航希君から少しこの世界設定をお話頂けるそうなので軽く耳を傾けて上げてください。
彼、プレゼンでメンタルやられてきた方なんで。
私の世界線だと、淀姉さんパワータイプなのでお気をつけて!
説明会でメモ帳、手帳、ペン、ファイルは忘れちゃダメだぞ!
俺の名前は相良航希22歳、大学四年生。まぁ就活生って奴なのさ。
大学は海軍直属の学校だ。高校、大学と海軍学校を進んできた。何?『軍隊学校じゃ出会いも無いだろぷっぷくぷー!』だって?はっ倒されたいかゲフンゲフン。
いやそんなことは無い、一応女子もいるんだよ。
これが俗に言う艦娘候補生って奴なのさ。
まぁ一般にも僅かながら女生徒いるんだけどな。
学校は学科ごとに分かれていて、普通に海軍の士官になるための普通科、大半の奴らはここに所属しているな。
他には少数ながら整備科、給糧科。給糧科はまぁほぼ安全な連中だけど整備科の中には偶にマッドな奴らが紛れてる。
そして真にやべー奴らの集い、憲兵科。もうやべーのなんの、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。もうすぐ空手の稽古の時間だからさらばだ。
んんっ、話が逸れたな。そして彼女らが所属する艦娘科だ。艦娘適性のある奴らが全国各地から集められ、高校大学と進学し艦娘になる。小さい奴らは10代前半から大きい奴らは 20代前半まで。
艦娘達は一般の学生とは違い年規定の年齢内であれば飛び級または戻りで学校へ入学する。
高校では若干の誤差はあるが駆逐、潜水、軽巡グループ
重巡、戦艦、航空母艦グループでクラスが分けられ授業が行われ、大学では合併を行い、より実践的な授業を受けるというシステムだ。
そして最後に提督科である。これが海軍学校の中でも人員が最も少ない学科だ。
何故かって?答えは簡単、提督適性のある人物はそうそういるものでは無いからだ。年に見つかって3人、ひどい年は0人の時もある。
艦娘、提督には適性検査というものがある。これは国民の10代から20代前半までの男女全てが毎年受けるものであるものが見えるか見えないかというものだ。
それは妖精だ。この妖精が見えるか見えないかで適性検査は行われる。そして適性があるものは海軍学校へと入学または編入という形だ。
この適性検査、女性の割合は低いがまぁ毎年一定数いる。多ければ100名前後、少なければ半分程度だ。
しかし、男性の妖精確認率はまぁ低い事低い事、さっき言った通り多くて年に3人程度だ。
とりあえず最初の出会いがあるかと言えばイエスだ。
まぁそれが恋愛事に発展するかはさておきだがな。
なんで俺が語ってるかって?そりゃ……俺が提督科の人間で体験したからさ。だから出会いはあったよ、提督候補と艦娘候補の関係としての出会いはな、うん。
『じゃあ卒業後はそのまま提督になるのか、羨ましいな。艦娘達に囲まれて鎮守府で暮らすのかクソッタレめ!』って言うんだろ?
一応、憲兵や上手いこと配属されれば整備、兵糧の男が来るからふへへ!!艦娘に囲まれてるぜ!!なんてことは多分無い。というか逆に男が他にいない状況の方がヤバそう。
考えてみろよ、女子校に1人男子生徒放り込んでみろ?
めちゃくちゃ肩身狭いだろ?そこから女の子に囲まれてるとか考えてなおかつ手を出そうとか相当な奴だよソイツは、もうある意味尊敬と畏怖の対象だな。
そして俺が提督になるって言うのは否だ。
確かに提督適性はある。今も目の前で妖精さんが俺のエントリーシートに落書きしようとしている。
おいやめろマジで。
なんで提督やらないかって?質問が多いねぇ。まぁあれよ、高校大学と軍隊学校で生活してると憧れんのよ周りの奴らがつまらないとか普通って言う生活に。
普通に共学の学校に行ったり、バイトめっちゃ掛け持ちしたり、友達とカラオケ行ったり、彼女とデート行ったりとそういうことを夢見たり、夢見たり!!あぁ、それでもコツコツと生きていく為には踊りましょう!歌いましょう!泣きましょう!笑いましょぉぉぉーーー!!!
…また話がズレたな失礼。このままいくとспасибо(スパシィーバ)してライラライラ言いそうだ。
まぁもう就職だから学生は難しいけど軍隊生活をしなくても良いのさ!
朝早くラッパの音で起床したり、やたら厳しい規律を厳守したり、体がバッキバキになる筋トレもし無くて済むのさ!!!
あ、ブラック企業は勘弁な?ちゃんとその辺は調べてあるからね。下調べは重要。
前置きが長かったけど今俺が何をしようとしているか、
『就職活動の為の書類作り』だ。
現在は4月、下調べは3年生からやってきたからその辺は抜かりない。
後はエントリーシート、履歴書、一般知能などの準備。
インターネットから提出だったり、郵送だったりするから気をつけろよ。
ともかく、これで狙っている企業に合格出来れば晴れて軍隊生活とはおさらばだぜ!!
こうして俺はガンガン書類を送り、面接試験や筆記試験をやり遂げてきた。正直、自信しかない。仮に何社か落ちていたとしても幾つかは引っかかっているはずだ。
後は結果を待つばかり……。フフフ、これで普通の生活が送れるのか……。胸が熱いな!
そして月日は少し流れ10月ーーーーーー
俺は寮の自室でウンウン唸っていた。
「……………何故だ。」
これまで受けた企業100以上、絶対どっか採用してくれると思っていた。
しかし、結果はこうだ。
スマホのメールには大量のお祈りメール、届く書類には不採用、不合格通知の文字。
そんな馬鹿な…これが社会の辛さってやつなのか…?
は、敗北者……?取り消せよ!その言葉、取り消せよ!
「100社以上受けて1個も受からないとかメンタル死ぬってまじで……。」
ガックリと膝をつき項垂れる俺。
そこにインターホンのなる音が響いた。
『郵便で〜す。』
アハハ、またお祈り文書が1枚増えるのか……。
「はいはい、今出ますよーっと…ってなんだ淀姉さんじゃない。」
淀姉さん、俺が小さい頃からの知り合いで今は軽巡大淀として海軍大本営で働いているはずだ。
「じゃないとはなんですかじゃないとは!」
「ごめんごめん!んで何用なの?」
淀姉さんが尋ねてくることはちょくちょくあったから驚きはしない。恐らく母さん辺りが様子見て来てくれと頼んだのだろう。
「言ったじゃないですか、郵便がポストに入ってたから届けたのと茜さんから様子を見てきてってね。」
はーやっぱり母さんかぁ、今度電話すっかな。
「とりあえずはいこれ、郵便ね。」
もうお祈り文書は見たくないわ。確実にメンタルやられる……。ないと思うけどこれ合格してたら速攻判子押すわ。
「あー淀姉さん、悪いんだけど俺の見えないように開封してくれる?もう俺にはそれを見れる元気はもう残ってなくて……。」
航希死す!デュエルスタンバイ!
「結構元気そうに見えますけどね。まぁいいですよ。」
御丁寧にペーパーナイフで封筒を切り、中身を確認する淀姉さん。
「えーと、相良航希 貴殿を………」
溜めないで溜めないでその焦らしは今の俺には大ダメージだ。どうせ落ちると分かっていても心が痛い。
「採用する事をここに通知する。」
…………ん?
「………淀姉さん、もう1回言って貰える?」
「相良航希 貴殿を採用することをここに通知する。」
聞き間違いじゃ、ない……?
「こうちゃん採用ですって!!おめでとうございます!!茜さんと藤太郎さんにも教えてあげなくちゃ!!」
「よっしゃぁぁぁーーー!!!判子判子!!もうそこありがとう大好き!!100パーセントそこ行きますよ行きます!!」
うおぉぉぉーーー!!!テンション上がってきたぁぁぁーーー!!!もう今日はお赤飯炊いちゃう!!!
「これが契約書で名前と印鑑の欄、ここですね!」
「はいはい!相良航希…印鑑っと!!」
はぁ〜〜〜良かったぁ〜〜〜人生に絶望しかけたけどやっぱ捨てる神あれば拾う神ありってね!!
「いや〜良かったですねぇ〜!これでこうちゃん達と一緒に働く事が出来ますよ〜!こうちゃんが海軍に来てくれるってお父さ…元帥も知ればきっと喜びますよ!!」
うんうん!良かった良かった!これで将来も安泰だ。
株式会社海軍で働く………海軍?いやいや無い無い。だって俺、海軍に履歴書とか送ってないし、あれだよ海軍じゃなくて貝群とか言う名前の貝の殻とか剥いたりする漁業系の会社だようんうん。
「……淀姉さん、因みにその仕事漁業系の仕事って書いてます?」
うーんと唸りながら淀姉さんは考え込む。考え込む顔も可愛いなこの人。この人の事なんも知らない人がいたらこれだけでワンパンでしょ。
「そうですねぇ……秋頃になると秋刀魚漁とかやるらしいですよ?」
そっかぁそっかぁ秋刀魚漁かぁ。まぁ海軍学校の生活で漁業系の仕事にも近しいものは感じるしきっと大丈夫でしょ。へーきへーき。
「秋刀魚漁ですかぁ、因みに他にはどんな事をやると?」
「後は〜そうですねぇ、総合職なので同じ職場で働く方達に指示を出す立場だったり、資材や経費の計算もするらしいですねぇ。少し大変かもしれないけどこうちゃんならきっと大丈夫よ!」
総合職かぁ〜!!きっと将来的にはその会社の軸になっていく人材になるんだな俺は!!ちょっとやる気出てきちゃったぞぉ!!
「こうちゃん!こうちゃん!見て見て!お給料も結構高いわよ!?月収50万スタートですって!!」
………………うん。
「……淀姉さん、もう一度最初から採用通知読んで貰ってもいいですか?」
大きく息を吸って〜吐いて〜
もう一度吸って〜吐いて〜
「え〜、相良航希 貴殿を採用する事をここに通知する。」
「淀姉さん、最初から・会社名・採用職を教えて下さい。」
淀姉さんの表情が曇る。何だか見たことある様な…
「…………君のようなカンのいいガキは嫌いだよ。」
「やっぱりじゃねぇかぁボケェェェーーー!!!早く!!その書類返して!!海軍なんでしょ!?絶対行かねぇからなぁぁぁーーー!!!」
なんか途中からおかしいと思ったんだよ!!まだ間に合う!!シュレッダーにかけるなり燃やすなり対処法がある!!おい何妖精さん達と話してるんだ!!妖精さん早く契約書を!!
「いや〜こうちゃん説得するの大変でした〜。去年から提督として働こうって言ってたのになかなかOK貰えなかったので良かったです。」
「提督なるって言ってくれなかったから不安だったけどこれで一安心だよねー。」
妖精さん達……まさかっ!お前っ!?
「こうちゃんがなかなか提督になるって言わないので私達の方で履歴書出しておきました。」
「中々の仕事ぶり」
「どうせなら建造とか開発したいよねー?」
こ、コイツらはぁぁぁーーー!!!
ってこんな事してる場合じゃない!!淀姉さんから契約書を!!
そんな時淀姉さんはどこに持っていたのか超絶厳重そうなケースに鍵をかけ自らの手とケースに手錠を掛けている始末。
あ、詰んだわコレ。
「じゃあこうちゃん、4月になったらまた迎えに来るからね!それまでに実家に帰って茜さんや藤太郎さんにも提督になりましたって報告してあげてね?きっと喜びますよ!」
それではまた〜と足早に帰って行く淀姉さん。
そして真っ白な航希の頭の中に1つの答えが浮かんだ!
「……あ、そうだ京都、行こう。(逃避)」
中学の修学旅行以来行ってないし、京都で晩年まで過ごすってのもありだな。少し早めの隠居生活…うん、ありありオオアリクイ。
「こうちゃん京都希望ですか!?良かったぁ〜今、舞鶴鎮守府の提督が今年で定年だったので来年からこうちゃんが舞鶴鎮守府の提督ですね!!これから楽しくなりますよ!!」
扉が勢いよく開く音と共に舞い戻ってきた淀姉さんめっちゃ心臓に悪いわ。
なんなんこの人なんでこっちに向かって歩いてくるのこわ「ポンッ」え?ポンッ?何?何ですかその謎の笑顔こわいこわいこわいどーする?どーする?俺?落ち着けクールになれ。某CMを思い出せ、微分・積分・二次関数!!
微分・積分・二次関数!!俺は!!やれば!!できる子だぁ!!俺はやればできる子だぁ!!俺はやれば出来る子なんですぅぅぅ!!!
圧倒的問題力と徹底的添削力は伊達じゃありません。
あ、てかヤバい。巫山戯てる場合じゃねぇ。
このままいくと4月には提督にされてしまう。
そしてね、一番ヤバイのがね、目の前でハイライトを消した笑顔の淀姉さんが放つプレッシャーなんですよねこれが。
眼鏡の奥にある瞳がね、笑ってないんですよ。
「……逃げたら、分かりますね?」
「……ハイ。」
……もし、キュ〇べぇがここにいるなら、俺の願いを1つ叶えて頂けませんか?
どうか、どうか俺を生まれ変わらせても頂けませんか?
魔法少女になってマ〇る方がこれからのことを考えるまだ楽に逝けるかもしれない。
あ、魔法少女じゃなくて魔法青年か…。まぁどっちでもいいわ今更…。
神さま仏さまキリスト様に閻魔様、誰でもいいです。
この運命を変えて頂けるならこちらの番号までお電話お願いします。
まぁテロップなんて出ないけど。
汚ねぇ花火が床を汚すことはなかったが、悲しみで鼻水と涙で床が汚れることとなったのは内緒な?
お兄さんとの約束だぞ!
来週もまた見てくれよな!!
キュ〇べぇ「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
航希「え!?今からでも契約できる保険があるんですか!?」
キュ〇べぇ「我社では魔法少女のみの契約となっております。お引き取り願います。」