色んなヒトにお見舞いしてもらいながら、無事僕は退院。通学も問題なかったのでそのまま学校に……とはならなかった。いや学校行くには行ったんだけど、真夜中の学校……つまり、悪魔の時間ですよ。
呼び出されて向かったオカルト研究部の部室の引戸を開けると、いろんな意味で全員集合だった。
『無事で何よりですわ』と姫島先輩は胸をなでおろしていた。
『こんな無茶をするなんて意外だったよ』と木場クンは何処か呆れ顔だ。
『…………』と、無口な塔城サンは芋羊羹を差し出した(それお見舞いの品にあった気がするぞ……?)。
『退院おめでとう、イッセー』と綺麗に微笑みつつも、部長はあの日から何処か影のある表情で僕と接してくる。
そして、何よりも僕を驚かせたのは…………
「あ、あの……お久しぶり、ですぅ……」
「……いや、キミお見舞いに来てたからお久しぶりでもなんでもないじゃん」
「そ、そうですね、えへへ……」
照れたように笑う『元』シスターさんがいた。何故元シスターさんなのかって言うと……シスターさんの背後から、『悪魔』の翼が生えていたから、だ。部長がいう提案とは、こういうことだったらしい。
…………今、ものすごぉく頭が痛い。
だがそれを無視して聞くべきことと、言うべきことが、僕にはある。
「シスターさん、名前を教えてくれないかな?」
「あ、はい! 私はアーシア・アルジェントと言います。アーシアと、呼んでください」
「ありがとうアーシア。僕の名前は兵藤一誠。親しいヤツはイッセーと呼ぶよ」
「では、イッセーさんとお呼びします」
……なんだろう、この子の背後で尻尾がブンブン振れてるのが幻視できてしまう。嬉しかったのかな? そうなら、まあ悪い気はしない。
「本当にありがとうアーシア。キミのお陰で、僕はまだ生きていられる」
「そ、そんな……私の方こそイッセーさんには」
「あ、それはもうお見舞いの時にめっちゃ聞いたからキャンセルで」
「も、もう! いいじゃないですか!」
「ウケケケケケ! お互いに命の恩人ってことでいいじゃんかよ」
本音を言うと、その、恥ずかしいんだよ。美少女が面と向かってお礼言ってくるとか。まるでギャルゲーだね! フラグ建てた気もするが残念、兵藤一誠は主人公ではなかった!
「……それで、これは、どういうことです、部長」
一転、僕の口からは自分自身でもビックリするぐらい冷たい声が漏れた。部長を尊敬してる気持ちも、恩を返したい気持ちも何一つ変わってない。だが、コレはどういうことだという憤りが漏れた声だった。
「私は、提案とメリットとデメリットを説いただけよ?」
また小悪魔モードですか部長、可愛いですけどそれ僕には通用しませんから。真面目に答えてください。というかそれ、おどけた返事をした僕への意趣返しだったりしますか?
「そんなに怒らないの。言った内容に嘘はないし、そうでもしないと、立場の問題もあって私にはアーシアを助けてあげることが出来なかったのよ。アーシアの力……いえ、
誓って無理強いはしてないわ、と言うが……あなた悪魔ですよね? 弁は立つだろうし、無理強いはしてなくても思考誘導してませんか? ……いやまあ、立場というのは確かに考慮してなかった。そりゃそうだよな、反省。むしろ(悪魔としての立場の中で)誠実に対応してくれたみたいだ。それとこれとは別な気もするけど!
「あ、あの、イッセーさん……」
「んん? はいはいどったのアーシア?」
「私のために怒ってくれるのは嬉しいのですが……悪魔にしてください、と言ったのは私なんです……」
ウソだろ……!? と言いたくなるが、マジである様だ。でも、あの敬虔そうなシスターさんがどうして……?
「……そうさせちゃった様な僕が言うのもアレなんだけどサ。本当に良かったの?」
「ええ、もちろん。神様には顔向けできませんし、まだ信仰を捨てることは難しいですけれど……」
そう言って表情を少し曇らせて……振り払うように綻ぶような笑顔へ変えて、彼女は言った。
「悪魔だったイッセーさんが、シスターだった私を、『それでも』と助けようとしてくれたように……私は『どうしても』、イッセーさんを助けたかったんです。後悔は、していません」
「……そう、だったの、ネ」
部長が若干僕に対して影のある表情で対応してくる理由が、朧気ながらわかったかもしらん。
上手く言葉に出来ないが……なんかこれは、居た堪れない。
「と、言うわけで、アーシアはイッセーの家にホームステイすることになったわ。面倒を見てくれるかしらイッセー?」
「…………へ?」
いやあの、え? どうしよう、唐突なことに頭が上手く回らないんだけど、え?
「一応設定としては、留学生だったアーシアが、ホームステイ先で暴行を受けそうになって、それをあなたが守ったということになってるの。そういう風に伝えたら、兵藤さんたちが『是非とも私達のところで』と言ってくれたのよ」
「……暗示は?」
「ちょっとしかしてないわ。人をお人好し程度にするぐらいの、ね?」
……あ、そういやなんか物置になってた部屋が片付いてたような気がしたけど、あれそういうことだったのか!?
「か、観賞用レベルと同じ屋根の下…………僕また殺されるんじゃないか…………?」
最近、僕の周りがえらいファンタジーになってる気がする。誰か助けてくれないかな、切実に。
まぁ、でも…………。
「? どうしたんですか、イッセーさん」
「いいや、悪いことばかりでもない気がしてね」
前に(苦)と付くだろうが僕も笑っていて、アーシアも笑ってる。なら、それが真実なんだろうと、この場では思うことにした。
◆◆◆
「あ、そうそうイッセー。あなたのアルバイトの件なのだけど」
さあそれでは解散、みんなはお仕事で僕とアーシアはまた明日ー……になる前に、部長がそんなことを言った。
「あ、はい。そう言えば、ここの所色々ありすぎて忘れてましたネ」
あと出来れば忘れたかったとも言う。ほら、なんか不穏な発言してらしたじゃないですかン我が主。将来はあんな胡散臭い感じの人になってみたい。あ、今でも充分ですか? そうですか!
「あのラーメン屋『九頭龍亭』、買い取ったから」
「……………………………………………………」
そういえば、昔はよく公園で変身ごっこもしたよね。仮面騎士は幼少期の僕達にとってのヒーローだった。一番好きだったのは虫を模した仮面騎士。あの素早く動くのって本当にかっこいい設定だと今でも思うんだ!
「イッセー、イッセー。現実に戻ってきなさい。遠い目をしているわ」
「……あっ、部長。ですよね、やっぱり仮面騎士は最高ですよね」
「もう一度言うわね、九頭龍亭は買い取ったから」
「畜生、現実逃避しきれなかった!!」
どうしてそうなったんだろう。正座させて小一時間問い詰めたい。
「どうもあなたのその腕前は腐らせるには惜しいものみたいだし、せっかくなら九頭龍亭での業務を私達の方で管理しようってことにしたのよ」
「ちょっと待ってください、いやマジで。話の流れ的に、僕の悪魔としての
「もちろん、ずっとでは無いわ。将来的にオーナーになってもらうことを視野に、今までと同じように週三での勤務ね。それ以外の日は、他のみんなと同じように契約を取ってもらうわ。ある意味下積みの延長線上みたいなものね」
「う、うそーん……?」
ほ、本気ですのん……? あと確かに店長から任されて店の立ち上げ作業とかワンオペとか新メニュー考案とか売上計算とか発注とか清掃とか後輩指導とかやれるけど! …………あれ、なんだろう僕結構任されてない???
「あ、でもしばらくは九頭龍亭の方に顔を出してもらいたいのと、あなたにマニュアルの整理と再編をしてもらいたいわね。あの店の1番のベテランだった中村さんが『そういうことなら、イッセーくんに任せるといいですよ、彼そういうの得意ですし』と言ってたわ」
「まあ中村サンは店回すのは得意だけど後輩指導とか向いてないし……」
指導された僕が言うから間違いない。というか店行ったんですか、部長。
「ちなみに、元いた店長は……?」
「従業員の反乱にあった、と言っておくわ。彼が雇われで本当に助かったわ……」
あの店長雇われであんな無茶苦茶しとったんかい……逆に尊敬するわ……。え、バレなかった原因がアルバイトが変に頑張って取り繕われてたから? そんなー。
「ちなみに新店長は?」
「イッセーよ」
「馬鹿じゃないの!?」
主とかそんなものを抜きにして叫んでしまった。業務内容を完璧にこなせるだけで店長が務まるかい! あと僕高校生ですが!?
「あら、でも従業員の皆さんで投票したらイッセーが圧倒的だったわよ? あなたがこれからどこに票を入れても覆らないわ」
「アイツら僕が2年目突入したばかりのペーペーだってこと忘れてるんじゃないのか!?」
脳裏に浮かぶ戦友達の笑顔が憎たらしくて仕方がない。テメェらマジで覚えとけよ。
「もちろん、こちらから補佐となる人員は付けるし、経営の方も専門の方を招聘するつもりよ。あと、これは私がイッセーを店長として雇う契約だから、給料も……」
「…………!?」
こしょこしょと耳元で具体的な金額を告げられる。……こ、これは大卒初任給程とは言わないが、数ヶ月で学費を充分に払える金額だ!
「新規の事業開拓として悪いものではないし、適材適所、使える人材をいつまでも遊ばせておく気はサラサラないの。さてイッセー、どうする?」
「乗ったァ! 一生あなたに着いていきます主人リアス・グレモリー様!」
「ええ、ありがとうイッセー! 責任重大よ、頑張ってちょうだい!」
数十分後には勢いを乗せられて頷いたことを、頭を抱えて後悔することになろうとは知らず、僕は陽気に喜んでいたのだった。いやぁ、馬鹿だねぇ……。
◆◆◆
『………………』
『……今代の相棒は、どうやらいつもとは毛色が違うようだ』
『だが、まだ分からない』
『俺はお前を見定めよう、兵藤一誠』
『真実を知ってなお、俺を『可能性を掴む手』と言うのなら……』
◆◆◆
CHAPTER1:エントランス・オブ・ジ・アンダーワールド
The End.
なんでこうなったのか、書いてる自分が訳分からんと思う今日この頃です。
ともあれ旧校舎のディアボロスは終了!
触れなかったはぐれ悪魔退治に悪魔の駒について、アーシアの生い立ちとお出かけは幕間でやる予定です。