もうお休みがあったという方も今日お休みという方もいらっしゃるでしょう。
休みは最高だ。休み期間以内ならいつまでお布団と共に過ごしてても問題ないから。
新生活に慣れるまで頑張りましょう。
スーツは2着ぐらい持っておけよ!!
着る人はめっちゃ着ることになる消耗品だから交互に着てけば結構持つからな!!!
青葉から提督と叢雲が京都まで出かけたという情報が舞い込んできたのは朝6時過ぎ。
食堂で愛しの北上さんと一緒に素敵な朝ごはんを私は食べていた。寝惚け眼の北上さんがご飯をゆっくり食べる姿はとても可愛いのだ。
すると私の隣に「失礼しま〜す!!」と朝でもやかましい事でお馴染みの青葉が座ってきた。正直鬱陶しい。私は「おはようございます。」と一言だけ言い、北上さんとの食事を再開する。
「球磨型の皆さん、今日はお休みなんですね〜、実は私もなんですよ〜!〜〜〜。」
無難な会話をしようと青葉はあれやこれやと話を振ってきた。私は北上さんとの朝ごはんを楽しみたいのでハッキリ言って邪魔でしかない、何なのかしらホント……。
面倒になった私が邪魔だと伝えようとした時、青葉から私達の目の前に、1枚のメモ用紙を滑らせてきた。
一体なんなのかと折りたたまれたメモ用紙を開いていくと……そこには一言だけ
『提督と叢雲ちゃんが2人でお出かけする。』
とだけ書かれていた。
青葉がちらりと食堂の奥へ視線を向ける。
そこには件の提督と叢雲が朝ごはんを食べ終え、食器を片付けている所だった。
そしてこちらに目配せすると一呼吸置いて日常会話を始めた。
「実は今日の休みを使って私、『京都』まで行こうと思うんですよ〜!『7時発』の特急に乗ってなんですけど、これを使えば大体9時ぐらいには京都駅に着くんです〜!
それでお茶飲んで少ししたらピックカメラで新しいレンズを買おうと思ってるんですよ〜!」
青葉が所々言葉を強調して来るのには意味がある。今回は『京都』と『7時発』というワード。
へぇ〜『7時発』の特急で『京都』に……。
「……『京都』ねぇ〜、偶にはアタシ達も遠出してリフレッシュするってのも良いねぇ大井っち、ならアタシ達もその7時発の特急に乗ってこうか〜。」
北上さんの顔はついさっきまで寝惚け眼だったとは思えない戦闘直前の顔つきへと変わっていた。
私は提督と叢雲が出掛けることに興味など無い、本当に微塵も興味など無いが北上さんが偶には遠出しようと言うのであれば致し方ない。
「もし、向こうでお会いしましたら1枚よろしいですかね?新しいレンズの被写体にお二人はピッタリですので!」
青葉がシャッターを押すポーズをする。
あまり撮っては欲しくないのだが、北上さんとのツーショットなら旅の記念にもなる。……
「アタシは構わないよ〜。」
「あまり撮って欲しくはありませんけど、出来ればツーショットでお願いしますね!」
と私は北上さんとのツーショットをアピールしておく。
「ありがとうございます!ではでは、私もそろそろ準備しないといけないのでこの辺りで失礼します!今日の休暇、楽しんできてくださいね!」
……記者って言うのは本当に『良い性格』してるわ。まぁ、今回は見逃しましょう。あくまでも、青葉は私達に観光地をオススメしてくれただけですし。
あ、北上さんが食器を片付けるみたい。私達も7時の電車に乗るならそろそろ支度しなくては……。
後ろの席にいた姉妹達も話を聞いてたらしい。勘のいい姉のことだ、今の会話と視線のやり取りで察したのだろう。結局、球磨型全員で京都へ遊びに行く事となったのだった。
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なんだか後ろの方が騒がしいが興奮気味の叢雲に腕を引っ張られて止まる事は叶わないので見ることは出来ない。……まぁ大したことは無いだろう。この辺なら芸達者な人とかもいるはずだし。マジックとかその辺やってたと想像する。
「んで叢雲、これからの予定はどうするよ?」
グイグイと歩いていく叢雲を少しでも落ち着かせようと声を掛けてこれからの目的を聞く。
「まずは今いる南北自由通路を通ってバスロータリーまで行くわ。そこでバスの1日券を買う。そしたらそうね……デザートを食べるにしてもまだ時間が早いからどこか観光しようかしら。……アンタはどこか行きたい所とかある?」
聞かれても京都でピンと来る場所は限られてるからなぁ……他にどんな所があったっけな?
「んーそうだなぁ……。マップ的な所ない?そこ見て決めようぜ。」
「ん、分かったわ。」
叢雲の案内でバスロータリーまで出てきた俺らは券売機横の全体マップを確認する。
懐かしいな、中学の修学旅行で京都を訪れた時今でも覚えてるのは金閣寺と清水寺ぐらいだが。
「じゃあ、どうするのよ?」
「うーん、どーすっかな……。」
俺らが行き先で悩んでるとおじさんが声を掛けてきた。
「お兄ちゃん達はどちらまで?」
どうやら観光案内の人らしい。そう言えば修学旅行の時もこんな感じの人いたな。
京都は目的地が沢山あり、それだけ行先の違うバスがあるので観光客、特に外国人なんかはどのバスに乗ればいいか分からなくなる。
そんな観光客相手にどのバスに乗ればそこまで行けるか教えてくれるのがこのおじさんだ。
「いやぁー、今どこに行こうか迷ってて……因みにどこかオススメってあります?」
分からない時は知ってる人にオススメを聞くのが1番良い。基本ハズレはないからな。……まぁ偶に微妙な時もあるけど。
まぁそもそも京都だしハズレは無い、さらに言えば長年観光案内してるだろうこの人なら安心だろう。
「そうだねぇ〜、私のオススメなら伏見稲荷大社かなぁ……今の時間ならまだそこまで混んで無いだろうし、あそこは時間が経つにつれてどんどん人が来るから行くなら朝方の方が良いと思うよ?」
伏見稲荷大社かぁ、この京都で日本人にも外国人にも大人気の観光スポットのひとつだ。修学旅行でも行けなかったし、行ってみるか。
「あら、良いんじゃない伏見稲荷大社。1回行ったけどなかなか良いところよ。」
叢雲とも意見が一致したので目的地は伏見稲荷大社で確定した。
「ありがとうございます、因みに伏見稲荷大社行きのバスはどこから……」
「伏見稲荷大社でしたらここからぐるっと奥まで行ってC4のバス停まで行ってください。そこから伏見稲荷大社行きの急行105か南5番のバスに乗ったら稲荷大社前で降りてください。後は道なりに行けば伏見稲荷大社まで着きますので。」
えーととりあえずC4のバス停まで行って105か南5番のバスに乗ったら稲荷大社前ねオーケーオーケー
「何から何までありがとうございます、助かりました。」
「いえいえ、これが仕事ですから!あ、そうそう、お二人はバスの一日乗車券お使いになられます?」
「えぇ、使う予定よ?」
「では、1つお得な情報を教えておきましょう。すぐ隣の券売機、凄い並んでるでしょう?これを待つのは結構しんどいですよね。」
右を見れば俺らと同じように多くの観光客がバスの一日乗車券を買おうと券売機は長蛇の列だ。確かにこれを待つと考えると憂鬱だ。
「この話を知ってる人はこの列には並ばないんですよ。このまま伏見稲荷大社行きのバス停の方まで行ってみてください。……実は向こうにも券売機があるんです。」
「え!?それ本当!?私、前来た時この列並んだわ…。」
「これからは向こうで買った方が早いという事を覚えているとお得ですよ。待っても2組程度ですから。おっと失礼、向こうで外人さんが困ってるみたいだ。」
「あ、どうぞどうぞ。俺達はもう分かりましたから。
本当にありがとうございました、お仕事頑張ってください!」
「本当に助かったわ!ありがとうね!」
「おおきに、今の時期は桜も綺麗だから色々見てデート楽しんできてくださいね〜!」
案内人のおじさんは仕事をすべく、案内板と睨めっこする外国人の元へ向かっていった。
………。
隣を見れば少し俯いて顔を赤くした叢雲がいた。
いやいやいや待て待て待て、俺らはここに遊びに来ただけだ。それをデートって言うんじゃないかって?
やめろよ、俺だって今考えたら恥ずかしくなってきたんだから……。
「こっ、これはデートなんかじゃなくてただの買い物だから!!勘違いしなッ〜〜〜!!!」
……あ〜、舌噛んじゃったなこりゃ、痛そうだ。
涙目でヒーヒーしてる叢雲見てたら笑えてきた。
隣でめっちゃ焦ってる奴見ると安心してこない?今そんな感じ。
叢雲の頭をポンポンと撫でると教えて貰ったバス停まで足を進めるのだった。
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アタシ達はこうちゃんと叢雲を追ってバスロータリーまでやってきた。
「……くっ、バスですか。」
「まぁここでの移動手段のひとつと言えばバスだしねぇ〜。……問題はどうやってバレずにこうちゃん達をつけられるか。」
そもそもどこに行くのか、いくら私服と言えど同じバスに乗れば2人のどちらかは気がついてしまうだろう。
大井っちはさっきから黒いオーラがチラチラしてるし、
彼女がこうちゃんの事を興味無いと口では言ってても実際そうでも無いことは知っている。
アタシもアタシで多分ソワソワというか少し落ち着きないだろう。
ではどうやって尾行するか……。
「全く2人共さっさと行き過ぎだクマ!まぁそもそも木曾がちゃんと声出さないのが悪いんだクマ。」
「……やっぱり姉さん達鬼だわ。」
「木曾、何言ってるにゃ!多摩は鬼でも猫でも無いにゃ!」
うん、それはアタシも知ってる。
「それはいいクマ。大井、提督はどうしたクマ?」
おっと、このまま話を聞いてたらこうちゃんを見失ってしまう。
「あんなに楽しそうに……私だって……いやいや!そんな事ないわ。私には北上さんがいれば……。」
「あー……、これはだめそうクマね。」
「あ!見つけたにゃ!!向こうに歩いてくにゃ!!」
視線を向けた先にはこうちゃんと叢雲の姿があった。
歩いていく先は……
「……あのバス停は伏見稲荷大社に向かうクマね。」
伏見稲荷大社か、無難といえば無難な選択だと言える。
「行先が分かったのはいいけどどうするよ球磨姉?木曾に尾行してもらう?」
「だからなんで俺なんだよ!?絶対バレるって!!」
焦る木曾を他所に球磨姉はフッフッフッと悪い笑いをする。
「木曾、そう焦るなクマ。こんなこともあろうかとちゃんと作戦は考えてあるクマ。」
そうして球磨姉は背負っていたカバンをゴソゴソと漁るとこの状況を打開するアイテムを引っ張り出した。
「じゃーん!那珂チャンから借りてきた変装セットクマ!サングラスとウィッグ、それとマスクだクマ!」
「結局尾行じゃねーか!!てかそんな変装じゃいくらなんでも気がつくだろ!?」
「那珂チャンを馬鹿にするなクマ!那珂チャンはな、これで幾多の街を駆け抜けて来た実績の持ち主クマ!これだけ実績のある変装なら木曾にも出来るクマ!」
「止めだ止めだ!!姉さん、俺は降りるぜ!!付き合いきれん!!」
おっ?大井っちに動きが……
「……木曾、うだうだ言ってんじゃないわよ、やるやらないじゃないの……『やれ』。」
「……………ハイ。」
「そう、じゃあお願いね?」
大井っちの笑顔の『お願い』は本当に迫力があるなぁ、まぁ目が笑ってないんだけどね。
「とりあえずこれで尾行担当は決まったにゃ。そしたら私達は次のバスで移動かにゃ?」
「いや、バスで次を待つのは得策じゃないクマ。そもそも伏見稲荷大社行きのバスはそこまで多くないクマ。」
「じゃあどうします?」
京都を移動すると手段といえば……
「電車を使うクマ。というかここから伏見稲荷大社に行くんだったらバスより電車の方が圧倒的に早いし楽だクマ。」
バスの一日乗車券は京都市内をほぼ行けるという非常に便利なものだが欠点として道路は基本的に混雑してたり、
大量の観光客でバス停に長蛇の列ができ、1回では乗れない等と時間をロスすることもある。
その点、電車は短時間で目的地付近まで一気に移動出来る。まぁ欠点と言えば京都の電車の料金が結構高いという事だろう。
「そうだクマ、後お前達にコレを渡しておくクマ。」
球磨姉が姉妹全員にまた新たなアイテムを手渡していく。
「これいつも使ってる無線機じゃねーか。球磨姉さんこんなものどうやって持ってきたんだよ?明石さんと倉庫番の妖精さんがいるだろう?」
腹を括ったのか木曾も真面目な顔つきだ。やるならトコトンやるって言うのが木曾のいい所だと思う。まぁでも木曾の疑問は私も気になるところだ。
これはいつも作戦時に使う小型無線機。作戦時以外は無断で持ち出せないように倉庫にしまってあるのだが、どうやって……。
「知らない方がいい事もあるクマ……ってカッコよく言ってみたいところだが実際は多摩と一緒に明石と倉庫番妖精さんにちょっと袖の下から良いモノを渡してきただけクマ。」
「俗に言う賄賂ってやつにゃ!」
おいおい、ザル過ぎでしょウチの鎮守府。最早倉庫番の意味ないじゃん……。
身内のセキュリティ一の甘さに一抹の不安を感じながらもアタシら姉妹により変装させられた木曾を提督達が乗るバスへ送り込み、アタシ達は提督達よりも先回りする為、電車へと乗り込んだのだった。
ベッドに〜倒れ込んで〜ため息一つ
執務で〜疲れ果てて〜身体は重い〜
想像した将来は近づいてこない〜
シーツに顔をうずめて「なんでだ?」って呟いた真夜中〜
Ah Ah Ah Ah Oh God bless you 願いは届かないのか〜
「ですから今日はお休みにしたじゃないですかこうちゃん。叢雲ちゃんと京都まで行くんでしょう?」
「淀姉さん、これじゃあ実質休日出勤です。」
「あら、でしたら私と一緒にお仕事します?まだまだ捌かないといけない書類がありますよ?」
「謹んでお休みを頂戴させていただきます。」
「あ、そうそう、こうちゃん。来週は久しぶりに私とお出かけしましょうね?」
……100%うまくいくという人生ってどうなんだろう〜?
俺は良いと思う。
※本編に特急はしだて7時発と書いてますが実際の発車時刻に、はしだて号の7時発はありません。
もし、遊びに行く予定の方がいらっしゃる場合、改めて時刻表を調べてね。