水の都の護神とオレ(完)   作:アズマケイ

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投稿範囲を間違えてしまったので再投稿しました。


第3話

大聖堂で思い出すのは、ヨスガシティにあるポケモンセンター近くに立ってる正体不明の建物。よくにてるや、と見上げるほど大きな正門をくぐって思った。なんでかBGMが流れない不思議な場所で、孵化作業途中だったからイーブイが生まれちゃったんだけど、「異文化の建物で孵った」って出たから、よく覚えてる。なんか関係あんのかなあ。みんな、きれいな壁画見たり瞑想したりして、いろいろ考えてるみたいだったから、なんか神秘的な感じがしてたし、背筋が伸びる思いがしたけど、よく似てる。やっぱり、教会なんだろうな、あそこ。ま、この大聖堂はもとになったところとは違って、宗教的な意味はないだろうけど。

 

 

見上げるほど大きな正門をくぐると、広々とした大理石の空間が広がってる。おおお、とオレたちは観光客まるだしな歓声を上げた。天井はアーチになってて、壁画が壁一面にひろがって、やがて柱にまで細部まで彫刻。同じ形の窓ガラスが天井に並んでて、大聖堂内はひだまりに満たされていて、不思議な静けさがそこにある。観光客の足音が反響してて、おしゃべりは聞こえない。一際存在感があるのは、一定の感覚で奥にまでならぶ、大理石から天井まで貫く、鮮やかな青いタイルざいくの柱。目移りしそうなくらい、圧倒される。あー、写真厳禁がおしいなあ!

 

 

 

素敵、とカスミがつぶやいて、トゲピーに指差して壁画の解説をパンフレット片手に始める。サトシがすっげー、と頭に乗っかってるピカチュウと揃ってあんぐりと口をあけて、カスミの説明に聞き入る。見事なもんだなあ、とタケシは腕を組んでる。オレは、いい加減首が痛くなってきたので、キョロキョロと辺りを見渡して秘密の庭園の管理人兼大聖堂の案内人ことボンゴレのおっさんを探すがまた来てないらしい。今思い出したけど、あのおっさんの声、グッチ雄三さんだよ、すっかり忘れてた。

 

 

「下もすごいぜ、みんな」

 

オレがいうと、サトシたちは視線を落とした。そしてあがる感嘆のためいき。大理石の床には、ポケモンの化石が横たわっている。擦り切れないよう、クリアガラスで加工されてるらしく表面はツルツルだけど、タケシは踏まないように後ろに下がった。んー、さすがにアドバンスジェネレーション直前の映画だから、ホウエン地方までの化石ポケモンしかいないかあ、ちっと仲間外れでさみしいな。仕方ないけど。 つか、こいつら全員、古代の機械の暴走んときみんなよみがえるとか、ありえねえよ、こっええ!想像して薄ら寒くなる。確かにオレの世界でも、博物館の研究者に渡して、あたり散策したらもう復元してるようなお手軽さだけどさ、みんな一度はねーよ。それどこのジュラシックパーク?

 

 

「プテラの化石かしら?」

 

「羽あるもんな。タケシ、どう?「ぴか?」」

 

「うん、プテラの化石だな。しかしすごいな。ニビの博物館でもこんなにたくさんの化石は見たことないぞ」

 

「オレも!クロガネ博物館の特別展示じゃみたことないのばっかだ」

 

「へええ、そうなんだ。すごいな、ピカチュウ」

 

「ぴーか」

 

「あ、あれ、カブトプスかしら?」

 

「え?カブトじゃなくて?(つかカブトプスやオムナイトの化石あんのかよ、すげえ!)」

 

「ううん、あの鎌みたいな手はカブトプスよ。ね?タケシ」

 

「え?どこどこ?」

 

「あそこよ、サトシにピカチュウ」

 

「これまた見事だなあ」

 

「すっげー、そのまま残ってんだ!」

 

「すげえ技術」

 

 

アルトマーレ、世界のなんとか大文明に数えてもよさそうな気がするなあ。あ、いや、時の神殿とかあきらかに人が作ったみたいだし、シンオウ地方も案外すげえのかも。なんとなく化石を避けながらオレたちは先に進んだ。

 

 

「どうして化石がそのままの形で残ってるのかしら?」

 

「それはですね、かつて海だったところに彼らが死んでからすぐ、火山が噴火して長い年月をかけて火山灰がおおってしまったのですよ。微生物に食べられたり雨風にさらされることなくきれいに骨だけ残ったんです。ほら、波のあとまで化石になってるでしょう?それを切り出して昔の人は建物をたてたようです」

 

 

いきなり後ろから声がして、振り返るとボンゴレのおっさんがいた。青い服に赤いつなぎ白い髭に丸いスキンヘッドの風貌は、年とったマリオみたいだ。

 

 

「ようこそ、大聖堂へ。案内人のボンゴレです。よろしく」

 

「あ、オレ、マサラタウンのサトシで、こっちがピカチュウです。よろしく」

 

「アタシはカスミです。この子はトゲピー」

 

「自分はタケシ、といいます。で、こっちが」

 

「おや?コウキくんじゃないか。もしかして、サトシくんたちは、君がいってたお友達かい?」

 

「はい、そーです。こんにちは、ボンゴレさん」

 

「あれ?コウキ、知り合いなのか?」

 

「ん?ああ、そうだよ。ほら、伝説のポケモンのレリーフ集めてたときにさ、あのエンテイの風見計とらせてもらったんだ。アルトマーレの昔からある家によくあるやつみたいで。まさかここで働いてるとは知らなかったけどさ」

 

「へー、偶然ね」

 

「はは、コウキくんのお友達なら、よしみで私が案内させてもらおうかな?」

 

「おお、ボンゴレさん太っ腹!」

 

「じゃあ、ぜひお願いします」

 

 

「ありがとうございます!」

 

「やったな、ピカチュウ」

 

偶然じゃないんだけどな!オレたちはボンゴレさんにつれられて、一度大聖堂をぬけて小さな庭園がある中庭を横切る通路に向かった。ガイドは敬語モードだ。解説まじりの観光もいいな、賢くなった気になれる。ボンゴレさんがふと顔を上げた。

 

 

「そうそう、太陽の塔はもう御覧になりましたか?」

 

「太陽の塔?」

 

 

 

大阪万博?

 

「ほら、あそこにある、ラティオスとラティアスの石像です」

 

 

指差された先には、どこからでも一度は目にするくらい、たかいたかい二組の塔。先にはむかいあわせのラティアスとラティオスの石像がある。ああ、あれ、太陽の塔っていうんだ、へー。

 

「ここ大聖堂と、太陽の塔は、災害からこの島を救ってくれたラティアスとラティオスに感謝の気持ちをこめて作られたとされています」

 

「そっか、感謝の気持ちかあ」

 

「シンボルだもんね」

 

「素晴らしいな」

 

感心しきりな三人と一匹を横目に、オレは正直複雑な気分だった。本当に感謝の気持ちだけで大聖堂や太陽の塔があんのなら、あんな機械いらないはずだ。かつては必要だったのかもしれないけど、やっぱり今はいらないしなあ。アルトマーレもきれいな歴史だけじゃないんだろう、きっと。

 

オレがとやかくいうことじゃない。オレがしたいのは、ラティオスとラティアスを守ることだ。それだけに集中して、全力そそがなきゃ!オレは改めて自覚して、小さくためいき。

 

 

視線の先には、まるで隔離されたかのごとく別の部屋に安置されている、機械。ステンドグラスの光をあびて、不思議な雰囲気のある室内に入ると分かる。今はオブジェと化している黒塗りの冷たい鉄の固まりは、あまりにも異質だった。

 

 

 

 

 

 

 

扉をくぐり、オレたちは上に目を奪われた。ラティアスとラティオスのお伽噺話を模したステンドグラスが、天井をぐるりと取り囲んでる。太陽の光を浴びて、舞い降りるきらきらとした鮮やかな色が眩しくて、オレは目を細める。おっさんの解説は観光客向けで、真相からはとおい。右から左に聞き流し、辺りを見渡すと、上は内側に突出した吹き抜けのベランダが、外へつながってる。あ、いた。白いベレー帽をかぶったカレンが、キャンパスに向かって真剣に筆を走らせていた。このアルトマーレは、きれいな景色にひかれて、将来を夢見る画家の卵や有名な画家が多くアトリエを構えることでもしられてるとか、いってたっけ?詳しくは知らないけど、カレンもいつか誰かに弟子入りして、その道をめざすらしい。んー、声かけてもいいけど、そうすると、ラティアス=カレンと勘違いしたサトシの逆ナンがなくなっちまう。ラティアス、ザンナーとリオンに狙われてるって自覚ないのか、しょっちゅうシークレットガーデンぬけだしちまうからなあ、探すの手間だし、大丈夫だろ。見てみぬふりを決め込むことにした。

 

 

 

やっぱり、警備が映画よりはるかに厳重だ。ものものしい格好をした憲兵さんたちが見張ってる。触れないように、しっかり区分けされて、これは、防弾ガラスか?やたら分厚いガラスケースに収められている。なんかちょっと安心だな。 ほっとしていると、いきなりタケシが後ろから声をあげるもんだから、ぎょっとして振りかえる。

 

 

「おおっ、僕はこの街で、素敵なお姉さんに出会うであろう!間違いない!」

 

 

ねーよ!

 

 

むしろ出会いは、サトシだからな。タケシもカスミもロケット団も空気だからな、本当は。ま、サトシがシークレットガーデンに迷い込んだら、言い包めて、巻き込んでやるつもりだから、タケシもカスミも覚悟してろよう、とひそかに笑いつつ、ボンゴレさんと笑う。ないない、と冷静につっこみ、後ろから見事なチョップをかましたカスミに、トゲピーが笑う。

 

「憲兵さんから、話は聞いてるよ。大丈夫だったかい?」

 

「あ、はい、この通り。それより、サトシが……」

 

 

あ、カレンに気付いた。ピカチュウとサトシが、声を上げる。サトシがあった、ザンナーとリオンに襲われてた女の子は、ラティアスだ。だからカレンとは初対面。カレンからすれば、誰こいつ?なわけで、まさか自分が呼ばれてるとは思わずいってしまう。笑いがこみあげてきて、とっさにオレはうつむいた。わかんねえよな!カレンとラティアスの性格は正反対だし、話せば一発で気付くけど、初対面で判別はまず無理だ。唯一の違いは白いベレー帽だけだし。サトシは、スルーされてむっとしたのか、追い掛けて出ていってしまう。あ、サトシ、と呼んだカスミとタケシだったが、首を傾げて顔を見合わせた。

 

「サトシくんがどうかしたのかね?」

 

「カレンに似た子がザンナーとリオンに襲われてたのを助けたらしいんですけど、いっちゃったなあ」

 

「いつだい?」

 

「いつ?タケシ」

 

「え、ああ、水上レースが終わって、一息ついたころだよ。コウキと合流する前だから、四時間くらい前か?カスミ」

 

「ええ。それがどうかしたの?」

 

「おかしいな。カレンはいつも広場でデッサンの練習をしてるはずだ」

 

「あのー、さっきの女の子は、カレンさんっていうんですか?」

 

「タケシ、鼻の下がのびてるわよ」

 

「ははは、カレンは私の孫だよ。若いのに画家になりたいと、両親のもとを離れて、この街にやってきて何年になるかな。しかしらサトシくんはカレン似の子を助けたんだね?うーむ」

 

「なんか、連れ去られる寸前だったみたいです」

 

「ひどいわよ。嫌がる女の子を無理矢理なんて」

 

「うーむ………ありがとう、みなさん。誰かは分からないが、無事でよかった。サトシくんによろしくいっておいてくれるかな?私が変わってその子の代わりにお礼をしよう。どうだい?これから予定はあいているかな?よければ、君たちに案内したいところがあるんだが、ついてきてくれるかい?」

 

「は、はあ」

 

「わかりました」

 

「ちょ、タケシ」

 

「なに、人違いなんだ、すぐ帰ってくるさ。サトシが戻ってくるのを待ってからでもいいですよね?」

 

「ああ、もちろん。だが」

 

「「?」」

 

ボンゴレさんがオレに笑いかけた。

 

「そんなことしなくとも、一足先についていると思うんだがね。招待したくて仕方ないお転婆娘を私は知っているんだ」

 

タケシとカスミは顔を見合わせて、首を傾げた。オレはにい、と笑う。

 

「あ、コウキ、なんか知ってるのね?さっきから静かだと思ったら!」

 

「コウキ、まさかカレンさんとももうお近づきになったんじゃ……」

 

「さあ?」

 

二人のブーイングにオレはさもあらん、な顔のまま出口にむかう。

 

「急ごうぜ、ボンゴレさん。このままじゃサトシが手荒な歓迎受けちまう」

 

 

ラッキー!いちいち説明する手間が省けた!どういうわけか、タケシ、カスミもシークレットガーデンに案内することが決まった。どうせ、どんなにがんばってもサトシ経由でザンナーとリオンにシークレットガーデンがばれちまうのは目に見えてる。ばれた時点でひっぱりこんで、ラティアスとラティオス、心のしずくとこの機械にザンナーとリオンを近付けないように、見張ってりゃだいぶ有利になるはずだ。ニ対四ならこっちが有利だ。サトシもカスミもタケシも、ポケモンの危機が迫ってて悪い奴がいるのに見殺しにする奴じゃない。ずるいけど、付け込ませてもらうぜ。ごめんな、と心のなかでつぶやいた。

 

唯一の懸案は、シークレットガーデンにある心のしずくとされてるのが、オレが映画で見たやつと明らかに形状が違うことだ。偽物とボンゴレさんがいってたけど、ならなんでわざわざあんな場所に保管してあるのか気になる。ごまかすためかもしれないけど、始めからないほうがいいのは火を見るより明らかだ。うん、やっぱり渡しちまうよりはいい。あとは、オレが持ってる心のしずくをどうするかだけど……消されるのはやだなあ。 いろいろ考えながら、オレは思い切ってボンゴレさんにある提案をしてみることにした。カスミとタケシをシークレットガーデンまで案内しながら、空を見上げる。

むかつくくらい、青空が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねえ、コウキ?悪い冗談はよしてよ、ねえ?」

「ボンゴレさん?いくらなんでも、これは………」

 

「なにぼさっとしてんだよ、ほら、早く!」

 

「おっ、おあ、ちょっと待ってくれ!」

 

「心の準備があっ!」

 

「はい、どーん」

 

「「うわあああっ!」」

 

 

 

噴水に向かって勢い良く突き飛ばすと、ぐにゃりと空間が歪んで、タケシ、カスミの姿が消える。悲鳴ごと冷たい水の向こうに飲み込まれてしまった。あははははっ、成功!ぱんぱん、と手を払ってオレは腰に手を当てた。誰しもが通る洗礼だよ、気にすんな?振り返ると、親指を立てたボンゴレさんが、歯を出してウインクした。

 

二度目にボンゴレさんにシークレットガーデンを案内されたとき、オレもやられたんだよ。このどっきり!

 

自宅を通されて、手入れの行き届いた中庭案内されてさ。自慢の噴水にうつるきらきらした太陽の光にひかれてのぞくと、きれいなタイル張りのモザイク画があるんだ。見入るだろ、普通。で、これはこうで、と言葉巧みに誘導されて、気付いたら後ろでおもいっきり突き落とそうとにやにやしてる顔があるわけ。焦るって、普通。誰がシークレットガーデンの入り口と思うよ?

 

 

映画だと、サトシはラティアスに案内される形で、行き止まりの壁の向こうに消えていくカレン姿のラティアスをみてるからびびりはしなかったけど、本当にすごいトリックだ。エスパータイプすげえ。オレは、そうっとてをのばす。境界がさっぱり分からないけど、ある一定のところから、ぐにゃぐにゃと空間が波紋を描いて歪む。さらに奥の空間があることがわかってるからいいけど、何も知らないとめっちゃ怖い。

 

 

 

「さあ、そろそろ行こうか」

 

「はーい」

 

 

 

よっと、先を飛び越えると、暗やみが落ちる。目が慣れてくると、建物のなかにいると分かる。目を凝らすと、うっすらとある光。

 

 

 

「おーい、カスミ、タケシ、大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫じゃないわよ!」

 

「ひどいじゃないか、コウキ!ちゃんと説明してからやってくれ!」

 

 

 

いや、おもいっきり、ハリポタの駅と同じ原理であろうここはさ、いくら説明しても理解はできないと思う。体感したほうが早いだろ、絶対。なんてな、実際ははめたくて仕方なかっただけなんだよ、わりいわりい。 オレは、なんとなくそこら辺で腰を抜かしているであろう、二人に笑う。トゲピー、ボンゴレさんにあずかってもらっててよかった。

 

 

 

「この先が案内したいところなんだが、大丈夫かい?」

 

「も、もう少し待ってください」

 

「こ、怖かったあ!濡れちゃうかと思ったじゃない!」

 

 

 

ランプ片手に現れたボンゴレさんを中心に、空間が明るくなる。二人は息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見上げれば、四角い空が広がっている。暖かな日差しの傾斜を求めて、駆け抜けた暗やみの先に一気にひらける視界。いつみても壮観だなあ、とのびをするオレの横で、カスミとタケシは言葉を失っているようだった。ふう、とランプを消し、進み出たボンゴレさんが笑う。

 

「ようこそ、シークレットガーデンへ」

 

今いるのは、シークレットガーデンをぐるりと囲う、アーチの通路。まず、目を引くのは、その通路に沿って植えられている、樹齢数百年の巨木たち。鬱蒼と生い茂る樹木が、木漏れ日をつくり、とても神秘的な雰囲気を生み出していた。通路からなら、どこからでも、長年にわたって存在が隠匿されてきた、水の都アルトマーレのど真ん中にある広大な庭園を臨むことができる。

 

 

「素敵!ねえ、トゲピー」

 

きゃっきゃとはしゃぐトゲピーを抱き抱え、カスミが走りだす。あ、おい!とタケシが困ったようにボンゴレさんを見るが、いっておいで、といわれ、タケシも駆け出した。あ、ずりい!おいてかれたオレはあわてて走りだす。

 

 

階段をかけおりると、そこに広がるのは、左右対称に植えられたさまざまな木々、植物の花壇。庭師さんが手入れしているから、丸や四角、といった奇妙な形の木々がならんでる。ふわふわとした芝生はやっぱり足を踏み入れるのははばかられて、オレは煉瓦の通路を急いだ。通路の両脇には、水の音。チョロチョロと水路が流れている。

 

 

「おーい、タケシ、カスミ、どこだよ!」

 

 

返事はない。

 

 

足早にすすむと、人工池が水路と合流しているのが見えたので、見渡してみるがいない。蓮の花と丸い葉っぱが浮いているあたりには、ニョロモたちがよく水遊びしてるからカスミが足を止めるとおもったんだけどなあ。オレに驚いて池にとびこんでしまったのか、波紋が広がる人工池。しばらく見ていると、蓮の葉っぱをのっけて、のそりと顔だけだして警戒しているかおたちと目が合い、再び潜ってしまう。

 

 

やっぱり、噴水の方かな、と振り向いたが、バタフリーやヤンヤンマの群れが通り過ぎただけ。マリルたちが水遊びをしているだけ。

 

野性のポケモンが住み着いてるといえば、大富豪のウラニワさんを思い出すけど、ただの荒れ地とここを比較するのは失礼だろう。

 

 

んー、ブリーダーをめざしてるタケシなら、ボンゴレさんに話を聞きに来そうなモンだけどなあ。振り返ると、二人に喜んでもらえてご満悦らしいボンゴレさんが、ゆっくり歩いてくる。

 

 

オレは先を行く。

 

煉瓦の通路は十字路に差し掛かる。ここら辺で真ん中辺りかな。両脇に伸びる通路はしばらくすすむと、行き止まりだけど、いろんなレリーフや風速計、風車がおかれてる。ちなみにオレがとらせてもらったエンテイの風速計は、ここのやつだ。少し息があがってきたオレは、少し歩みを止めた。 あ、いた!

 

 

「あ、コウキ!これね?エンテイの風速計」

 

「なるほど、かおがモチーフになっているのか、よくできてるなあ」

 

「それ探してたのかよ、おい!」

 

「見てみたかったのよ」

 

「しかし、立派な庭園だなあ。まさかこんな街の真ん中にあるとは驚いた」

 

「ここはね、代々大聖堂の管理人を任されてきた私たちの家が代々守ってきた大切な庭園なんだ。気に入ってくれたかい?」

 

「あ、ボンゴレさん!それはもう!」

 

「ご招待頂きありがとうございます。でも、どうして自分たちに?」

 

「まあ、それはすぐに分かるさ。なぜここがシークレットガーデンと呼ばれ、観光客はおろかアルトマーレの人々にも秘密とされているのか。なぜ私が君たちを招待したのか。まあ、とりあえずお茶会といこうか。まだサトシくんはついていないようだしね」

 

「こっからはボンゴレさんと一緒にいったほうがいいぜ?二人とも。ここの住人が侵入者と勘違いして怒るから」

 

「コウキくんはどうするんだい?」

 

「招かざる客がいるみたいなんで、お引き取り願おうかと思いまして。ラティオスがさっきから出せってうるさいんですよ。じゃ、あとで!」

 

 

 

 

 

いくぞ、ラティオス、とハイパーボールから繰り出すとカスミとタケシが驚いた顔でこっちを見てくる。

 

 

 

「友達から譲り受けた大事なラティオスなんだ。アルトマーレはラティアスとラティオスがたくさんいるって聞いたからさ、もともと友達作ってやりたくて来たんだ。黙ってるつもりはなかったんだけどさ、ごめん。詳しくはあとでな!」

 

 

 

適当にいったわりには、説得力あったみたいで、タケシがもしかしてここにはラティアスとラティオスがすんでるのかとボンゴレさんに聞いてる。オレについての説明はまるなげして、いそぐか。

 

 

え?のれって?かんべんしてくれよ!引きつったオレに、傷ついた顔でラティオスがうつむく。いや、別におまえが嫌いなわけじゃなくてその、と言い淀むと、ぱっと顔が明るくなりオレに背を向けてくる。あーもー!やけくそでオレはラティオスに捕まった。ぎいやあああああ!

 

 

 

ラティオスが加速する。風圧でものすごいことになってるけど、振り落とされないように必死なオレはそれどころじゃない。迷路のように入り組んだ緑の壁も空から飛び越えれはただの障害物。わー、木々が避けてる!じゃねえよ、あたるあたるあたる!なんとか避けて、ほっとしたら今度は木々にぶつかりそうになって、急下降する。眼下に広がる広い広い人工池。緑の屋根のテラスでカレンが絵筆をふるってるのが見えた。ばしゃしゃとしぶきが飛んで、あっという間にわたりきると、芝生のじゅうたん。一本の大木とブランコ。水路の水源である噴水と安置されてる心の雫、ラティアスとラティオスのレリーフ、そして再び見事な庭園。意識が飛びそうだが、なんとかこらえて、ラティオスに身を任せる。

 

 

あ、ラティアスとサトシだ。

 

 

遅かったか、できたらここを二人が通る前に、追尾のカメラを壊したかったんだけど。ま、こうでもしないとサトシたちを引き入れるチャンスが浮かんでこないし、しかたない。せめて内部調査は妨害しないと。すれ違いにオレは、幻想の境界におろしてもらう。

 

 

「ラティオス、ステルスで近づいて破壊してくれ。回収よろしくな」

 

 

 

うなずいたラティオスが消える。

 

 

 

振り向くと、侵入者と間違われたサトシとピカチュウがお兄ちゃんに襲われかけ、ラティアスが止めにはいるところだった。あー、カレンが怒ってんなあ。もしかして駆け抜けたオレたちにただならぬものでも感じちまったかな?あとであやまろ?な?と、口にくわえて、大破した機械を差し出してきたラティオスを撫でながら、オレはいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ、予想どおりだったな。ラティアス、怒らないから、正直に答えなさい。いいね?

お前は、サトシ君やピカチュウと遊びたかったんだね?

コウキ君やラティオスが遊びには来てくれるけども、毎日来てくれるわけではないからな。

ザンナーとリオンがお前を狙っているから危ない、といつも私やカレンが怒るものだから、

なら、自由に遊んでも怒られないここに、こっそり案内しようとしたんだろう?

遊びにも出かけず、ラティオスと一緒にここでずっと二体で遊ぶか、大人しくしていろ、というのは、やはりやんちゃ盛りのお前には酷だったようだね」

 

 

 

照れた様子で、こくり、とうなずいたカレンの姿をしたラティアスは、

ごめんなさい、とばかりにサトシとピカチュウに頭を下げる。

どうして俺達やボンゴレさんが、先にシークレットガーデンで待っているのか飲み込めず、

しかも瓜二つの双子のようなカレンとラティアスが目の前に現れ、

しかも一人はポケモンの名前で呼ばれ、しかも本人があっさりと反応する。

未だにラティアスを人間だと思い込んでいるサトシとピカチュウは、混乱しているのか、

あんぐりと口をあけ、そしてカレンとラティアスを見比べる。

間抜けな様子に笑いがこみあげてくるけど、よく見ればカスミもタケシも初見だからか、

どちらがどちらか分からず、サトシと同じような反応を取っていた。

 

 

「ラ、ラティアスって、ポケモンの名前じゃ?」

 

 

答えを求めるように、知っている顔の中で唯一余裕そうなオレに、サトシの視線が向いた。

ラティアスが人間の姿になれる理由なんて詳しくは知らねえよ。こっちみんな。

図鑑に載ってる程度のことしか知らねえし、教えたところでその混乱が直るわけじゃない。

これは百聞は一見にしかずだな。ほら、とラティアスを見るよう視線を投げると、

つられてサトシとピカチュウ、そしてカスミ、タケシの視線がラティアスに集中する。

後ろに手を回し、うずうず、としていたラティアスは、いきなりサトシの手をつかむと、

ブランコがつり下がっている大木まで駆けていく。

ちょ、君っ!といきなりの行動についていけないらしく、ずり落ちそうな帽子を押さえ、

肩のピカチュウは必死にしがみつき、ブランコまでたどり着く。

のれ、と指でさされ、言われるがままに座って漕ぎ始めたサトシは、

オレの視線をどうやらラティアスに聞けと言われたと思ったらしく直接聞く。

後ろからたちのりして、さらにスピードを加速させながら、ラティアスは笑う。

そして、ゆっくりと本来の姿を取り戻す。

みるみると変わっていく姿形に驚きの声が上がる。

うわああああ!と驚いたサトシとピカチュウは、ブランコから滑り落ちて人工池に落下。

ばっしゃーん、という豪快な水しぶきが上がり、あわててラティアスが救出に向かう。

え?え?とカスミはトゲピーを抱く力が強くなり、カノンとラティアスを見比べる。

タケシは言葉が紡げないのか、ぽかんと大きく口を開けたまま固まっている。

そして我に返った二人は、サトシーっと叫んで、あわてて走っていく。

これはいかん、風邪をひくぞ、とボンゴレさんが着替えを捜しに通路を引き返した。

あはははははっ、おもしれえ!こらえきれず噴き出すオレにつられて、カレンも笑う。

なあ、ラティオス、と笑いかけると、ラティオスはぶすくれてそっぽ向いてしまう。

それくらいで嫉妬するなよ、かわいいやつだなあ、もう、と撫でてやる。

ちらちらと視線を投げてくるのがかわいい。にやけていると、ラティオスがびくっとした。

どうした?と振り返ると、さっきまで全力で空気だった、無表情のまま超至近距離に近づいてくる兄貴がいた。

 

 

「あー、シスコンだもんな、面白くないのか?さみしいのか?

いとしの妹がどこの馬とも知れない人間といい感じになっちゃって」

 

 

笑いかけると、何も言わずにずいっと近づいてくる。あ、怒った?ごめんごめん。

謝っても、全然何も言わず、頭を突き出してくる。

え、なに?キョトンとしていると、カノンが笑った。

 

 

「今まで一人でお留守番してたのに、だーれもほめてくれないから、寂しいのよ。

あなたのラティオスみたいに、撫でてほしいんじゃないかしら?

この子お兄ちゃんだから、ラティアスみたいに甘え上手じゃないのよ」

 

 

何それ、かわいすぎるんだけど!あまりの破壊力に思わずそうなの?と兄貴に聞く。

バツの悪そうに顔をそらした兄貴は、こころなし顔が赤い。

ラティアス、お兄ちゃんください!といいかけて、ひきとめてくる手。

むくれたラティオスが、その手を自分の頭の上に乗っける。

オレは撃沈した。だめだ、だめだ、かわいすぎる、なんなのこいつら!

だーもーお前らかわいすぎるだろーっとオレは二体に抱きついた。

 

 

「コウキーっ、なんでいってくれなかったんだよ!

びっくりしたから、ピカチュウと一緒に池に落ちちゃっただろ!」

 

 

ずぶぬれのサトシとピカチュウに追っかけられるはめになるのは、別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラティアス、お前はただ遊びたかっただけかもしれんが、自分の立場を自覚しなさい」

 

 

やれやれ、とボンゴレさんが困ったように肩をすくめる。

しゅん、としたラティアスは、さらに縮こまる。こまったわねえ、とカレンは腕を組む。

さっきからずっと傍らで叱っている兄貴の言葉で、ようやく自分がしでかしたことに気づいたらしく、ラティアスは今にも泣きそうだ。

着替え終わったサトシを加えて、俺達はまたブランコの場所に戻ってきた。

 

 

「改めて、シークレットガーデンにようこそ。まずは、お礼を言わせてもらおうかな。

サトシ君、ザンナーとリオンから、ラティアスを守ってくれてありがとう。

カスミさんにタケシ君も、ここがいったい何のためにある庭園なのか、

説明がまだだったね。少し、長い話をしよう。聞いてくれるかい?」

 

 

カレン、頼むよ、とボンゴレさんが笑った。

 

 

シークレットガーデンの真ん中には、人工芝で覆われた区画がある。

正面には、心の滴とされている水晶が、奥底に沈められている噴水があり、

そこから芝生を囲う形で水路が組まれ、やがては後方の大きな大きな人工池に流れていく。

芝生の真ん中には、正方形の大きな茶色のレリーフがあり、例の古代兵器が刻まれている。

ラティオスとラティアスのお伽噺を語る小さなレリーフが、大きなレリーフをさらに囲う。

お伽噺といっても、パンフレットに載っているただのお伽噺の方じゃない。

いつぞやボンゴレさんが話してくれた古代兵器とそれを破壊した若者のお話だ。

小さなレリーフはガラスで加工が施されていて、ある程度復元がすんでいる。

でも大きなレリーフはまだ復元作業がまだ追いついていないらしい。

おかげで長年にわたる雨風、ガーデンの管理人たちの足跡で擦り切れ、消され、

今となっては読めないところも多々ある。

ボンゴレさん曰く、民族学に詳しいとある先生の所属する機関に調査を依頼したところ、

古代兵器の起動方法が記されているとのこと。

こつこつ、とレリーフを棒きれでたたきながら、ひとつひとつカレンがサトシたちに説明していく。

後ろの方でせわしなく動き回ってるラティアス、お前少しは反省しろよー。

あ、兄貴にどつかれた。きゅう、と小さくないて、頭をさすっている。

 

 

「コウキ君」

 

「あ、はい」

 

 

オレはボンゴレさんとともに、噴水前にやってきた。

 

噴水を覗き込むと、ゆらゆらと揺れる水面の奥深くに、映画とは全く違うただの宝石がある。

ちょうど中央の水の底には、円に植物の葉っぱをあしらった彫刻が刻まれ、

立派な装飾の施された台座が鎮座している。

その上に、まるで龍の蹄のようなくぼみがあり、心の滴と呼ばれている水晶がある。

 

 

「今夜、だそうだ。ポストの中にこれが挟み込まれていたよ」

 

 

差し出されたのは、ザンナーとリオンの予告状。

思わずボンゴレさんを見たオレに、うむ、とボンゴレさんは真剣な眼差しで封筒を見る。

既に封は切られていて、名刺サイズの紙切れが入っているだけだ。傍らにはキスマーク。

「今夜、古代兵器をいただきます」と簡素に書かれたそれには、トリックも謎も何もない。

正真正銘の予告状だ。

 

 

「オレも手伝います!ラティアスもラティオスも、うちのこと仲良くしてくれたし、

古代兵器なんかよみがえらせちゃだめだ!」

 

「……そうかい、残念だ。できたら、巻き込みたくはなかったんだが」

 

「オレだけじゃないです。サトシたちも、ラティ兄妹やアルトマーレの危機だってのに、

黙ってみてるようなやつじゃないですよ。ほら」

 

 

すべての説明を終えたカレンが、オレたちの方を指差して、予告状が来たことを教えてる。

真っ先にいきり立ったのは、サトシとピカチュウだった。

アルトマーレの隠された歴史を目の当たりにして、呆然、としていたものの、

再びラティオスやラティアスを危険にさらすかもしれないと聞いて、

いてもたってもいられなくなったらしい。

タケシとカスミは顔を見合わせて、うなずいていた。3人ともこっちに走ってくる。

 

 

「コウキずるいぞ!俺たちだって何かしたいのに!」

 

「そうよ!今日来たばかりですけど、こんな素敵な庭園もラティアス達もアルトマーレも、

すっごく素敵な街だと思うんです。それなのに、それを壊そうとするなんて許せない!

ボンゴレさん、あたし達も協力させてください!」

 

「自分も同じです、ボンゴレさん。

ザンナーとリオンを止めないと、きっと大変なことになる。なんとか、止めないと!」

 

「ほら」

 

「あなたたち……」

 

「わかった」

 

「おじさん?!」

 

「もう一刻の猶予も許されないんだ、カレン。これをごらん。

コウキ君が壊してくれたおかげで、ここの見取りまでは撮られずに済んだようだが、

コウキ君を追いかけてきたあの機械と同じものだ」

 

「これって……」

 

「カメラ、ですか?」

 

「ああ。これでザンナーとリオン達は、ラティアス達の隠れ家を突き止めてしまった。

そしておそらくは、心の滴の正体も」

 

「え?ボンゴレさん、これ、偽物だって……」

 

「すまないね、コウキ君、まだ君にも打ち明けていないことがあったんだよ。

とりあえず、カレン」

 

「はい」

 

 

カレンがうなずくと、噴水に設置されている小さな扉を開け、何かを入力した。

すると、勢いよくしぶきをあげている噴水が、すこし勢いが弱くなった。

そうしているうちに、だんだん流れが少なくなっていく。

そして、ぴたり、と水が止まってしまう。

ボンゴレさんが、なにかをひねるような動作をしたのち、柄杓でそれを掬いあげた。

 

 

「これは……?」

 

「きれい……。まるで宝石みたい。もしかして、これ、心のしずくですか?」

 

「いや、宝石ではないよ。そして、心の滴でもない。

伝承でもあるように、誠意の証として、アルトマーレでは二度と間違いを犯さないよう、

心の滴は存在していないんだ。本来の心の滴は、コウキ君が持っているようなものをさす」

 

「え?コウキ、もってるのか?」

 

「ラティオスをくれた友達から譲り受けたんだ。これだよ」

 

 

オレはリュックから心の滴を取り出した。

 

 

「心の滴は、ラティアスかラティオスに持たせると、特攻と特防が1.5倍になるんだ。

宝石じゃないよ。売ったらたった100円だから」

 

 

再びしまいこむ。ありがとう、とボンゴレさんは笑うと、再び話に戻る。

 

 

「宝石のように輝いているのは、ガラスで覆われている表面を綺麗にカットしてあるだけだ。

人工物だから鉱物としての価値はおろか、不純物が含まれているから、ガラス細工の価値もない。

ただの石ころ同然なんだ。それこそ1円の価値もない。ただのガラス玉ですらない。

ザンナーとリオンが宝石と思っているのなら、よかったのだけれど、どうもそうではないから困ったものだよ」

 

「どういうこと?」

 

「アルトマーレは昔から、ガラスの工芸品が特産品の一つでね。

これもまた、きわめて特殊な技法が施されているが、ある意味ガラス細工といってもいいのかもしれないね。

この「心の滴」と呼ばれているこれの中にある不純物とは、古代兵器の最も核となる部分の一部なんだ」

 

「えっ?」

 

「あの、お伽噺で出てくる、若者が持ち出したっていう?」

 

「ああ、間違いない。調査を依頼した研究所がいっていたよ。

これのガラスの部分を破壊して中身を取り出しても、古代兵器を動かすことはできないが、

リオンほどの技術者ならば、十分復元することが可能だろうとね。

処分してしまおうと考えたが、あのレリーフが復元されていないせいで、

肝心の中身を破壊するにはどうしたらいいか分からなくてね。

下手に復元できる状態で破棄してしまったら、彼女たちの手に渡ってしまったら終わりだ。

だからこうして保管するしかなかったんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「ああ。厄介なことに、彼女たちはその研究を依頼した人の家にまで侵入し、

あらかたの研究書類を盗んでしまっているんだ。

ばれてしまうのは時間の問題だったのは事実だよ。残念なことにね」

 

 

ボンゴレさんがため息をつく。

 

 

「でも、ボンゴレさん。確か起動には、心の滴もいるですよね?

オレ、取られてないし、あいつらもってる気配なかったし、大丈夫なんじゃ?」

 

「もちろん、そうであってほしいとはおもうよ。

だがね、彼女たちにとって、一番必要なのは、復元できる中核が手に入ることなんだ。

今ここで追い払うことは可能だ。でも、幾度も狙われ続けることになるのは、困るんだ。

確かに、かつては古代兵器の起動には、確かに心の滴とラティアスやラティオスが必要だったかもしれない。

しかし現在では、心の滴はなくとも、同様の波長をもつ鉱物や機械を使用すれば、いくらでも作動させることが可能なはずだ。

最悪のケースはいくらでも思いつく。彼女たちは片っぱしから、心の滴と名のつくものを盗んでいるからね。

サトシ君、カスミさん、タケシ君、そしてコウキ君。巻き込んですまないとは思う。でも、協力してくれるかい?」

 

 

オレ達は、うなずいた。

 

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