PSYCHO-PASS 機械仕掛けの託宣   作:生野の猫梅酒

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#03 『公安局広域重要指定事件 104』

【恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。わたしがあなたの神だから】

 

『イザヤ書41章』

 


 

 そこは暗く殺風景な部屋だった。机とベッド、それにテーブルといった基本的な家具がいくつかと、大量の紙の本が詰まった本棚があるだけの質素な佇まいである。よく片付いていることから家主は几帳面な性格なのだろうが、それが逆に生活感を不思議なほど消し去ってしまっている。

 なにより殺風景に思わせるのは、ホログラム技術が発達し、内装を自在に変えられる現代にしては珍しくそのままの壁が剥き出しになっている点だ。かつての時代を偲ばせる素材のままの外見、といえば聞こえは良いが、このご時世では些か以上に寂しい印象を与えさせてしょうがない。

 

「ん……」

 

 ベッド上で丸まっていた白いシーツ、それがモゾりと動いた。中から白く細い腕が飛び出し、手さぐりするように周辺をバタバタと彷徨う。数秒の格闘の末にようやくお目当ての眼鏡を見つけると、女はシーツの中から姿を現したのである。

 眠そうな瞳を茫洋と彷徨わせ、壁に掛けられた時計を見た。うっすらと差し込む月明かりに照らされた針が示した時刻は午後十一時三十分、目覚めるにはあまりにも中途半端な時間である。だが彼女は安堵したように胸を撫で下ろすとそのままベッドから這い出して洋服を手に取った。

 

 手早く着替えた服装はどこか男っぽい印象を与える私服だった。黒いシャツに青のジーンズ、灰色の上着というシンプルな装いである。赤みがかった黒髪を後ろで一つにまとめ、さらに大きめの黒いコートを羽織れば服装は完璧だ。女性にしては高めらしい身長も相まって、遠目からではあたかも少年に見えた。

 さらに女は部屋の隅に置かれた金庫の前に膝をつくと、ダイヤルを回し手早く暗証番号を入れていく。きょうびデジタルでなくアナログの金庫など流行らないし、そもそも家に鍵をかけず出かけるのが当たり前になり始めている時代なのだが、彼女のこれは明らかに厳重な守りと秘匿性を考慮してのものだった。

 

 もし公安の者がこれを見れば即座に違和感を覚えることだろう。こうまでして、一体何を守っているのかと。

 

 カチリと開錠された音がなり、ついで重たい音を立てながら金庫の扉が開いていく。その中にあったのは鈍く銀色の輝く拳銃と、よく使いこまれた刃渡りの長いナイフであった。奥の方には拳銃の弾丸と予備のナイフが一緒に収められており、手早くコートの中に入れる女の手際は何度も使い慣れていると言わんばかりのものだった。

 言うまでもないがどちらも私的に所持するのはおかしい代物だ。百歩譲ってナイフは別の用途があると誤魔化せても、拳銃は絶対に言い逃れできない。当然これらを収集する段階でサイコパスも濁るだろうからやはり潜在犯として追及される末路だろう。

 

 しかし、この女は紛れもない例外である。彼女は先天的な体質なのか犯罪係数がほとんど上がらず、また精神状態に左右されない。故にこうして明白な危険行為を犯したところで何ら問題は起きないのだ。

 

「それじゃあ、いきましょうか」

 

 誰ともなく呟き、女は懺悔するように手を組んだ。神へ祈りを捧げる敬虔なシスターのように瞑目すること数秒、元の様子に戻った彼女は静かに部屋を後にした。

 そして誰もいなくなった室内を、柔らかな月光はただ穏やかに照らしている。この後のことなど知らぬ存ぜぬとばかりに、無慈悲な緋色の女王の如く。

 


 

 翌日、定時の午前九時に三係に現れた緋瑞を待っていたのは、普段の落ち着いた雰囲気とは真逆の慌ただしい状況だった。執行官は既に三人とも揃っており、深刻そうな顔つきで何やら話し込んでいる。いつもノリの軽い白谷も同様だから相当だろう。

 いや、三係だけの話ではない。公安局全体がどことなく浮足立っていて、いつもと明らかに空気が違うのを彼女も肌で感じ取っていた。それくらい今朝の様子は違う。

 

「おはようございます。今日は何やら慌ただしいですね」

「あ、緋瑞ちゃん。おはよう……」

 

 いつもより気持ちテンションの落ちた女性執行官を皮切りに全員と軽く挨拶して、監視官はデスクへと座った。こういうとき、大抵はかなり面倒な事件が起きている証拠だ。比較的暇な三係も引っ張り出されることが多い。

 とはいえ、緋瑞からすれば何を感じるわけでもないのだが。呑気に欠伸をして眠そうな目を擦ってしまう。()()()()()()()()()あまりよく眠れてはいないのだ。監視官としてサボる訳にはいかないのが辛いところだった。

 

「眠そうですね、天宮監視官。ですがそうも言ってられない状況になりました」

「……予想はつきますが聞きましょう。何か大きな事件がありましたね?」

「大きな事件も何も、『銃剣事件』だよ『銃剣事件』! 二か月ぶりにまた被害者が出ちゃったの!」

「なるほど……それはまた、大変なことですね」

 

 白谷の言葉にさらに場の緊張感が高まったように感じた。緋瑞もまた真剣な顔つきで黙り込む。一般市民どころか刑事課の間でも半ば都市伝説になりかけている、凶悪連続殺人事件が起きたとなればこの空気も無理はない。

 『銃剣事件』。正式名称は『公安局広域重要指定事件 104』というのだが、通称のように被害者は常に銃殺、または鋭利な刃物による斬殺をされており、彼らの間に共通点は一切ない。数は少なければ二人で多ければ四人、凶器の類似性から快楽殺人の線が濃厚とされていた。

 

 だが、この事件には不審な点が三つある。

 

「今回もいつも通り、『銃剣事件』らしい特徴がありましたか?」

「まだドローンから送られてきた資料だけですが、遺体の姿は非常に綺麗でしたよ」

「犯行現場も二か月前とは全く違うし、そもそも規則性も何もあったもんじゃない。いつ起きるか分からないんじゃ私たちにも防ぎようがないってー」

「……周辺のサイマスティックスキャンにも……怪しい人物は検知されなかったようです。監視カメラも調べてはいますが、おそらくまた巧妙に避けられていることかと」

 

 一つ目は、被害者の遺体が不自然なまでに綺麗なことだ。しっかりと衣服が整えられ、目も閉じられて傍目には眠っているようにしか見えない。まるで殺した相手を悼んでいるかのように丁寧な行為は快楽殺人犯とは結び付け難い。

 二つ目は、事件の発生周期も場所も全てバラバラで一つも共通点が無い点だ。この事件は二年前に初犯が起きて公安に認知されて以来、既に十回は犯行が起きている。しかし事件が起きてから次の事件まで半年も間が空いたこともあれば、ほんの一週間でまた事件が起きたこともあり、なんの規則性もメッセージ性も見受けられないのである。

 三つ目、これが一番の問題だった。シビュラシステムによって管理・監視されているこの社会において、犯罪を隠し通すのは容易でない。悪事を働けば犯罪係数は上昇し、色相もまた濁るからだ。故に突発的な犯罪ならともかく連続殺人を犯しておいてなおサイコパスがクリアなど、常識的にあり得るはずがない。なのにこの事件では周辺にサイコパスが怪しい人物は一人もいないし、監視カメラをしっかり避けて物的証拠も残されていない。端的にいってお手上げだった。

 

 二年前から及ぶ連続的な犯行だというのに手がかりは一切なく、シビュラの目すら届かない。犯行時期も被害者もバラバラで、あたかも気分によって決めたかのような杜撰さを感じる程だ。なのに殺害方法や被害者への態度は一貫しているから余計に意味が分からない。

 今もこうして犯行が増えているというのに公安局では半ば迷宮入り事件と化しつつあるこの事件。しかし正義と法の守り手たる刑事たちにとって、そのような敗北は絶対に許されないことだった。

 

「……この事件、執行官の皆さんはどう考えますか? 改めて意見を聞かせてください」

 

 監視官の言葉に、一人ずつ自分の考えを開陳していく。

 

「自分としては、犯人に一貫性を感じられません。快楽殺人と考えるには正体の隠蔽が巧妙で、しかし計画性のあるものと考えるには些か突発的犯行なキライがあります。どちらにせよ、同じ人間とは思えません」

 

 真面目な黒山はこのような事件自体許せないのだろう。かつて一係を震撼させた『標本事件』の際にも義憤を燃やし、三係ながら暇さえあれば手伝おうとしていたくらいの正義感の持ち主である。またも犯行を重ねるこの事件の主犯はとうてい許せるものではない。

 

「私としては、なんだかすっごい不気味なんだよねー。執行官は同じ潜在犯として悪の匂いが分かる、そう言われてるから執行官やってるのにこの事件の犯人はちっとも理解できない。だって殺した相手をしっかり身綺麗にしてあげるなんておかしいもの! そんなことするくらいなら、殺しなんて絶対しないよ……」

 

 根が純粋で快活な白谷からすれば、この事件の犯人はあまりにも不可解で理解しがたい。昔から”好きだだから殺す”などという理屈も存在はするが、現実に似たような状況と出会えば納得などできるはずもない。何よりこれまでの現場状況からして()()()()に満ちているとはとても考えられず、いっそう犯人の心を読み取れはしなかった。

 

「僕としては…………明らかにこの犯人は、特殊だと思います。犯人の思想はどうあれ、シビュラの監視網を掻い潜る手腕は並大抵じゃ……ない。もしかしたらサイマスティックスキャンを誤魔化せる、特殊な技術を持った人物が犯人なのかも……しれません」

 

 ボソボソと自信なさげに灰森は言う。自己主張の薄い彼ではあるが、技術的な面ではかなり知識は深いし勘も鋭い。その彼の目は犯人がシビュラの監視を避けられる可能性を提示したのだから、あり得ないことと一笑に付してしまう訳にはいかなかった。例えそれが、今の世の中で()()()()()()()()事だとしても。

 

「なるほど、各執行官の意見はそのような形ですか……非常に参考になります」

 

 最後に緋瑞がその場を締めたところで、彼女の所持する端末が音を鳴らした。このタイミングとなれば上層部からのメール以外に考えられない。一言断ってから送信されたメールを彼女は読み、一つ二つ頷いてから、何があったかと見守っていた執行官たちを見渡した。

 

「ひとまず意見も出揃ったところで、朗報です。私たち三係に今回の『銃剣事件』の現場検証が回ってきました。これから直接現場へと乗り込みますよ」

「それはまた、久々に刑事としての手腕を発揮するときですね」

 

 どうあれ全員が刑事なのだから、デスクワークを続けるよりも現場に出張って調査や推理をする方が性に合っている。普段の三係は実際の事件が回ってくることが少ないだけになおさらだ。

 やる気も露わに立ち上がって早速準備を始めた執行官たちへ、監視官として緋瑞はしっかり釘を刺す。

 

「あまりはしゃぎ過ぎないでくださいよ。犯人は現場に戻って来る、そんな名言も存在するのだから気を抜いたりしないように」

 

 などと真面目な顔で彼女は窘め、自身もまた外出用の準備を始めたのである。

 


 

 事件現場は街の中心から少しばかり外れた公園だった。緑生い茂る草むらと昔ながらの砂場があり、中央にはホログラムで投影された噴水が派手に水飛沫を上げている。きっと普段なら子供連れの親子で賑わっていそうな、暖かな風情を感じさせた。

 だが生憎と人死にの後ではそんな風情など感じられず、吹き抜ける風は生暖かくて気味悪く感じてしまう。舗装された道の脇、木々のそびえる中がより詳細な現場だった。樹皮や落ち葉に飛び散った血痕は明らかに一人分のものではなく、この事件の犠牲者が三人だという情報の確かな裏付けとなっている。

 

「これはまた酷いですね……やはり今回も銃と刃物による殺傷と見て間違いないでしょう」

「私も同感です。なにより、現場に残された遺体の有様こそ、これが一連の『銃剣事件』と同じ犯人だと如実に物語っていますから」

 

 緋瑞の手元にある端末から映し出されたのは、今回の被害者遺体たちの現場画像だった。人によってはショッキングな画像だろうが、刑事課の人間がその程度で気分を害するはずもない。むしろ全員が興味深げに画像を検分する。

 画像の中では年齢も性別もバラバラな三人の遺体が、あたかも埋葬される直前であるかのように綺麗に整えられていた。さすがに死に化粧はないものの、例えあっても何ら疑わないくらいの丁寧さと几帳面さを感じられる。なのに胸元には血の滲む無残な穴が空いていたり、首元を大きく切り裂かれているから死因は一目瞭然だ。

 

「うわぁ……ここまではっきり殺しといて手厚く葬るみたいに整えるなんて、意味わかんない。相変わらずこの事件の犯人は狂ってるよ」

「僕も、その、同感です……人へ親愛を示す方法なんて世の中にはたくさんあるのに、よりにもよって殺した後で示すなんて……現在どころか、昔だってあり得ません」

 

 今よりも犯罪が多かったとされるシビュラ導入前でも、ここまで感情の因果関係が狂った事件など類を見ないだろう。一係にはベテランの刑事が一人いるが、もし彼が見てもこれには「犯人の頭はどうかしてるぜ」なんて言って眉をひそめるのは想像に難くない。

 結論、誰の目から見てもやはりこの犯人は狂っているしどうしようもない。これで十一件目という途方もない犯行回数だというのに、なにがそこまで駆り立てるのか。犯人像も目的も一貫して霧の中で不明瞭だ。

 

 けれどこの場で必要なのは犯人の動機に対する理解ではない。これまであまりにも周到かつ不可解なくらい尻尾を残さなかった犯人が、今度こそ僅かな手がかりでも残していないか目を皿にして探す必要があった。

 現場検証用のドローンたちが忙しなく動く間を縫い、監視官と執行官で怪しそうな箇所はどんな些細な特徴だろうと見つけようと躍起になる。だが状況は芳しくないようで、しばらく経ってから緋瑞が疲れたようにため息をついた。

 

「……結局空振りですね。まさか髪の毛一本たりとも見つからないとは」

「よほど慎重な犯人のようですね。靴跡だって残ってはいませんし、当然ながら体液の類もなし。考えられる快楽殺人犯のケースとは共通点がこれっぽっちも見当たらない。正直に言ってお手上げですよ」

 

 やれやれ、と言わんばかりに黒山は肩を竦めた。公安の刑事としてはあまりに悔しいが、それくらいこの犯人は意地でもボロを出そうとはしない。その手腕はいっそ尊敬に値するくらいだ。

 もしかしたら──と彼の脳裏にある仮説が過った。しかしそれはありえない。もし認めてしまえば公安どころかシビュラシステムの万全性すら脅かすことになる。

 

 だから口を噤んだ黒山なのだが、一方で彼女は()()()()()恐れ知らずだった。

 

「公安局の中に、この犯人と繋がっている人物がいる可能性もありますね……私たちの捜査方法をある程度提供できる立場なら、例えば監視カメラの死角や証拠隠滅の方法くらいは容易に入手できるはず」

「天宮監視官、それは……!」

 

 思わず執行官の方がその言を咎めてしまった。しかし緋瑞の考えはそれくらい今の社会にとってはあり得ないものである。

 大前提として、公安局に勤める人間はシビュラシステムによって“適正有り”と判断された者たちだ。つまり人格、サイコパス共になんら問題のない優秀な人物なのは間違いなく、悪事を働く可能性は限りなく低い。

 もちろん執行官という例外はあるが、それとて潜在犯の一種として厳重に監視化に置かれている。仮に他の一般職員が潜在犯となればすぐにシビュラの目は暴くだろう。ましてやこの猟奇的事件の犯人と繋がりがあるというのなら、サイコパスが曇ってなければ道理が通らない。

 

 もし内通者の存在を疑うのなら。すなわち、この社会における絶対者たるシビュラの判定基準を疑問視しなければいけないのだ。それがどれだけ危険かつ恐ろしいことか、分からないなら刑事などやっているはずがない。

 

「今朝のブリーフィングで灰森執行官も『シビュラの目を誤魔化す方法があるかもしれない』と発言していました。私としてもこの考えに賛同です。シビュラによって犯罪が抑止されている現代において、この考えは劇物じみている。ですが、あり得ないことをこそ疑わなければ私たちは先に進めませんよ?」

「それはそうかもしれませんが……しかし、どうにも自分には信じられません」

 

 黒山の生まれはギリギリのところでシビュラが普及し始めた頃である。よって彼は生まれた頃からシビュラの監視がある世界が当たり前だったし、その判断基準に従って人生を進めることになんら疑問を持っていない。潜在犯と認定されて執行官になったことすら、とりわけ理不尽と考えていない筋金入りの男である。

 その真面目な気質と潔さは美徳だが、いささか融通も利かないきらいはある。だから緋瑞は指を一本立てると、それを左右に振ってみせた。まるで幼子に常識を説く親のように。

 

【剣を執る人間は、剣によって滅びる】という言葉があるように、シビュラに依存してしまえばそれが原因で滅びを迎えることになるやもしれません。私たちにとっての友は、また誰かにとっては武器となる恐れもあるのです」

 

 もちろん、私たちにとっての全能者は過激な武器ではありませんが。

 片目をつぶって茶目っ気を出しながら付け足した言葉に、黒山は反論する術を持たなかった。古い格言を引用しながらの発言はそこに説得力を持たせる。自身の思想とまるで正反対であろうと、何某かの引力を帯びるようになるのだ。

 

 当の緋瑞はといえば、パンパンと手を叩いて執行官たちの注目を集めていた。思索に耽っていた黒山も、意見を交わしながら現場調査を続けていた白谷と灰森も作業を中断して彼女を見る。

 

「今回も犯人の特定及び痕跡の発見は限りなく難しいようです。ですが、我々公安局刑事課の人間が諦めてしまえば誰もこの凶行を止めることは叶いません。どれだけ無様に這いまわろうと絶対に犯人を逮捕する、その気概を強く持ちましょう」

 

 執行官全員が力強く頷いた。天宮緋瑞という監視官は、不思議なところはあれど紛れもない正義感を持った刑事に相応しい人間だ。まだ若いながらもその身と言葉から溢れる自信は強力な倫理観に裏打ちされたもので間違いない。

 

 そして改めて現場検証を始めた執行官たちを見て──緋瑞は、昨夜と違って何も感じることは無かった。

 

 


 

 月明りの綺麗な夜だった。大きめの黒いコートを着てフードを被る女は、足取りも軽く踊るように歩いていく。影を踏み、風の音を聞いて、静けさの支配する街を進む。暗がりに立つ街灯はどこか幻想的で、まるで彼女を照らすスポットライトのように穏やかな光を放っていた。

 ゆっくり、のんびり、慌てずに、何かを探すように周囲へ視線をやりながら、ふわふわとして止まらない。まるでこれから起こる()()を心待ちにしているような、子供みたいな無邪気さすら感じられる。

 

「あー……」

 

 気が付けば彼女は公園に居た。夜中の公園は既に人気(ひとけ)はどこにも無く、街路の脇にある木々の方へと進めばもう別世界だ。皆の憩いの場は日が落ちるだけで簡単に装いを一転させ、非日常じみた感覚を見る者へと訴えかけてくる。

 常人なら怖がるか、あるいは普段と違う景色に興奮するのかもしれない。けれど彼女は何も思わないし感じない。ただ『公園に着いた』という事実に初めて気が付き、なんとなく声を出しただけである。

 

 公園の隅にさりげなく備え付けられたサイマティックスキャンが彼女を捉えた。

 だが何も起きず、スキャンは”異常なし”とだけシビュラへと送信する。もちろん彼女にそれを知る由はない。

 しばらくその場で佇んでいると、前方から一人の男性がやって来た。身なりはあまりよろしくないが、かといって浮浪者のようにも感じられない。大方、どこかで遊んで騒ぎ疲れた帰りといった具合だろう。

 

「兄ちゃん、こんなところでどうしたんだ? まさか公園のど真ん中で迷子なんざ言わねぇよな?」

「……迷子、ではありませんよ」

 

 そこで初めて男は、話しかけた相手が女性だったことに気が付いたらしい。ギョッとしたように体を跳ねさせ、ついでフードに隠れた顔をしげしげと覗き込む。体格や顔を隠し、背丈だけみれば少年のようにも思えるから無理もなかった。

 最初に断っておくと、決してこの男は悪人ではない。彼女に声をかけたのは好奇心と親切が半々だったし、こうしている今もそれは変わっていない。いや、ちょっとくらいは”あわよくば自宅まで送って……”という男性らしい欲望も皆無ではなかったが、決して責め立てるべき欠点でもないはずだ。

 

「一つ、聞いても良いですか?」

「ん、なんだよ? あ、オレのこと? オレはな、こう見えても結構偉い奴で──」

 

 相手がまだ若い女性ということもあってか、すっかり気を良くして饒舌になった男へと。

 フードの女、天宮緋瑞は懐から取り出したナイフを無言で突きつけた。気が付けば冷たい刃は首元、すぐそばまで迫っている。あまりの出来事に男は理解が追い付かない。

 

「ある書物には、【自由とは欲望の解放でない】との言葉があります。やりたい時に、やりたいことをやるようでは駄目だと。人の社会では確かにその通りと言えましょう」

「え、ちょっと……なに言ってるんだよ」

「しかし、ただ抑圧されるだけが人間なのでしょうか? 自由であるのなら、自らの欲を追求することが自然な姿なのでは? これはさる神の言葉に背く行いかもしれませんが、人間の本質なのではと私は思います」

 

 いきなり人にナイフを突き当てながら、まるで世間話でもしているように穏やかな語り口だった。あまりにもおかしい。不幸なことにこの男性はシビュラの庇護下に生まれた男性だから、このような不意にやってくる害意に対する抵抗力が低かった。

 訳が分からないまま緋瑞の言葉を聞くよりない男へ、彼女は滔々と語り続ける。それは誰に問いを投げているというのか、少なくとも眼前の男でないのは確かだった。

 

「では、このような行いをする私は”神”に裁かれるのでしょうか? それもまた一興かもしれませんね。もし私の悪逆が裁かれたというのなら、すなわち神の実在が示されたということ。翻って私の存在価値も必ずやあるという証明になるのですから」

 

 男を通して存在()もしない誰かに問いかけているような。夢見心地な口調を前にようやく男は状況を正しく呑み込んだ。つまり、このまま黙っていれば確実に自分は死ぬ運命にあるのだと。かつてない恐怖に身体を振るわせ、咄嗟に女を突き飛ばそうと足掻いて暴れ出す。

 だが、その試みは虚しく徒労に終わった。バタバタと動く手足へするりと緋瑞の左手が絡みついた。女の細腕は信じられないような剛力で男を締め上げ抵抗を許さない。一瞬だけ意識が遠のき、次の瞬間には視界が一回転して地面に寝転がされていた。相変わらず首元にはナイフが突きつけられている。

 

 無慈悲なほどに力の差は歴然だった。監視官として格闘術を高い次元で修めている緋瑞とただの一般人、どちらが勝つかは火を見るよりも明らかだ。

 震える男を見下ろす緋瑞の目元は、静謐な悲しみを湛えて涙を流している。

 

「私は今から、あなたを殺します。罪もない他人を殺すなんて、とてもとても()()()()()()()仕方ないのです。でも、私にはこれしかない。これしか、生きていることを実感出来ないのです。どうか恨んでください。呪ってくださって結構です、だから殺されてください」

 

 その言葉に嘘偽りなど欠片もなかった。どこまでも真摯に、誠実に、今ここであなたを殺すと宣言している。

 だってそうだろう、これは緋瑞にとって唯一実感することのできる感情なのだから。ただ一つの救いを求めて人間がひた走るなど自然の摂理であり、彼女にとってはたまたま”他者の殺害”に付随する感情(すくい)というだけのこと。悪意も害意も一切なく、自らの行いと相手の死を悲しみ恐れて悲嘆しながら、それでも振り下ろした腕は止まらない。

 

 だが彼女の事情など知る由もない被害者からすれば気が触れているとしか思えないし、実際狂っていると称して良い。だから男は天にも縋る想いで視界の端にあるサイマティックスキャンを見た。ここまで現行犯をやっているのだ、きっとシビュラは見逃さずに男を救ってくれる、はず、なのに──

 

「なんで……」

 

 反応、無し。この場での出来事にシビュラは気が付いていない。

 どこまでもどこまでも、緋瑞のサイコパスは綺麗だから。シビュラは絶対の彼女の行いを知ることはなく。

 残酷な現実に心を折られた彼は、乾いた笑いを上げるしかなかった。

 

 そうして『銃剣事件』の監視官(しんはんにん)は、泣きながら笑って男の命を摘み取ったのである。

 


 

 ──天宮緋瑞が初めてドミネーターで他者を殺したのは、監視官になって一ヶ月が経過した頃だった。

 

 前の監視官が不慮の事故で亡くなり、その入れ替わりとして配置された当初の緋瑞はとても淡々と仕事に励んでいた。表向きこそ人当りもよく正義感に燃える新米監視官として振舞っていたものの、その実内面はどこまでも冷え切っている。仕事に楽しみを見出すことなんて不可能だったし、例えば潜在犯を目の当たりにしても怒りや憎しみなんて感情とは無縁な日々である。

 日常はデスクワークを基本として、たまにエリアストレス警報が鳴れば現場に急行して潜在犯を抑えるだけ。中にはドミネーターを抜くことも二、三回あったが、どれもノン・リーサルモードによる対象の確保で終わっている。

 

 色褪せたなんの刺激も感じられない毎日が続く。

 そんな彼女にとって二度目の転機は、まさしく青天の霹靂のように突然と訪れた。

 

 結論に至るまでの詳細は省いて良いだろう。ある事件を調査した末に犯罪係数三〇〇オーバーの潜在犯を、偶然が重なり緋瑞一人で追い詰めてしまったのだ。監視官と執行対象が一対一になる可能性はかなり低いが、決してないとは言い切れない。このときもそのような状況だった。

 

《犯罪係数三一五、執行対象です。執行モード、リーサル、エリミネーター。慎重に照準を定め、対象を排除して下さい》

 

 シビュラシステムの読み上げる無機質な音声ガイドに従い、緋瑞は対象へとドミネーターを突きつけた。これからあなたを排除する──その意思と共に監視官としての職務に則り粛々と引き金を引けばそれで終わりだったのだ。

 なのに、彼女は()()()()()のだ。目の前の、同じ生きている人間をこの世から消してしまうのが恐ろしかった。強烈に悲しくなって、社会から不要と判断された者を惜しむ心でいっぱいになった。

 

「わ、私……わたし、は……こんな、どうして……」

 

 でも、それは道理が通らない。だって緋瑞は感情が分からない。他人の気持ちも、自分の想いも、すべて他人事でしか分からず共感も理解もできないのに。どうしてだろう、この時ばかりはあまりに鮮烈で生々しい負の感情に襲われたのだ。

 初めての事象に直面したとき、人は戸惑う。慌て、混乱して、それでも状況を乗り越えようと理解に努め、自分にとって有益なのかそうでないかを判定する。もし後者であるなら二度と同じようにならないと考えるし、あるいは前者であるというのなら……もう一度、今度は意図的に同じ事象を再現しようとするだろう。

 

「私、は……あなたを、排除しなければなりません……」

 

 結局彼女は、躊躇いながらも刑事としてドミネーターの引き金を引いた。エリミネーターモードによる一撃は対象の息の根を確実に止めて、血と肉の海を辺り一面へとばら撒いてみせる。地面に広がるおぞましいまだら模様は人間だったはずのもので、いっそう緋瑞の罪悪感を駆り立ててしょうがない。

 仕方ないのだ、今の世の中は人間の排除が許される時もある。他の誰もこの行為を咎めはしないだろう。緋瑞ほど心を痛めることもなく、あくまで仕事の一環としてドミネーターを構えたはずだ。

 

 もし、これだけならば緋瑞は良心の強い一監視官で終われたろう。たとえ排除すべき潜在犯だろうと慈悲を忘れず、その死を(いた)める貴重な人間となれたはずだ。彼女の持つ倫理観は極めて真っ当で模範的である。

 しかし当人にとっても周囲にとっても不幸だったのは、天宮緋瑞という女が普通では無かったことだ。感情を理解できない人間が、人を殺すことで初めて”生の感情”を手に入れる。情動を持ちえない緋瑞にとってそれは悪魔の誘惑にも等しい、おそるべき対価と快楽だった。

 

 これまで得られなかった人並みをようやく手に入れるチャンスが降って湧いたのだ。すぐにでも飛びつきたい緋瑞だったが、それをすんでのところで我慢できたのは奇跡に等しい。これまで培った正義感と倫理観の二つに思考を矯正され、『監視官として対象を撃ち殺す』という方へと昇華できたのは紛れもない幸運である。

 けれど繰り返しになるが、シビュラシステムに管理された社会は極端なまでに犯罪者が誕生し辛い。潜在犯だってそう簡単には表れないし、さらに排除が必要とされる者となれば滅多なことでは生まれえない。

 故にこそ、緋瑞は悲嘆の感情に飢えた。他のあらゆることでは駄目なのに、なぜか殺人だけは怖いし悲しいし恐ろしく感じてしまう。彼女にとってはそれがすべての感情だったから、もう一度味わいたくてたまらなくなってしまった。例えるなら麻薬の味を知った中毒者のように、底なしの沼へと。

   

 半年の間は我慢した。自らの倫理観と常に葛藤し、紙一重で勝利を収めた。

 でも、一年が経過する頃にはもう駄目だった。

 渇いた心が耐えられない。悲嘆という水を欲しがってどうしようもない。いつしか肥大した欲求は自分でも制御できなくなって──自らの手で狂気と凶器を揃えたとき、『銃剣事件』の怪物は解き放たれてしまったのだ。

 

 後は語るまでもないだろう。監視官として誰より世の平穏を守る傍ら、誰よりも世の平穏を乱す者として無差別かつ無軌道に、()()()()()()()()()()()()()他者の命を糧にする最悪の人殺しと化したのである。

 


 

【どうせ種を蒔くなら、惜しみながらではなく、惜しげもなく蒔け】。私はその言葉に則り、自らの業を惜しんで躊躇うような真似はしません。ですがどうか安らかな眠りを。あなた方のことを、私は絶対に忘れませんから」

 

 森の中に遺体が三つ。その傍らには屈みこんで厳かに何事かを呟く女が一人。言うまでもなく緋瑞と、そして今宵彼女の手にかかった哀れで運の悪い被害者たちのことである。

 彼女は悪辣な人間ではない。破綻者だが情を知っていて、常識も持ち合わせている。だから自らのエゴの為に死ぬ事となった人間を無為に打ち捨てることはしないし、それ以上尊厳を奪う気は欠片もなかった。

 目を見開き瞳孔が開いたままの被害者たちの瞳をそっと閉じた。服装を綺麗に整え、腕を組ませ、三人並んで横たわせる。あくまでも静粛に身辺を整えさせてやる行為の裏には、真実相手への悲しみと罪悪感を覚えてのものだから彼女の病理はあまりに根深い。

 

 悪を知り、悪を嗅ぎ分ける執行官たちでもこればかりは一生理解できないだろう。

 悲嘆を得るために人を殺し、罪悪感と悲しみに暮れながら死体を綺麗にする者の心など。殺した相手の尊厳を守るという矛盾を観測はできても、どうしたって想像できるはずもないのだ。彼女の内面を汲み取れる者など、二十二世紀の精神異常者(サイコパス)をおいて他にいまい。

 

 せめてもの敬意と罪滅ぼしを終え、緋瑞は毅然と立ち上がった。この状況を誰かに見られれば自らの破滅を招く。あるいはそれも一興だろうが、感情を手に入れるこの儀式を失うのは耐え難い苦痛だ。そのために監視官としての知識を最大限に活かし、刑事どころかシビュラ相手にすら気取られない隠密性を発揮してきた。

 

 後はここから立ち去るだけ。足早に移動を開始したとき、それはやって来た。

 

「随分と臆面もなくやっているようだね。とある聖典には【刹那的な快楽に支配されて身を任せるなら、それと引き換えに悔いの残る人生を生きろ】という言葉があったはずだが、君はそれを知らないのかな?」

 

 男の声だった。背後を取られている。

 どこかで聞き覚えのある声なのだが、咄嗟の緊張は数年前の記憶を蘇らせる妨げをしてしまう。だが重要なのはそこではない。

 犯行現場を見られてしまった。もはや後ろの男は殺すしかない。銃は既に胸元へと仕舞っている。すぐに取り出せるのは腰の後ろに隠したナイフの方だ。

 ごくりと喉を鳴らして、取り繕ったシニカルさで緋瑞は言葉を返した。

 

「──……無論、知っていますとも。悔いなんて山ほどありますよ。聖書に曰く、【赦される罪と、許されない罪がある】とあるように、この私の罪は絶対に許されるはずもない。でも、それがこの身が望む全てですから」

 

 偶然なのか、はたまた意図的に目撃されたのか、どちらでも良いが今は過程を考えない。大事なのは切り抜け方だ。

 相手は刑事ではないだろう。面白半分に声をかけてくる程度には肝が据わっているようだが、緋瑞を相手に些か以上不用心といえた。声と気配からして彼我の距離は五メートルもない、瞬時に詰められる程度だった。

 

 なのに、殺人現場を見たはずの男は拍子抜けするくらい自然体を維持している。

 

「面白い理論だ。【ユーモアの源泉は歓びにあるのではなく、悲しみにある。天国にはユーモアはない】と残したのはマーク・トウェインだったか。その背中を見ていれば、君の心が悲しみばかりであるのは一目瞭然だよ」

 

 笑いながらも肩を竦めるような脱力した気配が来た、そのタイミングで緋瑞は仕掛けた。

 即座に反転、腰のナイフを引き抜いて踏み込む。つい先ほど被害者たちの血を吸ったナイフを構え、ほんの一足で男の懐へと入る。雪のように白い髪が印象に残るが、今はつとめて考えない。

 だが男もさるもので、すぐに一歩距離を取って緋瑞のナイフを避けた。反応が早い、身のこなしは間違いなく武術を嗜んでいる者のそれだ。分析の時間もつかの間、伸ばした右腕の手首を掴まれた。振り解こうとするも細身に反したすさまじい力に対抗できない。残った左腕と両足の蹴りで応酬するが、男も負けじと防いでくる。やはり相当な手練れだ。

 

「強いな。争いは同レベルの者同士でしか発生しないなど、ふざけているようで真理を突いた言葉だ」

「そちらこそ……!」

 

 互いに感嘆しながら腕を絡め、足を交わらせ、一進一退の攻防を続ける。ほんの数秒の間に十は超える駆け引きを繰り返し、掴み掴まれている腕すら計算に入れて相手を無力化しようと先手を競い続けた。

 その最中にふと、至近距離で顔を見合わせた。端正な顔立ちはどうしても記憶を疼かせ、緋瑞の集中を妨げてしまう。だからだろうか、先に押し込まれたのは緋瑞の方だった。

 あっ、と声を漏らす暇もない。左足を絡めとられ、互いに横倒しとなる形で草むらに倒れ込んだ。けれど狙ってやった男の方が立ち直りが早く、ハッとした時にはもう男が緋瑞の上に馬乗りとなっていた。いつの間に取り出したのだろう、彼の右手には月明りに鈍く輝く剃刀が握られている。

 

 互いに息を切らしていた。腕を抑えられ、押し倒されるような姿勢の緋瑞は扇情的だがピンチでもある。

 これは、間違いなく死ぬ。事実として緋瑞は状況を認めた。こうまでマウントを取られてしまえばどうしようもない。

 だからこれは走馬燈だろうか。瞬間的に記憶が過去へとフラッシュバックして──ようやく彼女は男の正体に思い至ったのである。

 

「……あなた、昔に聖書をくれた人」

「ようやく気が付いてくれたか。いきなり襲われたからつい本気で迎撃してしまったが……思い出してくれて何よりだよ」

 

 いつかの夕暮れに緋瑞へ聖書を渡してくれた男こそ、眼前の白い人物だった。

 どんな時でも彼のくれた聖書は持ち歩いているし、今だってコートのポケットに収まっている。これを持って彼に礼を言うのが彼女の目標の一つだった。

 期せずしてその願いは叶う目前であり、もはや緋瑞に敵意はない。男もそれを理解したのか緋瑞から離れると剃刀を懐へと仕舞い込む。彼の方にも敵意は無いようだった。

 

 男はパンパンと服についた汚れを落とすと、未だに倒れ込んだままの緋瑞へと手を差し伸べる。

 

「僕は、槙島(まきしま)聖護(しょうご)という。よければ君の名を教えてはくれないだろうか、改めて話をしてみたいんだ」

「私、は……」

 

 一瞬だけ躊躇して、今度はしっかりと伸ばされた手を掴む。男らしいガッシリとした手のひらだ。握りしめた途端に力強く緋瑞を引っ張り上げ、紳士的なまでのエスコートで彼女を立たせてくれた。

 

「……天宮緋瑞といいます。お久しぶりですね、そしてありがとうございます」

「礼を言うことはない。だが敢えて言わせてもらうなら……【恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。わたしがあなたの神だから】と言い切る方が君の好みかな?」

 

 白い容姿の男──槙島聖護は薄く笑った。


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