どんなイッセーも死んでからが本番。
『貴様、完全に俺との約束が頭から飛んでたな?』
「いや悪ぃ悪ぃ。その場のノリと雰囲気と終活テンションで突っ走ったわ」
まあ欠片も悪いとは思ってないんだが。こんな僕を宿主にする方が悪い。
今僕は、多分神器の中にいる。死ぬ前の走馬灯的なアレだろう。まだ現世に留まってるっぽいのは、多分ドライグが文句を言うためだけになんやかんやしてるんだろう。
「でもさ、本当に死んどかないと本当に不安だったんだ。ドラゴンなんて厄ネタを部長に抱え込んで欲しくなかったんだ」
『俺を前によくそんなことが言えたな』
「だって最期だもん、言いたいこと言っとかないと後悔するぜ」
あとはまあ、父さんと母さんに悪魔だってことがバレる前に死にたかったし。悪魔ってバレて嫌われたら、その……ちょっと死ねる。今もう死んでるけど。
それと…………
『告白まがいの宣言をした故、枷になる前に消したかった、だな?』
「うん。あの場では気合いを入れるためと、ライザー氏をこっちの雰囲気に呑み込ませるために言うしか無かったけど、下僕の元人間の転生悪魔が自分の王に告白って、色々とダメだよね。立場的にも、その後の眷属内での雰囲気的にも。やー、綺麗さっぱり片付いて良かった良かった!」
まあその、なんだ。仮に天地がひっくり返るようなことが起こって、仮にそれが受け入れられたとしよう。その後僕がやって行けるか? って聞かれたら『No!!』と強く答えるよ。部長がOKでも家がダメそうだし、まかり間違って家の方もOKでも貴族的なあれやこれやが僕に向いてるとは思えないしそーゆー勉強耐えられないよ。イッセー小市民だもんにー。
「……もう既に結構な迷惑掛けてんだよ。返しきれない恩を受けたのに。だから、もう僕みたいなヤツは嫌いになって、懲り懲りだって心の底から思ってほしいんだ。ほら、さっきの僕ってば、典型的な面倒臭いヤツでしょ? ライザー氏の追い詰め方も色々アレだったと思うし!」
『意図的だったのか?』
「…………いやその、素です」
『何故貴様は悪魔に生を受けなかったのだろうな。いや、悪魔に収まりきるかも怪しいところだ』
ひっでぇ言われようだ。否定できねぇが。
「まあでもね、満足だよ。僕は心の底から満足した。胸を張れる、凄いやつにちゃんとなれた。平凡だけど、語る中身のあるヤツに、僕はなれたんだ。その一端に、お前のお陰もある。不甲斐ない相棒だったのに、手を尽くしてくれて本当にありがとうドライグ。心の底から感謝をしてる」
『……フン、感謝をされるようなことはしていない。単なる暇潰しに過ぎん』
「お、照れ隠しか? 照れ隠しかこのこの〜!」
『うるさい、離れろ!』
ウリウリと足の鱗を撫でると思いっきり蹴飛ばされた。痛みはないけれど。
『それに、だ。俺は本当に、お前に感謝されるようなことはしていない。もう一度言うぞ、
「な、なんだよ。へんな含み持たせやがって。一体なんだってんだ」
見上げるようにドライグの顔に視線をやると……どこか笑ってるように見える。なんだろう、ようやっとドラゴンの表情が分かるようになったのにぜんっぜん嬉しくないこの感じ。警鐘も鳴ってるし…………。
……待て、
『お前が俺との約束を破ったように、俺もお前との
「思って……なんだよ……?」
『貴様の意識が切れたその瞬間に、1回分の権利を行使させて貰ったということだ。お前の傷を癒し、失った血を補填するには十分過ぎる力をな』
な、ななな、なァーーッ!?
「やりやがったなクソトカゲ! 最後の最後までろくなことしねぇなテメェ!!」
『最後、では無い。お前は死の淵から蘇るのだからな。これでお互い、約束の続きを果たせるじゃないか』
く、くそう……どんな面して生き返ればいいか検討もつかねぇ……。『おさらばです(キリッ)』とかやっといて生き返るの恥ずかし過ぎんだろ! 盛大に嫌われムーヴこなした上なのも嫌な要素だ!
『簡単には死なせんぞ、兵藤一誠。相棒だからな、当然だろう』
「疫病神とも読むけどな……ったく」
だがまあ、そうなったんならそうなったで仕方がない。約束通り、白いの? を倒すために奮闘してやろうじゃないのさ。
「まずははぐれ悪魔になるところから始めないとな……殺されたくないし。そこからは適当な拠点を作るか魔法使いに保護してもらって生活基盤を立てて、それでそれで…………」
『しっかし……成程、自称するだけはあって確かにノータリンだ。考えが足りん』
「なにおぅ、否定はしないけど今必死に考えてるんだゾぅ?」
『逃げ切れる、などと馬鹿なことをほざくのがその証拠だ。言っただろう、後でどんな風に土下座をするのか考えておけ、とな。それは俺に対してではない。お前が愛してやまないあの女に対してだ』
………………え?
『こういう時、なんと言うんだったか。そうだな……お前の罪を数えろ、というヤツだな?』
その姿を神器の中から眺めてやるさ。ヤツがそう言った瞬間、急に意識が遠のく。叩き出されようとしてるのだろう。
「い、嫌だ! なんか嫌な予感がする! もう少しここに居させてよドライグさぁん!!」
『断る。クソトカゲと繰り返し言ったこと、俺は覚えてるからな?』
「器ちっちぇなテメェ!! ヤダ、ヤダ! 小生復活したくなぁ……………………」
◆◆◆
「なァい! チクショウ、覚えてろよクソトカゲア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッッッ!!! ゴホッゴホッ!」
勢いよく身体を起こす。痛い。痛いってことは、生きてる。生きてる……生きてたかぁ……。走馬灯の夢じゃなかったかぁ。
クソ、視界がまともに機能してねぇ。これは宜しくない、非常に宜しくない。僕は一刻も早く逃げなきゃいけないのに……!
「気が付いたかい?」
そんな、混乱した思考を沈めるように落ち着いた男性の声が聞こえてくる。…………初めて聴く声だ。誰なんだろう?
「ええと……どちら様でしょう、か? 僕今視界がやられてて、顔も何も分からなくて……」
「うーん、それは困ったな。今この状況で名乗ると君は心底萎縮してしまいそうだし……」
「あ、なんかもうそれだけでわかりました。超絶お偉いさんですよね……いや、でございますよね?」
「ははは、公の場ではないし、話しやすいようにしてくれて構わないよ。私もその方がありがたいしね」
「は、はァ……ではお言葉に甘えて……」
僕もそういうこと意識しちゃうと何も出来なくなるしね……。うん、なんかもう色々察しがついちゃったけど、言葉にしちゃうと色々震えが来るし、もう何も考えないように。
「ここにいるのは、妹の心配をしているただの兄だからね」
「それもう十中八九魔王様じゃないですか!!! 考えないようにしていたのに!!!」
「しーっ。静かに、兵藤一誠くん。今、リアスがここで寝ているからね」
「あっ、ハイ……って、部長が?」
見えてないし感覚も死んでるからなのか、全く気が付かなかった。もしや、相当に精神に負担を掛けたか? うーん、非常に申し訳ない。
「それはそうと一誠くん。君を一発殴らせてくれないかな?」
「いやあの、どういう流れ?」
「いやぁ、そのこう……リーアたんを泣かせた君を、何も無しに認めるのは違うというか……」
「リーアたんて……」
僕の中での魔王像が音を立てて崩れていく。それはそれとして結構本気で言ってるらしい、命の危機を知らせる警鐘がガンガン鳴っている。うるせぇ……。
「そもそも、こう言っちゃあなんですが、死ぬつもりだったんですよ。お節介な相棒が何やら勝手に延命処置をしちゃったせいで生きてますけど。だからその……ごめんなさい。後先考えないで、持てる全てを出し切って戦ったんです。部長が困ってたから、どうしてもそうしたかったんです。まさか、泣くレベルで悲しんでもらえるほど良く思われていたとも思ってなかったし。今ちょっと青天の霹靂ですよ」
「……一誠くん。君はグレモリー家がどういう家かは知っている、よね?」
どこか呆れたような、怯えてるような声色だ。あまりの無知さに呆れられたのだろうか?
「綺麗な紅髪を持つ、眷属をとても大事にしてくれる一族ということは。僕も部長には良くしていただきました」
「知っててこれなのかい……彼女も苦労するだろうね……」
なんだろうこの、理解が足りてないって暗に言われてる感じ。……あー、頭が上手く動いてないな。
「とりあえず、殴りたいというのは一旦冗談にしておくとして。私は君にお礼を言いたかったんだ。リアスの力になってくれてありがとう、一誠くん」
「い、いやいや。そんな当たり前のことにお礼を言われても……」
「それでも、だよ。私では立場上、どうにかしてあげることができなかったからね」
「あァ……魔王様ですもんね。身内贔屓すると角が立つ、と」
そうだよなぁ、今軽く話しただけでもこのお方が相当なシスコンなのは分かる。そんなヒトが妹の意にそぐわない結婚を許容するわけがないんだよなぁ。
「何も完全に反対というわけじゃなかったのだけどね。為政者としてはそっちの方がありがたい部分もあるし」
「部長に、納得の行く選択をして欲しかったんですよね?」
「うん、そういうことだ」
納得した上でライザー氏とくっ付くならそれでよし。そうでないなら……ってやつか。いやぁ、天上人達は大変だァね。
『どちらかと言うと天上人なのはお前の方だがな、二天龍だそ俺たちは』
うるさいぞクソトカゲ、プライド高過ぎくんかよ。いやまあ事実かも知らんが、それでも僕ァ悪魔! 地の底の住人!
「なのでお礼として、何か力になれることは無いかな? 私個人だとあまり大したことはしてあげられないんだが……」
「いえいえそんな恐れ多過ぎます!! 現状ですら過分な待遇なのに…………あっ」
「?」
もしやこの状況、使えるのでは? 個人とはいえ魔王になるほどの悪魔、僕一人をはぐれ悪魔にすることぐらいわけないはず!
「じゃあお願いします、僕をはぐれ悪魔にしてくれませんか!?」
「一体何がどうしてそうなったんだい!?」
あり? 通らなかったか。ていうかそりゃそうだ、一体どこの誰が『ご褒美に私を追放して犯罪者にしてください!』って言うんだろう。今まさに僕がいったが、非常におかしなことを言ってしまった気がする。
「いやちゃうんです、おかしいことを言ってる自覚はありますけど、このまま僕を置いとくのヤバくないですか!? 赤龍帝ですよ、ただの劇物じゃないですか! 嫌ですよ皆がこの籠手由来のゴタゴタに巻き込まれて死ぬの!」
「言わんとしてることは分からないでもないけど、話の流れ的に察するものは無かったのかい!?」
「ハッ、分かった上で逆らってますが何か!?」
なんかこう、自覚が足りないのはわかったよ畜生! 中々に僕は大事に思われてるってのは察したさ!
「だからこそダメだ、絶対に巻き込めない。誰かが僕に死んで欲しくないように、僕もそのヒトに死んで欲しくない。…………僕が強ければ、どんなことがあっても跳ね除けられるって言えますけれど。そんな無責任なこと、僕には言えません」
「……例えばそう、私が何とかしてあげようと言っても?」
「自分で自分のケツ拭くのは
「…………」
なお、片腕に眠る相棒に関しては除外だが。原因こいつだしせいぜい振り回してやる。
てことで、いろんな意味で僕はこのままリアス・グレモリー眷属に席を置くのはノーセンキュー。死んで諸々処理するつもりだったのにめんどくせぇことになったなぁもう!
「どうしてもダメですか? それなら僕は隙を見て自分でどっか行くだけです。たとえ悪魔陣営の全てが敵に回ってもです。なんなら襲われるのは好都合だ、適当なところで死ねるか、強くなって白い龍に立ち向かえるかできますし。それとも魔王様、今ここで、僕を処理しますか?」
そうであってくれるのなら、僕も手間が省けるというものだ。実際殴らせてくれないかなって言ってたくらいだし、どうぞ存分にって感じだ。
そうして変な覚悟を決めて脱力してると、目の前にいるらしい魔王様が、深い深い溜息を吐いた。
「君は相当に頑固なようだ。しかし、私は君の胸の内を聴けてよかったよ」
「そりゃどうも。……で、殺るんです殺らないんです?」
「それは私のすることじゃないからね。
んえぁ?????
「では兵藤一誠くん、また会おう。個人的に君のお願いを聞く件は、その時にもう一度。ね?」
「いや待って。ね? じゃない。今猛烈に警鐘がガンガン鳴って怖いんですけど!!! 一人にしないで、お願いします!!!」
「ははは、1人じゃないからそのお願いは聞けないね!」
「鬼! 悪魔! 魔王!!」
ダメだ、どう考えても何処吹く風! しかもさっきまで無かった気配が増えてる気がする、めっちゃ覚えのある気配するぅ!!! 合わせる顔が無さすぎる!!!
「あ、そうそう。よく分からないがアジュカがよろしく伝えてくれと言っていたよ。なんでも君のラーメンのファンらしいね。あと20秒とも言ってたが」
「誰だよそのヒト!! 平麺の常連さんなのは分かったけど!!!」
背脂の炊き具合を秒単位で言い当てるのあの人しかいねぇもん!! 悪魔だったんかいあのヒト!! いやそんなことは今はどうでもいい、扉の開く音と閉まる音でもう僕あのヒトと一緒に残されちゃいましたよね!?
「じゃ、じゃ僕もう疲れちゃったし寝ちゃおうかなー」
「あなたはいつもそうね、逃げるようにはぐらかそうとする」
「…………逃がしてくれません?」
「ダメよ」
ダメだったかー、あっはっはっはっ。
猛烈に死にてぇ!!!
感想ありがとうございます、とても励みになります。