兵藤一誠は『異常な普通』です   作:しにかけ/あかいひと

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本日更新四話目です。
その1からよろしくお願いします。


その4

「…………でぇ? これはどういうことなんだ?」

 

 仁王立ちする僕の前で正座をする松田、元浜、そして白いモヤ……改めて幽霊少年。

 

 話は少し前に遡る。

 

 

◆◆◆

 

 

「松田、元浜!」

 

 白いモヤが2人を飲み込もうとしてるように見えて、僕は肝が冷えつつも冷静に懐から聖水を取り出して投げる構えをとる。

 またループするならそれでもいい、この二人は、僕の日常の象徴の一つであるこの二人は、何としても守らなければならない!

 

 力を寄越せ、『決殺の手(トゥワイス・クリティカル・ブレイカー)』!

 

「頭ァ下げろ馬鹿共ォ!!」

「っ!? い、イッセー!!」

「待て、早まるな落ち着け!!」

 

 ……………………うん? どういうことなんだろう。何故か推定幽霊を庇うように前に出る2人を見て何とか動きを止め、しかし心底疑問に思ってると、広がっていた白いモヤが人型に収まり……透けてはいるが、ちゃんとした人間に見えるようになった。

 

『はは……随分と喧嘩っ早いダチなんだな』

「すまん、こいつ即断即決なんだよ」

「色々説明してなかった俺たちのせいだ」

 

 うーん、なんだこの状況。やばいと思って聖水構えたの、もしや大失敗かつ身バレに繋がる大失態なのでは。

 

「……えーと、何? 僕の出番ナッシング・ゼロ? 和解してるとかそんな話?」

「「『そうそう、そんな話』」」

 

 3人揃ってそんなふうに言うもんだから、僕の中の何かがキレた。まあそれだけの話だ。

 回想終了、話を現場に戻そう。

 

 

◆◆◆

 

 

「そもそも来るなと僕は言ったよな? しかもお前らループ前の記憶がある素振りも見せなかったし。なんで説明しなかったんだ? アアン?」

「その……すまん。ぶっちゃけかなりヤバいことってのは分かってたんだが」

「イッセーも前のループと違うこと言ってるから、これは何かあるぞって面白くなっちまって」

 

 なんで怖くならずに首を突っ込む方向にシフトするかねぇコイツらは。まあ僕も人のこと言えんし、仲良く揃って皆馬鹿野郎だちくしょう。

 

 とりあえず話を整理すると、僕と同じようにこの2人も仮称1回目の火曜日までの記憶があるらしい。一緒にループしちまったんだな。

 

「イッセーがどんな本を物色するのか気になって」

「そしたらお前、急に小瓶取り出して投げて、驚いたところで……昨日の朝になってたんだよ」

「み、見られとる……」

 

 つまり、結局あの場にいたからループしたって認識でOKっぽい。

 そんでもってどうやら僕は本職っぽくて、しかも自分達と同じくループしてるっぽいぞ。とのことだったようだ。その時に言えなかったのは、僕があまりにも真剣そうな顔だったからのようだ。

 

「ところで昨日はなんも見えてなかったみたいだけど……」

「今日になったらなんか見えるようになってた」

「昨日イッセーがなんかしようとしてたの、コレだったんだなって」

「逃げろよ、そこは逃げろよ。近付くなって言ったじゃん」

『すまん、それは俺のせいだ。昨日と同じ顔ぶれだったから思わず呼び止めた』

 

 とそこで口を挟んできたのは件の幽霊。男子高校生っぽいのだが、どうも記憶がないらしい。自分のことがよく分からないままフラフラと流れてきて、今はエロ本が集まる社交場に根を下ろして今回の噂話に発展したらしい。とんだお騒がせ幽霊だ。

 

「アンタも軽々しく生者を呼び止めるんじゃないよ……というかなんでエロ本を読み漁ってんだよ」

『いやすまん! 本当幽霊ってのはヒマなもんでよ! ちょっと誰か脅かすとかぐらいしかできなかった所に降って湧いた娯楽でな。鼻血出るほど興奮させてもらったわ!出る血ねぇんだけどな! ガハハ!』

「色々と笑えねぇよ……」

 

 頭を抱える僕を許して欲しい。こんなしょうもないことで慌てて、しかも話を聞いてもループする原因は分からないと来たもんだ。どうもループ条件は除霊されるか、成仏するときに起きるらしいんだが。

 

『いや本当に心が死にそうなんで助かったわ。もう途中から何回月曜日が来たか数えるのもやめるくらい長いこと幽霊しててな!』

「楽しそうで何よりだよまったく」

 

 何回目か分からない溜息が口から漏れる。孤独で狂っちまいそうな幽霊を助けられて良かった反面、コイツがド級の厄ネタなのは変わりないのだから。マジでどうしたもんか。

 

「……で、話してみたら意気投合して、今に至ると」

「女の趣味は合わなかったけどな」

『ロリなど邪道! やはりケツがデカい方がいいに決まってる!』

「至極どうでもいい……結局胸が1番なんだから」

 

 っといかん、僕が猥談の流れに呑み込まれたら収拾がつかなくなる。

 

「ともかく、大事に至らなくて本当に良かったよ。でも運が良かっただけだからな? 好奇心で触れるもんじゃない。……こういうの関わりたくないけれど、なんかあったら僕に話してくれたらなんか対処するから」

「そう、それのことだイッセー!」

「なんだその左腕! 超カッコイイんだが!」

「あ、分かる? なんかつい最近出てくるようになった呪いの籠手なんだわ。これが切っ掛けでオカルト研究部入ることになったんだけどね」

 

 あながち間違いでもないが、正しくもない説明でこの2人を誤魔化す。流石になんでもないは信じてもらえなさそうだしなぁ。

 というわけで兵藤一誠クンは、急に呪いの籠手を身に着ける能力に目覚めてしまい、その情報収集をしてる最中にオカルト研究部に目をつけられ、話題を提供&正体を探ってもらう名目で席を置かせてもらってる……ということにした。流石に悪魔だ神器だなんだとかはバラせねーですし。

 

「お前がオカルト研究部に入ったのはそういう理由があったんだな……」

「二重の意味で納得だわ。お前も最初はダルそうだったし、向こうもお前入れる理由が分からんし」

「まあとは言ってもそれで何が進展したってわけじゃないんだけどね。この籠手だって、なんか変なものが見えるようになったのと、力を2倍にする機能がある? くらいだし」

「「『しょっぼ!!』」」

「うっせぇわ! 身の丈にあった力と言え!」

 

 実際は延々と倍加できる物騒な神殺し兵装なのですが、まあそんなことが口にできるはずもなく。折角隠ぺいしてる訳だしね。

 

「そんなワケで眉唾物から本当のものまで、色んなオカルトを調べる中で、幽霊みたいな怪しげな話題にも触れるわけで……まさか本当にいるとは思わんよ」

『なはははは! 俺もそんな奇っ怪な左腕は初めて見たぜ! ショボイけどな。めちゃショボイけどな!』

「強調すんなや」

 

 これで中の人(ドライグ)が聞いていたらブチ切れ不可避だっただろう。今でこそ僕はアレをクソトカゲと煽れるが、最初は心底キレてたし。

 

「つか、そうなるとイッセーは別に幽霊を成仏させる力は無いんだよな? だけど1回目の火曜日の時になんかやってたけど」

「種明かしすると、聖水もってたんよ。オカ研の活動で手に入れた、本当かどうかも分からないパチモン臭プンプンのやつだったんだけど……なんかとりあえず本物だったみたいだなコレ」

「そんなモノまでネタにしてるのかよオカルト研究部。本格的だな」

「プレゼントしてくれた部長も、まさかこれが本物だとは思わねーよ。運の勝利だな」

 

 まあ本当は聖水って分かって投げたんだが。なんなら作ったの僕である。とりあえず何があるか分からないってことで、小瓶に入った聖水を2人に投げて寄越す。

 

「この状況で出し惜しみしてられねーし、お前らもこれ持っとけ」

「お、おう。サンキュー」

「つっても話聞いたらコレをコイツに掛けるの躊躇うよなぁ……」

『頼むからやめろよ、マジでやめろよ』

 

 そう言って僕達から距離を取る幽霊を見て、ようやっと僕は苦笑とはいえ笑うことができた。あー、本当にヤバかった。

 

 

◆◆◆

 

 

「でよ、もう一度詳しく説明してくれないかな?」

『おう。つってもぶっちゃけ記憶がねぇから役に立てねぇんだがな……』

 

 今回の事件の核になってるであろうこの幽霊。学ランのようなものを着ているため、恐らく学生だったのは推測できるが、身元に繋がりそうな情報がそれしかない。過去の記憶、名前すらも無いんだからマジでお手上げだ。

 

『正直、成仏ができるならこのまましたい。多分このままフラフラしてるのもいいことじゃないだろうしな。その……力になってくれると助かるんだが』

「ああ、構わないぜ。同好の士なんだ、水臭いこと言いっ子無しだ」

「ちょっと寂しくもあるが…それも仕方ない」

 

 いつの間にこの3人はこんなに仲良くなったんだろう? 猥談は人を繋げるとでもいうのか。……うん、あるかもね。

 

「……僕も乗り掛かった船だ、君の門出をセッティングしようじゃないか。その為には君の生前? の情報があると助かるんだが」

 

 いや本当なんで成仏しようとするとループするのやら。原因が全くもって不明だし、死に方に特徴があったのではってところなんだが。覚えてないんだよなぁ。

 

「一応カメラ持ってきて撮ってはみたんだが……まあ望み薄だろうな」

「ああ、見た目で身元特定ってか」

 

 松田は中学時代は写真部に所属していたらしく、見るからにお高そうな一眼レフを持っている。今でも(女子の撮影で)活躍の場面があるそうだが……なるほどでかした!

 

「ちょっと効果あるか分からないけど、僕の左腕で強化すれば心霊写真っぽく撮れる……かもしれない」

「そんなこともできんのか。小器用だな…」

 

 そんなわけで記念写真的なノリで4人で肩組んではいチーズ。効果はあるか分からないけど『心霊的なアレ』を2倍にして譲渡したので上手くいく……といいなぁ。

 

「一応明日このフィルム現像と印刷頼んでくるわ。ちょっと値が張るが」

「そこは割り勘でもいいぜ」

「おう、助かるわ」

「あとはその写真使ってそれぞれのツテでコイツの生前探すってことだが……」

「そこはイッセー、任せた」

「えぇ……まぁいいけどさ」

 

 顔が1番広いの僕だからね……でもコイツらも中学時代の友達とかには当たって欲しいかなぁ。

 

「あとはループするかもしれねぇけど、成仏とか昇天させる方法を試してみるとか」

「それなら知ってるヒトに心当たりあるから、それは僕に任せておくれよ」

「オカルト研究部がオカルト研究部してる……」

「美形ぞろいだが活動内容謎だったもんな……というか本当にそういう活動してたのさっき初めて知った」

 

 実際はちゃんと活動してるみたいだけどね。なんか妖怪の生態を記録してるような活動報告があったような無かったような……。そもそも悪魔が妖怪みたいなモノって言われたらその通りだが。

 

「行方不明者だった可能性も追うか。そこは俺がやる」

「え、元浜。お前にそんな体力あったっけ?」

「失礼なやつだな。いやまあそうなんだが……。何も聞き込みしなくても行方不明者捜索掲示板ってのがあるんだよ、今スマホで調べた。そっちの方で探ってみる」

 

 特徴もある程度掴めたしよ、といつの間にかメモ帳を取り出していて何事かを書いている。覗いて見ると幽霊クンのだいたいの身長と学ランとボタンの特徴、簡単な似顔絵が。普段は女子のスリーサイズを見抜くことに使ってる眼力がこんなところで生かされるとは!

 

『お、お前ら……マジで良い奴だな!』

「べっつにー。困ってたらできる範囲で助けになってやりたいってのは普通(あたりまえ)でしょうが」

「当たり前かはともかく、別に俺ら悪事をやってるわけじゃないしな」

「まあエロいことで周りに迷惑は掛けるが」

 

 まるで僕まで同じ穴の狢みたいに言わないでくれ……別に僕の性癖のせいで周りに迷惑はかけてない……よね? そうよね?

 

 まあでもそういうことなのだ。進んで悪いことをしたがるヤツはそう居ない。このエロコンビも根は良い奴なのだ。

 

「じゃあ気合入れて行くぞお前ら!」

「「『おーう!』」」

 

 あんまり褒められた感じではないし、若干の後ろめたさもあるけれど、何故か僕らは今この瞬間、最高に青春していた。

 




多分これでこの章の1/3……先が長い。
次も四話くらい更新するので2週間ぐらい空けます。
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