兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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感想、評価ありがとうございます。とても励みになっています。

多分、頭が湧いてました(犯行声明)


その13

◆◆◆

 

 

 結論から言ってしまうと、旧校舎は瓦礫の山と化した。

 

 

◆◆◆

 

 

 光がおさまり視界が回復すると、そこはオカルト研究部の部室だった。なんでやねん……と思ったのもつかの間、グレイフィアさんによる校内放送……レーティングゲーム開始前のアナウンスによって、ここが再現された駒王学園だということを知る。確かに窓から外を覗けば、空がまっちろかったので何も無い空間にポツンと駒王学園が乗っかってる状態なんだろうと勝手に解釈した。……これも魔力とかによる産物? 悪魔ってすげぇのな……。

 んで、グレモリー眷属は此処、オカルト研究部の部室が本陣。ライザー・フェニックス眷属は新校舎の生徒会室が本陣。兵士……つまり僕がプロモーションする際は、生徒会室の近くまで行く必要がある。

 

「定石としては、序盤は兵士同士が互いを潰し合うの。少しでも敵の兵士が女王にプロモーションするのを防ぐ為にね」

 

 ウチの眷属の兵士は僕だけ。なんせ僕が8駒分で転生しちゃったからね。なので定石通りに行くなら、僕は8人もいる兵士悪魔を倒さにゃならんのだが……。

 

『開始のお時間となりました。このゲームの制限時間は人間界の夜明け、午前4時までとさせていただきます。それでは、ゲームスタートです』

 

 審判でもあるグレイフィアさんの合図でチャイムが鳴り、開始を知らせる。では、今から作戦会議かなー……というところで、部長が口を開いた。

 

「ではまず本陣、並びに旧校舎は破棄しましょうか」

 

 流石に全員がギョッとした。部長、ご乱心なされました???

 

「……私でもおかしなことを言ってる自覚はあるから、まず説明を聞いてちょうだい」

 

 そう言って部長は、一旦紅茶で口の中を潤した。そして一息ついた後、説明を始める。

 

「まず前提として、私達に本陣を大事に確保しておくメリットはあまり無いわ」

 

 本陣を守るメリットは幾つかある。基本的に敵陣から1番離れた位置に置かれることが多いから、守りを固める準備がし易い。罠、支援、結界、なんでもやり放題だ。要塞を作るのに長けてる王とその眷属ならば、穴蔵を決め込むだけで勝つこともできるんだとか。

 他にも色々とあるが、鉄板の使い方が一つ。王と戦車の駒特性……実際のチェスにもある、動いていない王と戦車を入れ替える技、キャスリングを使っての兵士の着地狩りだ。基本的に本陣までやってくる兵士というのは、途中の障害や兵士同士のぶつかり合いなどで疲弊している。だが女王にプロモーションしてしまえばこっちのものだ……という淡い期待を打ち砕くように、突如として現れた戦車が疲弊した自分達に襲いかかってくるのだ。普通に恐怖である。

 もっとも、キャスリングも何度もポンポン使える訳じゃあない。レーティングゲームに於いては、王が本陣を出ていないという条件があり、一度使ってしまえばそのゲーム中二度と使えなくなってしまう。鉄板戦術ではあるが、使い所は慎重にならざるを得ない。

 

「しかももう1つ欠点があってね。キャスリングを使う時は基本的に、隠密行動をしている戦車と入れ替わるのが定石なのよ。兵士を倒すために王を危険に晒すのは、本末転倒でしょう?」

「……なるほど。私達の場合、戦車は私1人だけ。キャスリングを狙ってまで1人しかいない戦車を宙ぶらりんにするのは、リスクの方が勝る。ということですね」

「その通りよ小猫」

 

 それを踏まえると、僕達が本陣を抱えておくことのメリットは無いように感じる。要塞化をマスターしている悪魔がいるわけでもないし、キャスリングは前述の理由で論外。

 

「しかし、本陣に兵士が立ち入られたら、我々が劣勢になります。本陣に到達する前に食い止めるにしても、複数のルートで狙われる可能性が高い以上、何人かの兵士にはプロモーションを許してしまうことになるでしょう。やはり本陣を破棄するのはリスクが高いように思えます」

「そこはその通りね、祐人。でも、本陣を徹底的に使えなくする……もしくは本陣に辿り着かせなくしたらどうかしら?」

「それは、一体?」

 

 とここで部長がテーブルの上に紙を広げる。これはどうやら……旧校舎の見取り図っぽいぞ。所々に赤丸で印が付けられているが……。

 

「この印をつけた所を爆破して、旧校舎を解体させるわ」

「……あの、あまりこういうこと言いたくないんですけど、何処か頭をやっちまいました?」

「あら失礼ね。この建物を爆破するアイデアの原案は、あなたから出たでしょう、イッセー?」

 

 そう言われて思い出す。そういや合宿中にアイデアを出し合ってる際に『攻城戦だったら、相手の城を発破解体とか面白そうですよね!』とか言った覚えはある。ある……が、そもそも発破解体はかなりの技術を必要とするらしいから僕らには無理だし、あくまで敵陣爆破を想定しての案だ、間違っても自陣を吹き飛ばす発想じゃないんですよ部長。

 

「破壊したところで、元あった本陣の近くまで来られたらプロモーションはされてしまう……。部長は、これを解決するアイデアがある、ということですわね?」

「ええ、もちろん。と言っても、朱乃とイッセーに頑張ってもらわないといけないのだけれど」

 

 そう言って部長は、旧校舎爆破処理作戦の概要を口にした。

 ……うん、ちょっと舐めてたわ。僕のこと悪魔だのなんだの言うけど、部長も大概悪魔みたいな発想をしているじゃないか。ほれみろ、ドSの朱乃サンがめっちゃニコニコしてるもの!!

 

「では指示を出していくわ。あまり時間がないから迅速にね。朱乃は旧校舎を覆う結界を、この指定通りの内容で作ってちょうだい。多少効果は薄まっても構わないから、バレないことを優先して。その後、私達が仮設で本陣を建てる森に幻術を仕掛けて欲しいの。内容は任せるわ」

「承知致しましたわ」

 

「祐人は森全体に罠を仕掛けて欲しいの。殺傷能力よりは、とにかく脚を奪うことに重きを置いてちょうだい。そうね……トラバサミとワイヤートラップ辺りがいいわ」

「分かりました、部長」

 

「小猫は囮をお願いするわ。恐らく重要拠点として使えるであろう、旧校舎と新校舎の間にある体育館に敵を誘導して、その中で足留めを。通信機で合図を出したら、体育館を放棄するように逃走して、それとなく旧校舎に敵を誘導。いけそう?」

「……大丈夫です、任されました」

 

「アーシアは、私と一緒に着いてきてちょうだい。最初はテントの設営ね。それが終わったら、小猫と合流して神器で癒してあげて」

「わ、分かりました。頑張ります!」

 

「イッセーは1番責任重大ね。……印をつけたところに、例のアレをセットして、私が合図を出したら爆破して」

「承知しました、必ず成功させます」

 

「では、華々しく初陣を飾りましょう。私達を舐めてるであろうライザーに、誰を敵にまわしたのか、知らしめてあげなさい! 総員、散開!」

『『『承知!』』』

 

 それじゃあ僕は僕の仕事を……地獄を作る準備を始めないとね……。全く、ウチの王様はおっかねぇや。

 

 

◆◆◆

 

 

 水蒸気爆発、というものがある。

 簡単に言えば、水の温度が急激に上がり、気化して一気に体積が膨張することで起こる現象だ。熱したフライパンに水を垂らすとジュっ! っていうアレのこと。

 

 僕は思った、魔力による水の操作を極めたら、水蒸気爆発を起こせるんではないか、と。基本的に温度とは振動、動き、エネルギーなのだ。つまり水蒸気爆発が起こる温度まで水の分子を一気に動かしてやれば、それはもう見事な水蒸気爆発が起こるんじゃないか、と。

 そう思って僕は朱乃サンに相談した。自分のイメージを補強するための絵図も付けて。そして彼女が僕に課した修行は紅茶を淹れること。正確には、魔力で水を操作し、温度を上げる練習をしろ、ということだった。

 

「いくらイメージができていても、想像通りに操作ができるわけではありませんわ。まずは段階を踏み、温度を上げる操作の感覚を掴むのです」

 

 実際にある物質に魔力を通し、それを操作すること自体は、そこまで魔力を消費しない。無から有を生み出してるわけじゃあないからね。とはいえ最初のうちは水の温度操作は困難をきわめた。まるで超音波洗浄機を水に漬けた時みたいにボコボコ波立ちはするものの、温度はそこまで上がらなかった。魔力を使うにはイメージが大事だが、それだけではダメだというのがよく分かる一例だ。

 行き詰まっていたところ、僕はある家電を目にする。電子レンジだ。アレは確か、マイクロ波を水分子に当てることで、振動、回転させ、温度を上げる……温めるという家電だ。

 

「……波を当てるイメージで、フンっ!」

 

 記念すべき僕の一発目の水蒸気爆発の被害者は僕になった。全身大火傷、水を入れていたケトルも破裂して破片が全身に突き刺さりの大惨事。アーシアがいなかったらまず間違いなく死んでいた。原因は、思いの外魔力を込めたことで急激に水分子が振動してしまったことらしい。いやほんと、ありがとうねぇアーシア。キミも僕の命の恩人だよ…。

 

 まあ、そんな事故を挟みつつ、寝る間も惜しんで水の操作を続けていって、何とか暴発させずに水蒸気爆発を使いこなせる域にまで達した僕は、あるアイデアを思い付いた。

 

「そうだ、聖水で水蒸気爆発すりゃいいじゃん」

 

 後の対悪魔殲滅兵器の産声が上がった瞬間である。

 

 

◆◆◆

 

 

 そして今、その対悪魔殲滅兵器が敵の悪魔に向いて牙を剥いた瞬間を、僕は目の当たりにしている。

 

 指定ポイントに配置された、建物の内側に向かって爆発するように調整された、聖水の入った金属容器。それが都合9箇所、同時爆発。

 それだけだと単に聖水で爆発させただけなのだが、厭らしいのが朱乃サンの敷いた結界だ。旧校舎だったものを覆ってる結界は、中から水分子が飛んでいかず、高熱に保つ効果がある。つまり、仮にこの中に悪魔がいたとしたら……まあ、可愛く言ったら蒸し焼きになる、ということ。中は煙ってて何も見えないけれど瓦礫や木片も吹き飛んで痛いだろうし、小猫チャンが誘導して中に入ってしまった4人の悪魔の皆様に対しては、申し訳ないという気持ちしか湧いてこない。

 

『……ライザー・フェニックス様の兵士3名、戦車1名、戦闘不能』

 

 心做しか、グレイフィアさんのアナウンスの声音からドン引きしてる気配が伝わってくる。いやでもこれは僕だけのせいじゃないよ。

 

『これで本陣には誰も寄って来れないわ。結界の効果も4時までは充分に続く。では、次の指示を与えていくわね』

 

 とりあえず第1段階は終了だ、と息を吐きながら通信に耳を傾けていると……

 

「…………ッ!!」

 

 警鐘の音、咄嗟に鞄の中からただの水が入った瓶を取り出し、握って割る。水が染み出し、そこに魔力を通し、運動を制御! 氷の壁を作る!!

 

 目を焼かれるような光、轟音、衝撃! 腹の底が震え、全身を熱が襲う!!

 

「ぐ、ぐぅ……! 『決殺の手(トゥワイス・クリティカル・ブレイカー)』!!」

『Boost!!』

 

 防御力を2倍に、襲ってくる衝撃を氷の盾を使っていなしながら、何とか地面に踏ん張り、耐える!!

 

「っ、がぁッ!」

 

 何とか耐えきり、地面に膝を着く。そして、下手人であろう、上空に浮かぶ何某に視線を向けた。

 

「……油断も隙もない。完璧に不意を突いたのに、どうして防げたのかしら?」

「お生憎様、こちとら尋常じゃない程のビビりでね…!」

 

 翼を拡げ、空から僕を見下ろす、フードを被った魔導師の姿をした悪魔!

 

「ライザー氏の『女王(クイーン)』、ユーベルーナ……!」

「ご名答、リアス嬢の兵士君。貴方はここで脱落してもらうわ」

 

 爆破を得意とするライザー・フェニックス最強の下僕が、僕の前に立ち塞がった! ちょっと待って、これかなり大ピンチだよ!!?

 

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