兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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筆がノッてるうちに。
感想、評価ありがとうございます。


その7

【①木場クンとの剣術訓練】

 

「割と兵藤くんって、場馴れしてるよね」

 

 軽い準備運動(これっぽっちも軽くは無かった)を経て、僕は木場クンと剣術稽古をすることになった。というかまず僕とアーシアは眷属の面々と1対1で組むことで、皆の戦い方等の理解を深めて欲しい、との事だった。まあレーティングゲームは団体戦だから必要な事だよね。そんでまあ同じ男子ということもあって精神的にやりやすいだろうということで、トップバッターには彼が選出された、という話。

 ……木場クンが俊敏性を大幅に上げる『騎士(ナイト)』の駒を使って転生してるのは知っていたけど、リアル騎士だとは知らなんだ。しかも持ってる神器も魔剣をなんでも、幾らでも創造できる『魔剣創造(ソードバース)』! イケメンは神器もイケメンだった。だってソレ、もうアレじゃん! 身体が剣で出来てるヤツじゃん!!

 

 で、だ。まずは実際に立ち会おう等とふざけたことを言うもんだから、渡された木刀でまあ打たれまくる打たれまくる。その癖こっちの一撃はひょいっと躱すモンだからストレスも溜まる。10回打たれたら一段落、というのを5セット程繰り返して、才能ねぇなぁと逆に開き直っていたら、木場クンがそげなことを言ったのだ。場馴れしている、と。

 

「んー…? 別に木刀を日常的に使ったことはないけど。ただの喧嘩殺法なのよさ」

「まあそれは分かるよ。身体の動かし方に訓練の跡が見えないから、兵藤くんが武術を身につけている、という意味では言ってない」

 

 ただ、と言って木場クンは不意打ち気味に木刀を投げつけて来た。それも頭に。

 

「うわっ!?」

 

 何とか左手で握っていた木刀でガンッ! と叩き落とす。あにすんだよ? と睨み付けると、彼は余計に理解を深めたように、何度も頷いている。

 

「兵藤くん。キミが僕に打たれた箇所は、全部腕や脚等だ。キミは決して、僕に急所にあたる部分を打たせなかったんだ」

「それはまぁ、普通だろ?」

 

 ボッコボコにされても腕と脚なら腫れるか、血が出るか、最悪骨折れるぐらいで済む。ただ一気に継戦不可能になるような頭とか股間とか、そういうところはなるべく守るもんじゃないのか?

 

「うん、だから場馴れしてると思ったんだ。少なくとも僕は何回か、キミを昏倒させるつもりで後頭部を狙いに行ったからね。余程場数を踏んでるに違いない、と思ったのはそういうことだよ」

 

 なんて酷いことをしてるんだこいつ。さわやかに言っても通用しないぞ、ソレ。

 

「もう一つ理由がある。成程、逃げに徹するなら急所ばかりを避け続けるのも不可能じゃないのかもしれない。けれど兵藤くんは果敢に攻めてきたよね?」

「じゃなきゃ訓練になんないでしょうが」

 

 避ける訓練とは言われなかったしな。じゃあ普通に木刀でしばき合うと思うじゃん。

 

「そこなんだよ。キミは打たれることに関しては全く怯んで無かった。普通なら反射行動で身体が退く筈なのに、それがまるで無かった」

 

 キミ、一体今までどんな生活してきたんだい? と言外に聞かれてるようだった。その目をやめて欲しい、笑ってるけど笑ってないだろテメェ。

 

「……あー、その、なんだ。九頭龍亭って駅前にあるじゃん? ンで、(違法な)夜間シフトの時なんかは不良とかのたまり場を横切ったりもするわけだよ」

「ああ、あのですとろい?高校とかいう……」

 

 いやもう本当にマジでアイツら怖ぇっての。あんなテンプレ不良が現代日本に生息してることが最早ファンタジーだよって話!

 で、なんの問題もなく逃げれる日もあればそうでない日もあるし、なんなら見過ごすと後味悪そうだから首突っ込む日もあるわけよ!

 

「そのせいで自然と立ち回りとタフネスだけは身に付いてね……打たれ慣れてるせいで感覚麻痺っちゃってさ……」

「あはは……まあ、そういうことなら納得かな。喧嘩殺法って言ってたのもそういうことだったんだね」

 

 ……まあ、その、まあ。それは高校に入ってからの話で。僕みたいな糞凡人が1年ぐらいで剣士ガチ勢の木場クンからの猛攻をある程度防げるようになるわけもなく。こういう危ない橋を渡るのはここ一年間の話では無かったり。

 んー……元気してるかなぁ小学校ン時のガキ大将。あの傍若無人な僕の相棒、引っ越してったきりまるで連絡が無いからなぁ。

 

「だったらそうだね……兵藤くん、剣術を習う気はないかい?」

「え、いや遠慮します…」

 

 別にお上品な戦い方をしたい訳じゃない。普通に殴る蹴るの暴行、その辺の石を掴んで殴る投げる、鉄パイプぶん回す方が僕には合ってる……気がする。

 

「何も本気で修行しろとは言わないよ。ただ、ある程度の技を覚えてたら、キミなら上手く使いこなせるんじゃないかな」

「それはまあ、確かに?」

 

 ということで、僕は木場クンに乗せられる形で、残りの時間を稽古に当てるのだった。

 

【兵藤一誠は、(そうとは知らず)平正眼と縮地の基礎を身につけた!】

 

 

◆◆◆

 

 

【②塔城サンとの組手】

 

 今度の先生は戦車な後輩塔城サン。最初に木場クンと何をやったのかを聞かれ、それならばとこちらは組手をすることになった。

 『戦車(ルーク)』の駒は腕力と固さを大幅に上げる。それもあってか彼女はヤバい怪力の持ち主。その上殴ったらこっちの腕がひしゃげるんじゃねぇかってレベルで衝撃が徹らないモンだからやってらんない。あと小柄な体型と駒の特性からくる脚力もあって、機動力もハンパない。速さだけなら木場クンの圧勝だが、僕としては彼女の方が圧倒的にやりにくいと感じた。

 何度も何度もぶっ飛ばされ、何度も地面と熱いキスを繰り返しながら、もう起き上がる回数を数えるのも億劫になった頃に、塔城サンは言った。

 

「……先輩って、実はとてもタフなんですか?」

「と、言うと?」

「……手加減はしています。でもそろそろ朝食が口から出てもいいぐらいには殴っているんですが」

「サラッと凄い告白するよねキミ!? 執拗に腹パンされたのはそれか!!」

 

 腕でガードするのも辛かったのに、その威力のボディーブローは普通に死ねますことよ??? それに体格を活かして懐に潜り込んでくるもんだから避けようがない。

 

「……最初はそこまでするつもりはありませんでした。適当なところで根を上げると思っていたので。ただ、いつまで経っても平気そうな顔だったから、つい熱が入り」

「そんな風に見える? もう今立つのも精一杯よ?」

 

 まあ気合いで震えも止めてるんだが! 弱さを見せたら負けである、囲まれるからね! 時としてハッタリも立派な戦略だ。

 

「……私の直感ではありますが、先輩は開始30分ぐらいで限界を越えていましたよね」

「時間感覚麻痺ってたから分からないけど、まあ割と早い段階で『もう無理ぃ!』とは思ってたかな?」

「……だけど、そこからも割と平気そうに立ち上がって構えていたと思います。何度か拳も貰いました。ハッキリ言って気持ち悪いです」

「ねぇ、ねぇ? 僕にも傷付く心はあるんだよ?」

「……7割は褒め言葉です。とりあえず、なりたての転生悪魔としては常軌を逸したタフネス……というよりは精神力が、先輩にはあるんだと思います」

 

 へぇ〜そうなのかぁ〜、と軽く流しながら水を飲んでるとジト目で睨まれた。本当に分かってんのかコイツ? って目だ、よくそんな視線を貰うのでよく分かるぞ!

 

「……とはいえ今のままでは宝の持ち腐れ、です。先輩は、とても軽い」

「んーと、それは物理的に軽いって意味じゃあないよね?」

 

 そう言うと彼女は小さく頷いた。

 

「……先輩は攻めまくるという戦い方をせずに、カウンターをよく狙っていました。先輩のタフさと噛み合う戦い方なので、これ自体は悪くありません。だけど受け主体の戦い方なのに殴り飛ばしやすかった。これは問題だと思います」

「ふむふむ」

「……ひとつ、もしかしたら相性がいいかもしれないものを知ってます。一先ずそれを覚えて、試してみましょう」

 

 と、言うことで少しだけその相性が良いかもらしい構えを教えてもらう。

 

「……では、実際に試してみましょう。今から私は、先輩を少し本気で殴ります。それを防いでみてください」

「お、おうさ!」

 

 変則的な仁王立ちにも思える構え方で、少し距離を取った塔城サンを迎え撃つ。これ本当に役に立つのか……? と思ったのも束の間、ザッッ!! と地面を蹴り、僕の腹目掛けて拳を振りぬこうとする後輩。

 こりゃまずい、と何とか間に合った腕を交差させたクロスガードで何とか防ぐ。先程までならば勢いを殺せずに足が地面とバイバイするところなのだが、今回はなんと後ろにザザッ! っと後退するだけで済んだのだ! ……腕は先程までと比較にならないぐらい痛いけどな!!

 

「……思った通り、です」

「すげぇなこの構え方……確かに吹っ飛ばなかった」

「……ただ、それが1番の正解とは限らないです。それをベースに先輩に合う構え方を、この合宿中に身に付けましょう」

 

 そうして残りの時間を、僕の構え方を試行錯誤するのに費やしたのだった。

 

【兵藤一誠は、(そうとは知らず)三戦立ちを身につけた!】

 

 

◆◆◆

 

 

【③副部長の魔力講座withアーシア】

 

 流石にそのままでは次の訓練には向かわせられない、という塔城サンが見せた慈悲によって急遽予定が変更となり、僕はアーシアと一緒に副部長から魔力を使う訓練をすることになった。ありがとう塔城サン、本当に助かる!

 ということで別荘の一室を借りて、僕達は副部長から魔力の簡単な概要と使い方を習うことになった。

 

 そもそも僕は、魔力の使い方は呪文を唱えたり魔方陣を使ったりするモンだと思っていたのだが、それは違うらしい。近いイメージとしては超能力だろうか? 自分の考えたことを実現する為の力なので、才能さえあれば割となんでもできるのだそう。逆に才能が無ければそもそも魔力を体外に放出することすらも難しいのだとか。世知辛いねぇ……。

 

「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波導を感じるのです」

「ぐ、ぐぬぬぬ……!!」

 

 ただ運がいいことに、魔力を捻り出すこと自体は(気力はかなり使うものの)出来なくはなかった。多分僕が置換させた『──』も関わってるだろうけど、魔力自体もそこそこある……のかもしれない。手のひらの上にできた真っ赤なサッカーボールサイズの玉を見てそう思う。だが……、

 

「ぐあぁ……」

「うぅん…魔力を集めることはできていますが…」

 

 力が抜けて、魔力玉が一気に霧散する。僕はどうも魔力の放出が苦手なのかもしれない。

 一方その隣でアーシアは、

 

「できました!」

 

 と特に力むこともなく、パパっと手のひらにソフトボールサイズの緑の魔力玉を作っていた。僕みたいに直ぐに霧散することも無く安定している。ちょっと羨ましい。

 

「あらあら。アーシアちゃんは魔力を扱う才能があるのかもしれませんね」

「えへへ…褒められちゃいました」

 

 我がことの様に喜ぶ副部長と、褒められて頬を染めながら照れるアーシア。その絵面のあまりの尊さに思わず目を瞑った。流石観賞用レベル美人同士の絡み、ご馳走様です。……って尊さで意識飛ばしてる場合じゃないよ僕。

 

「では、その魔力を炎や水、雷に変化させます。これはイメージで直接生み出すことも出来ます。ですが慣れないうちはまず、実際の火や水を魔力で操作して練習しましょう」

 

 こんな風に、と言いながら副部長が、机の上に置いてある水の入った500mlペットを指さした。

 変化は一瞬、バチン! と弾けるような音と共に中の水がボトルを食い破るように棘だらけの形に変わった。

 

「うぉお……すげぇ……」

「うふふ、この辺りは序の口ですわ。慣れてくると…」

 

 そう言って副部長は右の手のひらを前に出し、先程まで僕らがやっていたように魔力の塊を作り出した……と思ったら、バチバチと黄色い閃光がそこから溢れ出した!

 

「うひゃあ!?」

「大丈夫ですよ、力は抑えているので触っても静電気ぐらいの痛さです。直ぐにこのレベルまで、とは言いませんが、魔力が足りていたらこのぐらいはいずれ誰でもできますわ」

 

 そう言ってくれるとやる気も出るというもの。僕だって男の子、カッコイイことはしたいお年頃。……もしやリアルドラゴン波を撃てるようになるかもと思うとワクワクもしてくる。

 

「ではアーシアちゃんは、先程私がやったみたいにペットボトルの水を使って魔力の操作をする練習に移りましょう。イッセーくんは引き続き、魔力を集め、留める練習を続けましょう。集めるのもイメージなら、留めるのもイメージです。……そうね、普段からイメージしているものなら留めやすいんじゃないかしら?」

 

 普段からイメージしているものかァ……それこそさっき想像したドラゴン波でもいいけど、あれは留めるというより放出だから多分修行内容にはそぐわないんだろうなぁ。

 

「最近イメージしてると言えば……ぐぬぬぬ……おっと!?」

 

 ふと脳裏を過ぎった、僕にこびり付いてる『死』のイメージが、僕の手のひらの中で形を成した。

 長く、細いそれは……赤くはあるが、記憶の中にある『光の槍』だった。あはー、そりゃそうだよなぁ。復讐し終わるまでずっとヤツのこと考え続けてたもんなぁ。

 

 ということで変則的な形ではあるが僕も魔力を留めることに成功したので次の段階に進むことができ、胸を撫で下ろした。

 けれど、副部長もアーシアもなんだか微妙な表情をしていたのが気になった。アーシアは分かるけれど、副部長も何か、天使か堕天使と因縁があったりするのだろうか?

 

【兵藤一誠は、魔力槍を身につけた!】

 

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