兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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新章開幕ですが、おそらく今年最後の投稿になるでしょう。年末までほぼほぼ連勤……がっでむ。

原作からの変更点:原作リアス部長がレーティングゲームで結果を出すこと目標とした理由のでっちあげ


CHAPTER5:アウェイキング・オブ・ザ・ナインデッド
その1


 

 新しくなってこんにちは。新居より挨拶をする(書く?)僕の名前は兵藤一誠、駒王学園高等部2年生。普通の男子をしてる…………というのは若干嘘で、悪魔でドラゴンをやっております。

 

「若干、というのも多分に嘘が含まれてるのではなくて?」

 

 そして僕の記録帳を後ろから覗き込んで酷いことを言ってる紅髪の別嬪サンはリアス・グレモリーさん。僕の上司の上級悪魔、ついでに彼女。『ついで』なんて表記をしてるのは勿論ちょっとした仕返しである。ムッとした彼女によって後頭部にやわっこい何かが押し当てられてる気がするが、気にしないことにする。イッセーくんそういうのちょー得意。

 

 悪魔になってから日記もどきの記録帳を付けて4冊ぐらいになった……まだ半年も経ってないのだけどイベントが目白押しで困ってしまう。5冊目にあたるコレだって新居に移り住んだ+夏休み突入ってんで新しく記録をつけてますがね。多分新居になったって結構な体験だと思うんだけど、ここまでで起きたことの前では霞むんダわ。やっぱドラゴンってろくでもない(自虐)。

 

「それにしてもイッセーがあんなことを頼んでくるなんて意外だったわ」

「うん? どの件です?」

「『元の家を何処かに保管させてください』よ」

「ああ、うん。自分でも結構大それたコトを頼んだかな、と思ったんですが」

 

 先日の父さんを話を聞いてしまうと思うところがあり過ぎて、どうしても建て替えしなきゃいけないんだったらこの家どこかに保管させてください、と頼んでしまったのである。よりにもよって僕が知る限りいっちゃん悪魔っぽい悪魔に、である。

 やっちまった……とも思わないでもないけれど、部長は僕に頼まれごとをされてハッピー(ダメンズスキーかな???)、僕は部長も喜ぶしモヤモヤをある程度解消されるのでラッキー、つまり費用とか度外視すればいい着地ではあったと思う。

 

「転移を使えば大した手間でもないし、グレモリー領って結構土地余ってるから。眷属の皆にあげれるくらいにね」

「わぁおブルジョワ。ちなみにどのぐらい?」

「本州ぐらいね」

 

 ケタが違う金持ち……いや貴族である。まあ話の流れからして僕に分ける部分の土地に家を保管させて貰えるということだろう。ありがてぇ……生き返らせて貰った時から足向けて寝られないとは思っていたが、ここ一連の件でより一層という感じだ。

 

「私にも思うところがあったし、この位当然よ」

「リアスさん……」

「それに、これをタネにあなたの部屋との直通ルート作ってもらったし」

「急に背後に現れたのそれかァ……」

 

 感動はしたが、やっぱり部長は部長であった。抜け目は無い。

 

 さて、前の家の行方が判明したところで次のフェーズ。ちょっと直視したくない今の兵藤邸について。

 まず最初にお隣の鈴木サン一家や田村サン一家が引っ越した。なんでも好条件でいい土地が手に入ったとかで。

 

「そういや以前、グレモリー家は人間界では不動産業もやってるとか聞いた覚えがあるのですが」

「あなたのような勘のいい彼氏は大好きよ。大丈夫、みんな幸せになれたもの」

「そこを疑いやしませんケドねぇ……」

 

 作り過ぎたおかず等をお裾分けし合う程度には良好なご近所付き合いだっただけに寂しさを覚えなくはない。ない……が、僕らがいるせいで色々面倒なことに巻き込まれるよりは別の土地で何も知らずに幸せに暮らした方がいいとは思う。すまねぇ、僕らの幸せのために他所のところで何も知らずに幸せになってくれ。

 

 ンで、まあ家を転移させる前準備として普通の引っ越しの様に荷物を梱包して一旦避難。思い出の品やへそくりなどが出てきたがこれは割愛。やいのやいのと話しながら作業をする父さんと母さんに、部長とアーシアの分は流石にノータッチせざるを得ないのでそれ以外のところでフル稼働していた僕と、大層カオスなことになっていただろう。

 

「しかし使って間もない家電とか、こっちの方で使わなくて良かったんですか? 部長のお財布から出てたものですし、その判断に否はありません。でもかなり勿体ないかと……」

「そう思わなくもないけれど、この大所帯だと結局買い直す必要があったもの。仕方ないわ。それに中古でもいいから欲しいと言ってくれる人がいて」

「あ、分かった。イリ坊だ」

「正解」

 

 悪魔が使ってたものを聖職者が使うのってどうなんだろう……と思わないでもないけれど、まあ善意のあれこれだし、一応和平も結んだし問題ないのか? まあそもそもズブズブだったし今更感はあるか、ヨシ!

 

 そして転移で冥界に送られる旧兵藤邸とさよならをして、次の瞬間にはお隣も含めたそこにビルが建っていた。……6階建てに地下は4階はもうビルなんよ。人の家じゃないんよ。いや僕らは悪魔なのだけど、人間社会に紛れる者としての感覚だとほら……ね!? すこぶるおかしいよね!? 父さんと母さん、あとアーシアが唖然としてたから多分僕の感覚は間違ってないと思う!!

 

「別に不必要に建屋を大きくしたわけではないわ。寮も兼ねるとなると、ね?」

「それはそうなんですが……」

 

 一応グレモリー眷属の寮も兼ねているので男性フロアと女性フロアがそれぞれ。それに談話室を中心とした交流フロア。あと兵藤邸としての機能のための父さんと母さんのフロア。あとは客間とリビング、キッチン等のフロア。……まあだから、5階建てまではおかしくはねぇと思ったんだよ。でもそれよりも多いじゃん?

 

「6階は今のところ空きスペース……これからは要人が駒王町に訪れることも多いでしょうから、ここをVIPルームにするのが良さそうね。地下はトレーニングルームに室内プール、大浴場。多少は私の我儘は反映されているけれど、こんなものじゃないかしら?」

「お貴族サマの感覚を当てはめられても……僕らの個室だってめちゃくちゃ広いしユニットバスまで付いてるし、テレビにエアコンにでっかいベッド……」

「ダブルサイズなのはイッセーと私の部屋のだけね」

「おい、なんでだ。言え、言え!! 可愛く目を逸らしても無駄だぞ!!」

「あらやだ可愛いだなんて」

「都合のいいことしか聞き取らないデビルイヤーですねェ!!?」

 

 まあこのヒトがこんなんなのはいつものことなので突っ込んでいてはキリがない。好きあらば堕落させようとしてくるのはどうかと思う(not誤字)。

 

「あとは隠し部屋があるそうなのよね。設計担当がベルゼブブ様お抱えの設計士なの。必然、趣味もそっちの方向に……」

「ここで来るかよ平麺さん……」

 

 作ったものに隠し要素を入れることに謎のこだわりがあるらしい平麺さん。僕の積層装甲が昇格機能を失ったことを加味しても余りあるメリットを齎してくれてる要因の一つは、悪魔の駒の隠し要素に拠るものもあるらしい。詳しくは教えてくれなかったが。そんで、そんな平麺さんのお抱えともなれば……まあそういうこったろうね。他人の家に遊び心を添加するんじゃあないよ。

 

「一つだけ開示されているのだと、あなた用のキッチンがあるそうね」

「作れってか、ラーメン!? あの魔王此処に来る気満々じゃん!!」

 

 そして毎度おなじみ警鐘がお知らせベルを鳴らしてくれたので、示す方向……何の変哲もないはずの壁に手をやると、扉が出現した。開けるとそこは異空間、九頭龍亭一号店のキッチンとバックヤードに近い構成をした部屋があった。そっ閉じした。

 

「……見なかったことにしたい」

「同感だけれど、いずれ使う未来が見えるわ。いいじゃない、夜食作り放題よ」

 

 夜食ってもっとこう……チープかつ家族にバレないようにこっそり作るものであって、一人が管理するには豪勢すぎる設備で『さあ、今から夜食作るぞ!!』って感じのものではないんですよ。まあいいけどさ……。

 

「…………ふむ、新婚ごっこに使えるかしら?」

「おおーい、頭真っピンクですか?」

「すぐに想像できる辺りあなたも大概よ」

「男子高校生なんてこんなもんですよ、ソレを理性とか羞恥で隠そうとするだけで」

 

 欲が無いわけじゃあないんだよ、無いわけじゃ。

 

 ともあれ現実逃避をしたくはなったが、生活が快適になったことはいいことだ。戸惑ってはいたが、家が賑やかになって父さんも母さんも楽しそう。最初は無関係な面々が自分の生活圏に入ってきていいの? と思ったけれど……

 

『将来的にリアスさんと籍を入れるんだろ? そしたら眷属? の皆も含めて家族みたいなものなんだろう?』

 

 などと言っていた。適応力が凄すぎる。

 なのであれこれ書いてはみたが兵藤家大改造は満足のいく結果となっただろう。僕も広くなった部屋の改造を頑張りたいものだ。

 

「意外。そんな趣味があったの?」

「趣味というよりは……自分のエリアは自分の使いやすいように改良を加えていきたいというか……」

 

 せっかくでっかいテレビがあるのだからスピーカー増やして2.1サラウンドにして映画を楽しめるようにしたりゲーム機買い揃えてみたり……。あとは訓練で空間をいじったりも面白そうだ。

 

「空間を? 時計を取り込んだことで籠手の能力が拡張されたのかしら?」

「そういう能力を手に入れたというワケではないんですけれど、なんかそういう視座を手に入れたと言いますか」

 

 多分ここはガン子の影響があるんだとは思うんだけれどね。なんというか、時間の流れとか空間の歪みとかが警鐘も併せることで何となく分かるというか。それでいくと実は新兵藤邸もちょいちょい空間が歪んでるというか拡張されてるみたいだ。ギャスパーも似たようなこと言ってたから間違いない。事実この部屋にあったからね、異空間キッチン。

 

「……イッセー、貴方どんどんキメラになっていってない? 悪いことではないけれど」

「自覚はあります(キリッ)。というかなんか安心しちゃったから、もっとバケモノになってもいいかなーって」

「どこを目指してるのよこのおバカ」

 

 軽くデコを小突かれた。心配故にということが分かるので嬉しくはなるが……まあ、実際どこを目指したものか、とは思う。

 言ってはなんだが、今の僕はなんだってできるしなれるように思う、めいびー。何も思い上がりと言うわけではなく、籠手で色々倍加すればいつかはどんなことでもそれなりにこなせるようになると思うのだ。寿命もそれなりにあるしね。だから余計に迷ってしまうのだ、僕は何をすればいいんだろうとね。

 

「それに直近の目標しかないとお前は生き急ぐってクソトカゲにも忠告されましたし…………」

「うーん……夢とかないの? いくらイッセーでも、ヒトには言えないような願望の一つや二つ……」

「ある意味現状がそんな感じですが。人生の目標達成率2000%です」

「欲が無いわねぇ…………」

 

 いやだって考えてもみてくだせぇよ(未来の)奥さん。美人さんと将来の約束、そこそこの稼ぎ、なにやら(冥界でだけど)テレビデビュー内定、よく分からん超パワー。後ろめたさが消えた以上、もうこれただの妄想の類でしょう。テロ屋共は始末しないといけねーですが。

 

「というわけで、なんかいい感じの目標とか夢ってないです?」

「貴方、そんなところまで他人に委ねるのどうかと思うわ。……そういうのがイッセーの欲のカタチというのは分かっているけれど、悪い悪魔に食い物にされるわよ?」

「何その頭痛が痛い的な表現。いやまぁ他に表現できないでしょうが」

 

 それに僕のやりたいことを抜きにしても、やっぱ想像のキャパシティってあると思うんですよ。現状が『ぼくのかんがえたりそうのじんせい』なんだから、それ以上を思い付き様が無いんですよ。あれか? 次は神にでもなれってか?

 

「そこは魔王、とかにしておきなさいよ。私達悪魔よ? ……かと言って、魔王になりたいかと言われるとそうじゃないわよねイッセーなら」

「はい、勿論!! 権力を持ったらろくでもないことになるという自覚はあります!!!」

「貴方これから権力を握る側になるってこと忘れてないかしら???」

 

 そういえばそうでしたね……公爵家に婿入りorそれに準じた何か……。うぅ……胃がキリキリしてくる……。

 

「というか、部長は部長でなんか目標とか夢とかないんですか? そういやそれに近いこと聞いた覚えがないなって」

「あー……うーん…………」

「なんです、その『言ってもいいけど当人に向かっては言いづらいなぁ』みたいな反応。お陰でだいたい分かりましたから何も言わなくていいですけれど」

「私の夢って、家などの事情抜きに『リアス』を好きでいてくれるヒトと一緒になることだったのよね」

「言わなくていいって言ったじゃないですか!!?」

 

 あと言った本人が顔赤らめてるンじゃあないよ、自爆テロかよ。

 

「まあ、叶うはずもない願いが叶った辺りは貴方と同じね。お揃いよ?」

「そんなペアルック嫌ですよコッチはよォ! …………ちなみに目標の方は?」

「実の所明確なものは無いのよね……。グレモリー家を更に盛り立て、次に託すといったところが当面の目標なのだけれど。おそらく私が当主をしている間に大きなことはできないのよね」

「それは何故…………あ、もしかして甥っ子さんの?」

 

 首肯で返事が返ってきたので、成程となる。サーゼクス様は『ルシファー』だけど、現魔王から世襲制じゃなくなったから甥っ子さんはグレモリーなのだろう。……つまり言っちゃあなんだが、部長はいわゆる繋ぎの当主ということなのだろうか?

 

「本来ならお兄様がグレモリー家の当主になるはずだったことを考える、と実際その通りなのよね。甥のミリキャスの選択次第なところはあるけれど、対外的な事情を勘案するとあの子が当主になるのは妥当よ。象徴とはいえ、魔王の息子だもの」

「うげぇ……政治の話かァ……」

 

 とはいえ顔も分からない部長の甥っ子は部長にも大事にされてるのだろうなと判断はできて一安心である。部長はミリキャスくん? の選択を尊重するつもりでいるし、『妥当』とは言っても『当然』とは言ってないからだ。……まあ尤も、部長が『長く当主をすることは無い』という予想をしているということは、ミリキャスくんは今のところはそういう目標を持っているのだろう、めいびー。

 

「そうなると、私の当面の目標を手っ取り早く達成しようとすると『レーティングゲームに参加して成果をあげる』ということになるの」

「そりゃまたどうして? というかレーティングゲームで成績残せば出世できるロジックも実の所あんまり理解はできてないのですが」

 

 考えても仕方がないからそういうものとして受け止めた。が、口ぶりからして部長の中では理解のできた話っぽそうだ。

 

「ああ、そうね。イッセーには……というよりは悪魔の貴族社会に馴染みがないと理解し難いかもしれないわね。簡潔に言うと、上級悪魔にとって……眷属や領民を従える王にとって『強いこと』は義務なのよ」

「ふむん?」

「勿論、家によっては兵隊や軍を編制するところも無くはないのだけれど、それらを含めても王が最大、最強戦力であることがほとんど。外敵から守る代わりに、王にだけは己の自由を許すという契約を領民と交わした悪魔が上級悪魔なのよ。……とはいえ、形骸化してきた概念なのだけれど」

 

 ははぁ、成程。その理屈でいくなら分かりやすく『己の強さ』を誇示できるレーティングゲームは、(形骸化してきているとはいえ)上級悪魔の存在理由を示すには都合のいい場所なのだろう。領民となる悪魔も強い上級悪魔に靡くだろうし、ほぼほぼ強さと領地の力が直結するのね。完全に理解したとは言えねェが、レーティングゲームで家の勢いを増すことができるのは理解した。…………あー、フェニックス家が美味しい思いをしてるってのも納得だなぁ。レーティングゲームでは『フェニックスの涙』がアイテムとして使われる上に、プレイヤー側としては不死身で勝ち難いと来たもんだ。

 

「じゃあ、部長の当面の目標ってレーティングゲームに殴り込み掛けれるように強くなるって言い換えてもいいってことです?」

「ええ。私もそのつもりで今日まで眷属と共に訓練してきたわ。最強は難しくとも、より良い成績は狙って叱るべきでしょう? なのだけど……」

 

 少し困ったように眉を顰める部長。何かその考えに問題があるのだろうか?

 

「問題がある、というよりは視野が少し広がったというべきかしら? レーティングゲーム参入を見据えた訓練は続けるわ、自衛のためにもなるし、これからのことを思うと必要になってくるでしょう。けれど、グレモリー家の更なる発展の主軸に添える必要は無いのかもしれない、と考えているの」

「……???」

 

 どういうことなのだろう? と疑問符を浮かべてると、今日イチ悪い顔で美しい笑みを浮かべる僕の彼女は、まさに悪魔と言った語り口でこう言った。

 

「叶える夢や目標がないなら、ちょっとした野望に付き合ってくれないかしらイッセー。私、皆のために冥界の⬛︎⬛︎をこの手に収めたいのよ」

「それ、本当にちょっとしたで収まりますかねェ!?」

 

 あまりにもな大言壮語に度肝を抜かれたが、リアスさんがそうしたいと言うなら僕に否は無い。彼女の夢も目標も野望も、今となっては僕のものでもあるのだから。

 

 ……というわけで、ここから暫くは『夢』や『目標』の話。もしくは、僕が殻を破る話である。

 




そういう理由なら不自然はないかと思うのです。

感想、評価等本当にありがとうございます。
今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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