就職することが出来る仕事は提督だけでした。   作:狛犬太郎

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お疲れ様です、作者の狛犬太郎と思われるなにかです。

4月、始まりましたね。新しい環境で過ごすのはとても大変かと思います。私も非常に大変になりました。

生活習慣がガラッと変わりますものね。

ひたすらに眠いし、愛しのお布団とは朝早くにお別れとなるのは悲しいですね。

新生活で大事なのは早い事その生活に慣れることかもしれませんね。

学生も社会人も寝れる時は寝ろよ!!

特に新しい環境になった時は特に!!

就活生は本当に寝とけ!!

倒れるぞ!!



就活戦争14日目

目覚まし時計がセットした定刻通りに鳴り出した。

 

只今の時刻、朝5時。寝惚け眼を擦りながら布団からムクリと起き上がる。本日は日曜日、しかしそんな事は関係ない。どんなに粘っても1時間以内に叢雲辺りが怒鳴り込んでくるに決まってる。

 

いや、まだ叢雲ならいい方かもしれない。もし、淀姉さんが来ようものなら俺の布団の上はプロレスのリングへと早変わりだ。因みに一切の抵抗も許されない、というか抵抗しようにも身動き一つ取れずに関節技を決められる。

 

提督になって1ヶ月が経った。1ヶ月経った訳なのだがどういう事か未だ休みらしい休みが無い。正確には休みはあるんだけど俺の心が休まらない。

 

休めるかな〜と思うと誰かしらが俺の部屋にやって来るので1人で自由な時間を過ごせない。

 

先週の日曜日は午後から半休だったものを我が姉である明希姉こと明石が盛大にやらかしてくれたのでその半休すら失われた。

 

そんな明石さんですが次の日に有給使って隼鷹や球磨達何人かと共に街でパーっとやってきたらしい。皆さんご想像の通りべろんべろんになって帰ってきた。

 

マジでなんなのコイツら……って思ったねあの時は。

 

主犯である明石に説教しようかとも思ったが、酔っ払い共に説教しても馬の耳に念仏、逆にダル絡みされる事が予想出来たので諦めてさっさと部屋に帰らせた。

 

道中明石がやたら絡んできたけど全て、「はいはい…」と聞き流した。

 

結局のところ……『いいなーー!!俺もパーっとしたいなーー!!』ってのが本音だ。折角、職場が京都にあるんだ。京都の風情ある町並みで神社やお寺、美味しい食べ物や気になる脇道、綺麗な舞妓さんなんかを見て、居酒屋なんかでお酒飲んで気分よく前に住んでたアパートに帰りたい。まぁ京都駅までここからだと電車で2時間ぐらいかかるんだけどな。もし今日休みだったとしたら疲れてるから天橋立とかが良い。隣駅だし。

 

同じ京都でも東京から新幹線乗るのと時間的には大して変わらないのだ。むしろ新幹線の方が早いかもしれない。

 

まぁそれでも鎮守府内じゃないし、監視の目も緩まるだろう。艦娘達に行き先を伝えずにササッと行ってそのままおさらばだ。

 

……その作戦の大前提として休みの獲得が必須なんですがね。

 

兎にも角にも眠いしダルい。……正直、俺すんごい頑張ったと思うんだこの1ヶ月。今日ぐらい休んだっていいじゃないか……。愛しのお布団、どうして君は僕を離してくれないんだい?でも本当は僕も君ともっともっと一緒にいたいんだ!!でも魔王が迫ってくるんだ!

 

「ちょっとアンタ〜!いつまで寝てるのよ!入るわよ〜!」

 

ほら、魔王襲来だ。でもなんか雰囲気違うな……魔王って言うより朝起こしに来たオカンって感じ。

 

玄関の開く音と共に足音が1つ。

「やっぱりまた寝てるじゃない……。ほら、早く布団から出なさいよ、時間は有限なんだから!」

 

俺はその声が聞こえるや否や、布団を頭から被り、芋虫に変化した。

 

「……叢雲ぉ〜、俺はもう疲れたんだ。昨日遅かったし今日は休ましてもらうぞ!仕事はしない!!もうお布団と結婚する!!」

 

「……は?何言ってんのよ、アンタ今日休みじゃない。」

 

………………?

 

ちょっと何言ってたかよく分からなかったなぁ。

 

「叢雲さん、今なんて言った……?」

 

恐らく俺の顔は今、相当アホ面だろう。しかしそんな事よりも重要なワードが叢雲から聞こえたぞ!?

 

「だから、アンタは今日休みでしょうが!!」

 

「……休み?」

 

「休み。」

 

「Holiday?」

 

「Yes,Holiday.」

 

「………よっしゃあぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!休みだぞぉぉぉぉーーーーーーっ!!!」

 

夢にも見た休みが今現実に……!!!

 

………ん?でもなんで急に休みに?

「アンタは今日は休みって……昨日大淀さんから言われたんじゃないの?」

 

昨日、昨日……執務室で時雨と仕事して、昼に食堂で間宮ランチしてまた執務室で書類にはんこポンポンしてる途中で眠気が襲ってきてうたた寝したら淀姉さんも襲ってきて……あぁ、チョークスリーパー決められてもう一度眠りについた気がする。うたた寝してた辺りとチョークスリーパー決められた辺りの記憶が定かじゃないからその辺で言われてたのかもしれない。

 

うたた寝してた俺も悪いけどチョークスリーパーでトドメを刺した淀姉さんにも非はあると思うんだよ、え?ない?……そっすか。

 

まぁ、それはそれとしても……

 

「休みは休みじゃあぁぁぁーーー!!!俺は寝るぞ、叢雲ぉぉぉ〜〜〜!!!」

 

背景にドドドド!!とかゴゴゴゴ!!とか擬音が付いてる石仮面の某アニメみたいな喋り方で布団に潜り直す俺。

 

休みじゃ休みじゃ!!二度寝できるという幸せ!!5時起きどころか昼ぐらいまで寝たっていいわけじゃん!!だって休みだもん!!

 

「何言ってんのよ、とっとと起きなさい。アンタは私に借りがあるでしょうが。今日はその借りを返しなさい。私も今日休みだからこれから出かけるわよ。」

 

沈黙が部屋を包んだ。実際俺の顔は今絶望の顔だろう。

 

「……いや、待ってくれ叢雲!今日は、今日だけは勘弁してくれ!!頼むから今日だけは休ませてくれ!!」

脱出の失敗、増え続ける仕事、淀姉さんからの説教で心身ともにもうヘトヘトだ。

 

借りは返さなければ行けないが今日は辛すぎる。

 

「次いつ休みが被るかなんて分からないんだから今日以外機会はないでしょうが!!文句言わずにさっさと起きる!!」

 

抵抗も虚しく叢雲に布団を剥ぎ取られてしまう。これが夏なら大したことないのだが、4月の朝はまだまだ冷えるのだ。

ぬくぬくと温かったお布団を奪われ、部屋の冷えた空気が俺を一気に冷やしていく。

 

「だあああぁぁぁーーーーーーー!!!!!!!わーったよ!!!行けばいいんだろ行けば!!!」

 

「うむ、宜しい。」と叢雲は満足げに頷いていた。

 

くっそぉぉぉ〜〜〜!!!休みってなんだよ!?これじゃあいつも通り休日返上じゃねーか!!

 

着替えると言って叢雲を追い出したが「アンタ寝直す気満々だから、5分経っても出てこなかったら大淀さんに報告して休み取り消してもらうから」と俺の考えてる事がバレバレだったので諦めて着替えた。

 

そして着替え終わり、部屋から出ると引きずられるように叢雲に連行されるのであった。

 

この時俺は気がついていなかった。

 

「フッフッフッ……青葉、見ちゃいました!!あのお二人でお出かけですか!幸いにも今日は私もお休み!!まだまだ謎が多い司令官と普段隙のない叢雲さん!!この機会を逃す訳には行きません!!」

 

出歯亀精神旺盛なコイツに捕捉されていたことを。

 

「さてさて、この情報をどうするか……。私だけで独占するのもありですが記事的にはもう少し面白くしたいものですね!……今日のお休みは誰がいたっけなぁ?白露型の子達は今日遠征かぁ、司令官がお休みだから時雨ちゃん、夕立ちゃんも同行と……他の面白そうな子達も出撃だったり遠征だったりで……あ、良い方達見つけちゃいました〜!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

舞鶴第2鎮守府から1番近い宮津駅から特急はしだてで約2時間。時間は9時頃、俺は叢雲と共に京都までやって来ていた。

 

最初俺は天橋立で観光したりご飯食べたりすると思っていたのだが叢雲の要望で京都となった。買い物をするなら京都まで出てしまった方が色々あると言うことらしい。

 

京都に行きたいとは思っていたけど正直今日は天橋立とかでササッと観光して終わらせたかった。

 

烏丸口から改札を通り修学旅行以来の京都タワーが目の前に現れた。

 

「さて、着いた訳だが叢雲さんよ、なんか予定とか決まってんの?あ、エスコートしなさいとかは無しな?京都は中学の修学旅行以来で土地勘無いし、実質今日休みを知ったわけだし。」

 

「……今回は仕方ないわね。まぁ、今日は私の行きたいところに行く気だったし、私は何度か来たことあるから今日は私が案内してあげるわ。でも次来る時はアンタが私の事案内しなさいよね?」

 

「えぇ〜、今回含めても2回しか京都言ったことないやつに 案内任すのかよ〜?」

「なら今回色々見ておく事ね、足りないなら次までに良い観光スポットや美味しい食べ物を調べておきなさいよ?」

 

いつも通り俺に対して当たりは強いが口調は普段より優しげだ。余程楽しみだったのかいつもツンツンとした表情も柔らかく、ふんすっ!と気合十分だ。

 

対して俺は眠そう気だるげだ。

 

いつものうさ耳艤装があったらブンブン動いてそうだ。

 

今日の叢雲はいつもの制服ではなく私服だ。茶色のテーラードジャケットに白いブラウス、黒のスカートに緑がかった黒のタイツという組み合わせ……なかなか似合ってる。艤装も外しているのでかなり新鮮だ。

 

やっぱりインパクトというか印象強いよな?叢雲のうさ耳艤装。あれが無くなるだけでも相当イメチェンだと思う。

 

「何よ、ジロジロ見……アンタ、私に何か言うことは無いのかしら?」

 

あ?なんだよ急に?あぁなるほど。

 

「あぁ、分かった分かった。初日は色々迷惑掛けたな。今日は俺が金出すけどカードの上限額超えるまでってのは無しにしてくれよな?」

 

「それもそうだけど、そうじゃなくて今日の私を見てどう……〜〜〜ッ!!今日アンタには荷物持ちさせるから!!覚悟してなさい!!」

 

背中を思いっきりぶっ叩かれた。

 

「あだっ!?何すんだよ急に!?」

 

「うっさい!!グズグズしないでとっとと歩く!!」

 

こうして俺は朝と同じように叢雲に腕を引かれながらズルズルと歩くのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「おーおー随分と仲良さげに歩いてるクマねぇ。」

 

「いや、球磨姉さん、俺には提督が引きずられてるようにしか見えないんだが……というかなんでこんな事に……。」

 

「にゃー、木曾はあのもどかしい感じが分からにゃいかにゃ?」

 

「まだまだクマねー。」

 

「それはさておきどーすんだよ?見ろよ、北上姉さんと大井姉さん達。大井姉さんは『私全然興味無いんですけど』感アピールしてる割にはめっちゃ提督達の事チラッチラ見てるし、北上姉さんは双眼鏡やらなんやらで提督達ガッツリ見てて最早不審者じみてるし……ほら、俺らの事忘れて追いかけてっちゃったよ。」

 

「仕方のない妹達だクマー、まぁでもこの状況だったらその気持ちもわからなくはないクマ。こういう時こそお姉ちゃんが一肌脱いでやるクマ。多摩、木曾、みんなを追いかけるクマ〜!」

 

「にゃー!」

 

「お、オー……。」

 

「木曾、全然元気ないにゃ!もっと声を張るにゃ!」

 

「しかもクマ、にゃーと来てるのにオーとはなんだクマ。なんか掛け声あるだろクマ。」

 

「いや、俺、姉さん達みたいな特徴ある語尾付けないし。」

 

「文句が多いクマ!この際だから私が木曾の語尾を決めてやるクマ……まぁ無難にキソでいいクマね、これからは〜キソとか〜キッソーとか言うクマよ。」

 

「やだよ恥ずかしい!!なんだよキッソーって!?ボケモンのペカチュウか!!」

 

「愛嬌のあるいい語尾にゃー。木曾良かったにゃー。」

 

「多摩姉さんまで……こんな事だったら天龍達と残って自主トレしとけば良かった……。」

 

「ほら、まずは練習あるのみクマ!とりあえず『木曾だキソ!』って言ってみるクマ。」

 

「恥ずかしいなんて感情捨てるにゃ!多摩達はこの語尾に誇りを持ってるにゃ!それが言えないという事は多摩達の誇りを馬鹿にしてると同じにゃ!」

「めんどくさい姉たちだな!?俺は絶対「帰ったら青葉に木曾の恥ずかしい話を流すクマ」分かったよ!!言う!!言うから!!」

 

「分かればよろしいクマ。とりあえず今日はお試しクマ。1回『木曾だキソ!』って言うクマ。」

 

「姉さん卑怯だぞ……はぁ、1回だけだからな……き、木曾だ……キソ……。」

 

「木曾、それは無いクマ。肝心な所が聞こえないクマね。」

 

「もう一度にゃ。」

 

「1回って言ったじゃねーか!?「青葉に」だから卑怯だぞ!!」

 

「木曾、おねーちゃん達もそこまで鬼じゃないクマ。」

 

「ついでに言うなら多摩は猫じゃないにゃ。」

 

「結構鬼だわ。俺もついでに言うならそれは知ってる。」

 

「私達に聞こえるようにセリフを言えれば1発で終わるクマよ、さぁ木曾、恥ずかしいと思うなら1発で決めるクマ!」

 

「にゃー!木曾、腹から声出すにゃ!」

「うぅ……なんだってこんな事に……。」

 

こうして木曾の自己紹介(語尾にキソ付き)はなんだかんだで結構な回数続いた。その時の姿を青葉に撮影されてるとは木曾も思わなかっただろう。

 

彼女がその事を知るのは後日、青葉が鎮守府内で発行している新聞に掲載されてからだった。

 

後に木曾は遠い目でこう語った「姉さん達から恥ずかしい話をバラされなかったところで無意味だった……こうして俺の恥ずかしい話は新聞に載っちまった訳だしな……。」

 

頑張れ木曾、負けるな木曾!今日も元気に頑張るキソ!!

 

「おいやめろ!!」




3〜段重ねのアイス

食べたくな〜ったと

眠っている僕を起こして急いだ

今日の朝、被害者は俺。この時、3段重ねのアイスが食いたかった事は俺も知らん。

いざ店に着いたら

終了していたキャンペーン

仕方なく2段のアイスでも我慢した

不貞腐れてる君を慰めようとして(財布的に助かった)

やけに明るく振舞ったら

余計に怒らせてしまった。

思わずにやけてる僕を

「何ニヤニヤしてるのよ!!アンタの財布空にするわよ!!」そいつは勘弁してください。

あと1段はチョコミントが良かったみたい

やっぱりねって言うと叢雲は

「別にいいじゃない、好きなんだから!」

照れくさそうにチョコミントを頬張ってむせてた。

可愛らしい所もあるのね。



次回は京都観光編です。

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