-アレから一晩たった-
すずかが行方不明になってから一夜明けた今日、間とアリサ、そして彼女たちの友人も探してくれているという。
間は海鳴市の西側、海鳴図書館の周囲を探し回っていた。今日は土曜日ということもあって人通りが多く、すれ違う人々が間の視界を遮る。
「クソっ……。」
間の口から舌打ちが鳴る。中学三年生になるとはいえこの数の多さから彼女を割り出すことは不可能に等しい。焦りが増していく中でふと過去のことが頭を過る。いやいけないと頭を横に振る。忘れろと脳内で何度も囁く。
「あんなの今思い出したって何になるんだよ!」
間の声は小さく、しかしながら強く響いた。
息を大きく吸う。手立てを全て失ったわけではない。彼女が亡くなったなんて絶対にあり得ない。そんなことを考えてる間に彼女が苦しんでいるかもしれない。今自分に出来ることだけを・・・そう考えている時だった。
「ここまで派手に動かれてはこちらの監視も手間取るというものだ。」
「・・・。」
背後に気配を感じる。その気配を周りも感じたのか人々は彼らを避けるように歩いていく。
彼の背にいたのはバステトだった。ローブを纏い、後ろへそっと近づいていく。だが間はバステトから距離を取るように歩いていく。
「お前だってすずかちゃんが大事だろ?」
あぁ。とバステトは呟く。
「彼女には公私ともに世話になっている。しかし私の役目はあくまでアンタの監視。アンタの手助けをするつもりがないだけだ。」
たしかにコイツの仕事は俺の監視で俺がヘマしないか監視することが大事なのかもしれない。だが、と間はバステトの頰の横に刃を向けた。片手ほどのナイフは猫の名を冠したローブの人間の足を一歩後ろに引かせた。
「どういう形であれ、今お前を恫喝してでも救いたい命だ。これ以上の後追いはよしてもらうぞ。」
バステトはため息をついて姿を消していく。
「・・・私の甘さがこうやって仕事を壊していくんだ。」
ローブを纏った戦士の姿は一歩、また一歩と街中へと消えていった。
さて、先に進むかと間が歩き出そうとした時だった。間の目の前には一人の男が立っていた。街中で珍しい服装ではないものの、その姿はどこが特異で異端だった。
「お前・・・誰だ?」
男は名乗る。ショッカー怪人にしてクライシス帝国の騎士-ガイナギスカン-と。
アリサは友人の高町なのはと共に海鳴市の東側、海鳴高校の近くを捜索していた。
ここは猫がよくたかっている場所ですずかはここで傷ついた子猫などを引き取って屋敷に住ませていた。
もしかしたらここにいた子猫たちをどうにかしようと一人発起したのかもしれないと二人は来たわけだ。
もちろんすずかを信頼していないわけではないのだが、彼女自身少し自分たちでさえおもいもしない無茶を始めるような子だからこんなことを考えてもおかしくはない。
すずかを探そうとなのはとアリサは公園へと入ろうとした。
「少女たちよ、ここから引き下がれ。」
しかし、その前に立ち塞がったのはローブを纏った人間だった。背丈は小柄なのだが、その声帯からは男の声が聞こえる。
「アリサちゃんは下がって。」
なのはの言う通りアリサは後ろに隠れた。なのはは構えをとり男の様子を見る。男は構えも取らず特に攻撃する仕草は見せなかった。不思議に思ったなのはは男へ問いかける。
「あなたは一体何者ですか?」
「君に答える義理があるかい?」
男はなのはにそう問いかける。感じたことのない威圧感になのはは退きかけたが、ここで引くまいともう一声をかける。
「私たちは友人を探しているんです。どこかご存知ないですか?」
男は後ろを向くと、ポケットに手を入れて何かを取り出す仕草をした。なのはが構えた瞬間だった。
「っ!!」
振り向き様に男はナイフを一直線に投げた。怖じけるなのはとアリサの横を通り過ぎて、その後ろにいる男の頬へと刺さった。
一般人に危害を加えてしまった。なのははすぐさま血の流れる男へ近づこうとしたが、一歩を踏み出した瞬間異変に気付く。
「ヒヒッ・・・。よくねえなぁ、こういうのはさ。」
「えっ・・・。」
動揺するアリサとなのはをよそに男が不敵な笑みを浮かべ姿形を変えていく。その姿は人型なのだが、その色は不気味な紫、体は宝石のような輝きを纏う。その姿にアリサたちは見覚えがあった。
「どういうこと・・・?」
「仮面ライダーなんて・・・お話の中のキャラクターでしょ?」
アリサの言う通り、仮面ライダーはテレビの中のお伽話・・・のはずだ。しかし今目の前にいるベルトを付けた異形の存在はなのはたちの知る仮面ライダーそのものだ。
「さあ・・・、ショータイムだ。」
宝石の仮面ライダーは男の目の前で勢いをつけたと思うと一回転して右足を振り上げた。男はそれを鮮やかに回避して後ろへ引き下がる。怯えるアリサの前に立つと、男は腰元からベルトを装填して、周囲にアーマーを召喚した。目を丸くするアリサを見て男はマント越しから微笑んで見せた。
"Ganba rider stand by ready."
男は姿形を変えて異形の存在へ名乗る。
-ガンバライダーバステト-
宝石のライダーとバステトは激しい格闘を繰り広げていた。
「仮面ライダーダークウィザード・・・その目的は何だ?」
「君に答える必要があるのかなぁ?」
ダークウィザードの蹴りを一つ一つ丁寧に弾き落としていく。蹴りを捌くバステトは一歩又一歩と後ろへと引き下がった。
バステトが空中で横回転した左のかかとはしてダークウィザードの肩を直撃してそのまま植木へと蹴飛ばした。
木が折れる音ともに情けなく倒れたダークウィザードにトドメを刺そうとしたときだった。
「後ろ!!」
「なっ・・・、ってはぁ!?」
後ろを振り向いたときには遅かった。吹き飛ばされてきたスパロウにぶつかってそのままバステトは押しつぶされた。その隙にとゆっくりダークウィザードが立ち上がる。
「何をしてんだアンタは!」
「うるせえよ!お前も何してんだよ!」
立ち上がる二人は背中合わせになり、互いの敵に目を向ける。スパロウの前に現れたのは鎧を纏った騎士のような怪人だった。
"ガイナギスカン"
かつて仮面ライダーBLACK RXと戦った風の騎士の名を持つ怪魔戦士だ。その力はライダー内でも最強と謳われるRXさえも苦しめたと言われているほどの実力だ。
「アレは?」
「アリサちゃん逃げよう!」
危険を察知したのかなのはは間髪逃さず、アリサを連れて公園の出口へと走って行った。しかし公園の外には何体かの怪人が蔓延っていてとても外に出られる状況じゃなかった。
バステトはなのはの異変に気付き外を見た。さすがに出られる状況でもなさそうだ。
「バステト」
なんだ?とスパロウに返す。スパロウはICカードを再度ベルトに装填して、背中に大きな羽を生み出した。
「俺に提案がある。だからお前も手伝え。」
バステトはその提案を聞こうとしたが、先程の間との会話が頭を過ぎる。
"恫喝してでも救いたい命だ。"
恐らく彼は同じ選択を取るだろう。考えている余地などなかった。
「手伝ってやる。」
決まりだ。とスパロウは周囲を闇に覆い、自らの影を生み出した。影は走り出してガイナギスカンとダークウィザードへと走り出した。
「無駄だ!」
ガイナギスカンは突風を起こして影を消し払った。ダークウィザードもまた剣を振い闇を振り払う。
「今だ!」
“アドベント"
合図と共にマントを纏ったバステトは走り出して、なのは達の元へと走り出した。二人は訳もわからずバステトに抱きかかえられた。
「逃すか!」
ダークウィザードが追おうとするが、纏わり付く影は彼らの行手を阻む。
「だが、我らの勇敢な兵士が彼女たちを阻むだろう!」
「それはどうかな?」
スパロウはマスクの奥から笑みを浮かべる。なのはたちを抱えたバステトはそのまま走りだす。しっかりとくっつくなのはたちを確認すると、手を離してバイザーへとカードを装填した。
"ファイナルベント"
マントは三人を覆うと鋭利なトゲへと姿を変えて、怪人たちをなぎ倒しながら駆け抜けて行った。
爆風の最中、ガイナギスカンとスパロウは一気に駆け抜けていく。振り向いた瞬間に二人は刀を抜いて鍔迫り合いを起こした。
「あの子を・・・すずかちゃんを拐ったのはお前か!?」
ガイナギスカンはスパロウの剣を弾いて、もう一度構えなおす。ダークウィザードも加勢しようとしたがそれを彼は止めた。その気迫に押されてかダークウィザードはしぶしぶ足を止めた。
「我々大ショッカーの犠牲となってもらうぞ!」
周囲は砂塵が舞い、衝撃で起きた煙は二人の姿を一帯から消すように放たれた。
敵から逃げ切ったバステトとなのはとアリサは住宅街の影へと逃げ込んでいた。ここなら誰も来ないと予想したバステトはアリサたちへ背を向けて歩き出した。
「待って。」
そう声をかけたのはアリサだった。バステトは足を止めてアリサの方を向いた。何者かわからない存在への恐怖かそれ以外なのかアリサの手が震えているのがバステトから見ても伝わる。なのはがアリサを止めようとしたがその生死を振り切ってこう告げた。
「ありがとう!あなたは私のヒーローよ!」
バステトは少し笑い声を漏らすと、そのままアリサへと近づく。茫然とするなのはとアリサの頭に手を当てて優しく撫でた。
「ありがとう・・・。でも私は君たちのそばにはいられないんだ・・・すまない。」
そう言うと、バステトは走り出して街の中へと消えていった。頭を撫でられた時、アリサはどこか懐かしい感覚がした。気のせいなのだろうか・・・。
「アリサちゃん・・・?」
なのはは不思議そうにアリサに話しかける。その一言に背筋が伸びたように身震いをさせてアリサはすぐさま後ろを向いた。
「な・・・何でもないわよ!すずかを探しましょ!」
不思議な感覚だ。どこかで出会ったことでもあるのだろうか。
-ここはどこだ?-
間はゆっくりと瞼を開いた。空は清々しいほど青く、美しいという言葉がきっと最適解だろう。
「どこだここ?」
ゆっくりと腰を上げると、その周囲は砂漠で果てなど見えそうにもなかった。
自分は亡くなったのか?そして天国とやらがまさかこういうところなのだろうか。そんなことを考えているうちに脳内から声が聞こえる。ガイナギスカンの声だがなんと言っているかが分からない。研ぎ澄まして聞いていると、ダークウィザードとガイナギスカンが何かを話していた。
「・・・と・・・ち・・・する・・・。」
「決まっ・・・を処刑・・・。」
処刑!?まさかすずかを処刑するつもりなのか!?こうしてはいられないと間が動き出そうとしたが腰に違和感を感じる。ふと腰元を見るとそこにあるはずのガンバドライバーがないのだ。
「嘘だろ!?」
どこに落とした?まさか違うところに?あり得ないとは思うが敵に奪われた!?焦るうちに視界は狭くなり果てには同じところを探し始めていた。
「目覚めたかガンバライダーよ。」
ガイナギスカンの声に間はハッとして脳に集中を向ける。
「私は貴様との決闘を今日の朝所望する。」
「決闘だと?」
今はすずかの救助が先だしきっとこの戦いに意味はないだろう。間は少し考えた後答えを出した。
「いいだろう。どうせ人質を解放してもらうにはそれが手っ取り早いだろうしな。」
さすがは戦い続けた戦士、手っ取り早く話が進むとガイナギスカンもよしと返事する。
「ならば明日の日が昇る時、それが貴様が命を断つ時だ。覚えておくといい。」
ガイナギスカンはその通信を断つと、静かに玉座へと座る。そこには歩き出す間の映像が映っていた。
その横でダークウィザードが爪を研ぐように剣の手入れをしていた。その目は複眼越しではあるが狂気に満ち、静かに獲物を狩ろうとするハイエナのようだった。そしてその奥には磔で静かに眠る姫の姿があった。
アリサたちと別れてから数分後、バステトは変身を解いてローブを纏った。自分のポケットからそっとペンダントを取り出す。銀色に光るそのペンダントにはクローバーが描かれていて、綺麗なグリーンが象られていた。ローブの奥からはバステトの暗い吐息が外へと吐き出された。
ペンダントをそっと開くと、そこに入っていたのは一枚の写真だ。そこには家族と弟、そして自分が笑顔で映っていた。
この仕事をしてから早何年、家族の顔もまともに見ていない。実家にすら帰っていないバステトにとってはもう忘れ去られた過去の記憶でもある。弟や家族と楽しく過ごしたあの時間はもう・・・。
「お困りのようだね?」
バステトはハッと後ろを向く。そこにいたのは灰色のコートに灰色のベレー帽をかぶった青年だった。恐らく年齢はバステトと同年代、少し上にも見えるだろうか。警戒してベルトを取り出そうとしたバステトを戯けるように制止する。
「おっと、私は戦いに来たわけじゃないが?」
青年は戦闘態勢のバステトにそう告げる。バステトは警戒心を緩めずに男に問う。
「お前は何者だ?」
バステトから聞こえてくる声はノイズのかかった男の声だ。それがボイスチェンジャーであることは青年にもすぐわかった。
「私の目的と名を知りたければ君のそのボイスチェンジャーを外してもらおうか。」
こんなことに取り引きとはどういうつもりなのだろうか。こちらの正体を知りたいのかはたまたは・・・。相手に有利な手ばかり打たせまいとバステトは頭の回転を早めていく。考えろ・・・
「あっ・・・。」
そうだ、一つだけある。コイツと取引する理由。これだけの理由があれば自分の正体を明かす価値もあるだろう。
アレから一夜が経とうとしていた。スパロウとガイナギスカンの決戦もあと三十分も経てば開始されるだろう。まさか相手から決闘を申し込まれるなど思いもしなかったが、すずかがそれで助かるならと間も二つ返事でその所望を受けた。しかし
「何か引っかかるな・・・。」
そもそもわざわざ捕らえた人質を敵から決闘という形で返してもらえるのだろうか。曲がりなりにも敵は怪人、早々に信頼するべきではなかったのかもしれない。今になって考えると色々と複雑な感情が彼の脳裏を交錯する。本当に信頼するべきだったのか?こんなことを考えてる時間さえ疑いを持ってしまう。
「ダメだな。」
ため息をつく。何年も前から何も変っちゃいない。自身が起こしたあの事も・・・。
そうこう考えていると奥に人影が見えた。この砂漠にいる者など一人しか考えられない。
「ガイナギスカン・・・。」
風の騎士はそこに十字架を立てて彼を待ち受けた。その巨体は背の高い間よりもはるかに大きな体だった。その横にはダークウィザードが爪を立てるようにウィザードソードガンを右の掌で回していた。
「来たぞ。」
間はその巨体へと話しかける。ガイナギスカンは拍手で彼を迎えた。
「よく来てくれた。まずはこれを返そう。」
そう言って間へとガンバドライバーを投げた。すぐさま拾うと腰元に巻きつけてICカードをベルトに装填した。そのときに動いたのはダークウィザードだ。
「ッ!?」
「敵様を前に油断なんて甘い甘いねぇ!!」
これが策略だったか。ダークウィザードが剣先を間に向けて突き刺そうとした。ベルトの変身が間に合わない。これでは鎧を纏う前に突き刺されてしまうと避けようとしたそのときだ。
「なん・・・」
「だと?」
ダークウィザードと間は驚愕する。ダークウィザードの一撃は間の目の前で見えない壁に阻まれてそれ以上進まないのだ。見えない壁はバネのようにダークウィザードを弾き返し、その宝石のような体を地面に倒れ込ませた。
「どういうことだ・・・?」
「私は風の騎士・・・舞う風を壁に見立てることなど容易いわ。」
ダークウィザードの後ろには大きな殺気が漂う。後ろを向くとガイナギスカンがその巨体で槍を構えていた。
「人質を取り不意打ちなど騎士の風上にも置けない奴よ。恥を知るといい!」
「なっ!貴様!やめ」
そこでダークウィザードの言葉は途切れた。ガイナギスカンの槍が突き刺さり、彼は砂漠の空間内で灰となって風と共に消えていった。
「さあ、これで邪魔者はいなくなったぞ。」
変身したスパロウへとそう告げる。日の光は少しずつ上がっていた。
「勝負だ。」
「臨むところだ。」
日が昇ったそのとき、戦いの火蓋が切られた。
スパロウはバナスピアーを構えて突進していく。ガイナギスカンもまたその鋭利な槍を構えて突撃した。
お互いに振るうその槍は火花を散らし、周囲の風と共に火の粉が舞う。
"バナナスカッシュ"
「スピアビクトリー!」
放たれた閃光はガイナギスカンへと直撃するが、ダメージを与えたと構え直し、その砂煙が晴れた時だ。
「なっ・・・!?」
砂煙と共に強い風圧がスパロウを襲う。突風に巻き込まれてそのまま大地へと叩きつけられた。
「その程度の攻撃、このガイナギスカンに効くと思うな!」
一気に駆け抜ける騎士はスパロウへと迫る。その時だ。
「スパロウ!」
スパロウは声の方を見るとそこにいたのはバステトだ。バステトはトラクローを構えてこちらへと走ってくる。スパロウはガイナギスカンの槍を止めた後、片手にレンゲルラウザーを召喚した。
"リモート"
スパロウはカードからアンデッドを召喚しバステトの方へと向かわせた。二体のアンデッドはまるでスパロウとガイナギスカン、二人の壁になるようにバステトの前へと立った。
「これはサシの決闘だ。俺たちの戦いに水を差すな!」
スパロウはガイナギスカンを押し返して攻勢へと乗り出す。押し返されたガイナギスカンもまた攻勢を立て直して一気に振りかざす。
「嬉しいぞ・・・貴様のような騎士を私は求めていた!」
「お前の誠意を俺は受け取った!ならこの決闘に邪魔は無粋だろ?」
二人の槍は激しくぶつかり合い、激しい火花を散らす。バステトはその様子を遠くから見ていた。
「まったく・・・。」
男という生き物は皆あんなものなのだろうか?二人は敵同士だがどこかその姿勢は戦いを楽しむ子供のようだ。振るう槍から二人が戦いに興じて楽しんでいることが伝わった。
「・・・骨折り損だった。」
そうは言っても仕方がない。あの二人の決闘というならそれこそ自分が邪魔になるだけ、やらせるだけやらせるのが一番なのだろう。
「貴様に問うことがある!」
「何だ?」
スパロウはガイナギスカンとの槍をぶつけ合う激しい鉄の音がする中、問いかけに応じた。
「貴様は何故あの少女を守る!?我々に守るものなどない。貴様のその気持ちが分からんのだ!」
そんなことここで聞くのか!?スパロウは腕を振るいながら必死に言葉を紡ぐ。
「俺にとって大切な人だからな。お前たちにいずれ大切な人ができたらこの気持ちもわかるんじゃねえかな?」
「大切なもの・・・。そうか、ならばその想いを私にぶつけてみせよ!!」
ガイナギスカンは風を発生させてスパロウを退けた。スパロウはその倒れ込んだ瞬間にバナスピアーを手放し倒れ込んだ。
「偉大なるガンバライダーよ、風の前に敗れるがいい!!」
スパロウはガシャコンソードを召喚し、ガシャットを装填した。
「こんなところでやられてたまるかよ!!」
"ドレミファクリティカルフィニッシュ"
舞う風に向けて剣を振るう。剣から放たれた音符たちは突撃するがかき消されていく。
「ふん!無駄だ!我が風邪の前には無力だ!」
「どうかな?」
次第に風に乗った音符は増え、竜巻には回り続ける音符の波が出来上がっていく。
「馬鹿な・・・ぐっ!!?」
綺麗なオルゴールの音はガイナギスカンを苦しめて倒れ込む。スパロウは立ち上がり剣をガイナギスカンへと向ける。
「出会い方が違えばいい関係だったかもな、俺たち。」
微笑を浮かべたガイナギスカンは槍を落として膝をついた。
いずれ出会う大切な人、そんな人がきっと彼にも・・・
"タドルクリティカルフィニッシュ"
風は止まり、砂漠には白い塵が空高く舞った。
とどめを刺したスパロウは立ち尽くし、それを遠くからバステトが見つめていた。
歪んでいた空間はガラスのように割れ、すずか、スパロウ、バステトの三人は小さな木陰へと戻された。
これで終わったんだとスパロウとバステトは変身を解く。去ろうとしたバステトにスパロウは待てと呼び止めた。
「そういや、お前どうやって入ったんだ?あんな空間の中に人が入れるわけないし。」
バステトは立ち止まり、間の方へ歩いていく。薄い布から見えた目から間も何かあったのだと察した。
ガイナギスカンが敗れた
そんな知らせがシャドームーンの耳に入ったのは彼が死んでからすぐのことだ。
ガンバライダーとの決闘に敗れて死んだというのだから彼らしいとシャドームーンは笑みを溢した。
「貴様はそういう男だったな。」
RXに敗れたときもそうだ。必ず卑怯な手は使わず彼との一騎討ちに臨んだ。誇り高き騎士の名は恥じなかったというわけだ。
しかし強大な戦力であるガイナギスカンをも敗るガンバライダーというのはかなりの強敵なのだろう。こちらも打つ手を考えなければならないらしい。
「興味深い・・・。」
これまで様々な仮面ライダーと戦ってきた彼だったがここまで興味深いことはいつぶりだろうか。滾るような熱を持ったシャドームーンはこちらから少し探りを入れてみることにした。シャドームーンが思いついたのは一つの作戦だった。
翌日になり間はいつもの公園で座っていた。彼の両肩と両足には猫がたむろしていておもちゃの様に間の体で引っ付いている。
「どうして増えてんだこれ?」
少し前までは一匹の傷だらけの猫だったはずなんだが・・・、そうしている時だ。
「グルル・・・。」
両肩の猫が喉元から牙を立てて睨み合っている。こんなところで喧嘩などされたら間の命がないだろう。
「なんか・・・あっ。」
手元にあったのは子供が置いていったであろうサッカーボールだ。間はそれを拾って猫たちによーく見せた。
「ほらほら投げるぞ・・・ほい!」
投げた瞬間だった。四匹の猫は一斉に走り出しサッカーボールで仲良く遊び始めた。この二匹が走ることは予想していたがまさか足元にいた猫まで走っていくとは思いもしなかった。
そうこうしていると遠くからすずかが見えた。すずかはこちらへと走ってくる。
「学校は大丈夫そうだったかい?」
「はい!でも私もその時の記憶がなくて・・・。」
そりゃそうだわな。ずっと眠っていたすずかからしてみれば一瞬で長い夢、心配していたのはこっちだけだったのだから。
アリサやなのはたちもバステトの活躍あって傷なく帰ったという話も聞いたからか彼の中では安堵の気持ちが強かった。
すずかの母親たちには勉強のために少し遠出をしていたらしい。というなんとも苦し紛れな言い訳で通したらしく、最初は疑っていたがアリサやなのはたちが必死に説得したこともあり、すずかが少し怒られるレベルで済んだらしい。
一応事情は知っているが顔に出さず間はそっか。とだけ淡白な返しをすずかに投げた。すずかも少し嬉しそうに頷いた。
「でもその中で声が聞こえたんです。」
「声・・・?」
すずかも二度ほど頷くと間が膝に置いていた手の上にそっと手を置いた。
「間さんの声だったんです。何故はわかんないですけど間さんの声が私に聴こえてきて・・・」
「そ・・・そっかぁ。」
額には冷や汗が流れる。まさかガンバライダーのことがバレた!?いやまさかそんなはずは・・・。スパロウの脳裏にガンバライダーという言葉が流れてきた瞬間、もう一つの事象が頭を過った。
バステトが言っていた結界内に誘導したあの青年のことだ。話を聴く限りはあり得ない事象の力でバステトを誘導したと言っていた。結界に入る力などどこから手に入れたのだろう。
「間さん・・・?」
「・・・えっ?」
すずかとの会話を完全にすっ飛ばしていた。間は空回りした笑い声ですずかを誤魔化した。すずかは不思議そうに彼を見つめた。