兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

127 / 128
どーしてこうなった………!!?


その27

 

『キメッキメにキメたけどさァ、今頭ン中が凄いグロいよ!! 吐きそう!!』

『『『吐きそ〜!!』』』

『病んでない時のお前は本当に真面目が持続しないな!?』

 

 ドライグに怒られるがそれも無理からぬこと。人間普通に生きてりゃ、10匹分の感覚とか同時に頭に飛び込んで来ないて。いくらそれを処理する頭が10個あっても、管制してる人格が1つなせいで結局意味を成してない!

 

「人外コントするためだけに禁手化(バランス・ブレイク)したわけ? 随分と余裕ね!」

『こちとら大真面目に苦しんでるんだよォ! ……それに、』

 

 一時的に人間体以外の感覚を遮断し、神器を稼働させていく。僕の禁手(バランス・ブレイカー)は積層装甲の延長線上にあるらしい…………出力を除いて。

 

『事実余裕だ、もうお前に勝ちの目はない』

 

 空を覆い尽くす板、板、板。星の光を全て遮れるのではないかという物量が、天蓋となって現れた。

 

「な、なんっ…………」

『出力が無限になれば、物量も無限になる。単純な比例関係だ。僕の装甲板は1枚につき1回分の倍加と同等の力を持っていてね。つまりはそういうことだよ』

 

 それに、空に浮かべたのは見せプ用のほんの一部だ。ねずみ算が可愛く思えてくる程の装甲板が、今も影の中で増産されていく。……こりゃあ恐ろしい、こんな力を手に入れたら普通の人間は狂ってしまうだろうよ。

 

「さっきまで勝ちの目なくて焦ってたガキが偉っそうに……! ひよっこ相手なら、逃げるぐらいは楽しょ…………ッ!!?」

『僕それなりにオタクだからねぇ、アニメの悪役みたいになぶるようなこともするけどさァ』

 

 ガシャリガシャリと鉄が重なる音がする。鎧が擦れる音だ。発生元は鎧を纏う僕ではなく……黒歌サンの足元から。それは力を与えることなく、重さで相手を縛っていた。猫由来の機動力の高さを、ここで断つ。

 

『塩試合も上等ってコト。既に足は奪ってらァな? ……先に言っとくけど、足切断したって無駄。装甲の重さ以上に、重力そのものに力を掛けてるよ』

「こんの、バケモノが!!」

『最高の褒め言葉、どーも!』

 

 閉じていた視界を再接続、処理しきれない分は倍加によるスペックの底上げで強引に解決。見せ札の天蓋も含めて残りの装甲板の全てを龍の僕への強化に充てる。

 

『分け』『拡げ』『強化』

 

 強化を分配していき、それぞれの頭で大罪の色付けをしていく。『暴食』で防御を貫き、『色欲』で恐怖を煽り、『強欲』で火を灯していく。

 

『溜め』『留め』『照準』

 

 分配された力を、それぞれの口内で溜め、圧縮していく。『傲慢』で反動を抑制し、『憤怒』で威力の底上げをし、『嫉妬』で対象を設定する。

 

『重ね』『束ね……』

 

 鎧による拘束を強め、絶対に逃げられないように大地に縛り付ける。『怠惰』で運命にピン留めし、『虚飾』で全ての大罪能力の補強をする。

 

『無駄な破壊は必要ない、ただ目標のみを撃滅する。即興必殺、』

『大罪九重葬(ナインデッド・フルバースト)!!!』

 

 九つの砲塔から色とりどりの光が、放たれ、束ねられ、黒い光となって黒歌サンを呑み込む。……都合15秒、普通にゲロビ撃ってるだけなら100回蒸発しても飽き足らない火力だ。

 

「あ、あの……先輩、お姉さま吹き飛んでませんか……!?」

『だいじょーぶだいじょーぶ。イッセーくんその辺抜かりなく』

 

 事実、黒い光が晴れた先には、外見的には何も変化が無さそうな黒歌サンがいるだけであった。……少々怯えが見てとれるけれど必要経費必要経費。

 

「……あんた、一体何をしたの?」

 

 掻き毟るように胸に手を当てる彼女。……あの、緩く纏ってる黒い着物がさらにおはだけしてるのでやめて欲しい。都合10個分の視界を逸らす作業、結構大変なのよ。

 

『弱体化と、誠意を見せるため? これからのことを考えると、悪魔への転生は可逆な方がいいからさ、悪(・)魔(・)の(・)駒(・)を(・)消(・)し(・)飛(・)ば(・)し(・)た(・)』

 

 実の所、これに関しちゃ教会の信徒サン達の売り買いが発覚した時に考えてたことなんだケドね。これができそうな滅びの魔力だと命ごと持っていきそうで、どうしたものかと部長を頭を悩ませていたのよ。まさかはぐれ悪魔で実験するわけにもいかんしね、流石に倫理観が欠如し過ぎである。

 

『だけど、今の僕ならそれができると見た。ドライグからちょっと⬛︎⬛︎(とうか)の力が流れてきたからね、狙ったものだけを焼き付くし、生命維持に必要な部分を補填していく。そして上手くいった! どうよ、まさに悪魔でドラゴンな所業!!』

「それ、悪魔とかドラゴンってよりも、神(・)の(・)……」

『言うな、口に出すと⬛︎⬛︎が剥げる!!』

 

 ……⬛︎⬛︎? 今僕は何を言った? いや、今追求するとお⬛︎様(オーフィス)が余計なことをしかねん。

 

『まぁ元から悪魔だったりした場合は知らんがね、徐々に駒由来の悪魔の成分は霧散していくでしょう。ちょっとは胸のすく思い、するんじゃない?』

「……そういうのはね、自分の手でやるから意味があるのよ」

『ガハハ、違いねェ!!』

 

 だけど、余計なお世話をしてこその兵藤一誠ということで一つ。んー、実に気分晴れやか!

 

『さて、まだやる? まだやるなら今度はマジで一切合切吹き飛ばすよ。悪いケド、化物(ドラゴン)が『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を着込んでるようなモンなんだわ。油断でも、慢心でもなく、事実として僕は今のあなたに負けるビジョンは思い浮かばないや』

「どうやらそうみたいね……ツイてないにゃん、ただただアシストしただけじゃないの」

 

 言うや否や、彼女は煙幕ようなモヤを出現させ、美猴ごと自分を覆い隠す。……今なら全部見透せるけれど、これは僕相手じゃなくてそれ以外に対してだろう。僕は一応空気の読めるドラゴンである。

 

「兵藤一誠、今はまだ白音を預けておくにゃん。だが覚えておきなさい、もし白音が死ぬようなことがあれば……私の全力で、あんたを地獄に落としてやるわ」

『起こらないことに気を揉んでも仕方ないぜ、黒歌おねーサン?』

「アンタの姉じゃないわ、死ねッ!!!」

 

 割と本気で殺す気だったろう力の塊が龍の僕に当たり、ペチりと霧散する。……今の、魔力に仙術、あとまだ分からない力がいくつも混ぜられたミックス技だったな。……このアイデア、使えるね?

 

『そんじゃーねー、黒歌おねーサン。冥界は何時でも歓迎するよー。あと美猴サンは、水妖の方と豚の方のサインもよろしくお願いしまーす!』

「ありがとよファンボーイ! でもそういうのは闘戦勝仏のジジイにしときな! 次は俺っちも本気で戦えることを願ってるよい!」

「駄弁ってんじゃないわよ馬鹿共!! それじゃあね白音、お姉ちゃんは帰るけど頼る相手を間違えちゃダメだからね!!?」

「はい、お姉さまもお元気で」

 

 わちゃわちゃわーわーと言葉を投げつけ合いながら、テロ屋の二人は姿を消した。気配がこの場にないってことは、空間に穴でも空けて逃げてったか。…………それ使って拘束から逃れられたよな? と思うと、なんかやっぱり今回はぜーんぶ黒歌おねーサンの手のひらの上で転がされた気がするなぁ。

 

「お姉さまも、イッセー先輩には言われたくないと思いますが」

『顔に出てた? 人型の僕の方は鎧で隠れてるし、龍の僕の方はまるで表情分からないけれど』

「なんとなく、です。先輩は分かりやすいですから」

『そうか、そうなのか…………』

 

 仮にも策士系で売ってこうとしてるのに分かりやすいのは問題だ。もうちょっと考えを読まれないような対策をしなければ。

 

『ところでさ、どう? どう? 僕の『9枚目』と禁手! 待ちに待った大強化×2だよ!!』

「どうもこうも……ああ、中身に外見が追いついたんだな、としか」

『酷くない!?』『『『ひど〜い!!』』』

「残念だが当然、というやつです。それに……」

 

 そう言って小猫チャンは、ここ最近で1番の笑顔を浮かべて、こう言った。

 

「どれだけ見た目が変わっても、イッセー先輩は残酷だけど優しい、頼れる先輩です。何も変わってないですよ」

『……さよか、目ん玉腐ってんじゃないの』

「照れ隠しの仕方が下手なのも変わってないですね」

『うるせーやい』

 

 さー帰ろ、もう帰ろ。早いとこ部長とかに報告しないと後が怖いや。デカブツのままで帰るわけにもいかないから、ドラゴンの方だけ自分の影に沈めていく。

 

「そういえば一つ気になったんですが……」

『ん?』

「先程の、お姉さまへの恩赦の件……よく魔王さま相手に話をつけられましたね。そんな時間があったのかというのもそうですが、許可が出たことが驚きで」

『あー…………うん。許可が出たというか、こ(・)れ(・)か(・)ら(・)取りに行くというか』

「…………これから?」

 

 いや、違うんだって。一応その……警鐘でどの辺までなら通るかなっていうのを調べながら思い付きを形にしたから……その、未来の話なんだよ、うん。

 

『それに今のやり取り、ベルゼブブ様も聞いてたと思うから、帳尻合わせのために話を纏めてるんじゃないかって……あ、警鐘もそう言ってる』

「ま、まさか…………口から出まかせ、ってことですか……!?」

『未来! 未来の話だから!!』

 

 信じられないものを見る視線で僕を射抜きながら、疲れやら何やらを吐き出すように、小猫チャンは言った。

 

「……先輩のそういうところは、本当にどうかしてると思います」

『はい……すんません』

 

 何も言い返せなかったよね、うん!

 

 

◆◆◆

 

 

 …………今回の顛末(オチ)、というか諸々の名前について。

 

「『魔天の九罪龍(ナインデッド・ドラゴン):兵藤一誠』クンです、よろしくお願いします」

「また突飛な変化をしたな……興味を通り越して最早恐ろしいよ俺は」

「えへ」

 

 神器が禁手化したついでにこんなんなりました、とアザゼル先生に報告したら、最初はワクワクしながら聞いてたのに、今ではすげぇ頭痛そうにしてる。別にいいじゃんねぇ、変身したって。

 

「それで、その名前は自分で付けたのか?」

「いえ、今回ばかりはドライグも口を出してきまして。『纏罪の九頭悪魔龍(ナインヘッズ・デビル・ドラゴン)』にしようと思ってたんですけど、猛反対を喰らいまして」

 

 いやもう本当にうるさかった。俺に連なるドラゴンなのだから『天』を名乗れだの、シンプルにしろだの、かっこ悪いだの……あんまりにも言いたい放題されて普通に傷付いたよね、ウン。傷付いたのでこれからも赤龍帝関連のサジェストを汚染していく所存である。

 

「そんでもって、完全に龍として存在が確立してしまったもんで、影からドラゴンの頭出せるようになりました」

『『『こんちゃ〜!』』』

「俺はかつて見た事ねぇよ、こんな面白い生物。褒めてるし貶してるからな?」

「僕もそう思います、貶されても仕方ねぇや」

『『『うんうん』』』

 

 ただこのドラゴンも『僕』なので、別存在として僕の裏側に居着いてるガン子とは違って一人芝居である。流石に僕の精神世界の住人が増えることはなくて一安心だ。

 

「しかし、大元のドラゴン体を出そうと思うと今の僕では力不足なので、装甲板の『9枚目』が必要になります。こいつは籠手の禁手とは別枠なので、暫くは二枚目の禁手みたいな扱いにしようと思います」

「なるほどな。またデータを取らせてくれ、例の研究に活かせる部分があるかもしれないからな」

「『『『あいあいさー!』』』」

 

 そんでもって、肝心の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』と禁手『赤龍帝の鎧』……のようなもののこと。

 

「多分亜種の禁手化をしてしまったと思います。ドライグから聞いた『赤龍帝の鎧』の効果とは違ったことになってまして」

「聞かせてくれ」

 

 その要請に頷き、相違点を説明していく。

 

「まず、自分自身を直接倍加していくわけではないようです。装甲板の形で倍加のストックを行い、それをその場その場に応じて強化や譲渡に振り分けていく運用になります。恐らく、僕の身体が本来の鎧による強化に耐えられないための調整なんだと思います」

 

 しかし体感だが、ドラゴン体の方でなら本来の鎧による強化にも十二分に耐えられると思う。これはドライグと警鐘も同じ見解だ。……もっと鍛えろとも言われたが。分かっとるわいクソトカゲめ。

 

「そして、常に譲渡のような形で運用する関係上、倍加強化による持続力も本来の鎧とは比べ物にならないでしょう。装甲板を強化に振った場合の持続時間は……何もせずで5分間。激しく動けばその分減っていきます」

「禁手そのものの制限時間はどうだ?」

「……多分、死にかけでもしない限りずっと維持できると思います。補足すると、起動も瞬時です。多分、『最善手(インヴェンション)』による神器の適応が理由とは思いますが」

「強化による負荷が常時掛からないのも理由の一つだろう。……本来の鎧の能力を考えると一長一短というところだが、お前が運用する分にはメリットしかないな」

 

 まあ、基本的に殴り殴られするよりは初見殺しでワンショットキル狙うからね、タイミングを狙うために身体に負荷掛からない方が僕には合ってらァな。

 

「以上の理由から、鎧を纏いはすれども『赤龍帝の鎧』と名乗るには微妙なところがあるので、別の名前を付けました。『赤龍帝の積甲工廠(ブーステッド・ギア・アーセナル)』、それが僕の禁手です」

 

 これは自分の苗字の『兵』にも掛かった、悪くない名前のように思う。アーセナルって『兵器庫』とかとも言うし、実際僕の腕に聖剣が収まってたり、装甲板を実質無限枚生産できること考えると正しいネーミングだ。ドライグは寝込んでたが、なんでや!?

 

「あとは……本来の鎧(スケイルメイル)への道が閉ざされたワケでもないみたいです。感覚としては、起動自体はできる、みたいな感覚です」

「だが、身体が持たないから安全装置が掛かっている?」

「ですです」

 

 もちろん、9枚目を使ってドラゴン形態を取れば使えないこともなさそうだが、現状では意味が薄い。図体も強さも十分だが、殴り合いに向かないからなデカすぎて……。

 

「とはいえ使えないままにはしません。白いのと戦おうと思ったら常に倍加してないと向こうの半減に追いつけないし、ドライグに面目が立たないですから」

「ならば訓練あるのみだな、任せろ兵藤一誠。それに耐えうる身体を作り上げてみせよう」

「どっから生えてきた戦闘狂!!?」

 

 急に戦闘狂が現れたせいで、最後に思いついたアイデアを相談することができなくなってしまった。仕方ない、これは自分でこっそり実験することにしよう。

 

 神器やドラゴン関連以外だと……小猫チャン関連は重要だな。一緒に記録しよう。

 まず、一部お手本を黒歌おねーサンに見せて貰ったことで、ちょっと仙術への理解が深まったらしい。生命力の操作と闘気の精度がすこぶる上達した、とは歩行者(ウォーカー)の弁である。

 

「けれど、私がお手本になってしまったせいで、ウォーカーさんも闘気を完全に修得したみたいで……」

「あの戦闘狂、まだ強くなんの……!?」

 

 まあ禁手になろうが勝てるビジョンの思い浮かばない戦闘狂はともかく、これで我々グレモリー眷属はヒーラーを3人体制で戦えるようになった。アーシアが傷を治し、欠損は僕が複製し、小猫チャンが失った生命力を補填する……パーフェクト、まさにパーフェクト救急チームだ。一瞬で消し飛ばされない限り、致命傷にも対応できるだろう!

 

「……一番危なっかしいの、イッセー先輩ですけれど」

「僕ァ自分で直せるからいいんだよ」

「…………」

「じっと睨むのやめておくれよ……」

 

 必要以上に自分の身体投げ打ったりはもうしないからさぁ……!

 

 仙術関連以外だと、黒歌おねーサン……というか転生悪魔関連について。

 

『いいアイデアとは思うが、まず話をすること。今回は乗っかってあげるが、これは貸しイチだからね?』

 

 と魔王ベルゼブブ様から至極真っ当に説教を受けました。そしてその貸しイチで僕はマジでベルゼブブ様の養子ということになった。どうしてこうなった? と思いつつも、権力的には強化されたので僕としてはむしろラッキーだろう、胃は痛いけれど。……サーゼクス様は相当怒っていたそうだが。リアスさん伝いで聞いた。

 

「というわけで嘘から出た誠……というか未来予知で過去のはぐれ悪魔案件を片っ端から調べることになったんだって。法の不遡及が原則としてあるから、下手を打った上級悪魔が罰せられることはないんだけれど、はぐれ悪魔の一部は恩赦ないし減刑を検討されているそうだよ」

「そうですか……本当に良かった、です」

 

 これで心置きなく黒歌おねーサンを勧誘できるってもんよ。……向こうからはたいそう嫌われたように思うけれども。え? 警鐘的にはそうでもないの?

 

 …………そういえば、黒歌サン関連でギャスパーが妙なことを言っていたな。

 

『あれ、小猫ちゃんのお姉さんは…?』

『あれ、なんで知ってんのギャスパー? もう逃げ帰ったケド』

『えっ? だって、仲間になるって……えぇ?』

 

 などと、何故か黒歌おねーサンのことを知っていて、彼女が仲間になってないことを凄く不思議がっていた。ヤツには何が見えていたというんだ……幻覚か???(困惑)

 

「…………ひとまずはこんなところかな」

「悪魔の駒を消滅させた件に関しては?」

「それは恩赦されたはぐれ悪魔に使われた駒で細かく検証してからかな、と。部長も手伝ってくれますよね?」

「もちろん、そもそも私が振った話だもの。……消滅の魔力での消去の仕方が分かれば、グレモリー家はさらに力をつけられるわ」

「バアル家……はしなさそうですもんね、はい」

 

 部長のご実家が強くなっていく分にはどれだけ盛っても構いませんからね、うん。

 

「それはそれとしてイッセー。腕を物理的に飛ばすロケットパンチは禁止ね」

「何故に!!?」

 

 相も変わらず、僕の恋人は自傷行為に厳しいのであった。隠しておけば良かったな、畜生!

 

 

◆◆◆

 

 

「……なぁ、ショウ・ウォーカー。これはどこまで思惑通りだったんだ?」

 

「……アザゼル。俺は嘘がつけんタチだ。思惑もなにも、俺はアレを鍛えただけだ。それ以上でも、それ以下でもない」

 

「質問に答えろ。今更『ヒトを騙すのに嘘を吐く必要はない』なんて言いたくもない」

 

「……………………」

 

「別にお前の裏切りを警戒しているわけじゃない。そうだったとしたらとっくにアイツらどころか、俺もまとめて消されているだろう。だから、お前がアイツらの味方であることは何ひとつとして疑っていないとも」

 

「甘いな、だが正しい。……それは1(・)7(・)1(・)回(・)前(・)の(・)試(・)行(・)、だったはずだ。『元より復讐心で制御できる少年ではなかったはずなのに』……と嘆いていたのを覚えている」

 

「……なに?」

 

「アレでも精神的には安定している。しかし可能性の目は少しでも潰しておくべきだろう。一人でも逝けば芋づる式。お前はその片鱗に触れているはずだ、アザゼル」

 

「…………!」

 

「かと言って、彼自身を消す試みも失敗している。正しく滅びを体現したかのような悪魔が生まれたり、そもそもこの先に襲い来る脅威に対応できなかったりと様々だ。ロクなことにならんかったようだ」

 

「…………『時留めの針(ロック・クロック)』の亜種禁手とはいえ、万年続く悪魔の寿命を食い潰すほどか、とは思っていたが」

 

「そういうことだ。……致命的な取りこぼしもなく、ようやくアイツは我々を未来へと送り届けて果てた。だがまだだ、細い可能性が白紙に変わっただけだ。だからこその俺、だからこその『道無き道を拓く者(ショウ・ウォーカー)』」

 

「…………」

 

「心せよ、神の子を見張る者。ウォーレン・マリソンの戦いは…………まだ、終わってはいない」

 

 

◆◆◆

 

 

「…………ふぅん、これが白龍皇(しろいの)の力の片鱗、ねぇ?」

 

「これを扱うには表ではまだ足りない。つまりは、裏(ワタシ)で使える能力、ってことよね?」

 

「夢が広がるわ、実態は悪夢かもだけど。そのまま『半減』と『吸収』を使ってもいいし、白龍皇らしい方向で、赤龍帝の能力を再解釈するタネにしてもいい」

 

「………………………」

 

「やめやめ、何を好きこのんであんなヤツの力を使わなきゃいけないのよ。そういうのは表がやるべきよ、使命感がそう言ってるわ」

 

「備えなきゃいけないことがあまりにもたくさんある。だから、表が使える能力はたくさんあるに越したことはない。くっ……結局アイツのサポートばっかじゃないのよ、腹立つわね!」

 

「…………どうせ見てるんでしょ? どうせなら力を貸しなさいよ、」

 

 

  ねぇ、お父様(グレートレッド)。

 

 

◆◆◆

 

 

Next CHAPTER5-2:トリック・アクション・カーニバル

 

To be continued.




 というわけで、5巻はまさかの前後編です! 後編のレーティング編の方が凄く短くなるかもですが、キリのいいところだったので区切ります。

 この章もお付き合い頂きありがとうございました。感想もいつもありがたく読ませて頂いてます。ありがてぇ、ありがてぇ……!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。