→悪意(大事なので2回言う)
→適応力の方向性
→取引をするタイミング
→取引をする部位
「……ねむ」
宿題終えても寝れなかったので、『クロニカ滅殺帳』に色んな対策を書き連ねつつ朝を迎えることとなった。朝4時、薄ら明るくなってきたのが、部屋の窓から見て取れる。
「朝修行はないとは言われたけど……うーむ」
1日休めば、その遅れを取り戻すのに3日掛かるとはこれまた亡くなっているじいちゃんの弁だ。幸いこの身体は人間を超えたスペックである悪魔の身体、一徹程度は(肉体的には)屁でもない。気を張ればいけるいける……。
『意外や意外、強くなることにも真面目じゃあないか相棒』
「……アンタ、意識が現実にある時でも語りかけられるのか、ドライグ」
『別にそう言った縛りはないからな。気紛れで会話を楽しみたいことだってある』
……楽しいんだろうか、僕と喋るの。それとも、会話することがあまりないパターン? まあ僕にとってはどっちでもいいことだ。何か変わる訳でもない。
「しかしちょうど良かった。アンタに聞きたいことがあったんだ、ドライグ」
『要件は分かっているぞ、俺とお前は繋がっているからな。力を望むか』
そんな、力に溺れようとする闇堕ち騎士を唆すような言い方しなくても……。いや、部長はああは言ったけど最終手段で何人かに不幸な事故に遭わせるだけのスペックが欲しいだけなんだって……。
「勘違いするなよ、過ぎた力は望んじゃいない。身を滅ぼすからね。ただ、この神器の鍛え方と、いざと言う時の必殺技が分かればいいなって程度の話だ」
最低限の可能性を掴めるだけで十分だ……これまでも、これからも。
『神器の鍛え方に関しては、お前の思うままにやれ。その方がお前にとっていい成長をするだろう。そして必殺技に関しては、今のままでは無理だ』
「まあ、そんなうまい話はないか」
『だが、犠牲を払えば話は別だ』
「ふむ」
その話、詳しく。
『どの神器にも、禁じ手というものが存在する。そして俺が封じられたこの籠手も、例外じゃあない』
ドライグがそう言うと、呼び出してもないのに左腕が赤い籠手に覆われる。甲の宝玉は、最近では隠れていたはずの龍の紋章が浮かび上がっている。
『本来それは、膨大な経験を重ね、力を高め、その果てに到達
「悪かったね、僕がクソザコナメクジで。イヤミか貴様」
そも、僕に種別問わず『才能』なんざないのは分かり切っとるわ畜生。だから『異常な普通』やっとんじゃい。つか平凡系男子高校生にそんなもん備わっとる方がおかしいわ。
しかし話の流れは分かったぞ。何かを犠牲に払えば、その領域に到達することが可能ってことなんだな?
『一時的にな。なに、犠牲を払うだけの価値は与える。何せ、この俺が力を分け与えるのだからな。だが……』
「だが?」
『これをすると、一発で俺とお前の正体がバレる』
「それがもう既に重すぎる犠牲じゃねーか」
少なくとも、すぐに使うかどうかは躊躇われるカードってことだ。それなら地道に鍛えて、神器の扱いを熟していく方が将来的には安全確実だね。まあ、部長が切れと言ったら速攻でこのジョーカー切るけど。
「んで、肝心の払う対価は何さ?」
『お前の【存在】だ。魂でもいい、身体でもいい、その一部でもいい。お前の【存在】を、俺に寄越せ』
「……余計に重い対価だ。悪魔を前にした人間はこんな気持ちになるのかねぇ?」
まあ最近の
「それで、アンタにやればその部分は消えるのかな?」
『消えるだけならまだマシだろう、治す方法があるからな。そんな程度では済まされない、俺に捧げた部分は、
「その話詳しく」
ウソだろ、それ捉えようによってはメリットじゃねぇか。
『……メリット、だと?』
「いやだってドラゴンってことは、少なくとも下級悪魔よりは強いでしょ? つまりグレードアップ」
ただ、具体的にどんな感じで置き換わるのかが分からないなぁ。
「例えば、左腕をアンタにあげるとどうなる?」
『……腕は鱗に覆われ、人であった時のような使い方はできんだろう。……いや、そういうことを聞いてるわけではないのだな。骨、肉、表皮、爪に至るまで龍の其れと化す。辛うじて、指が五本ある程度の名残を残してな』
「いいね、それ」
『まるで忌避感が感じられん』
「だって既に背中から羽生やす悪魔になっちゃってるんだぜ? 龍の腕とか今更感ありすぎて」
『ほう……ならば、やってみるか?』
「はっ、冗談。そんな分かりやすい部分をすげ替えたらバレんじゃねぇか。日常生活にも支障きたすし」
だから、僕が捧げるとしたら、【──】か【─】、もしくはその両方だよ。
『…………クク、クハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! 正気か貴様!? それでよくもまあ普通などと嘯ける!!』
「……そんなにおかしいかよ?」
『ああおかしい、最高に狂っている! お前は自分で脳味噌が足りてないと言ったが、成程確かにこれは頭のネジが十本単位で飛んでいやがる!』
……そんな不良品ロボットみたいな言い方せんでも。泣いちゃうぞ、僕。
『しかしそうか、それなら今すぐにでも取り掛かるべきだろうな』
「え、いや。今からその噂の禁じ手使うわけじゃないんだけど」
『愚か者、成り立ての悪魔の分際で俺の【——】に耐えられるものか。十分に慣らす必要があるに決まっている。幸い、その対価をお前に与えるタイミングは此方に委ねられている。ストックできる、とでも考えておけ』
そうか、それなら……安い買い物かな?
「それじゃあお願いするよ、ドライグ」
『では始めよう。ああ先に言っておくが……
えっ? と思った瞬間にはもう遅かった。
「…ぐ、が、あ、」
全身が焼かれる感覚と共に、僕の意識はぷっつりと切れた。ただまぁ、アレをぶち抜かれるよりかはマシだったとだけ。感謝するぜ彼女ちゃん、安心して地獄に堕ちろ(呪詛)。
◆◆◆
「お、おいイッセー、お前生きてるか?」
「救急車で呼ばれてもおかしくない様相だが……」
数時間前の自分をぶん殴りたい。何処がメリットだよ、こんなの普通に死ねるじゃん…つかあの後から下手人のドライグはいくら声掛けても返事しねーし、くそう。
それでもなんとか燃えるように熱い身体を引き摺って登校、力尽きて机の上に突っ伏すと、悪友共が声を掛けてきた。
「……ど、道中アーシアの介護がなければ即死だった」
「「どうしよう、急に殺意湧いてきた」」
だろうな、さっきまで心配そうだった周囲の男子の視線も殺気に変わったし、立場が変われば僕だってそうする。女の子からの介護とか裏山けしからんとかいって(まあ観賞用は除くと付け足しておくけど)。
いやしかし、マジでアーシアいなかったら死んでたかもしらん。『
「いやでもマジでしんどい……保健室で横になりたい……誰かに甘えたい……膝枕されたい……」
『い、イッセーの口から欲望が垂れ流されてるだとぅ!?』
『合金メンタルのアイツがまさか!?』
「普段からどんな風に思われてるんだよ僕ぁ……」
周囲からの評価にさらにゲンナリする。割と欲望に正直に生きてきたつもりなんだけど僕ちゃん。
「まあ、仕方ねぇ。ほら、肩かすから少し起き上がれ」
「その代わり、知り合いの女の子紹介で手を打とう」
「……やだ、授業出ないと皆勤賞消える」
「「…………はぁ」」
ため息つくんじゃねぇよ、それだけが僕を動かしたんだぞ、内申点でしか通知表の点稼ぎ出来ないのに! エスカレーターで大学部に行くために必死なんだぞこっちは! 今日のは自業自得だけどな!
「そ、それはそうと、出会いが欲しいのかキミたち。ならつい最近知り合った(心は)美少女がいるけど」
「マジでか!?」
「ちょっとメルアド渡してもいいか聞いてみる」
死に体でよろよろとメールを打って、送る。割と直ぐに返信がいて、その内容がOKだったのでそのメールアドレスを2人に見せた。
「おおイッセー、心の友よ!」
「アーシアちゃんの件は相殺してやろう!」
「いやいや、いいんだよ……チャンスは誰にだって与えられるものさ……ごふっ」
いけね、喀血して若干口の中が鉄臭くなった。堪えたのでバレてない……ないよね?
「……むー」
いかん、涙目のアーシアがこちらを睨んでいる。見ない振り見ない振り。
「しかし、イッセーが美少女って言うってことは、これは期待が持てそうだな」
「ああ……そこは安心してよ。あれはもう紛うことなき(肉体美的に)観賞用だから……」
いやぁ、そんなに『ミルたん』のメールアドレスで喜んでくれるとは。反応が若干楽しみだ。
それに悪いことばかりでもない、アレでいてミルたんは同じミルキーファンとの繋がりは広いからなー。僕もその繋がりで(普通の)ミルキーレイヤーに会ったことあるし。チャンス、可能性はある。明日か明後日かに詰め寄られそうだけど、その時になったらちゃんと説明しよう……ウケケケケ。
……あー、死にそう。
捧げた場所が分かった方は凄い。
ただよく読めば分かるかも……?