兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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原作からの変更点:ソーナ・シトリーの夢の深掘り(という名の捏造)


その14

 

「ギャハハハハハッ!!! ざまァ見晒せ老害共ォ!!!」

 

 会合が終わり、幾つかの周知事項を挟んで解散となり。会場を後にした僕はずっと我慢していた爆笑をようやっと表に噴出させた。いやァ実にスッキリした!

 部長と八重垣氏以外ドン引きしているが、それでもこの感情の昂りは抑えきれない。部長はともかく八重垣氏は……まあしてやられた側だからね、同じようにスッキリしているのだろうぜ。

 

「それにしても、イッセー君の暴走はともかく、部長の将来の夢に対して、なんの反応も無かったのは何故なんでしょう? それをする気力すらイッセー君に奪われた、というわけではなさそうですし」

「それだけイッセーの話をしっかりと聞いていた、ということよ朱乃。先にこの子が暴れてなかったら、ただの夢物語と一蹴されてたことでしょうね」

 

 ぐりん、と一同の視線がこちらに向く。あはは……いやだなぁ、僕がそれを理解してるなんてこと……まァ、あるんだケド。

 

「『今までの悪魔の立場に胡座かいた商売はできませんよ〜』って言った上での、グレモリー家次期当主の発言だったから夢物語じゃなくなったんスよ」

 

 そう言うと僕より古参の面々は理解したのか、えげつないモノでも見るかのように部長と僕を半目で睨んできた。なんだよぅ、この絵図描いたの僕らだけじゃないんだぞ……多分。

 しかし比較的転生したばかりのアーシア、先日転生したばかりの八重垣氏はちんぷんかんぷんだそうで、頭にハテナを浮かべまくっていた。

 

「うぅん……話の流れから察するに、グレモリー家は商売が上手だから、ってことだとは思うんだけれど……」

「八重垣氏大正解、でもちょっと足りない。グレモリー家は、人間社会の方でも大きく商売を成功させてる一族なんですよ」

 

 1番有名なのは宿泊事業だっけ? 高級ホテルを世界展開してるってのはうっすら聞いてたし、不動産業もしてると聞いた。部長も部長で新しい事業を開拓するのに余念が無く。

 

「つまり、これから悪魔のネームバリューを排した商売も考えなきゃいけないって認識を植え付けた上で、それを既に実行しているグレモリー家。これを夢物語とは……思えませんわなァ?」

「え、えげつなぁ……師匠が目を付けるわけだよ……」

「ちなみに天使相手への商売には転用できんだろバァ〜カ!! などと言われた場合、既に飲食事業で教会関係者を雇い入れてる話を持ち出す予定でした。叩き潰す前に潰れちゃったもんだから……まったく、消化不良なことこの上ないです」

「本当よね、もう少し殴り甲斐のあるサンドバッグだと思っていたのに」

「リアス……もしかしなくても相当、」

 

 思わず素の出た朱乃サンに、キラキラ弾ける笑顔を浮かべる上司殿。ドSの朱乃サンを後ろに引かせるなんて相当ぞ?

 

「ええ。私。相当怒っているわ。だって、ね?」

 

 そうもならァな……だって支取会長って部長の親友なワケでしょ? それが的はずれな嘲笑と例の件でどの面下げてって感じでそらァ怒りますわな。

 

「かと言ってあからさまに味方しても角が立つわ。だからそういうことをしても不思議ではないだろうイッセーには精一杯暴れてもらった、ということ。己の戦いを邪魔されて大いに暴れた赤龍帝に憑かれた悪魔ですもの、そういうことしてもおかしくはないわよね? ……後で一緒に、お母様に頭下げに行きましょうね」

「ひーん、課題増やされそーう!」

 

 えぐえぐと嘘泣きをして場を和ませる。あえて締まらない空気を作っていると、悪魔の集団が近付いてくる気配がした。シトリー様ご一行である。

 

「あらソーナ、先に帰ったものだとばかり」

「全く……あんな状況になって帰るわけがないでしょうに」

「いい余興になったでしょう?」

 

 そうかなぁ、そうなのかなぁ……? と首を傾げていると、部長の背後にサッと隠れた僕の方にも視線を向けてきた。うっ……なんだよぅ。責めてる感じの視線じゃないケド、居心地がすごい悪いよぅ。

 

「兵藤くん、質問があります」

「会長の本来の意図を開示しなかったことですか?」

「……心でも読める神器でも持っているのかと疑いたくなりますね」

「残念、警鐘がある(カンがいい)だけです」

 

 実際のところ、僕と部長が考えてたことを会長が考えてなかったワケではなかろうけど、本題ではなかったと思う。例えるなら……本命を徹すための一手?

 

「だけどソレを指摘するのは野暮天もいいところでしょう。確かに僕は、会長に対する嘲笑にキレました。だけどさっきも言った通り、覚悟の上で宣言した会長に対する無礼でもありました。だからせめて自分の考えの範疇で、会長の夢はおかしなところないよね? という話で収めました。まぁ……その、会長には負い目もありますので。嘘、ついちゃったし」

 

 申し訳なさそうに頭を下げると、すぐに思い当たったのかバツの悪い表情を浮かべた。

 

「いえ、あれは私が、」

()()()コレでチャラにしてください。お互いに負い目無しということで。それに僕、ちょっと楽しみなんですよ。会長達とレーティングゲームするの!」

「!」

 

 先程の、幾つかの周知事項とはコレのこと。6名集まった若手悪魔同士でレーティングゲームを行うことと、グレモリーの最初のマッチアップがシトリーということ。

 

「以前会長が、僕らとライザー氏とのレーティングゲームの映像を確認したと聞いて、多分部長のことが心配だっただけじゃなくて、情報収集してたんじゃないかって思ってたんですよ。今日、その理由については解けたんですけど、そうなると楽しみになってきて」

「楽しみ……ですか?」

「はい。……だって会長、僕と違って戦略が得意そうだから」

 

 単に頭がいいから、というだけでなく。僕のフェニックス戦での立ち回りを『素晴らしい()()』と評したその視点で、そうなんだろうなと判断した。

 

「夢の一歩を踏み出すために、恐らく会長はたくさんの戦略と戦術を学んでいるはずです。それに僕がどこまで食らいつけるのか、ちょっと試してみたくなりまして。だからその……あんまり負い目を感じて欲しくないし、負い目を覚えたくもないんですよ」

「…………」

 

 多分会長はちょっと思ってるんじゃないかなって。あの時僕を問い詰めたせいで、ちょっと僕が病んじゃったんじゃないかって。それは全く違うんだけれど、会長の視点からだとそう思っても仕方がないんじゃないかなって。

 

「……そう、ですか」

 

 仕方の無いものを見るように、少し会長が笑った。

 

「なら、手打ちとするには少し足りませんね。兵藤くんの思う、私の考えというのを教えてもらわないと」

「えっ? いや、あの……」

「言いたくなければ構いませんよ、私は()()しません」

「あ、あの時の焼き増しですかァ!?」

 

 困ったなぁ、言ってもいいし間違ってる気もしないけれど、どこまで話したモンか……。匙クンもすげぇ目で見てくるしなァ……。

 

「せめて、その……場所を移しません?」

 

 と、言うことで。帰りの列車にシトリーさんご一行を乗せることになったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

「じゃあ、改めまして……」

 

 聞きたい人はこの車両に集まってね〜と小声で周知したのに、みんなしっかり聞きたいのか会議室のような車両の席がまあまあ埋まってやがる……うぅ、正直さっきよりも緊張する……。

 

「まず、会長が夢として宣言した、分け隔てなく門戸を開くレーティングゲームの学校を作るっていうのは、夢の第一歩って感じで、全部語ってる感じはしてないんです」

「そ、そうなんですか会長!?」

 

 驚く匙クンに、生徒会の面々。……真羅副会長はそうでもなさそうだな。じゃあやっぱり間違ってないネ、うん。

 

「そして前提の話……おそらくですが会長、あなた僕が話したことと同じようなことを考えてたンだと思うんですよ。どうです?」

「はい、その通り。冥界には特別、目を見張るような産業がありません。医療に関しては、手前味噌ではありますが誇れる部分だとも思っています。が、それも『悪魔』の名が付くとどこまで通用させられるか……」

 

 そういえばシトリー領は医療が発展してんだわね、以前セラフォルー記念病院に入院してたから勉強したよ。……ン? そういや、フェニックスの涙の件は、

 

「大いに噛ませてもらってます。有意義な時間だった、と父が笑顔を見せていたのが記憶に新しいです」

「そ、そうでしたかァ……」

 

 自分の上司の方に視線をやれば、得意そうにフフンと笑っている。あらまぁ身内贔屓がすごいことで……。

 

「えー、話を戻しまして。となると、あなたはこう思ったはずです。『レーティングゲームのことなら、話を通しやすくなるだろう』と」

「…………」

 

 無言で続きを促される。うぅ……確信はあるのに間違ってたらどうしようって考えが過ぎるのは僕が小心者だからか?

 

「広く門戸を開かれたレーティングゲームの学校……こう聞いて、少なからず何人かはこう思ったはずですし、その疑問を会長自身が感じているはずです。なんで普通に学校を建てると言わないんだ? あまりにも用途が限定過ぎでは?」

 

 つまり、そこが答えだろうと僕は睨んだ。

 

「僕は冥界の教育事情に詳しくありません。ですが、各々の領毎に特色……いえ、偏りがあるんだろうなと想像してます。支取会長……あなた、冥界の教育を抜本的に改革するつもりだったりしませんか?」

「そこを夢にできるほど、私にはまだ力はありません」

 

 それもう答えじゃん、となった。ようやっと胃をキュッと締め付けていた緊張の糸が解けたので良しとする。

 

「『悪魔の駒』のお陰もあるのでしょう。悪魔社会にはそれまでの悪魔とは異なった考え方が入ってきて、それまでの差別や悪い風習などが緩和されていきました。……されど、根本から取り除くにはまだ足りない。それは今日の会合でも感じ取れたと思います」

 

 まあ、そうだよな。明らかあの悪魔共、僕らを侮ってたもんなぁ……。

 

「レーティングゲームは平等でなければならない……とは現四大魔王様達が決めたことですが、実情はあの通り。であるのに、差別や習わしを覆す手段が、現状レーティングゲームで勝利していくしかない。そもそも門戸が開かれていないのに、これではとんだ欺瞞です。上級悪魔になれるかもしれないという餌をぶら下げてその実、現状の体制ではそれこそ夢物語なのです」

 

 熱と、怒りを滲ませつつ、それでも冷えた声で会長は続ける。

 

「この根が深い問題を解決するには、教育に手を入れないといけないと思いました。年々低下する出生率の関係で、親は惜しみなく子の教育に資産を注ぎ込み、そして子に甘くなります。……つまり子供から意識を変えていけば、親の考えを変えれるかもしれない。……日本の教育制度を学び、それを冥界に合わせた形で普及させていけば、いずれは、と」

 

 なるほど、だが……

 

「それを通す程、あの老が……失礼。上級悪魔の皆様方はめくらではないでしょうね」

「ええ。だからレーティングゲームの学校を開くのはその前段階。レーティングゲームの門戸を本当の意味で拡げつつ、冥界の教育制度に手を入れる一歩として。三勢力で手を組んだ以上、どこかでゲームの需要が増え、その教育機関も必要になるだろうと考えての一手です。…………まさか、そこまで思考が辿り着いていないとまでは思いませんでした」

「ちょっと彼らの俗物具合を甘く見てましたね。……まぁ他にも理由はあるでしょうけれど」

 

 会長は王の駒の事を知らないだろうけど、なんか疚しいことがあるんだろうなぐらいは察してるだろう。だが、まさかここまで頑なにディフェンスする程のこととは思ってなかったに違いない。

 

「だから兵藤くん、ありがとうございます」

「いえ、僕はそう大層なことは、」

 

 そう返しても会長は首を振るばかり。

 

「ある意味で、あの方々の言っていた言葉は本当でした。夢見る乙女だと笑われるのも仕方がありません。いくら彼らがこんな風土を定着させた張本人達であっても、レーティングゲームを絡めた話であれば聞いてくれると。そう楽観視した自分の甘さを恥じるばかりです」

「いや、アレは仕方ありませんよ……まさかそこまで考え足りてないとは……」

 

 冥界を発展させるにしても、悪巧みするにしても、ちょっとお粗末だし……。

 

「第一あの方々……特に大王派の悪魔の皆さんは気がついてるんスかねぇ……。悪魔って今出生率がめちゃ低いでしょ? だから種を存続させるのに悪魔の駒を使ってるわけで……。それでも盲目的に純血だなんだと拘った結果なんじゃないです? 出生率に影響出てるのって。割と悪魔って種族、アジュカ・ベルゼブブ様という善意の飼育員に飼われた絶滅危惧種だと思うんですけれど。いや、気が付いてたら現魔王に楯突こうと思わないだろうから…………え、じゃああの方々って消費するしか脳の無い糞袋だったり……」

「ストップストップストップ!! 危ない話になりかけてるわよ!!」

 

 ハッ! 思わず思ったことをぶちまけてしまった。向けられる視線が『お前マジか……』一色になってらァ!! 鉄面皮の会長も口元ヒクヒクさせててまじウケる、ウケねぇ。

 

「それに、やっぱお礼言われる事じゃねーっス。色々理由を並べましたけど、結局……」

 

 チラリ、と視線を匙クンに向ける。胡乱な目を向けられるが、笑って返す。

 

「ムカついたから怒ったんですよ。知り合いの夢を笑われてムッときて、友達が一蹴されてカチンと来て。だから、その程度の話です」

「兵藤……」

「ほれ、しゃんとしな。闘志、見せたんだろ? 最高にかっこよかったぜ、匙元士郎」

 

 そう、結局のところそう。ドライグがちょっと前に言ったように。我儘に、誰彼構わず噛み付いて、やりたいように生きる。そういう生き物になると……僕は決めたのだ。

 




純血悪魔を〜、と言う割に当人達が貢献してる図を原作であまり感じられないので、年経ると悪魔と言えど生殖能力に難が出てくるのでは? と思いましたが流石にアレなので言及はしませんでした。……原作の上級悪魔の皆さんは、おっぱいドラゴンとそれを産業として確立させたグレモリー家に感謝した方がいい。

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