この世界には幾千、幾万の人がいて様々なことを考えて、時に争い・助け合いをしながら世界の人々は生きている。
そんな話を何処かで聞いた気がするが彼ももう覚えていない。ずっと昔にある彼にとっても曖昧な記憶の一つである。
男がここに住んでからもう三年が経つ。
ここ海鳴市は確かに人柄も良く住むには悪くないがここの移住は彼が望んだものではない。
しかし住み慣れてしまえば意外に大したことなく、男も今では普通に過ごせている。
人間というものは怖いもので、過去にどれだけ過酷な環境にいたとしても、今いる環境に慣れてしまえばそちらに適応してしまうのである。
人間って怖いな。そんなことを考えていると男の座っていたベンチにもう一人の来客が寄ってきた。
「なんだ、またお前か。」
公園で座っていた男の元に猫が寄ってきた。男の膝に座り込むとどこかから餌の匂いでもしているのかそれとも遊びたいだけなのかゴロゴロと音を立てながら甘えるようにすり寄った。
男の元に寄ってくる猫は茶トラで喧嘩でもしたのかどことなく傷が目立っていた。
「餌なんざ持ってねぇからあっち行きな。」
そうやって優しく除けようとするが猫は自分を労われと言わんばかりに離れようとしない。寧ろ彼を弄ぶようにさらにすり寄っていく。
「あ、また怪我してやんの。喧嘩するなってあんだけ言ったのに。」
よほど傷のことが気に入らなかったのか偶然なのか猫は男のズボンに爪を立てた。彼の履いていたジャージに爪が甘く食い込んだ。
絶対離れない!という猫の意思表明のようにも感じた。
恐らくこの猫は頑固で意地が強いのだろう。だから強い相手に喧嘩を挑んで負けるのだ。
男という生き物はバカなもので時々そんな小さなプライドのために争うことが多々あるのかもしれない。実際この猫がオスなのかメスなのかなど知ったこっちゃないがどちらにせよそんな下らないプライドのために意地を張り続けているのだろう。
「はぁ。」
男がそう呆れたようなため息をついていた時だった。
「平次郎さーん!」
そう呼んだのは一人の少女だった。こちらに走ってくる少女の紫色の髪が綺麗に靡く。
ー月村すずかー
月村重工というここら辺じゃ有名な企業の娘さんであり、尤もこの男ー間 平次郎ーがお近づきになるような子供ではない。しかし
「こんにちは。またここに来たのか?」
間はそうすずかに問いかけた。すずかは小さく頷いた。
「いつもここにいるから、今日もいる気がして。」
そうかい。と間は軽く返した。
今日は試験か何かなのか午後一時という時間にもかかわらず多くの学生がこの公園の前を行き来していた。
「今日は何しに来たんだ?」
「お話しようと思って。」
そっか。とすずかに少し席を空けた。すずかはそこに座った。
「ねぇ・・・平次郎さん。」
「執事の話ならお断りするぞ。」
すずかは少し残念そうに縦に頷いた。
前々からこの二人は仲が良く、月村重工のトップである月村 俊とも交流を持つ平次郎は前々からすずかの執事になって欲しいという話を持ちかけられていた。
しかし平次郎も一社会人であり働いている。そんな人間が突然会社を辞めて執事というわけにはいかないのだ。
「そう・・・ですよね。」
平次郎は残念そうなすずかに無言で頷くしかできなかった。
彼女の残念そうな顔を見るのはこちらも胸が痛いが、こればかりは自分の都合を優先するしかない。
甘く爪を立てていた猫を持ち上げるとゆっくり地面に足から下ろした。
「面倒なことは避けていく性分でな。悪く思わないでくれ。」
子猫はその抱かれたまま抵抗せずそのまま座り込んだ。
考え込む素振りを見せる少女をよそに男が立ち去ろうとしたその時だった。
「誰か止めて!!」
女性の叫び声が聞こえて二人が振り向くとそこには自転車を漕ぐ男性とそれを追いかける女性の姿があった。恐らくひったくりに物を盗まれたのであろう。自転車に乗った男は無表情で駆け抜けていく。
女性はガタイが良く、太っているのが少し見えただけのすずかと間にも分かった。それとは対照的にひったくりの男性は体が細く、恐らくここ何日も食べ物という食べ物を食べていないと思えるほどげっそりしていた。
女性は必死に追いつこうと息を切らして走るが相手は自転車、敵うはずもない。
「・・・。」
間が少し考えるそぶりを見せた後、目を背けて帰ろうとした時だった。
その横ですずかは無謀なことに追いつこうと走り出そうとしていた。
彼女は運動神経に自信でもあるのか?そうだとしても走って追いつこうなんて無謀にも程があるし相手が刃物でも持っていたらどうするつもりなのだ?彼女は一瞬で殺されて終わるだろう。
さすがにこれはマズイと思い間は走り出そうとするすずかを止めた。
「君みたいな子供を巻き込めない。俺が行くから待ってな。」
「えっ?間さん!?」
そう言ってすずかの返答を聞く間もなく間は自分の止めていたバイクに跨りすぐさまエンジンをかけた。
轟音とともに走り出したバイクはひったくりの自転車に文字通り瞬く間に追いついた。
「ッ!!!!」
間のバイクは自転車の進路を遮るように止めた。男はバイクとぶつかりそうになりすぐブレーキをかけた。
間がメットを脱いだ瞬間、その眼は強い怒りのようなものが見えた。
歩道にバイクを横止めして道を塞ぐのも正直問題ではあるが今はそんなことを言っている場合ではない。
男はすぐ自転車から降りてそのまま逃げようとした。
「人のもん盗んどいて逃げれると思うなよ!!」
刹那の出来事だった。男の腕を掴みそのまま空中へと投げ飛ばした。か細い男の体は宙を舞い一回転した後そのまま地面真っ逆さまに墜落した。
「弱い人間からもの奪って逃げるなんてみっともねえんだよ。」
その後を追うようにすずかと被害者であろう女性が走ってきた。
「ありがとうございます!」
女性にそう言われると間は軽く会釈して後ろを向いた。そのままバイクへと跨りその場を後にした。
女性もすずかに一礼するとそのまま荷物をとってその場を後にした。
「何だろう?」
すずかは間がいた場所に何かが落ちていたことに気がついてその場所へと近づいた。
「・・・ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。彼の懐に入っていたのは猫に与える餌だった。
少女は嬉しそうに公園へと足を運ぶ。きっとあの猫もわかっているだろうから
ー海鳴図書館ー
ここ海鳴市の中でも最大規模の図書館で老若男女様々な人たちの交流の場として成り立っている。
もちろんその場所を管理している「司書」という人も存在している。
「白金さん!!」
すずかがそう呼ぶと白金は後ろを向いてほほえんだ。
白金アンは三年ほど前に海鳴市に引っ越してきて、僅かなその期間で司書まで上り詰めた海鳴市ではちょっとした有名人である。
「すずかちゃん、どうしたの?」
「この本を探しているんですけど・・・」
すずかの探していた本は物語の本で中世を舞台にした本だった。
「ちょっと探してくるから待っててね。」
すずかにそう告げると白金はすぐさまレジの方へと足を運んだ。
二人は白金が引っ越してきた時からの付き合いであり、白金もまたすずかのことをよく知っている。
「すずかー!」
「アリサちゃん!」
すずかに話しかけたのはアリサ・バニングだ。
アリサはすずかの友人であり両親共に複合企業を束ねるいわば「お嬢様」というやつである。
すずかの両親も彼女のツテもあり親の中の良さもありで仕事を互いに運んでくるパートナーのような存在でもある。
「すずかちゃん、見つかったよ。」
「ありがとうございます!」
「アンさんこんにちは!!」
アリサは白金に一礼すると、白金もまたアリサに一礼した。
すずかとアリサはよく一緒にいるため白金ともよくここで出会う。
この二人は本当に色んな本を読むし、それを自らの力にしていけるだけの強さがある。白金は短い期間ではあるが彼女たちのそういう純粋さを心から尊敬しているつもりである。
「じゃあ貸出期間は二週間ね。まあすずかちゃんなら大丈夫だとは思うけど。」
「ありがとうございます!」
すずかとアリサが時計を見ると午後の五字を過ぎていた。
「今日は閉館にしましょうか。」
二人は帰ろうか。とそのままその場を後にしようとした。
しかし、すずかの目にあるものが目に入る。
「あの、これって。」
「あぁ、今日の朝刊ね。結構読む人もいるのよ?」
すずかが注目したのは朝刊の記事である。そこに書いてあったのは「人間が失踪する」という事件である。
すずかはそれを手に取り記事を眺める。記事を読んでいくとすずかは言葉を失い、そっと記事をそっと置く。
「・・・すずかちゃん?」
神妙な表情を浮かべるすずかに白金が言葉をかける。こんな表情をもしかしたら白金は見たことないかもしれない。
「えっ、あぁ・・・大丈夫です。」
そう誤魔化すように少し笑いながらすずかは一礼してその場を後にした。
その背を見ていたアリサはー嘘付きーと心の中で呟く。
自分の中で抱え込んでいるものがあるなんてアリサでも分かる。でもそれを言わない。いや言えないのだろう。
ーあの子と同じようにー
ー海鳴の公園にまた彼はいたー
半ばたまり場のようになっていると言われると彼もそれを否定することはできない。現に彼はそのベンチに座り端末を触っているのだから。
公園や公共の施設というのは便利な分居座ってしまう傾向があるので頼るのはあまり良くないのもわかってはいるのだが、その利便性の方が勝ってしまってついつい使ってしまう。
「異常なし。楽しかった…っと。」
彼はメールに打ち込んだ文字を読み返した。
正直彼のメールは基本的にこういう「手抜き」に近いものばかりで受信している相手もきっと慣れているだろうと半ば諦めの表情を浮かべている。
「まあこれで仕事も終了だな。」
彼が仕事をしていてからこの調子だけは変わらない。側から見れば面倒な人、昼行灯なんて呼ばれ方をするかもしれないが彼の中ではこの手抜きこそがーポリシーーのようになっている部分もある。
寧ろこんな平和な世界で何を報告しろというのか。犯罪か?それとも平穏な生活の自慢か?
無論、あの会社がそんなものを求めているわけがないのは彼自身が一番承知の上である。
「にしても今日は来ねえのかな。」
いつも来ている猫が今日は姿をお見かけしない。彼も野良猫故に違うところを放浪しているのか、最悪死んでしまったなんて悲しい出来事だけは考えたくはないが。
「平次郎さん!」
そんなことを考えていると、彼の元にはすずかが長い髪を靡かせながらこちらへ走ってくる。
昨日のひったくりの一件もあったので大丈夫?の安否くらい取りたかったのだが、彼女を見ているとどうやらそれどころではないようだ。
彼女の手には一部の新聞が握られていた。特に事件が起きるようなことはなかった筈だが・・・?そう思いながら焦るすずかに席を譲った。
「平次郎さん!これを見て!」
「これは・・・?」
昨日の新聞の一部の記事を平次郎へと見せた。そこにはー行方不明者続出ーという見出しが出ていた。
その写真を見ると、そこには昨日助けた女性とひったくりの男性の顔写真が載せられていた。
「どういうことだ・・・?」
昨日の事件から考えてもこの二人から見られる関係性は薄いように見られる。この事件の後に姿を消したとも考え難い。
「そういえばすずかちゃん。昨日の男性たちはあの後どうした?」
「えっ?そのまま女性の人はその場を後にして男性の方は・・・。」
すずかの発言を聞いて間は頭に疑問符を浮かべた。
どう考えたってその場で警察を呼ばないのも不自然だし、彼に何も声をかけず去るだろうか?
しかし本当に関係性があるとするなら・・・。
そんな考えが右往左往する中のことだ。
「ッ!!?」
「地響き!?」
すずかは突然のことでふらつき倒れかけるが、間に抱きかかえられてそのままゆっくりと立ち上がった。
「なんだ?」
間が後ろを向くと、少し高い丘から煙のようなものが空に舞っているのが見えた。それは誰が見ても火災だと言うだろう。
本来あんなところで火災を起こすものなどほとんど考えられない。じゃあ誰が?そんな疑問符が浮かぶ前に間の体は動き出していた。
「平次郎さん!」
すずかは平次郎の後ろに乗り、その小さな手で間の背にくっついた。
バイクはそのまま加速して火災現場へと一気にエンジンを回していくのだった。
-燃え盛る炎-
その炎は美しく、街の瓦礫たちはまるで死にゆく命を自分たちに見せてくれるようだった。
「ふぅ・・・なんて美しい。」
デストロン怪人-イカファイア-は街と共に焼き払われる木々を見てうっとりする。なんせこんなに綺麗に焼けていく街々を見て彼としては興奮を隠せなかった。
女性の声は少し低く、しかし少し先まで聞こえるような通る声だった。
黒く上がる煙はまるで昇華され還っていく命のようだ。
「こんなことして意味あんのかねぇ?」
そう言ったのはイカファイアの横にいたファンガイア-ラットファンガイア-である。
か細い声はイカファイアに完全無視された。というより恐らく炎の音でかき消されて聞こえていないのだろう。
基本群れで行動する彼も今日はイカファイアと共同ということで一体の行動だ。
しかし街を焼き払ったところでここの侵略になったとは言えんだろうと考えるラットファンガイアにしてみれば「大したこと」ではなかった。無論、全く意味がないといえばそれは嘘になってしまうが。
イカファイアがもう少しでとどめと炎を放とうとしたその瞬間だった。
「ッ!!」
「ぐわっ!!」
ラットファンガイアが間抜けな声でバイクに跳ね飛ばされた。それに次ぐようにイカファイアもバイクに突撃される。
二人を轢いたバイクは数メートル先で止まり、操縦者はそのメットを脱いだ。
「お前たち、昨日のひったくりだろ?」
「ッ!?」
すずかは間の言葉に驚きを隠せず表情に出た。するとイカファイアとラットファンガイアは不敵な笑みを浮かべる。
「ッ!!」
不敵な笑みを浮かべて高笑いをしたイカファイアはそのまま火炎を放った。
間はすずかを抱きかかえて、それを回避した。しかし
「ゼクトロン!!」
間の愛機であったバイクは爆散し、パーツごと黒焦げになって落ちていった。
「だったら何だ?お前たちを騙した俺たちを許さないとでも言いたいのか?」
「そもそもお前たちを騙して改造するまでがプランの筈だったのにラットファンガイアがヘマするから・・・。」
間はゆっくりと立ち上がり、ラットファンガイアの方へと歩き出した。
「他者の優しさを踏みにじって騙される方が悪いだと?テメェらの言いたいことはそれだけか?」
すずかが付いていこうとする。しかし間はそっとそれを止めた。
「すずかちゃんは離れてな。これは俺の仕事だ。」
「でも」
その言葉の続きは遮られた。イカファイアたちのヘマな叫びとともに現れたのは錆びたような赤を基調とした鎧の戦士だった。
鎧の戦士は赤と青の鎧を肩に纏い、胸には黒いクリスタルのような輝きを放っていた。
「・・・これより任務を開始する。」
戦士は立ち上がろうとするラットファンガイアの首を持ち瓦礫へと叩きつけた。
「コイツ・・・。」
その力は強く、ラットファンガイアの力でも振り切ることは不可能だった。
「ええい何をしているんですか!」
イカファイアは炎を放とうとした。しかしその時だった。
「お前の相手は俺だ!」
間の裏拳がイカファイアの顔面へと直撃する。怯んだイカファイアはそのまま後ろへ後退りした。
「ええい!ならばあの小娘を!」
イカファイアがすずかの方を見た時、そこにすずかの姿はなかった。
逃げられた!そう思った瞬間にイカファイアの顔面を蹴りが襲った。
「お前の相手は俺だつってんだろ!」
その一撃はイカファイアを後退させ、そのまましりもちをつかせた。
「・・・お前が戦うなど珍しいな。」
赤の戦士はそう言う。無理もない
彼は昼行灯でめんどくさがり屋で手抜きを性分にしてきたような人間なのだから。
たとえそうだとしても、それが今までの俺だとしても
「今の俺は手抜き出来ねえからな。」
間は腰からベルトを取り出し装着した。
そして手にカードを持つと、それをベルトに装填した。
"Ganba Rider mission start"
ー変身ー
間の体へと鎧が纏われた。砂のような薄茶色と脱色したような灰色の体、そして目はまるで自らの輝きを消したような沈んだ青色だ。
「貴様、何者だ?」
間は小さく名乗るーガンバライダースパロウーと
スパロウは一気に駆けていき、イカファイアへと殴りかかった。
イカファイアはその一撃を喰らい、数メートル先まで吹き飛んだ。
「何をしてんだ。お前も戦わないのか?ーバステトー」
赤の戦士ーガンバライダーバステトーは小さくため息をついてラットファンガイアの方を向いた。
「アンタに言われなくてもこっちはそのつもりだ!」
すこし雑音が混じったような男の声がしたあと、ラットファンガイアの目の前から一気に姿を消した。
「どこにいる・・・?」
ラットファンガイアは目を凝らして探すがバステトの姿はない。風が靡いたその瞬間だった。
「こっちだ!」
ラットファンガイアへと一気にウイングランサーを向けた。ラットファンガイアはその動きの早さについて行けず脳天ごとウイングランサーが突き刺さった。
「ァ・・・ァァァ!!!」
声を出せぬままそのまま串刺しにされて倒れ込む。
「こっちに投げ込め!」
スパロウの言葉に頷き、そのままラットファンガイアをイカファイアへと投げた。
「ちょっ!こっちに来るな!」
そのままラットファンガイアを抱えて転倒した。良し。とスパロウが畳み掛ける。
"スクラップフィニッシュ!"
"ボルテックアタック!"
スパロウの手から放たれたガラクタのような機械はイカファイアたちに纏わりつき、バステトから放たれた何発もの砲弾はその機械ごと爆発して周囲に爆風を生んだ。
「おの・・・れ。」
煙の中から出てきたイカファイアとラットファンガイアは立ち上がりはしたものの既にそれで精一杯のような状態だった。
「一気に決めるぞ。」
「はいはい。」
"何を偉そうに"バステトの指示を受け流すようにスパロウは答えた。
「バーストチェンジ!」
カードを裏面に変更、バーストチェンジしたバステトは龍を纏い、そしてスパロウは橙色の光を纏った。
"スクラップブレイク!"
"カイガン!オレ・オメガドライブ"
龍をまとった一撃はイカファイアたちを空中へと跳ね上げ、跳ね上げられた二人を空中で始末するようにスパロウのオメガドライブが貫いた。
「まだだ・・・。我らの計画はまだ・・・終わって・・・!!」
その言葉虚しく、空中で爆散したイカファイアとラットファンガイアは地上に落ちて来る頃には既に灰よりも細かいゴミと化していた。
変身を解いた二人はそのまま別方向へと歩き出す。
周囲の炎が燃えている中、二人の沈黙を埋めるように火花を立てる。
バステトが足を止めるとそれに気づくようにスパロウも足を止める。二人は顔を合わせないが、お互いの鋭い目つきだけはわかるような気がした。
「これからどうするつもりだ?」
スパロウは頭を掻いた後に答えた。
「どうするも何もねえよ。俺は目的を果たすだけだ。それを邪魔するようならお前も」
そこで彼の言葉が止まった。それ以上は彼の言葉から出なかったのだろう。臆病な雀の名を冠したガンバライダーは彼が帰るべき場所へと足を運んで行った。
それをそっと見ていた青年はそっと本を閉じる。
燃え盛る炎の中、青年はスパロウとバステトを見た。そしてまるで彼らの行動が愚かで悲しい。そう思わせるよう嘲笑した。
青年は呟き後を去る
-待っていたぞ。この瞬間を-
-大ショッカー-
それは世界で活躍する-仮面ライダー-と戦い続け、ゆくゆくは世界征服を目論む所謂-悪の組織-というやつである。
地下基地に有する広大な土地は世界征服を目論む彼らにとっては絶好の場所と言えるだろう。
イカファイアとラットファンガイアが起こした被害の状況を見ていた。
「派手にやってくれたものだ。」
座に座る男-秋月 信彦-はそう呟いた。
一都市には及ばないものの街を焼き払うほどの力を見せつけたのは大ショッカーとしても大きな功績であるだろう。
そしてイカファイアとラットファンガイアを倒したあの戦士、彼らの風貌を見るに仮面ライダーとは少し違うように見える。
この戦士は一体何者なのか?この戦士たちの実態を知る必要があるようだ。
「お呼びかな?シャドームーン。」
「久しいな-ガイナギスカン-」
シャドームーンが自らの王室へ呼んだのはクライシス怪人-ガイナギスカン-である。
かつてRXを苦しめた彼ならばと呼んだわけである。
「で、我と一騎打ち・・・というわけにはいかんだろうな。」
無論。とシャドームーンは頷く。強者と戦わせることが目的ではなくあくまで抹殺が使命なのだ。
少し苦い顔をするガイナギスカンにまあまあとシャドームーンが宥める。
「お前にはもう一人我らが誇る怪人を仕える。」
ガイナギスカンはまあいいか。と何となくわかったようなわかってないような頷きでシャドームーンと握手を交わした。
翌る日の朝、間の元には一本の電話が鳴っていた。無論、仕事上の付き合いだが彼はどうも好きになれない。
故に時に着信拒否にしてやろうかとも思うくらいなのだがそこは彼も大人の一人、やってはいけないことくらい弁えている。
何だかんだ考えているうちに面倒になったのか間はその電話を取った。
「俺だ。」
「もしもしラドスです。何ですかあの嘘だらけの文面は!!」
何のことだろうかと間は考えるが、見当面目もつかない。しばらく考えた後に「あっ。」と小さく呟いた。
戦闘が起きた時はラドスへ戦闘報告を送らなければならないのだが、彼はそれを送り忘れていた為、ラドスに送った最後の文面が「異常なし。楽しかった。」という意味不明極まりない文章だったのだ。
「あんな焼け野原にしておきながらよく楽しかったなんて送れましたね!こちとら事後処理で楽しくも何ともないですよ!」
「時間見て送った後の事件だってわかんだろうが!そのポンコツ脳ミソでちったぁ考えたらどうだ!!」
逆ギレかよ!?ラドスがそう言おうとした瞬間、電話は叩き切られて切れた電子音だけがラドスの耳に残る。
ラドスはそっと電話を置いてまたPCへと向き合った。何度この気持ちになったことが
ーあぁ、あいつ早く死なないかなー
電話を叩き切った間はそのままいつもの公園のベンチへ座り込み、いつもの猫が来るのを待っていた。
「おっ、来た来た。」
猫も賢いもので、いつも餌を持っているのが間と分かればすぐに擦り寄ってくる。
「お前ちょっと味占めてないか?」
そんな言葉を聞いてか猫は更に間へと甘えた。
「はいはい、ちっと待ってろよ。」
そう言って手元から出したビーフジャーキーを猫へと与えた。
頑張って噛み付くが少し硬かったのか猫は力を入れて思い切り噛み付いた。
そんな愛らしい姿を見てる中、間は少し周囲を見つめた。
いつもはこの時間くらいにくるすずかが今日は来ないのだ。最近来ていただけに少し心配になった。
そりゃ彼女にも事情や用事があるのだろうが、いつも来ている人が来ないと何となく不安になってしまうものだ。
そんなことを考えてたらまるで何か自分が期待しているみたいじゃないか。彼はそう思い一瞬の思考を停止させた。
そうしていると、こちらへと走ってくる音が聞こえた。間がふと見ると、こちらへと走ってくるのはすずかの友人であるアリサではないか。
相当の距離を奪取してきたのだろう。息切れを起こすアリサをゆっくりと椅子に座らせると、アリサは間に問いかけた。
ーすずかを知らない?ー