ソードアート・オンライン ―― 隻眼の喰種―― 作:クロノヒメ
キリト君達とこの層のことを相談して、だいたい1週間がたった。
相も変わらず、僕とトーカちゃんはレベリングをする毎日だ。もちろん、この層を突破するために塔の中を探索もしている。
ただ、最近迷宮区という、次の層に繋がっている大きな塔の様子がおかしい。
なんて言えばいいんだろう・・・。例えるなら見慣れた街を歩いていたら、ふとそこが本当に自分の知っている、もとい慣れている場所、空間かと言われると違うという答えになる・・・ようするに、この場所は何かが違う空間と感じるんだ。
些細なことだけど、やっぱり、何かが違うって言うのは慣れない。現に、今の攻略組のみんなの進行も少しだが進んでいないように思える。
本来なら2日前にチャレンジしていた予定なのだが、その違和感とある事が原因で遅れてしまったのだ。
そして、そのある原因というのは――
「!?お、おい!お前、なんだよそれ!?」
「ふっふっふっ、すごいだろ!!」
「なんだよその武器・・・!見たことねーぞ!?どうやって、いや、その前になんで装備できてるんだ!?」
「ふ、秘密だ!」
・・・・・・。
・・・みんなこんな感じなのである。
アルゴさんに情報提供して今日にいたるわけなのだが・・・。
なんと、今まで曲刀を使っていた人や使っていなかった人が刀をその身に付けていたのだ。
・・・後者の方は一体、どれくらい戦っていたのだろうか・・・。
なんというか頬が痩せこけており、口元は笑っているが、その目に光はなく、虚無が広がっており、すっごく、すっっごく失礼だが、生きている人とは・・・・・・。
「ハァー・・・」
これも、僕のせいだろう。
「何ため息ついてんだよ、カネキ」
トーカちゃんが呆れた様子でこちらを見てくる。
「いや・・・なんでもないけども・・・」
今度は僕のようにため息をつき、トーカちゃんが喋る。
「カネキ・・・あんた、そんなに何か抱えたいの?別に、他のやつがそれを使っても使わなくてもあんたには関係ないでしょ」
「う・・・」
正論である。超ド正論である。
「まぁ・・・そうだけど・・・」
「はぁー。・・・ほら、分かったなら元気だしな。そろそろ時間だよ」
「うん。・・・そうだね。まだ、こんな所で落ち込んでて言い訳ないよね!」
僕はまっすぐ前を見つめ、今みんなに演説をしてるレイドリーダーを見る。
今僕達は32層の迷宮区にいており、目の前には大きな鋼鉄の扉が立ち塞がっている。
この扉の先にボスがいて、そのボスを倒すと次の層への扉が開かれるのだ。
「みんな・・・・・・勝つぞ!!!」
先頭にたっているレイドリーダが己の武器を掲げ、演説を締める。
「「「「「おおおおおおおおおおーーーーー!!!!!」」」」」
空気が振動し、みんなの士気が高まるのを感じる。
「カネキ、いつもの」
そう言うと、トーカちゃんが右拳を突き出して来る。
これは僕達がいつもボス戦の前にやっている・・・一種のルーティーンだ。
「うん。トーカちゃん、今回も頑張ろうね」
僕も右拳をだし、トーカちゃんの手にコツン、と当てる。
「行くぞぉぉぉおおお!!!」
扉が開き、全員が一斉に走って部屋の中に入る。
戦いの幕は、今上がった。
・・・否。
「・・・?おい、何だよアレ・・・?」
ボス部屋に入って数瞬、誰かがポツリと呟やいた。
ボス部屋の中はとてもシンプルで、明かりのランタン以外は普通だ。
だが・・・
「え?あれって・・・」
人間がそこに立っていた。
下を向いており、ピクリとも動かないが、明らかに人の形をした物が立っている。
攻略部隊の間の緊張が走る。
しかし、そこから数秒ほどたっても他に変化は無く、ボスも出現しない。
「あれがボスか・・・?でも、ネームバーもHPバーも出てねぇぞ・・・?」
そういいながら、大きな盾を持ったタンク役の人が近づく。
だが、その人間は近づいてきても何もせず、ピクリとも動かない。
なんだ?ゲームの故障とかか・・・?
なんて、今までもこんなおかしいことがたくさんあったのに、深く警戒しなかった自分を叱責したかった。
タンクの人が近づき、あと少しでも触れるというところで――
ドゴォォォン!!!
なんの前触れも無く
「な・・・・・・」
人間の方を見てみると、こちらに右拳が向けられていた、というよりも、この一瞬でタンクの人を殴ったんだろう。
そして何より、その顔が明らかになった。
男だ。普通の。
だが、特筆すべきは・・・・・・
「お、おい、なんだよ、あの「眼」は!」
白目の所が黒く染まり、目の瞳孔が赤い。
目の周りには黒くヒビのような線が入っており、「人間」と言われたら否、というような目だった。
「おいギッド!大丈夫か!?」
レイドリーダーがさっき吹き飛ばされた人に声をかける。
真ん中の位置から壁まで吹き飛ばされているが、その人はどうやら平気だった。
「平気だ!どうやら速いがダメージはそんなんでもないらしい!」
見ると、HPバーは1割も削れてない。
「そんなことより・・・来るぞ!!!」
人だったものはこちらを見て、叫んだ。
「ヴゥゥ・・・ガ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛!!!!」
ボスの上にHPバーとネームバーが出る。
だが、そのネームバーが文字化けしていた。
dat■mo▲uleuraNEØsu : そして最後の2文字に――
「喰種?くうしゅか・・・?」
ギロッッ!!!
ーーーーーーーーーーーーーーー
一方同時刻。
カネキたちが挑んでいる迷宮区から離れた名もなき街でで。
異様な格好をした人が塔の上に座っていた。
SAOの世界では、「怪我」というものは必ず完治する。
切り傷だろうが擦り傷だろうが、腕や足が折れようがもげようが、その傷自体は時間経過で治る。
それなのに、だ。
いや、そんなことが常識な仮想世界だからだろう。
その者の格好が異様に――不気味に思えるのは。
その者は包帯で覆われていた。
言葉のあやでは無い。その言葉通りに、身体中・・・手、足、胴体、そして、頭に包帯が全て巻かれているのだ。
唯一巻かれていないのは「目」だろう。
だが何故かその目はくぼんでおり、その全容を見ることが出来ない。
全身を包帯に身にまとい、その上から少し黒くくすんだ桃色の花模様のパーカーを着込んでいる。
ふと、それが顔をズラしある方角を見た。
そして口角を少し上げる。
「ふふ・・・ふふふ・・・・・・」
口から出た声は嗤っていた。
ただ「どこかを見た」だけ。
それだけで笑い、さらに宙に浮いている足をブラブラさせ、鼻歌まで歌い出す。
「早く・・・・・・始まらないかなー・・・」
“ 楽しいことが”
「ふふっ・・・ふふふっ・・・・・・」
誰もいない街の中。
微かに聞こえる笑い声だけがその場に流れた。
更新が1ヶ月前?はっは・・・ごめんなさい。
最近執筆する時間が無い!アイデアも浮かばない!
故に感想を求めたい!ほんと、キャラの口調が分からない(´・ω・`)
最後に出てきた人、アレでいいかな・・・?