兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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ジャブ


その11

 

 やってきました、やってまいりました、やってきてしまったの三段活用(大嘘)。乗り換えを挟み、辿り着いたのは冥界の旧首都『ルシファード』。ここに初代ルシファーがいたのねと思うとゲンナリする。だって殺したのクソトカゲだしね。

 

『そのお陰でお前は悪魔として生きやすくなったぞノータリン。昔の悪魔は、それはもう神話に語られる悪魔そのものなわけだからな。感謝してくれてもいいぞ?』

 

 それはそうなんだがお前が言うなよ。どの面フレンズとはこういうことか(違う)。

 いやしかし、街並みが人間社会のそれに似てたのは驚きがあったね。グレモリー領もそんな感じなのかしらん? そうだとするなら将来冥界を生活の拠点にするのに感じてた不安も一つ減るというもの。コンビニの無い生活は考えられないや。

 

『主に使っているのは?』

 

 ATM。

 

 とまあそんな感じで降り立ったものの、民衆の黄色い声が押し寄せて来るので足早に目的地に向かうことになったのでじっくり街を見て回ることは出来なかったのが残念だ。というか一般ピーポーが使いそうで使わない単語じゃないか『民衆』。そして僕にそんな単語を使わせる上司殿の人気がすげぇよ。各々性自認はありそうだけれど、悪魔に性別なんて関係ないだろうからなァ。若者中心に男女のべつまくなしに人気なのだろう。美人で、魔王の妹で、次期当主で。キャラの渋滞事故かな?

 

 ……………………。

 

必要とあらばいつでも裏返りますわよ表

 

 黙れガン子。一瞬どっちの見た目の方が悪魔ウケいいだろうと考えてたら使命感が顔を出してきやがった。『民衆ウケする姿をするのも人気商売で必要不可欠』だけど、冥界で天使の姿は不味いよマジで。確かに(あのクソ堕天使の見た目してるから客観的に)美人で、(悪魔の僕から反転してるから仕方なく)天使で、(理由は不明だがヤツの自認的には)ドラゴンで。……と、こちらもロマンに溢れたキャラの渋滞事故を起こしているが、そもそも反天使は表に出しちゃいけないタイプの厄災である。元が僕だから性格もアレだしね。

 

 そんな僕の中の愉快なカス共とのやりとりを繰り広げながらも流されるままに会場の手前まで辿り着いてしまった。うちの眷属全員が乗ってもまだスペースが余りそうなでっけぇエレベーターにビクビクしながら乗り込むと、スルスルと登り始める。……妙にデカいのは悪魔の駒で転生できる最大人数のこと以上に、魔物とかを眷属にした場合のことを想定しているのかしらん?

 

「さて、この上で待っているのは私と同期と言っていい上級悪魔達。将来のライバルよ。舐められないようくれぐれも……くれぐれも、余計なことをしないように」

「何故それを僕に言った? 何故念を押すように僕に言った???」

「胸に手を当ててよく考えることね。自分の立場は弁えようとする割に納得いかなかったらすぐ噛み付くでしょう?」

 

 呆れたように放たれた言葉に同調するくすくすという笑い声に顔が真っ赤になる。くそぅ、三大勢力会談ン時だって話振られた時しか喋ってないじゃんかよォ!

 

「さ、いい感じに緊張もほぐれたわね。安心なさい、こんなこと言ってる私が、もしかしたら今日1番顰蹙を買うかもしれないから」

「え、それって……あぁ」

 

 なるほど。こういう場だと将来の夢や目標を聞かれるってのは定番だわな。そして部長は以前僕に教えてくれた夢……というか野望を、同じようにライバル達に向けて宣言するつもりなのだろう。……うん、確かに1番物議を醸しそうなのはこの上司殿かもしれんね。

 それを聞いての反応は、唯一話を聞いてるだろう朱乃サンだけが苦笑。ほかの面々は困惑したようにハテナを浮かべるだけだ。

 ……教えて欲しそうに僕見ても言えんぞー。今言ったら面白くな、ゲフンゲフン。台無しになるからなー。

 

 そうこうしているうちにチン! とベルが鳴り、扉が開かれる。視界に飛び込んできたのは広いホールだった。…………うわ、ちょっと目眩がする。空間拡張でもやってるんだろうか? ギャスパーの方に目をやれば、目を押えながらブンブン頷いていた。これはちょっと訓練した方がいいな。

 拡張空間酔いをこらえながら案内されるままに通路を進んでいくと悪魔の集団がそこに。

 

「あら、サイラオーグ!」

 

 その集団のトップ……と思わしき男性に、部長は親しげに声を掛けた。存在感は、まるで山の様と評すればいいのだろうか? 筋骨隆々の、スタイリッシュな武闘家といった風体の美丈夫だ。

 顔の感じがサーゼクス様に似てる感じがあるから、グレモリー家のご親戚か何かか? いや、部長はこの場にグレモリー家の次期当主として参加してるのだからその可能性は無い。……それ以外で親戚となると、もう一択しかないわな。警鐘も『そうだそうだ』と頷いてらァ。

 

「久しぶりだな、リアス」

 

 向こうも気がついたようで、駆け寄る部長に挨拶を返し、握手を交わす。…………んー?

 

『どうした相棒?』

 

 いや、ほら。今警鐘が鳴ってるじゃない? 危険度って感じのじゃないんだけど……僕や、あとあのクソライバルに似た様な、妙な残り香というか。そう表現するしかない何かをサイラオーグ? 様から感じるというか。

 

『龍の気配では……ないな』

 

 そうなんだよね。なんなんだろう? まさかハーフってわけでもなかろうし、神滅具という線はないだろう。眷属と思わしき悪魔の方からもそういう気配もない。……今は気にしないことにしたいんだけど、このヒトのお家がおそらくアレだからなぁ。上司殿、上司殿。情報確定させてくれませんか?

 

「ええ、久しぶり。変わらないようで何よりだわ。初めての子もいるから紹介するわね。彼はサイラオーグ、母方の従兄弟よ」

「サイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ、よろしく頼む」

 

 願いが届いたのか(十中八九覗かれてる)、すぐに自己紹介の流れに持っていってもらえたので情報開示。やはりバアルか…………厄介な。……厄介、な? 鳴りませんね警鐘、敵って感じじゃないじゃないの。

 …………いや、大王家に一発カマされてると感じてたはずの部長が、自然な感じで対応してるってことは、例外的にそういうことなのだろうか? 部長も大概腹芸上手だ、敵意を悟らせることはないけれど笑顔の質が微妙に違うから判別を付けようと思えばできる。見る限り、シンプル親族相手の対応だ。……何も分からない以上、部長の反応信じるしかないな。

 

「それで、こんな通路で何をしていたの? 誰かを待っていたり?」

「待つとしたらお前ぐらいだが、単純にくだらんから出てきただけだ」

「……ああ、そういうことね。毎度のことだとは聞いているけれど」

 

 毎度のこと? と疑問に思った瞬間に響く轟音と伝わる魔力の波動。すごいな僕、唐突にバトル漫画の住人になったみたいだ。軌道修正して欲しい。

 ともかくこの先に見える大扉の方から音がしたということは、既に誰彼かは集まっていて、手の出るような諍いも起こっているということだろう。いやぁ、若いっていいねぇ(皮肉)。

 

「まったく、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

「かと言って、このままここで時間を潰すのも芸がないわ」

 

 呆れたように肩を竦めつつ、部長は扉に向かい始めた。むぅ……これ着いていかなきゃなんだけど、向こうから感じる気配が明らか僕より強いからなぁ。警鐘が鳴らないから大したことはないんだろうけど、ちょっとした準備したいというか。闇討ちの。

 

「…………」

 

 そんな僕を不思議に思ったのか、紫色の双眸を一瞬こちらに向け、すぐに部長の後を追った。……なんだろう、知らないところで有名にでもなったか?

 まあそんなことを気にしても仕方ねぇ。すぐさま考えを纏めて朱乃サンに声を掛ける。

 

「朱乃サン、朱乃サン」

「ええ、例の結界ですわね。ギャスパーくん」

「ひぅ!? 時間停止しかしませんからねぇ!?」

 

 うーん完璧な人選! 八重垣氏は戸惑ってるけど他の面々は察したのかジト目である!

 各々が能力の準備をしながら部長の背後に着く。眼前に広がる光景は、元は豪華な大広間だったんだなという感じの、めためたに破壊し尽くされた惨状であった。

 その中心を陣取ってるのは、方や物々しい魔物や悪魔を引き連れたタトゥーだらけの半裸ヤンキー。方やヒトの見た目はしてる悪魔を引き連れた長髪の女性悪魔。あの二人が喧嘩してるってことなんだなぁ。あらあらまぁまぁ、武器まで持ち出すなんて……

 

「はーひっでぇ、品性の欠片もねーや」

 

 グリン、と両陣営の視線が向いた。あ、しまった。つい思ったことを。

 

「……聞き間違いか? 何処の雑魚がほざきやがった?」

「言われてるわよゼファードル。品性の欠片もないですって。あなたを簡潔に表現した良い言葉ね」

「ハッ! 言ってろ、クソアマ! だがてめぇは後まわしだ。……おい、どこの誰だ? 今なら半殺しで済ませてやる」

 

 うーんまっずい(棒)。殺意に満ち溢れた目でこちら側の方を睨んでますわ。これはもう手を出すしかないですよね部長!?

 

「…………はぁ。怪我はさせないこと。いい?」

「わーい! じゃあ虚飾」

『Vanity:Makeup Devil!!』

 

 バシュン! と音を立てながら9枚の装甲板がゼファードルと呼ばれた悪魔にまとわりつき、鎧を形成する。そして、

 

「装填:9、重力」『Ignition Boost!!』

「ガッ!!!!?」

 

 ドン!! と床に這いつくばった。

 

「はい、僕が言いましたよ床ペロ悪魔様。いやぁ、半殺しなんて言われたから怖くなっちゃいましたよ。なので挨拶がわりの拘束具です。勘弁してくださいね?」

「がァ……アアアア!!!!」

「叫んでも無駄ァ、下手に動けば重力に任せて地表に真っ逆さまですよ? だから、はい。あなた方も自分の主が大事なら手出しをしないことですね」

 

 まさに僕に襲いかかろうとした眷属と思わしき悪魔達の動きを牽制させつつ、今の間に自分の鎧も形成していく。いつもの積層装甲形態……であるのだが、空気がピリついた感じがある。なるほど、意匠は『赤龍帝の鎧』に似てるらしいもんな。

 

「別にどんなところでドンパチやってようがどうでもいいですが、僕の上司殿の迷惑になるなら話は別ですよ。…………半殺しにされそうだったからこっちを先に拘束しましたけど、実際先に手を出したのどっちなんです?」

 

 睨むように眼鏡の女性悪魔の方に視線を向けると、今度はそっちから敵意が飛んできた。やだなー、質問してるだけじゃん?

 

「先に事を起こしたのはゼファードル・グラシャラボラスの方だ。アガレス家の姫シーグヴァイラに対して『開通式をしてやる』といった言葉をぶつけた所から両者の衝突が始まった」

「ああ、ありがとうございます。えーっと、サイラオーグ様?」

「様付けはいらない。……リアスの眷属に赤龍帝が加わったと聞いていたが」

「まあ、はい。僕ですね」

 

 ガッカリさせてそうだな、と申し訳なさを感じつつ。サイラオーグ様からの情報の提供に感謝する。発端もコレ、血の気も多そうなのもコレとなれば手加減もいらない。

 

「セットNo.4」

『Frame No.4:Pride!』

 

 『傲慢』の試運転に丁度いい、かな?

 

「『私情塗れの異単審問(イリーガル・スケーラー)』」

『Pride:Inequality Scale!!』

 

 宣言と共に審判。判決は有罪である。一瞬ビクンと身体を震わせたのを確認して装甲を剥いでやれば……そこには白目を剥いて気絶してる半裸の悪魔がいるだけでしたとさ。

 

 

◆◆◆

 

 

「先程はありがとうございました」

 

 グラシャラボラス家の次期当主だったらしい先程の男が医務室か何かに連れていかれたあと、すぐさまスタッフによって修復が始められた。

 ああ、魔力ってほんと便利ね……とポケ〜と眺めていたら、唐突に声を掛けられた。先程の眼鏡の悪魔様である。

 

「あ、いえ。お礼をされるほどのことではありません、アガレス様」

 

 そう、お礼を言われることではないのだ。迂闊に声を出してしまったのが運の尽き。……いや、迂闊というか、あの戦闘狂の教えを忠実に守った結果ではあるのだが。これはたしかに使えそうなので、ちゃんと場面を見極めて使っていこうと思う。

 

「様付けは必要ありません。私達は、大事なビジネスパートナーでしょう?」

「ビジネスパートナー……???」

 

 はて、そんな事実あったかしらん? 僕はアガレス様に会うのは初めてだし、部長の方に視線をやればこっちもこっちで本当に分からないのかめちゃくちゃハテナを浮かべている。レアな表情だ、脳内に焼き付け焼き付け……。

 ともかく、そんなアガレス様と共同で何かをするなんて話は覚えが…………覚え、が…………。

 

「…………幻聴の類かと思ってたんですけれど、大公様が自分のロボアニメ案に食い付いたの、マジなんですか?」

「本当です。ロボットアニメを嗜む者として、いつかはこの手であの傑作たちに負けない作品を……と思っていましたが、こうも早く機会に恵まれるとは」

 

 ブルブルと感極まった様子に僕は困惑を隠しきれない。アガレス家って、もしかしてロボットアニメが好きな一族だったりするのかしらん?

 

「ちなみに、あなたは好きな作品はあるのかしら?」

「あ、アニメですとやはり機動騎士ダンガムQQです。機体の名前モチーフが天使なのはいただけませんが、それでもあのスタイリッシュさ、かっこよさには抗えません」

「ええ、分かるわ。いい趣味してるわね、これなら期待が持てるというもの」

 

 うんうんと深く頷く様子を見て僕は内心で冷や汗を流した。彼女は、重度のダノタ(ダンガムオタクの意)だ……いやもしかしたらダノタだけではないかもしれないけれど、下手な発言は死を招きかねん。警鐘もそうだそうだとリンゴン鳴っている……!

 

「故に、故に。絶対に成功させましょう。たしかにアラだらけでそのままだと見れたものにはならないかもしれないけれど、プロと話を詰めていけば今期の覇権は私たちのもの。それだけの可能性をあなたの案……『ソード・ブレイカーズ』からは感じたわ」

「は、ははは……」

 

 深夜テンションで思いついた黒歴史半の走り書きについて語らないでくれ!! と言うこともできず。助けて、という無言のSOSは見て見ぬふりをされましたとさ。ちくしょう、後で覚えてろよ上司殿……。




エサを与えてしまうからこうなる。

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