【月曜日(ループ2)】
「イッセー、どうかしたのか? なんか『微妙なアニメの再放送が流れてきた』みたいな顔してるが」
「どんな顔だよ……大丈夫だよ父さん。なんかこう……朝起きる夢を見たせいで起きてるのか起きてないのか微妙なんだよね……」
嘘である、なんなら父さん大正解である。例え方がアレだけど、よう見とるなぁ……。
そんなわけで、気分としてはまさに月曜日の再放送。昨日の朝の焼き増しを現在進行形で体感しているところである。
「それにしてもいい光景だなぁイッセー……父さん、娘が二人できた気分で幸せだよ……」
「ははは……そりゃ何より……」
実際目の保養にはなるよねぇ……。1人は大人系の美人で、もう1人は可愛い系の美人。そんな二人がキッチンで母さんとキャッキャウフフやってんもんなぁ。これが当事者じゃなけりゃ『眼福眼福ゥ!』してる自信があるぜ。……そうなんだよ、当事者なんだよ。これで学校の奴らに『毎朝部長に味噌汁作ってもらってる』なんて言ったら殺される……。
にしても部長、料理本当にお上手ですね。これもグレモリー家の教育の一環なのか、本人が自分で頑張ったのか。……多分後者だよなあのヒト。舐められない為にとかそんな理由だぜ。負けず嫌いだなぁ。
「…………」
今日は余計なことじゃねーですよ。キッチンの方から睨まれたけど、今日はジトっとされる謂れは無いよマジで。
「…………で、本当のところどうなんだ?」
「どう、とは?」
「お前の本命だよ。どっちなんだ?」
「気持ちは分かるけどどうかと思うよ親父」
片方は僕を狩りに来てるとか言ってみようか……ダメだな、感動の余り赤飯炊いてパーティーになりかねん。
「まだお前美人は対象外とかいってるのか? ダメだぞ男がそんなんじゃ。夢は高く持たなきゃな」
「今そんなこと言ったら方々からぶっ殺されるから言わねぇよ……」
実際季節の宝くじ当てるより凄い幸運なのは分かってるよ。一生分の幸福が押し寄せてきてる気はする。素直に受け取るかは別だがなァ!!!(ゲス顔)
「……ま、後悔だけはしないようにな」
「わーってるよ」
まあ、今はそれよりも直近の大問題に着手しないといけないわけだが。このやり取りも2回目だし、マジで時間が巻き戻ってやがる。
これどういうことよドライグ……と呼びかけようとして思い出した、アイツ今いないんだった。
(いやまじでどうしたもんか……)
素直に相談すればいいと思うんだが……
「……? どうかしたのイッセー。私の顔に何か付いてるかしら?」
「いえ、今日も頗る美人だな、と」
「…褒めてないわよね、それ」
「そんなことは無いですよ、ええ」
どストライクなのは事実ですし、と続く言葉を飲み込みながら、最終手段だなと肩を落とす。多分親身になって助けてくれるとは思うんだが、それはそれとして1人で勝手に危険かもしれないことに頭を突っ込んでることに関しては怒られかねないし……部長も悪魔だから、これ幸いとその弱味につけ込んできそうだし。こういう時、自分のノータリンさが嫌になるぜ。考えが足りてないってヤツだ。
今考えても仕方がない、今はとりあえず洗濯を回すぐらいはしようかな、と洗面所に向う。本来ならキッチンに立つのは僕の仕事でもあったのに、アーシアが来てからそれが減り、部長が来てから完全に締め出された。あの忘れてるかもしれませんが、私一応飲食店従業員なのですが。
「あー、これがタチの悪い夢だったら有難いんだがな……」
思わずボヤきながら、これで目が覚めてくれないかなと洗面台で顔を洗う。やっても目は覚めないし、鏡に映るのはいつもより3割増しでやる気が抜けた僕の凡顔だ。うーん、我ながら素晴らしいモブ顔。
なるようになれ、と若干諦めの入った心持ちで
、僕は洗濯機に洗剤を入れた。
◆◆◆
「……社交場に幽霊が出るゥ?」
説明しよう! 社交場……正式名称『健全少年達の社交場』とは、エロ本の廃棄場になってる橋の下のスペースのこと……ってこれも2回目だわな。
学校に着いたらほぼ昨日と同じ流れで屋上に誘導され、ほぼ同じ経緯を聞くに至る、まる。
「お前だったら、なんか不思議なツテでどうにかできるんじゃないか?」
「頼むぜイッセー、お前だけが頼りなんだ!」
「別に乗っかるのはいいけどさ、お前らは事が済むまで絶対に社交場に近付くなよ」
そう言うと、2人はどこか戸惑ったように僕の顔を見る。な、なんだよう、男にジロジロ見られても嬉しくねぇぞ。
「その……危ないのか?」
「下手に手を出すと危ない可能性があるってこった。前にも似たようなことに首突っ込んだことあるけど……まー大変だったぜ。幽霊ってマジ怖い」
「……イッセーにも苦手なモンがあるんだな」
「どういう意味だそれは?」
現在進行形で恐ろしいことに巻き込まれてるからな。これで何もしなけりゃなんにもならないんならいいんだけど、このまま月曜日のループとか気が狂うぞ。嫌だぜそんな悪い意味でのSF時空に取り残されるの。
「いやでもお前が何とかしてくれるってんなら助かるぜ」
「よっ、『駒王の赤パーカー』!」
「調子いいなぁてめぇらよぅ。さっき嫉妬であーだこーだ言った口で煽てよって」
「「それとこれとは話が別」」
まあそう言うだろな。誰だってそうする、僕だってそうする。普段の感謝とリア充への恨みは別腹ってな。
「つーかイッセー、俺たちに渡したメアドはなんだ一体!! 聞いてねぇぞあんな生物がいるなんて!!」
「あー、ミルたんの? すっごい乙女だったでしょ」
「乙女というか漢女だったわ!! 可愛いコスプレイヤーだと聞いて、期待に胸を膨らませて待ち合わせした俺たちの純情を返せ!!」
「いやでもほら、ミルたんはアレで結構ミルキーのレイヤーとは横の繋がりが広いから、ミルたんと仲良くしとけばあわよくば、って話は普通にあると思うけどな」
「「先にそれを言えっ!!!」」
言ったらつまんないじゃーん、と口笛を吹いて誤魔化すが、奴らの怒りは治まらない。仕方ない、追加で情報を投下するか。
「ちなみに可愛いレイヤーさん『も』いることは確認済みだ……ウチの店にも来てくれるしな。ミルたんと一緒にイベントに着いていけば……な?」
「お前、神か?」
「か、カメラの準備が必要だな!!」
おーおーはしゃいどるはしゃいどる。まあ屈強レイヤーさんの割合の方が多いんだけど、それは黙っておきましょうねぇーっと。ミルたんもカメラマン少ないって嘆いていたからこれでwin-winってね。あっはっはっはっ!
「ともかく、今日僕がバイト上がったらそれとなく様子を見てきて、それ次第でそういうのが得意な人に相談するから、お前ら絶対来るなよ。呪われたらどうしようもねぇからな」
「お、おう分かった」
「全裸待機ってヤツだな」
「服は着とけアホウ」
さて、これで釘は刺したから来ねぇだろっと。コイツらをそんな事情に巻き込む訳には行かねぇしなぁ。
◆◆◆
「こんちゃーっす……ってありゃ、閉まっとるな。珍しいな僕が一番乗りかよ」
シフトまでの時間潰しに部室でできること無いかな、と思って1回目と同じように旧校舎の部室にまで来たが、おかしい。朱乃サンが来てたはずなんだが……まあいいか。僕は鍵を持ってないので、持ってる部長か朱乃サンに借りるか、職員室で借りてくるしかなさそうだ。
「…………そうだ」
昼の部活は定例会議の時以外は参加自由なわけだし、今日の僕はおやすみして図書館に行こう。意外と変な本が蔵書としてあるし、もしかしたら何か現状を打破する何かがあるかもしれない。足りない知識は他所から持ってこないとねー!
「あら? お早いですわねイッセーくん。お待たせしてごめんなさい」
「あ、どうも朱乃サン」
ルンルンとその場を後にしようとすると、タイミングがいいのか悪いのか、朱乃サンが部室の前まで来ていた。
「あとすみません。ちょっと調べたいことがあるので、ここまで来ておいてなんですケド、部活おやすみしようかなって」
「あらあら、そうなんですか……。それは残念ですわ」
頬に手を当てて困ったように眦を下げられると悪いことしてる気分になる。実際、悪いことしてるしな、隠し事。
「しかし本当に困りましたわ……どうやらまた、イッセーくんったら隠し事をしているみたいだし」
「速攻でバレてやがる……え、そんなに顔に出てますか?」
「顔からは分かりませんが、少し気が昂ってるみたいなので。イッセーくんが心臓と骨を龍のモノにして以来、結構分かりやすくて」
「隠せる訓練しておきますね」
色んな意味で死活問題な気がする。というかアレか、部長がなんか僕が余計なこと考えると的確にこっち睨んでくるのソレか!!!
「まあでも前みたいな命の危機でもないし、個人的なことなので大丈夫ですよ。ちょっと気になることがあって調べたいだけでして」
「嘘……ではなさそうですわね」
僕の目を覗き込むように顔を近づけて、しばらく視線で舐め回したあと朱乃サンは顔を引っ込めた。そうやって顔を近付けられるとビビるからやめて欲しい。観賞用美女がやると余計に心臓止まっちゃ〜う。
「本当に困った時は、私でも部長でもいいですから頼ってくださいね? ……約束ですわよ? 今度こそ守ってくださいね? 次破ったら……めっ、ですよ」
「は、はーい」
そういや前の約束は思いっきりブッチしたもんなぁ…………実際すげぇ怒られたし。いやぁ、本当にご心配お掛けして申し訳ありませんでした。
「とりあえず、今はイッセーくんのことを信じて部長には内緒にしておきますわね」
「はい、そうしていただけると助かります……いや本当に」
まずい時は素直に頼ろう。そう思った。
◆◆◆
【火曜日(ループ2)】
そして僕は、詰めが余りにも甘過ぎたことを知る。
「松田、元浜!?」
社交場に向かえば、そこにいたのは釘を刺しておいたはずの二人。そして、そんな二人に覆いかぶさらんとする白いモヤだった。