ウォーカー氏にお前を殺す宣言(無自覚)された翌日……というか日付が変わった頃、半ば連行される形でグレモリー領を後にすることとなった。部長に報告は一応したが、可哀想なものを見る目だったのが印象的だった。『お互い、助からないのね……』的サムシングだ。なんでお互い助からないんです???
『後半で俺も面倒を見るし、そもそも弟子と言っていいクレーリアが付く。安心しろ、全員道連れだ』
『安心できる要素is何処』
そういえばそうだった。講師役には黒幕系先公とは別にクレーリアさんと、眷属入りしたとはいえ訓練するまでもなく極まってる正臣さんがいる。みんなで一緒に死ねるなら怖くないってか? あまり笑えない。
ともあれ、あれよあれよと連れていかれた先はウォーカー氏の拠点であった。……はずなんだけど、鬱蒼と茂ったジャングルの中にポツンと一軒家があったような気がするんだけど、それが何処にも見当たらない。
「あれは持ち運びできるタイプの小屋でな。以前野生化しかけた時にウォーレンがプレゼントとしてくれたものだ」
「野生化て……」
変なところでファンタジーみを感じる……というかドラグ・ソボールに出てくるミニテクガチャポンみたいな感じで羨ましいとすら思うが、経緯が実にアレだよなぁ。まあ野生化したら多分手が付けられなくなるんだろうから、グッジョブウォーレンと言う他ない。
「それで、僕はこれから一体何を……」
「……ふむ、お前のようなヤツなら先に説明しておいた方がいいな。やることは大きく2つ。基礎能力の向上と、スイッチの切り替えだ。お前に俺の術理を身につけさせるのも手だが、土台がなっていないからな」
「術理? 武の極み的な……?」
「いいや、武術に限った話ではない。戦う時の心構え、アドバイスのようなものだ。『剣はこう使う』『拳はこう打つ』程度の話のな」
ぜってぇそんなことは無いだろ、と警鐘の反応も合わせて思う。いや、本人は心底そんな風に思ってるだろうことはそうなんだろうけれど……。
ま、まぁ、僕はまだそれを覚えるに足る身体をしてないってことだから今は気にしないでおこう。
「兵藤一誠、お前の戦闘者としての強みを俺なりに分解してみた。お前には大きく分けて4つの要素がある」
そう言って彼は懐からノートを取り出し、何事かを書き込み、僕に見せてくる。……悪魔文字だな、読みづれぇ。えーと、なになに?
「『赤龍帝』、『痛みへの耐性』、『戦闘準備』、『土壇場の冴え』……」
「総評としては、打たれ強い前線支援家ってなところか。妙な
「カリスマぁ??? 1番僕から遠そうな単語じゃん」
「何も偉大さだけがそれではない。お前のは……そうだな、『アイツが頑張ってるんだ、自分も頑張らなければ』という類のものだな」
一歩間違えたら味方を地獄に連れてくタイプの男だよ、と付け加えられてゲンナリする。まるきり正しいとは思わないけれど、心当たりは……まあ、無くはない、うん。
「ちなみに弱みは?」
「強みと表裏一体だ」
そう言ってウォーカー氏はノートにサラサラと記入していく。
『赤龍帝』
強み→能力の底上げ、サポート能力
弱み→持久力の低下、精神汚染
『痛みへの耐性』
強み→肉壁適性、パフォーマンス維持
弱み→脱落可能性増大、損傷時の誤った対処
『戦闘準備』
強み→戦術等の構築、物量作戦
弱み→奇襲耐性低下、脱落時のチーム機能不全
『土壇場の冴え』
強み→逆転の一手、集中力アップ
弱み→劣勢時のみ機能、失敗時のリスク
「……耐久面にかなり難がある?」
「というより、置物として優秀な癖して耐久を減らし続ける挙動が問題だ。自分のできることは把握してるのに、自分が戦線離脱した場合について思い至れないのもまずい。アザゼルが自己認識が歪んでいると評したのはその辺のこともあるのだろう。魔法の杖を近接戦闘に用いてるような状態なのが今のお前だ。そしてその杖がなまじっか頑丈で戦えてしまうのが認知の歪みなのだろう」
「んぁー……」
真面目に詰められると流石の僕もちとヘコむ。自分なりに考えて戦ってきたし、実力はともかく自分に合った戦い方だとは思ってたので、自信が少し無くなってくる。
「落ち込まれても困るな。第一こういうことを生業にし始めたのは今年の初めからなのだろう? それを考慮すれば出来すぎてるまである。戦いに必要な才能……腕力だの魔力だのの才能はお前には無い。だが、戦い
「お、おぉ…………」
な、なんかこう……照れるな。欲しかった才能じゃあないけれど、それでもその道のプロが僕のことを褒めてくれてるというのは嬉しくある。
「では、それを踏まえてこれから行うことを説明する。日中はお前を徹底的に追い込む。余分な策を考える余裕を殺し、お前が力尽きるまで俺
「処刑宣告じゃないですか!?」
「そして夜間は座学の時間だ。占星術の教本を読むでもいいし、レーティングゲームの教本を読むでもいい。日中での出来事をレポートかなんかに書き起すでもいい。但し、最低2つは新しい策や戦術を思いつけ。それができるまで就寝は許さん」
「えらい無茶言いますね!?」
「いいや、お前ならできる。こと戦闘に於いて俺より詳しいヤツはそうはおらんぞ」
「そこは欠片も疑っちゃいないですがねぇ……!!」
しかし、そんなサウナと水風呂でととのう…みたいな訓練なのか。てっきり24時間鬼ごっこ……まで想像してたんだけれど。
「スイッチの切り替え、と言っただろう? お前の根暗さ、悲観的な思考は備えの面ではプラスに働くが、戦闘中だと足を引っ張る。負けのビジョンしか見てないヤツが、いつまでも勝ちを拾えると思うか?」
「う、うぐぅ……」
「なので昼間は思考を殺し、夜は思考を巡らせるという両極端な環境を作る。それが問題なくできるようになれば、今度は思考のオンオフを意識的に切り替えられるようにする。ゲーム中、直接戦闘の合間でだけ陰鬱な思考を回せられるようになるのが完成系だ。……本当ならお前を完全に後方支援として形成し直してもいいんだろうがな、お前の性には合わんはずだ。面倒な注文をつけてくれやがるな、このドラゴンめ」
「罵倒なんですソレ……?」
第三者にドラゴンだと言われると、最近なんだか妙に嬉しくなってくるんだよね、なんなんだろうね。ドライグと警鐘が満更でもないのも不思議である。
「ところで、『達』ってどういうことです?」
「餅は餅屋、とても良い言い回しだな。実はその道のプロを呼んでいる。来てくれ、タンニーン殿」
パン! と手を叩くウォーカー氏に呼応するように、遠い空から何かが飛来してくる…………。それは大きな身体で、大きな双角、翼を持つ怪獣。それは紛うことなきドラゴンのそれだ。
飛来したドラゴンは、地響きと共に眼前に降り立つ。風圧で吹き飛ばされそうになるも、重力への倍加で何とか踏みとどまる。
「頼みを引き受けてくれて感謝する、タンニーン殿。まさか貴殿も赤龍帝の稽古をつけるとは思ってもいなかっただろうが」
「構わん。サーゼクスの頼みでもあったし……何より、ウォーレン・マリソンの主には借りがある。今のうちに消化して、せいぜい悔しがる顔を見せてもらいたいものだ。……それで、」
ギロリ、と鋭い双眸で射抜かれる。死を感じないから怖くはないけれど……それでも生物として圧倒的に格上な相手から睨まれると、圧は感じて立ち竦んでしまう。それに、タンニーンって名前にも聞き覚えあるし…………。
「久しいな、ドライグ。どうにも、またやんちゃをしているそうじゃないか」
『ご挨拶だな、俺はただ後進育成に精を出してるに過ぎん。ともあれいつぶりだろうな、タンニーン』
二天龍のドライグと知己な感じで話してるってことは、大層強いドラゴンなのには変わりない。そしてタンニーンってことは……あれか? 聖書に記載のあった、アレ?
「紹介しよう。こちら、『
『かつて五大龍王が六大龍王と呼ばれてた頃の龍王の一角。隕石にも匹敵するそのブレスには手を焼かされた。…………だが何をとち狂ったのかは知らんが、こいつは悪魔に転生した。元・龍王というヤツだ』
「オツムの足りない
『そう思っていたのだがな、案外今は悪くない。お前のように楽しくやっているよ』
「……丸くなったんだか尖ったんだか分からんな、お前」
会話がどこか遠くに聞こえる……というかやっぱ相当なビッグネームじゃねぇか!? もっと怖いのが、龍王と呼ばれるドラゴンを転生させられる力量を持つ悪魔がいることも恐ろしい! 警鐘的に、魔王様方の配下って感じもしないしね!!
「えー……あー…………はい(諦め)。初めましてタンニーン様、自分は兵藤一誠。リアス・グレモリー様の『兵士』を担当してます、今代の赤龍帝です。よろしくお願いします」
『畏まる相手でもないと思うがな』
「馬鹿野郎このクソトカゲぶち殺すぞ!! この方、最上級悪魔!! 僕の上司殿より爵位が上!! 魔王様程じゃないにせよ超上司!!」
『クソトカゲ言うな殺すぞノータリン。第一貴様、魔王が身内になることが確定している上に、別な魔王が後見人として付いておろうが。今更最上級悪魔程度の位で怯えていい立場ではないだろうに』
「…………なるほど、こういう手合いか。ドライグが絆されるわけだ」
今のやり取りを見てどこが!? と思ったけど、プライドの塊であるドラゴン相手にトカゲ呼ばわりして、表面上でしか抗議してない図、というのはかなり異様に映ったらしい。そらそうだわな。僕も僕以外がドライグのことクソトカゲって言ったら半殺しする自信がある。
「ともあれドライグの言う通り、そう固くならんでもいい。ドライグを宿したお前に畏まられると寒気がしてかなわん」
「は、はい」
まあ、ですよね。ドライグのことを知ってると余計に僕とのギャップで気持ち悪くなりそうなのは想像にかたくない。
「しかしショウ・ウォーカー。この少年に俺の稽古が必要なのか? この様子を見るに、ドライグで面倒を見れる範疇に思うのだが」
「それではいけない。いくら兵藤一誠に絆されようとも、あの龍はヒトと獣の境界を崩すことに疑問を覚えない怪物だ。この男はドラゴンでもあるが、ヒトである。故に、ドラゴンでありながら悪魔となった貴殿が適任であると愚考する。……あとはまあ、そもそも基礎能力が足りてない。となれば、」
「なるほど。ドラゴンの訓練は、元来から実戦方式。身体のないドライグでは限界があるならば……俺に白羽の矢が立つのは自然か」
どの程度まで扱けばいいんだろうな? と品定めする視線に冷や汗が止まらない。殺意はなくともうっかり死ぬんじゃなかろうか?
「死ぬことを許すほど、俺は甘くない。あらゆる手を使ってお前を死の淵から連れ戻してやる、何度でもな」
「死後の安寧も許しませんって言われた!!!」
「ウォーカー、地形はどの程度まで残せばいい?」
「木が1本でも残っていれば御の字だ。それを元手にコイツに復元させる」
「地形って意識しないと残らないものだっけ!?」
警鐘も警鐘で『がんばれ! がんばれ!』してるし、機嫌の良くないドライグも『タンニーンなら、まぁ……』みたいな雰囲気でこの流れに乗っかってるし!!
「では時間も惜しいことだから、始めよう。再度の通達だ、昼間は俺達でお前の余裕を殺すまで追い詰める。生き残れ、以上だ」
「た、タンマ」
「はい、よーいスタート」
「う、うぎゃぁぁぁあああああっっっ!!!!?」
◆◆◆
[Dieジェスト]
「ほーら、避けてばっかりだと訓練にならんぞ」
「避けないと死ぬんスよ!? アンタ自分のブレスが隕石級なの忘れたんカウンターギフト!!!」
「ぬっ!? 小細工だけは歴戦の悪魔級だな。いいだろう、もう一段階ギアを上げていく」
「ヒィ!! 避けれるギリギリ攻めてきた!!?」
「俺も占星術を学び、俺なりに使えるように調整したぞ。名付けて占星剣術。空模様と攻めに向かう方角を調整することで、指定の位置に弱点を創り出す術理だ」
「まだ覚え切ってない僕を置いてけぼりに、なんか珍妙な技を作り出してる!?」
「とはいえ、所詮奇剣。極めても一発芸にしかならん」
「その一発芸で僕の脇腹吹っ飛んだんですケド!?(致命傷)」
「折れたァ!(腕) もうやだ攻撃通る気がしないんだけど!」
「折れてもなお殴り続けるその闘志は良し。……良し、なんだが。ちゃんと治るのか、それ?」
「ああ、治らないので切り捨てて複製ストックしてる腕に付け替えます。昨晩思いついたゾンビ戦法です!」
「俺が言うことじゃあないのだろうが、倫理観はどこにやったんだ……!?」
「今日の課題は…………なんだ、この『
「虚飾とギフトの合わせ技ですね。喰らいます?」
「ああ、試してみろ。………………何?」
「どうです、どうです? いい感じに奇襲性能と支援性能高いと思いません?」
「これを思いつく性根が恐ろしい。紙幣を紙屑にするかの如き蛮行だ」
「めっちゃ酷いこと言われてる!!」
「始めるまでは使いこなせなかった、憤怒の能力……行きます、先生!」
「ああ来い、兵藤一誠!」
「『
「くっ、ははは! 神器による底上げがあるとはいえ、いいオーラの塩梅だ! だが、まだまだ精進が足りん!」
「グゥッ、グルアァッ!!!!」
「……きっちり記憶が飛んでるぅ」
「禁手に至るまでは封印していた方が良さそうだな。お前から理性を奪うとろくなことにならん。…………ところで、なんだこの『冤罪星座占い』なる胡乱な文字列は」
「まず星座占いをして、使いたい運勢の紋章を虚飾かなんかで相手に押し付けます。あとは導いた運勢通りになるでしょう」
「まさかアザゼルも、運勢贋造に手を出すとは思うまい。よくもまあこんなのがポンポン思い浮かぶものだ」
「本当なら、幽霊的なのを取り憑かせた方が置換、見立てのノリが良くなるって警鐘は言ってんだけど、アテが無くて」
「情報を吸って増殖する電子妖精がいるんじゃなかったか?」
「あっ」
「初日からさァ! 何度も言ってるけどさァ!! その道の頂点共が徒党を組んで僕を襲うのどうかしてるってェ!!!」
「手加減をしている、お前は生きてる。それに何より、俺達は武器を持っていない。状況としてはトントンだろう」
「それでもしんどいと思うのなら、もっと鍛え上げることだな!」
「てめぇら武器無し縛りが縛りになってねェんだよ!! くそ、僕は生き残るぞ何としてもォォォオオオオッ!!」
◆◆◆
「てなワケで、ある程度順調です」
「右脚吹っ飛んだ状態で言われても説得力がねぇぞ」
やだ、適応力高過ぎ……。
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