理由を知りたくなった、利用できると思った。
故、気まぐれにその願いを叶えた。……赫の邪魔が入ったが、些細なこと。
そして今、その答えの一端に触れ…………我の願いは歪み切った。
最早静寂を得る理由は消え、しかして赫を斃す理由は重なった。
嗚呼、⬛︎⬛︎よ。我が魂を分け与えた者よ。尾を食む蛇の見る夢よ。
我は、お前を─────
その1
スリ、スリと、カードの擦れる音がする。……なんてことはない、現在僕は自分の恋人とカードゲームに興じているだけだ。
「あ、準備整いましたね。このカードの効果で盾のカードを墓地に送ってクリーチャー召喚。登場時効果で下面の呪文を唱えて墓地のカードを色ごとに選択してクリーチャーを召喚、残りを墓地。んで、今召喚したクリーチャーの効果で自分のクリーチャーを2体破壊しますがコイツは破壊された時に手札に戻ります。そしてこちらのクリーチャーの効果で山札以外から手札に呪文が加わった時、その呪文をコスト無しで唱えられます。こちらのクリーチャーはさっき唱えた通り下面に呪文がくっついてますので、呪文として扱えますので悪しからず」
「あ、あの……私のターンよね……?」
「不用意に盾を割るからですね。じゃあ手札から先程の呪文を唱えます。また墓地からカードを色ごとに選んで召喚&回収、さっきのセットとこちらの呪文ですね。墓地から呪文を回収したのでそのまま詠唱。部長、カードを1枚引いてください」
「……ループしそう?」
「しそうというか、させます。ではさっきセットで破壊させたのと同様に2体のクリーチャーを破壊して片方は手札に回収して、詠唱して詠唱して……をぐるぐるして部長は無限枚デッキからカードを引いてください。デッキアウトしたので僕の勝ちです、ありがとうございました」
「何よこの理不尽!!」
「さっき理論値叩き出して2ターン目に僕を轢き殺した部長には言われたくないですよ」
とはいえ普段はループデッキなんて使わないんだけどね、この間YouTuberが紹介してたデッキがあまりにも面白かったんで作っちゃった。
「……それで、部長の要望通りに叩き潰すつもりで遊んでみましたが、参考になりましたか?」
「うーん……もっとこう、資産ゲームのようになると思ってたわ。如何に手札を抱えて物量で押し潰すのか、みたいな」
「昔ならいざ知らず、昨今は踏み倒し上等ですからね……。悪魔もびっくりな等価交換無視ですよ」
さて、なぜ僕らがこんなことをしているのか、話は数時間前に遡る。
◆◆◆
禍の団の構成員が襲来したということで、魔王様主催のパーティは中止。冥界のお偉方……というか魔王様達は天使や堕天使から詰められているらしい。まあ警戒網に穴があったのは事実なわけだし、これは言い逃れできないだろう。なんとなーく事件が起こることを分かっていたのに何も報告しなかった身としては申し訳なく思うが、警鐘が
「とはいえイッセーくん思うに、旧魔王派関連の隠しルート使われたんじゃないの? と考えたんですが。警鐘もそう言ってる」
「実際そうだろうがな、それでも悪魔の身から出た錆なのには変わりないだろう? …………シェムハザから俺も後で説教だとよ」
その疑問に対して答えてくれた我らがオカルト研究部顧問のアザゼル先生。力なく肩を落とす姿は、『
「で、真相の程は? そういう場所って聞かせちゃダメなオハナシをするド定番じゃないですか」
「馬鹿野郎、そういうのはまだ早いって言ってんだよ。お前も知らない方がいい類だ、俺に任せておけ」
「うぃ」
アザゼル総督が真剣にそう言うのならそうなのだろう。警鐘でもそう言ってるが、それ以上に僕自身の直感を信じて追求をやめる。蛇の道は〜なんて言うまでもないことだろうし!
「それで、僕らを集めたのはどういう理由で?」
現在、アザゼル先生の部屋に呼びつけられているのは部長、朱乃サン、八重垣氏&クレーリア様、そんで僕と……ウォーカー氏だ。メンツから察するにvsシトリー会長における戦術、戦略についての話だと思うが。
「そうと言えばそうなんだが、ちょいとイレギュラーでな。俺は最後でいいから、まずはウォーカー、お前から頼む」
「ああ、少し時間を貰おう」
鷹揚に、僕らの戦闘指南役は頷いて前に出る。……相も変わらずコイツからは命の危険的気配がたんまり漂ってくるんだよなぁ。まさか殺されたことがあるワケでもあるまいし。
「今回……というより、若手同士でのレーティングで、正臣はなるべく戦わせない方向でゲームを進めて欲しい。理由は分かるか」
「八重垣さんが、私達と一線を画した戦闘能力を持っているから、でしょうか?」
「正解だ、姫島朱乃。率直に、お前らのためにはならんだろうからな」
まぁ、だろうねと。警鐘を噛ませつつのパッと見で1/10歩行者は堅いだろう。棒状の物であればだいたいなんでも切れるという剣術の腕は、九罪龍と禁手を併用した僕でも勝てるかな……? というレベルである。
「とはいえ負ける寸前まで温存するのもおかしな話だ。戦略、戦術上適切に運用する分には問題ない。……正臣」
「はい、師匠」
敬礼でもするんじゃないか、という勢いで八重垣氏が姿勢を正す。いつものような戯け混じりの怯えは見えないあたり、真剣モードということだろう。
「剣士としてのお前は、まずまずの完成度には到達しただろう。どんな相手であろうとも、最低限生き延びるまでには達した。だが……お前の望みを叶えるにはそれだけではダメだ。理解しているな?」
「はい。クレーリアと結ばれるには、最低でも上級悪魔にならないといけない、ということですね」
「そうだ。故にお前は次の段階として、戦略と戦術を学ばねばならん。そのあたりはリアス・グレモリーに姫島朱乃、兵藤一誠がある程度心得ている。この3人から見て学び、よく質問しろ。お互いの経験値を喰らい合い、糧にするんだ。……すまんな3人とも、俺も猪武者である故の不出来だ。正臣に戦術のなんたるかを叩き込んでやってくれ」
「「「はい」」」
……と、揃って返事はしたはいいものの、本当に僕らが適任なのか? と思う。猪武者などと自分を卑下したが、ショウ・ウォーカーという戦闘狂が単なる猪突猛進野郎でないことは全員が身に染みている。その上で僕らに任せるということは……八重垣氏のレベルに合わせるならってところと、僕らのレベルアップも兼ねてのところだろう。教えることで自分の理解も深まるってのはその通りなワケだし。
「じゃあ、八重垣さんの事情に関連して私からも」
ウォーカー氏からの話が終わったのを確認して、今度は部長が挙手をして選手交代。
「パーティが中断、中止になった影響で、それとなくクレーリアさんと八重垣さんを関係者に見せつけることができなかったわ。レーティングゲーム関係者へは追加の嫌がらせでしかなかったから方針に影響はないのだけど……皇帝ディハウザー・ベリアル氏に会えなかったのは問題ね」
「ありゃあ……そこに影響出ちゃいましたか……」
もうちょっと穏便にやった方が良かったかな、と反省する。あの場での全力はやったので後悔はしてない。
「だからプランBを実行する。簡単には、皇帝の目の引くようなゲームにするってこと」
「それは八重垣氏にクレーリア様への愛をゲーム中に叫んでもらうみたいな?」
「イッセーくん? イッセーくん? 必要とあればそうするけれど、あまりにも悪手じゃないかな?」
「ジョークですよジョーク」
「………………ありかも、ですね」
「クレーリア!!?」
いやはやお暑いこって。……リアスさん、リアスさん? 僕にもうっすらやらせようとしてません? 僕はそこまでバカップルやれませんことよ???
「ごほん。真面目な話の最中ですから、浮ついた空気はその後に持ち越してくださいね?」
朱乃サン、開眼。浮ついた空気の発生源……というよりジョークぶちかました僕に向けて睨みつける攻撃! 効果は抜群だったのでへにゃりと萎れた。
「んん。まあそれも無くはないけれど最終手段ね。それよりも簡単に目を引く方法があるわよ。ね、イッセー」
「え、僕?」
なんのこっちゃ? と頭上に疑問符を浮かべまくるが、唸っても答えは出ない。の割に部長は何事かを確信しているし、警鐘も部長の言う通りだと肯定している。
「あとでクレーリアさんから『⬛︎⬛︎⬛︎』を教わっておきなさい」
「あー…………はい、承知しました」
そりゃあ簡単に目を引くわなぁ、と納得した。九罪龍になったことであの能力も安定するようになったし、ちゃんと戦術にも組み込める。是非教えてもらおう。
「あらかた話は終わったな? じゃあ、最後は俺から。……今回の若手同士のレーティングゲームでのルール、魔王アジュカ・ベルゼブブ監修の下、新人ゲームクリエイターが作った新作を使用することに決まった」
「なにやってんの平麺サン!?」
いや、なにやってんのってのはおかしな話か。……多分これ、僕や部長への援護射撃ってことだよな。せっかくレーティングゲームにメスが入れられるなら、テコ入れする理由があればそうするってことか。
「予習も山を張るのもしづらい状況だ。その救済措置としてゲームの開始前にテーマを発表することになってな。それが……これだ」
差し出されたのは何らかのカードの束。いや、これ何らかっていうか……
「TCG……?」
「ああ。今回お前たちとシトリーのゲームのテーマは『カードゲーム』になった」
これはどうしたものだろう? 揃って僕らは顔を見合せた。
◆◆◆
という理由で僕がメインで遊んでるカードゲームで理解を深めよう、ということになって冒頭に至るのだが……これ、意味あるのかなとはちよっと思っちゃうよね、うん。
「ゲームのルールを推測しようにも、情報がこれだけだと限度があるものね……。仕方がないけれど、今日はここまでにしましょう。これだけにかかり切りという訳にもいかないのだし」
「んー……本当に?」
情報がこれだけ、というのに妙な引っかかりを覚える。確かに一見、ルールのテーマが『カードゲーム』というだけしか情報はないのだが……
「……案外、部長の言ったことが大正解なのかもしれません」
「それって?」
「
「……確かに」
「だからゲームの体験的には、新しいTCGがリリースされた直後の環境に近しいものになる気がしてます」
まぁだからなんだ、って話ではあるんだが。少なくともさっきの僕みたいにぐるぐるソリティアして勝つゲームではないのは確実だ。無い選択肢を消せたと思って前向きに考えよう。
「だったらもう一つ考慮すべき要点があるわね」
「と言いますと?」
「レーティングゲームが興行的側面が強いってこと」
「あぁ〜……」
それは十分に考慮すべき点だろうな。さっきやったようなのは、実際のカードゲームならプレイングを魅せる、未知のコンボを披露するみたいな意味での盛り上がりに寄与するだろう。それが眷属同士のぶつかり合い、戦闘がメインのレーティングゲームに落とし込まれたら……つまらないどころの話ではないな。ゴミ飛んできそう。
「それに、相手の眷属や王を退場させる……さっきのゲームで言うところの『クリーチャーを破壊する』ような効果のカードは少ない、あるいは存在しない可能性も高そうよ。スター選手が紙切れ1枚で退場だなんて、醒める要素の方が強いわ」
「確かに気軽に使えていいカードではなさそうですね……。しかしそこはもしかしたらサッカーみたいにイエロー、レッドカードという形での再現があるかもしれません。反則切符を貯めておいて逆転の一手として使う、のは演出としては面白いでしょうし」
「なるほど、演出ね。…………となると、私達が考えるべきは、ルールよりも
「ドラマ?」
言うやいなや、部長はバサバサドサドサと色んなものを謎空間から取り出した。…………漫画雑誌に単行本、それに映像媒体?
「なにかに使えると思って準備していたのよ、トレーディングカードゲームの販促作品」
「なる……ほど?」
確かに不思議では無い、無いのだが……なんでか警鐘が鳴ってンだよな。あまりしたくない想像が頭を過ぎる。
「まさか、全部履修しろと……ゲームまでの短期間で!?」
「イッセー、これは訓練も兼ねているわ」
ちょいちょいと影を指さされ、意図を汲んだ僕は龍頭を一応三つ生やす。
『ちょー嫌な予感』『まじ嫌な予感』『すんごく嫌な予感』
「せっかく頭が九つ越えて十もあるんだもの、並列処理を覚えてもいい頃だわ。したいのでしょう、分身」
「過去の自分がぶっ刺して来たなァ!?」
というか歩行者の衝撃で忘れてたけど、このヒトも大概スパルタ族だったわ! 悪魔成り立ての頃に『慣れてしまっては意味が無いわ』なんてことも言ってましたもんね!?
「もちろん、イッセーだけに負担を押し付けたりはしないわ。私も朱乃も道連れよ」
「朱乃サンは可哀想だからやめてあげてもろて。やだなぁこんな形のお家デート実績解除!!」
そんなわけで視界を分けた場合の頭の処理のコツを武器に、僕らはたくさんの視界を駆使しつつコンテンツを湯水の如く消化していくのであった。
全ては全霊を賭して戦い、勝つために。今回は、僕が初めて前向きに、かつ楽しく戦うお話である。
感想等ありがとうございます、とても励みになります。
えー、ゲームルール考えてたんですが、急遽修正することになったので、しばらく投稿できません。大変申し訳ありません。