この章は特にミステリーとかそういう感じで書いてないので、なんか本当にごめんなさい。
【月曜日(ループ3)】
「…………そういうことだったのね」
「はい……すんませんでした部長」
何言い訳しても仕方ねぇなということで、起床と同時に問い詰めてきた部長に土下座。そのまま洗いざらいゲロって今に至る。勢い余って余計なことを口走った気もするが、まあ今更だろ!(公開告白済み)
「全く……頭をあげなさいイッセー」
「うっす……」
この勢いで解雇通知とか叩き付けてくれねぇかなとかアホみたいなこと考えながら顔を上げると、仁王立ちしてた部長が目線を合わせるように床に座った。
「今回は私にも多分に非があるから、手打ちにしないかしら?」
「…………んん? 部長に非?」
「単純に迂闊過ぎたわ。実力行使に出る前に貴方を問い質すべき場面だった。単なる幽霊程度なら貴方でも問題無く消し飛ばせることを、私は理解していたはずなのよ。その時点で緊急性は無いと判断するべきだった。実際はどうあれ、私のせいで状況は振り出しに戻ってしまった以上、とんでもない大失態よ」
「ですけど、どう考えても僕が報連相を怠ったのがそもそもの原因では……」
部長に怒られるやっべ、と本来なら話すべき案件を隠したのだからそうなっても仕方ないんじゃねぇかなと思うのです。若干取り返しのつかないことになってるので、僕の方こそとんでもない大失態のハズなのだが……。
「そこはその通りね。だからお互い手打ちよ」
「はぁ……部長がいいならそれでも構わねぇのですが」
弱みの一つや二つぐらい握られるのかと思ってたのだが、結構寛大な処置に収まりそうである。思うところでもあったんだろうか?
「別に大したことは思ってないわ。存外貴方も普通の男の子だったのね、と」
「サラッとモノローグ読まんでくださいよ。というか失礼ですね、僕は終始普通の男の子ですが」
「普通の男の子は死を覚悟して戦うなんてできないわよ、自覚なさい」
グゥの音も出ない反論をどうもありがとう、畜生これが悪友共だったらその頭はつってやるのに。
「……んで、そんな非凡だと思ってるらしい僕のどこが普通に見えたんです?」
「もう、そんな拗ねた顔しないの。貴方にもバカを一緒にやれる友達がいたってことよ。それって貴方の言う、ありきたりだけど大切なことなんじゃない?」
「…………まァ、はい」
「コトがコトだけに素直に喜べないけど、なんだか安心したの。それだけ」
安心できる要素があったんだろうか……? でも部長が妙に生暖かい笑顔を見せるもんだからとりあえず納得はするけど。
「さ、あまりダラダラもしていられないし、イッセーは松田くんと元浜くんと連絡を取ってちょうだい。今もソレ、鳴っているでしょう?」
促されてスマホを見ると、確かに慌てたような文面が通知欄に並んでいる。……つまり連中は記憶を持ち越したのだろう。その場にいなくともタイムリープが起これば記憶は引き継ぐ。イッセー把握した。
『すまん、ドジった』
『やっぱお前か!!』
『どうしてくれる、せっかくホームページも完成したのに』
『いやほんとごめん。幽霊がいることバレそうだったから咄嗟に対応しちまった』
『バレるとまずいのかよ?』
『ループするやつ増やしていいのかよ』
『あー……それはまずいな』
『ちょっとその辺の対策も考えないとな』
『そこも含めてヤツと相談しようと思う。とりあえず学校では話すのはやめて放課後社交場で集合な。事態が事態だしバイトも休むわ』
『OK』
『OK』
と、とりあえず出たとこ勝負でメッセージを飛ばし、コレでいいか? と部長に目線を送る。
「ええ、それでいいと思うわ。では私たちは先に口止めをしなくちゃね」
「口止め? 何を」
ポケっと考え無しにその意味を問うと、部長は呆れたようにこう言った。
「貴方が昨日、ついうっかり口にした悪魔って単語についてよ」
「あっ」
本当、うっかりですみません……。
◆◆◆
『まあそんなこったろーとは思ったけどさ』
また外でこっそり見られたらかなわねぇと、ちょいちょいと誘導して我が家にご招待した幽霊くん。軽い説明と身の上話をしたら返ってきた反応がコレである。なんか薄くねぇ?
『そりゃおめぇ、俺自身がこんな愉快なことになってんだから悪魔も天使もいるだろうよ。知らんけど』
「思考放棄してない? 大丈夫?」
『大丈夫なワケあるかい、がははは!』
「だよねぇ、あははは」
「揃って現実逃避しないでちょうだい。時間も押してるのよ?」
部長の鶴の一声で再起動。まあふざけ合っただけだしそこまで深刻じゃないしすぐに意識を切り替える。
「……ともかく、迂闊なことをしてごめんなさいね」
『いやいや、慣れてっから気にしねえっすよ! それに女が謝ったなら、それを許すのが男の甲斐性ってモンでさ!』
幽霊の超男前なセリフに部長は安心して息をつき、人好きのする笑顔を浮かべた。交渉に使う営業用の笑顔じゃない辺り多分こりゃ素だな。うっわぁ、見てると心持ってかれそうになるよ。
というか聞きまして上司様? 人が惚れるようなカッコイイ男ってこういう奴のことを言うんですよ、考え直しません?
「…………」
「待ってください、何も言ってないじゃないですか。だから滅びの魔力しまってください。びーくーるびーくーる」
さっきもサラッとモノローグ読まれたし、多分読心系のなんかが仕込まれてんなこりゃ。愛されてますわねイッセーくん! …………震えが止まらねぇよ。
『それで、お姉さんはその……イッセーの彼女か何かで?』
「まあそんなところね」
「待ちねぇ上司様。誤解を招くようなことを言うんじゃねーですよ」
『いやお前、誤解も何も夫婦漫才やってるようにしか……』
心の距離も狭まったしやり取りが近いのは認めるけどそういうこと言うの止めてよ! ほら、部長が悪い意味でニッコリスマイル!
「イッセー、真実は周囲の目が照らすものよ」
「現状一人しかいねぇしコイツ正しいけど一応節穴だし真実じゃねぇし」
「じゃあ一人一人聞いて周りましょう? きっと面白い答えを貰えると思うわ」
「やめときましょう、僕が圧倒的に不利です」
『うーんこの』
酷く誤解が深まった気がする……いや普通に考えておかしいのは僕の方なのだが。両想いで、告白みたいなこともしてて、なんかもう屈した方が…………いかん、早まるな兵藤一誠。部長が僕の事情に付き合うことになっていいのか。
「さて、大まかな情報共有は済んだわね」
これ以上は踏み込めないと判断したのか、パン! と手を叩いて自ら軌道修正をする部長。
「そしてあなた達の基本方針としては、あなたの生前を調べることで成仏してもらうということ。そうよね?」
「『はい』」
「その上で、私の見解を述べさせて貰うのだけど……」
そう言って何かを続けようとして、しかし言いづらそうに部長は口篭らせた。
「…部長?」
「えっと、あなた。本当に記憶は無いのよね?」
『ええ、無いっすね。覚えてることといや、女子の趣味ぐらいのモンでさ』
「一瞬ケツ好き男子の噂も集めようとは思ったけどさ。流石に死者の尊厳的にそんな惨いことできないんで触れなかったンですが」
そして黙り込む部長。どうしたんだろう、何かマジモンのヤバいことでも起きてるのだろうか?
「…………正直、松田くんや元浜くんが関わるのは良くても、イッセーと私が首を突っ込んでいいのか悩むわね。少しデリケートな問題になってるみたい」
『てぇ言いますと?』
「我々が『悪魔』なのが問題ね。……遠回りしてごめんなさい、今度こそ私の見解を述べさせて貰うわね」
「『ゴクリ……』」
そして放たれたのは、想定外の言葉だった。まるで、前からのボールを警戒してたら頭上からペンチが落ちてくるような。そんな驚き。
「言いづらいのだけど……多分あなたが幽霊になってる……いえ、『身体を失った』のは、悪魔の契約が絡んでいる可能性が高いわ。記憶が奪われてることも含めてね」
◆◆◆
部長がまず疑問に思ったのは、この幽霊くんが『物を食べた』という点だったらしい。僕もおかしいよなって思ったので目の付け所は間違ってなかったみたい。
「基本的に、幽霊が現世に存在を維持するために食事は必要ないの。お供えの文化がある日本でなら無くはないのだけど、それは食べると言うより供えられた物に宿った何かを吸収してる、位のものよ。必要無いものを取り込む機能は普通の霊体には備わっていないわ。まずこの時点で異端極まれりってところかしら?」
『ま、まあ確かに』
「一つ質問するのだけど。あなた、何もせずにループしたことがあるんじゃないかしら?」
『………言われてみれば。というか大体のループがそんなんっすわ』
そう聞いて部長は、ただの想像だけれどと前置きして続ける。
「ループの条件は成仏……ではなくて、あなたが存在しなくなるってことなのだと思うの。そしてあなたは自分を維持するために食べ物を摂取する必要がある。そうね、大体人間が何も飲み食いしないで生きられるのが3日間程だったかしら。ループは3日程度の周期だったのではなくて?」
『へぇ、だいたいそんな感じです。……そうか、なんかだるい時にループしてたのそういうことか』
「いや気が付けよ。というか教えてくれよ」
『必要なことだと思わんだろうが。……いやまあループの周期を教えてなかったのは素直にすまんと思うが』
まあ部長も言ってる通り想像での話なのだが。でもかなり信憑性のある想像だ。
「つまりあなたは現在進行形で『生きている』。霊体を維持するために物理的な食事が消費されているとは思えないから、その食べた物の行先が気になるところね」
「でもそれって全く手掛かり無いじゃないですか。もしや部長ってそういう力の流れ的なモノも追えるタイプのデビルだったりします?」
「できなくはないけれど、見た感じ私でも判別できないわね。残念だわ」
じゃあダメじゃん、とはならない。少なくとも僕らだけでは到底辿り着けなかったであろう観点から助言を貰えたのは本当にありがたい話だ。やっぱ専門家には素直に頼るべきだわな!
「それに全く手掛かりが無いわけでもないの。悪魔の契約が絡んでる可能性があると私は言ったけれど、それはどうしてか分かるかしら?」
「それは、こんな趣味の悪い状況を作るような性格の悪いヤツは悪魔ぐらいしかいないからってことでは?」
「うーん……なくはないけれど、感覚的な話で説得力を強く持たせるには一つ足りないわね」
そらそうだ、と納得する。多分世界に溢れる神器の中にはこういうこともできる物もあるかもしれないし、教会勢力や堕天使勢力、他の神話勢力にもそういうことができる力があるかもしれない。
「ええ、身体を失わせるだけならどこだって可能性だけはありそうよね。ただ……時間を操作するとなると話は変わってくるわ」
「と言いますと?」
「私の魔力が『滅び』の属性を持っているように、『時間』の属性の魔力も存在しているのよ。……持ってるところが持ってるところだから、明言は避けておくけれど」
特に聖なる気配の残滓も無く、なんなら魔力の残滓を感じ取れるので、部長はそこからほぼ間違いなく悪魔が絡んでると見ているようだ。
「……もしや部長、そっちの方面であたってくれたり、とか?」
「何言ってるの当たり前じゃない。これは私の仕事よ。首を突っ込むのは他所の悪魔の仕事の邪魔になるかもしれないけれど、調べるだけなら無罪よ」
「部長、好き! 愛してます!」
「知ってるわ、でも何度だって言って頂戴。やる気出るから」
今なら抱きついてキスしても……あ、ダメだなそのまま喰われるわ。
「ともあれあなた達は継続して彼の出自を調べてもらっていいかしら? ご丁寧に記憶が消されてる以上、こっちでも何らかの情報操作がされている可能性が高いわ」
「了解っす!」
「私はそうね……まず、『身体を代価にした悪魔契約』『身体を消すことを願った悪魔契約』の2つで調べてみるわ」
『俺そんなことしねぇと思うんだけどなぁ……うーむ』
「記憶が無い以上、申し訳ないけれどその発言の信憑性は皆無ね」
そりゃそうだ、とガックリ肩を落とす幽霊を見て、思わず肩ポン……のフリだけする。触れねぇし。
「元気出せよ。僕だって叶えたい願いのために命賭けたことあるし、良くあるって」
『余計傷付いたわ』
「あるぇー!?」
……ンまアともかく、なんだか解決に向けて大きく一歩前進したみたいだ。よっしゃ、気合い入れてくぜ!
リピートアフターミー、リアス部長は優秀。