『貴様ァ……! よくも、よくも我らの戦いに水を差してくれたなッ!!!』
「んー、別にな。割り込むつもりはなかったんだ。マナー違反なのは理解してる。とはいえアレはダメだ。巻き添えでポンポン人が死んでくのは気分が悪い。人を殺すのは人で在るべきだ、化物はお呼びじゃあない。……お前らがなんなのか俺はテンで分からないが、放置するのはダメなんだと思う。俺の敵を減らされても困るしな?」
『何をごちゃごちゃと!!』
「俺と同じく貴様らもマナー違反ってこった。人の合間を駆けるのならば、服の着方を学ぶべし。煙くせぇ戦場でも、
『…………ッ!!』
「俺の名前を覚えて逝きな、赤いの。⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……しがないただの傭兵だ」
◆◆◆
「とまあ、それで相打ち……一応息はあったから俺の勝ちと相成ったわけだ。後でアレらが二天龍なるドラゴンと知ったんだが…………そりゃあ宿主を殺されたら怒りもするか」
『違う!! あの時も言ったはずだ……我らの戦いに、唯一だった楽しみに水を差したその愚行を、俺は許せなかったのだ!!』
「……? その理屈なら、お前は代わりに俺と死合ったろう。納得のいく戦いだった筈だ。結末はともかく、相応に楽しい時間になったはず。嘘はつくなよ」
『〜〜〜ッッッ!!! 貴様如きに!! アルビオンの代わりが!! 務まるかァッ!!!』
「うーむ、区別は良くないな赤龍帝。敵として眼前に立った者は、強者であれ弱者であれ、善であれ悪であれ、等しく敬意を抱くべき戦士だ。誰かだけを選ぶなんぞ、とんでもない侮辱だ」
『宿命を解さぬ雑食が……ッ!!』
「あのー……宿主そっちのけで言い合いすんのやめてくんない?」
というか本題そっちじゃないからさ……非常に気になるところではあるケド。
「というか
『相棒!? 寝返るのか相棒!?』
「待ってちょうだいイッセー。普通の人間は二天龍相手に戦わないし、まかり間違っても勝たないわ。…………大丈夫なのかしら、本当に会わせて大丈夫なのかしら?」
まあ危険度は段違いに上がったのはそうだね……そりゃあ警鐘も『死ぬぞ!!』言うわな……。実際二天龍相手にどう立ち回ったのかは気になるところだ、後学のために。
「白龍皇の方は近付いたら力が吸われるってのが分かったから、息を殺して遠くから鎧の目の部分を銃で狙った。どう見てもそこが脆そうだったからな。それで仰け反って振りあがった頭が前に戻るタイミングで同じ箇所を撃ち抜いた。二発当てりゃ壊れるに十分だったんだろうな、ヤツは脳天が貫かれて死んだ」
「凄い、何も参考にならない……」
「赤龍帝の方は何やら妙な呪文を唱えた後に動きが尋常でなく速くなった…………が、代わりに動物みてぇなロジックで動くようになった。あれなら万倍速く動いても万倍先を読めば
「うわぁ…………」
自分が赤い方だから余計に疑問で頭が埋め尽くされる。え、このヒト本当に神器も何もないの? 特別な才能も……あ、無いんだ。戦闘のセンスだけ……? 嘘でしょ、キモっ!!
「ウォーレンに負けず劣らず失礼だな貴様。俺は人間にできることしかしていない。護衛の片手間に正臣に訓練をつけたが、アイツもそのぐらいのことができるようになった気がしないでもない…………そうだな、2割ぐらい」
「よくそれで失礼だと思えましたね!?」
というか、挙動と戦果が人外な人間の2割って……大丈夫? 八重垣正臣さん人間辞める前に人間やめてない? ……黙るなよ
「と、ともかく! ディハウザー氏へのアポの件も了承しました。……他にも何か要望はありますか?」
よくない流れをぶった切るように部長が話を進める。そうだ、僕らそんなに悠長にしてられないんだった。夕食前には戻らないとダメなんだよ……!!
「あぁ、細かいところだと……主が亡くなった手続きとか代わりに進めて欲しかったり、戦働できる職場を紹介してもらいたいとかはある。が、大きくその二つを何とかしてくれれば正直充分OKだ。久々のご馳そ……じゃなかった、戦そ……でもなく、殺し合……は世情的にダメか。そうだな、楽しい決闘だ。それができるなら俺は満足だ」
「部長、ごめんなさい。僕もこのヒトを悪魔社会に解き放つのはまずい気がしてきました」
「けれど今更後には退けないのよね……僅かにある政治的感覚と一応はあるらしい善性に期待しましょう」
在野の狂人を拾ったなら最後まで面倒見てくれよ、と時計の悪魔を心の中で罵倒した。
『むしろ彼を何とか縛り付けていた私を褒め称えるべきだと思うんだが……』
……どうしよう、否定できない。
◆◆◆
着いてこい、とホートン氏に案内されたのは物置の中…………というよりはそこの魔方陣。おそらく転移系のソレ。ちょっと……いや尋常でない程命の危機を感じつつも『この男に昏い企みは何も無い……本当の本当に』という警鐘の導きのお陰で勇気を出して乗り込む。今だけはオーフィスの加護がありがたい……!!
転移した先はどこかの屋内に思う。……えらく日本的な一軒家の内装だな。窓から見える景色は密林なのでさっきの場所からそんなに離れてはないらしい。僕の空間認識もその判断に正解を下している。
「お察しとは思うが、ここがあの二人の隠れ家だ。今呼んでくるから待ってろ」
「はい、お願いします」
そう言ってホートン氏はリビングから階段へと進んでいく。まあそんな待つこともないだろうと思ってじっと階段の方に視線を向ける僕と正反対に、部長は周囲をキョロキョロと見回している。なんというか……頭の中で情報でも一致させてんのかな。
「そう、そういうこと。随分と舐めたマネをされてるみたい」
「え、えぇ!? ホートン氏ってまさか敵なんですか!?」
「いえ、彼じゃないわ。もっと悪辣で面倒な相手。…………全く、子供だからと騙せる気でいたのかしら? ふふふ、頑張る理由が増えたわね」
ひ、ひぇぇ……リアスさんがガチ悪魔モードに突入しておられる……! 相当何かに対してブチ切れておられる様子……! な、なんだろう、誰に対してなんだコレ……!?
「イッセー、私この内装を見たことがあるのよ。駒王町を前任者から引き継いだ時にね」
「…………それ、どういうことです?」
ちょっと話の中身に気になるところがあり過ぎておふざけモードが頭から抜ける。前任者、と言うと……?
「元々、駒王町は大王バアル家とグレモリー家で共同で管理していた土地なの。私が管理者になるタイミングで完全にグレモリーの管轄になったのだけど」
「…………」
別におかしな話ではない。部長やサーゼクス様が扱う滅びの魔力は、バアル家の悪魔が持つ特性だ。部長のお母様がバアル家出身であると聞くので、その遺伝だ。お貴族様のやり取りだ、そういうこともあるだろう……身内の様な相手が政敵ってのも頭の痛い話だが。戦国時代かよ。
「その時ね、事細かにお話してくれたのよ。町のいいところ、名所、経験談…………まさにそう、前任者が拠点にしてたらしい、この間取りと酷似した場所でね」
「っ!」
偶然の一致はない、警鐘がそれを肯定する。
「彼女に訊ねる必要はあるけれど……」
「クレーリア・ベリアルさんが、駒王町の管理者だった時期がある。いえ、
「私の考え過ぎでなければね」
いよいよもって不審度が有頂天だ。そうなるとクレーリアさんの抹殺(未遂)にグレモリー家とバアル家が関わっている……? 『グレモリーは関わっていない』…………バアルは黒か。しかし多少って感じだ。事態の揉み消し、舞台は駒王町、ウォーレン・マリソンの活動範囲……くそ、だいたい繋がるぞコレ!! だが残念なことに憶測の範囲だ……警鐘のお陰で確信は持ててるが、これは妄言の類……なんなら力の出処がオーフィスな辺り、妄言よりも信憑性がない。クレーリアさんに証言してもらおうにも、地盤が無いと今度こそ抹殺される…………。
グルグルと回る思考の中で、一つ光明が差した。脳裏に浮かんだのは栗毛の悪魔(シスター)だ。
「部長、舞台が駒王町ということなら、教会の方の前任者が何か知っているかもしれません。八重垣正臣氏のことも含めて」
「……!」
「紫藤トウジさん……イリナちゃんのお父さんです。彼なら、あるいは」
「今、可能かしら?」
「イリナちゃんにメッセ飛ばすぐらいなら」
ここで悪魔製スマホが役に立つとは思わなんだ。九頭龍亭従業員用に準備したそれは、人間界と冥界の隔たりも関係なく通信が繋がる。連絡アプリを開いてイリナちゃんに駒王町の教会の前任者についてと、八重垣正臣氏についての質問だけ投げる。現時点では詳しく説明できないが……諜報部だったイリナちゃんならそれだけで全てを察してくれるかもしれない。
程なくして返答が返ってくる…………大当たり、だ。
『もしかして正臣さん、生きてるの?』
『ノーコメント』
イリナちゃんならこれで十分だ。向こうで段取り組んでトウジおじさんを呼んでくれるはず。
画面を見ていた部長と顔を見合わせる。……酷くおどろおどろしい笑顔だ。他者を食い物にせんとする、悪い顔だ。しかし、僕も同じ顔をしていることだろう。口の端が吊りあがって仕方がないのだ。
「まさに、まさに。銀の弾丸とはこのことね」
「全くもって。シスター様々です」
ふふふ、くふふと声が漏れる。今まさに、我々は『悪魔』であった。
◆◆◆
「連れてきたぞ」
「あの、それ……連れてきたというより」
「抱えてきたっていうか……」
階段から降りてきたホートン氏が抱えていたのは二つの人型だった。顔は見えないがぐったりしている。
「この時間は訓練していることを失念していてな。あんまりにも頑張ってるものだから俺も嬉しくなってつい叩きのめしてしまった、後悔はない」
「お願いしている立場でこんなことを言ってはいけないんでしょうけれど、待たせてる自覚ありました???」
部長のツッコミに首をブンブン振って同意する。待ってる間悪巧みしてたから、その時間無駄にはなってないけれども……あまりにもフリーダム過ぎるぞこのジジイ。
「師匠……人間は空を飛べません…………」
「何を言う、拳打で空気の壁を殴れるようになったんだ。同じことを脚でしろ」
「並列思考……どうやっても5つが限界……」
「別に増やせばいいってものじゃない、迫り来る敵と打ち合いながら魔力を錬れるようになればいいんだ」
「部長、なんか分からないんですけどこの二人このまま表舞台に出しても死ななさそうなんですが」
「正臣氏だけかと思ったらクレーリアさんまで……ある意味ありがたくはあるのだけど……」
うーん、なんだろうこの策を巡らそうとして力技で網を引き裂かれてる気分……。
「これも面倒を見る一環だ。殺されたら悲しいし、将来俺の敵になってくれるなら万々歳。こいつらは生き残れる、俺の未来の楽しみが増える。win-winというヤツだな」
「僕は師匠に何度殺されるかと思ってましたが!? 教会での訓練でだってここまでじゃありませんでしたよ!!」
「お兄様の見る世界を少しでも……なんて言ってしまったあの日の自分を引っぱたきたい……!」
「いい敵意だ、将来有望だろう?」
「「…………」」
将来有望というか、将来有望にしたというか……部長も掛ける言葉を見失ってるよコレ。
「さ、いつまで俺に抱えられている。お前らにお客様だ。喜べ、ようやっと味方ができたみたいだぞ」
床に降ろされた二人。黒い長髪が目立つ柔和な顔立ちの男性と、灰色の髪色が印象的な美しい女性。実に絵になるカップル…………この二人が、
「師匠が迷惑を掛けたようで済まなかったね。代わりに謝るよ、申し訳なかった。初めまして、協力者さん。僕は八重垣正臣、元教会の戦士だ。そしてこちらが」
「クレーリア・ベリアルと申します。よろしくお願いします、グレモリーの姫君にその兵士さん」
大王派にぶち込む、銀の弾丸。
原作との相違点
→先代をわけのわからないバグに殺されたので、強くなるまで名を隠すことに同意したドライグ
感想等ありがとうございます、とても励みになります。