックしすぐさま発射。
「ミサイル!」
「っ!!」
グリペンが警告を発し、慧はすぐにフレアを投下し急速回避。ミサイルはフレアに釣られロストするがそれもつかの間。
レンの後方にオレンジに変色したザイが2機、編隊を組みながらつく。
「オレンジのザイ!?イーグルが言ってた!?」
「普通のザイとEPCMパターンが全然違う・・・」
突然参入してきたオレンジのザイに慧とグリペンの混乱は更に加速する中、F-15SEのコクピットにいるレンは右手をNFIのパネルから離し、人差し指と中指で2のジェスチャーをした後に右手を振り下ろす。
するとオレンジのザイの表面が一瞬発光し2機がグリペンに機銃で襲い掛かる。
「慧、ブレイク!」
「クソッ!」
慧はすぐに機体を捻らせ急降下、当然2機のザイもそれに追従する。
だが、ザイの反応に慧が何かの予想を導いた。
「まさかあいつ・・・ザイを操ってるのか!?」
F-15SEを探しながら、慧が最悪の予想を口走るが、
「ボギー直上!」
「!?」
グリペンの警告に慧が真上を見るが既に手遅れだった。
レンのF-15SEが急降下しながらグリペンに近づき、胴体側面の兵装ステーションのドアが開きミサイルがせり出す。そして間髪入れずに発射。
回避する隙もなく、
「ぐうぅっ!!」
「うぅっ!」
ミサイルが炸裂し、衝撃がコクピットを襲う。
「ぐ・・・グリペン大丈夫か!?」
「へい、き・・・」
慧がグリペンの安否を確認し、彼女は兵器だというが明らかに平気ではない。
額に玉のような汗が浮かんており、表情も非常に辛そうだ。
機体の方はエンジンが炎と共に黒煙を噴いており、ミサイルの破片で主翼や尾翼といった操縦翼面にもダメージが入ったようで無理ができない。
そこにレンのF-15SEが止めを刺さんと戻ってきた。慧は逃れようと操縦桿を動かすがダメージで機動性が落ちたグリペンにF-15SEを振り切れるはずがない。
「はぁっ・・・はぁっ・・・!!」
操縦桿を握る慧の手の震えが次第に大きくなってくる。
自分が夢で見た、自分が3本の爪痕を持った機体に殺される悪夢が現実に起きようとしているのだ。
そして自分の死刑宣告のようにロックオンアラートが鳴り響く。ここまでか・・・、
《レン、戦果としては十分です、帰投しましょう。燃料ももうありません》
そこにレンに配下のアニマ、イチゴから通信が入った。
その言葉にレンは戦況を確認。イチゴを始めとしたアニマの妨害により艦隊への損害は既に7割を超えていた上、日本のドーター2機にダメージを与えた、確かに戦果としては十分だろう。
《分かった》
レンはグリペンへのロックオンを解き上昇、太平洋方面へ進路を変え悠々と飛び去っていく。
戦闘中のイチゴ達や残っているザイも戦闘行為を停止して翼を翻しレンの後方で編隊を組んだ。
最後にレンは慧達に現実を突きつけるよう、宛先を固定せずにメッセージを発信した。
《
そのメッセージにはBARBIEの誰も反論する事が出来なかった。
事実、自分達は艦隊のの7割を撃破されてしまい、その上ドーターも2機損傷を受けたのだ。
海鳥島のザイの前線基地破壊という作戦目的その物は達成こそしたが、その代価としては大きすぎた。
・・・彼らは試合にこそ勝った、勝負では負けたのだ。
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ED:Colorful☆wing/グリペン(CV.森嶋 優花)、イーグル(CV.大和田 仁美)、ファントム(CV.井澤 詩織)
原作3巻をどうするか鬼門だぞこれ・・・。